「安東市の料理」の版間の差分

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2025年2月12日 (水) 22:30時点における版

この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。
河回村で行われている「河回別神グッ仮面劇(하회별신굿탈놀이)」の公演

安東市(アンドンシ、안동시)は慶尚北道の中央部に位置する地域。本ページでは安東市の料理、特産品について解説する。

地域概要

慶尚北道庁

安東市は慶尚北道の道庁所在地。道の中央部に位置し、市の北部は慶尚北道栄州市奉化郡、東部は慶尚北道英陽郡、南東部は慶尚北道青松郡、南部から南西部にかけては慶尚北道義城郡、西部は慶尚北道醴泉郡と接する。人口は15万2902人(2025年1月)[1]。市の面積は1522.1平方キロ(2021年)と慶尚北道ではもっとも大きく、全国の基礎自治団体(市郡)としても江原道洪川郡麟蹄郡に次いで3番目に大きい[2]

市の北側、東側は太白山脈の支脈が伸びて比較的高く、南西部に向けて緩やかに下っている地形をしている。北東部から西部にかけては洛東江(ナクトンガン、낙동강)が流れ、これに東部から流れる半辺川(パンビョンチョン、반변천)が市内で合流する。合流地点の周囲は豊山平野(プンサンピョンヤ、풍산평야)と呼ばれる平野部となっている。市の中東部には洛東江、半辺川を利用したダム湖が作られており、それぞれ安東湖(アンドンホ、안동호)、臨河湖(イマホ、임하호)と呼ぶ。

洛東江の蛇行する豊川面河回里(プンチョンミョン ハフェリ、풍천면 하회리)には豊山柳氏(プンサンリュシ、풍산류씨)の一族が住む河回村(ハフェマウル、하회마을)があり、朝鮮時代の伝統家屋が残るほか、民俗芸能のタルチュム(仮面劇、탈줌)が継承されているなど、昔ながらの文化を伝える民俗村としてユネスコの世界文化遺産にも登録されている。そのほか朝鮮時代の私塾である陶山書院(トサンソウォン、도산서원)や、屏山書院(ピョンサンソウォン、병산서원)、韓国最古の木造建築とされる極楽殿(国宝第15号)を有する鳳停寺(ポンジョンサ、봉정사)など歴史的な見どころを豊富に有する。

ソウル市から安東市までは、ソウル高速バスターミナル、東ソウル総合ターミナルから安東バスターミナルまで高速バスで約2時間40分~3時間の距離。また清涼里駅から安東駅までムグンファ号で約3時間30分の距離である。

  • 慶尚北道庁の移転
慶尚北道の道庁はもともと大邱市に置かれていたが、2016年2月に安東市の豊川面葛田里(プンチョンミョン カルジョルリ、풍천면 갈전리)へと移転した。

食文化の背景

河回村

民俗村の河回村(ハフェマウル、하회마을)が昔ながらの暮らしを継承するように、朝鮮時代から続く両班の儒教文化が色濃く残る地域である。食文化においても、祭祀料理を模したホッチェサバプ(祭祀風定食/헛제사밥)や、祭祀膳にあげられたカンコドゥンオ(塩サバ焼き/간고등어)など、両班の暮らしと結びついた郷土料理がある。特産品としては、韓牛(한우)、リンゴ(사과)、山芋()があるほか、地酒のアンドンソジュ(安東焼酎/안동소주)慶尚北道の無形文化財第12号に指定されている。

代表的な料理

ホッチェサバプ

ホッチェサバプ(祭祀風定食/헛제사밥)

ホッチェサバプ(헛제사밥)は、祭祀風定食(「ホッチェサバプ(祭祀風定食/헛제사밥)」の項目も参照)。安東市の旧家で継承されてきた祭祀料理(제사음식)を定食の形式に仕立てたものを指す。全国的に祭祀料理の定番であるナムル(ナムル/나물)や、チョン(チヂミ/전)、タンクッ(祭祀用のスープ、탕국)に加え、安東市の郷土料理であるカンコドゥンオ(塩サバ焼き/간고등어)や、サンオトムベギ(サメの切り身、상어돔배기)などを添えるのが特徴である。ごはんは鉢状の大きなものに盛り付け、ナムルを入れてピビムパプ(ビビンバ/비빔밥)として味わうことから、これをアンドンピビムパプ(安東式のビビンバ、안동비빔밥)とも呼ぶ。市内の郷土料理店で味わうことができる。

チムタク(鶏と野菜の醤油煮/찜닭)

チムタク
チムタク(찜닭)は、鶏と野菜の醤油煮(「チムタク(鶏と野菜の醤油煮/찜닭)」の項目も参照)。韓国語の発音では「チムダク」がより近い。チムタクは1980年代後半に安東市の旧市場(クシジャン、구시장)で発達して広まった料理で、発祥については、旧市場内のトンダク(丸鶏揚げ/통닭)専門店で生まれたとの説や、それ以前から安東市の旧家で祭祀料理、家庭料理として作られていたとする説がある(詳細は「チムタク/歴史/発祥」の項目を参照)。旧市場にはチムタクの専門店が集まる一画があり、「安東チムタク通り(안동찜닭골목)」と呼ばれる。

カンコドゥンオ(塩サバ焼き/간고등어)

カンコドゥンオ
カンコドゥンオ(간고등어)は、塩サバ焼き(「コドゥンオグイ(サバ焼き/고등어구이)」の項目も参照)。韓国語の発音では「カンゴドゥンオ」がより近い。カン()は塩、塩加減。コドゥンオ(고등어)はサバを意味する。地域名を冠して安東カンコドゥンオ(안동간고등어)、または方言としてオルガンジェビ(얼간잽이)とも呼ばれることもある。安東市以外の地域ではチャバンコドゥンオ(자반고등어)と呼ぶことが多い。市内の郷土料理店や食堂で提供されるほか、カンコドゥンオを看板料理として掲げる店もある。家庭用として持ち帰れる商品の販売も多い。
  • 歴史
安東市は内陸地域であり、かつては魚が貴重だった。もっとも近い慶尚北道盈徳郡の江口港(カングハン、강구항)からでも約60kmの距離があり、とれたての魚を担いで歩くと1日ではたどり着かずに2日かかった。現在の臨東面中平里(イムドンミョン チュンピョンニ、임동면 중평리)にチェッコリジャント(챗거리장터)と呼ばれる規模の大きな市場があり、ここを中継地点として安東市の各地へと運んでいくのだが、サバは痛みが早いことから、腐敗を防ぐために内臓を抜いて塩を振る工夫が生まれた。するとチェッコリジャントに着いた頃が、熟成の進むいちばんのタイミングだったため、安東のカンコドゥンオは美味しいと評価が高まり、名物として広まったとされる。チェッコリジャントは1980年代前半まで大勢の人で賑わったが、1984年に着工、1992年に完工した臨河ダム(イマデム、임하댐)の建設予定地と重なったことで閉鎖を余儀なくされた。
  • オルガンジェビ
オルガンジェビ(얼간잽이)は、カンコドゥンオの別称。オル(얼)は「オルチュ(ひと通り、얼추)」、ガンジェビ(=カンジェビ、간잽이)は「カンチャビ(塩加減をする)」が変化したものを意味する。

アンドンクッパプ(安東式のスープごはん/안동국밥)

アンドンクッパプ
アンドンクッパプ(안동국밥)は、安東式のスープごはん(クッパ)(「クッパプ(クッパ/국밥)」の項目も参照)。牛肉に長ネギや芋がらなどを加えて一緒に煮込み、ピリ辛の味付けに仕立てる慶尚道(キョンサンド、경상도)式のソゴギクッパプ(牛肉のスープごはん/소고기국밥)を指す。市場での販売が多いことから、安東式のチャントクッパプ(市場式のスープごはん、장터국밥)とも表現される。大手食品メーカーが、レトルト食品などの「安東式ソゴギクッパプ」を製造、販売している例もある。

アンドングクシ(安東式のうどん/안동국시)

アンドングクシ
アンドングクシ(안동국시)は、安東式のうどん。グクシ(=ククシ)はククス(麺、국수)の方言を指す。標準語を用いてアンドングクス(안동국수)と表現したり、地域内においては地名をつけず、単にククシ(국시)とも呼ぶ。下記の安東市の料理#コンジングクス(冷やし麺/건진국수)を含め、安東式の麺料理を総称する言葉としても用いられるが、狭義には冷たいスープで味わうコンジングクスに対し、温かいスープの麺料理を指してアンドングクシと呼ぶことが多い。温かいスープのアンドングクシは、ヌルムグクシ(누름국시)、ヌルングクス(누른국수)との呼び名もあり、こちらでコンジングクスと区別をすることも多い。
小麦粉に大豆粉(콩가루)を混ぜて麺を作るのをひとつの特徴とし、伝統的には干したアユ(은어)をダシにスープを作ったが、近年は鶏肉や煮干し、昆布などを用いることが多い。スープは醤油をベースとして味付けをし、具には千切りのエホバク(韓国カボチャ、애호박)や白菜を加える。牛肉やキノコを足すこともある。麺はスープに直接入れて茹でることから、全体にとろみがかった仕上がりになる。家庭料理として作られるほか、市内の専門店で味わうことができる。安東市以外の地域でもアンドングクシを専門とする店がある。

コンジングクス(冷やし麺/건진국수)

コンジングクス(건진국수)は、冷やし麺。直訳すると「引き上げた麺」という意味で、コンジン(건진)が「コンジダ(引き上げる、건지다)」の過去連体形、グクス(=ククス、국수)は麺を意味する。茹でた麺を鍋から引き上げて冷水にさらすことから名前がついたとされる。方言を用いてコンジングクシ(건진국시)とも呼ぶほか、安東式の麺という意味でアンドングクシ(안동국시)、アンドングクス(안동국수)とも総称される。
スープや具は上記の安東市の料理#アンドングクシ(安東式のうどん/안동국시)とほぼ共通するが、麺はやや細めに作ることが多い。家庭料理として作られるほか、市内の専門店で主に夏の季節料理として提供される。
  • 横城式のコンジングクス
江原道横城郡にも同名のコンジングクス(横城式の冷やし混ぜそば/건진국수)という郷土料理がある。安東市のコンジングクスとは異なり、千切りにしたエホバク(韓国カボチャ、애호박)を茹でるか、炒めたのちに辛味ダレで和え、これを具として薄い平打ちの小麦麺に絡めて味わう料理である。少量のダシ汁を注ぎ入れることもある。同じく横城郡の郷土料理である、チャンカルグクス(味噌味のウドン/장칼국수)の専門店で、夏の季節メニューとして提供されることが多い。

トゥルチギクッ(牛肉と野菜の鍋/두루치기국)

トゥルチギクッ(두루치기국)は、キノコと野菜の鍋。一般的にトゥルチギ두루치기)はピリ辛に味付けをした豚肉の炒め物、または鍋料理を指すことが多いが、安東市のトゥルチギクッは牛肉と野菜、キノコなどを澄んだスープの鍋料理に仕立てて作る。家庭料理であり、限られた情報しか見つけることができないが、一例として2010年に農村振興庁が発行した『伝統郷土飲食用語辞典』には「塩漬けにして水気を切った千切りの大根と、生カンピョウ、豆モヤシ、牛肉、ヒラタケ、シイタケをそれぞれゴマ油で和えておき、熱湯に入れて溶き卵を加え、塩で味を調えてさらに煮込み、イワタケと糸唐辛子をあしらいとして載せる。卵黄と卵白を別にして薄焼き卵を焼いて載せることもある」[3]と紹介されている。

ポボリチャルトク(アズキ餅/버버리찰떡)

ポボリチャルトク(버버리찰떡)は、アズキ餅。蒸したもち米を搗いて伸ばし、長方形に切ったものにアズキ餡をたっぷり載せた餅を指す。アズキ餡のかわりに、きな粉や白ゴマ、黒ゴマをまぶしたものもある。沃野洞(オギャドン、옥야동)に位置する料理名と同じ「ポボリチャルトク(버버리찰떡)」が専門店として知られる。
同店のウェブサイトでは、1930年代に安興洞(アヌンドン、안흥동)で餅の販売をしていたキム・ノミ(김노미)氏がポボリチャルトクの元祖であり、もともとは平安北道新義州市の人たちが好んで食べていたパットク(アズキ餅、팥떡)が伝わったのではないかと推測している[4]。その後、ポボリチャルトクはキム・ノミ氏から孫のチェ・ヨンス(천영수)氏や、キム・ドンスン(김동순)氏、ミン・ジュキ(민죽희)氏らに引き継がれてきたが、2001年になって製造する人がいなくなった。これを残念に思った現代表のシン・ヒョンソ(신형서)氏が、キム・ドンスン氏を訪ねて製造法を習い、2004年11月に店舗を復活させて現在に至る[5][6]
  • 語源
ポボリチャルトク(버버리찰떡)のポボリ(버버리)は、「벙어리(唖者、音声で言葉を話すことができない人)」の方言を指し、あまりに大きく食べごたえがあることから、口に入れるとしばらく話せなくなることから名前がついたとされる。ただし、どちらの表現も単独では差別語に当たることには留意をしたい(放送などでは「언어장애인(言語障碍者)」が用いられる)。
  • ファッションブランドとの関係
ポボリ(버버리)は本来の語源とは無関係に、イギリスのファッションブランド「バーバリー(BURBERRY、버버리)」と表記が共通する。そのため「バーバリー」から名前を拝借したのかと誤解する人がいたり、ときに「ポボリ(バーバリー)を買ってきた」などの会話から混乱が生じる場合があったりもする。また、2013年に新商品としてポボリタンパッパン(ポボリあんパン/버버리단팥빵)を発売した際、商標登録を申請したところ、「バーバリー」との共通性から当初審査が下りなかったとの事例もある[7]。その後、特許審判院への提訴を行い、勝訴したことから商標としての使用が可能になった。

ベーカリーとパン

マンモス製菓のクリームチーズパン
マンモス製菓
マンモス製菓(マンモスジェグァ、맘모스제과)は、南部洞(ナムブドン、남부동)に位置する1974年創業のベーカリー。全国的に有名な地方ベーカリーとして、全羅北道群山市の「李盛堂(イソンダン、이성당)」や、大田市の「聖心堂(ソンシムダン、성심당)」などと並んで、韓国3大、あるいは5大ベーカリーの一角に数えられることも多い。クリームチーズをたっぷりと入れたもっちり食感のクリームチーズパン(크림치즈빵)が看板商品として知られる。

代表的な特産品

安東チャムマボリパン

安東市の特産品として、安東韓牛(안동한우)、安東カンコドゥンオ(안동간고등어)、安東焼酎(안동소주)のほか、リンゴ(사과)、ブドウ(포도)、マクワウリ(참외)といった果物類や、韓国では韓方材としての利用が多い山芋(참마)などがあげられる。食品とは別に、韓紙や、麻を原料とする安東布(안동포)、仮面劇に用いられる仮面のハフェタル(河回面、하회탈)なども有名である。

安東山薬(山芋)

安東山薬(アンドンサニャク、안동산약)は、山芋。山薬(サニャク、산약)は山芋の生薬名であり、韓国では薬用のイメージが強いが、主産地の安東市では食用としての利用も盛んである。一般に山芋のことはマ()と呼ぶため、安東マ(안동마)、安東チャムマ(안동참마)の名前で呼ばれることも多い。チャムマ(참마)は本来ヤマノイモ(自然薯)を指す品種名であるが、ナガイモの俗称としても用いられ、安東市ではナガイモ(장마)やイチョウイモ(산마)を指すことが多い。
皮をむいてスライスしたものを焼いたり、またはチョン(チヂミ/전)にして味わうほか、すりおろしたものを飲料として利用することもある。日本のようにすりおろしてごはんにかけるような利用法はほぼ見ない。市内の各地では郷土銘菓のチャムマボリパン(山芋饅頭、참마보리빵)が販売されており、すりおろした山芋を生地に加えることでもっちりとした食感を演出している。同様に麺の生地に練り込んだ、マグクス(山芋麺のうどん、마국수)がある。

代表的な酒類・飲料

安東焼酎(民俗酒安東焼酎)

アンドンソジュ(安東焼酎/안동소주)

アンドンソジュ(안동소주)は、安東焼酎(「ソジュ(焼酎/소주)」の項目も参照)。安東市で生産される伝統製法の米焼酎を指し、2023年4月に発足した安東焼酎組合には9ヶ所の醸造所が加盟している[8]。このうち、水上洞(スサンドン、수상동)に位置する「民俗酒安東焼酎(민속주 안동소주)」と、豊山邑槐亭里(プンサヌプ クェジョンニ、풍산읍 괴정리)に位置する「名人安東焼酎(명인 안동소주)」の2ヶ所が特に有名な蔵元として知られている。安東焼酎は、1987年5月に慶尚北道の無形文化財第12号に指定された。
  • 歴史
韓国では13世紀に元の侵攻を受けた際に、焼酎の製法が一緒に伝わったとされる。歴史書の『高麗史』には、高麗時代後期の武将で慶尚道元帥を務めた金縝(キム・ジン、김진)が、昼夜を分かたず焼酎(焼酒)を飲んで放蕩にふけったことから「焼酒徒(ソジュド、소주도)」と呼ばれたことが記録に残っている。一連の記録に安東市と限定する情報はないが、慶尚道地域の出来事として安東焼酎の歴史に関連付けて語られることもある[9]
朝鮮時代は家庭での酒造りが一般的であり、両班の家系で製造法が継承されてきたが、1909年に朝鮮総督府が酒税令を公布したことで難しくなった。代わって醸造を主導したのが、1922年に権台淵(クォン・テヨン、권태연)氏が創業した「安東酒造株式会社」で[10]、家庭用から商業用へと転換したことから知名度の大幅な拡大に至った。1931年に刊行された『慶北沿線発展誌』には、「設立當時の造石數は壹百石に過ぎなかったが、逐年增加して現時は一千石に達し之れが販路は慶北各郡は勿論慶南、忠北、京城方面に及び品質の優良は其の比を見ず名聲嘖々たるもので至る處の品評會に於て常に表彰されてゐる」[11]と紹介されている。

アンドンシッケ(安東式の甘酒/안동식혜)

アンドンシッケ
アンドンシッケ(안동식혜)は、安東式の甘酒(「シッケ(甘酒/식혜)」の項目も参照)。ごはんに麦芽粉を溶いた水の上澄みを加え、炊飯器などで発酵させてシッケを作り、細かく刻んだ大根とおろしショウガ、粉唐辛子を加えて仕上げる。一般的なシッケが甘い清涼飲料であるのに対し、アンドンシッケは甘さの中にもピリッと刺激のある味わいになる。

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

  • カチクモンチプ(까치구멍집)★
安東民俗村近くにあるホッチェサバプ(祭祀風定食/헛제사밥)を中心とする郷土料理店。カンコドゥンオ(塩サバ焼き/간고등어)アンドンシッケ(安東式の甘酒/안동식혜)なども単品料理として提供する。宮中料理を加えたコースメニューもある。
住所:慶尚北道安東市石洲路203(象牙洞513-1)
住所:경상북도 안동시 석주로 203(상아동 513-1)
電話:054-821-1056
最終訪問日:2015年10月4日
  • シゴルジャントクッパプ(시골장터국밥)★
韓牛を使用したアンドンクッパプ(安東式のスープごはん/안동국밥)の専門店。ソクセプルコギ(牛肉の網焼き/석쇠불고기)などの料理も提供する。
住所:慶尚北道安東市ウムシゲキル27(南部洞148-6)
住所:경상북도 안동시 음식의길 27(남부동 148-6)
電話:054-859-9898
最終訪問日:2014年5月5日
  • 安端態(안단태)
安東民俗村内にある伝統家屋のカフェ。安東市の名産品である山芋のスムージーをはじめ、伝統茶、花茶、軽い食事メニューも揃える。
住所:慶尚北道安東市民俗村キル26(城谷洞815-1)
住所:경상북도 안동시 민속촌길 26(성곡동 815-1)
電話:054-823-7456
最終訪問日:2016年9月28日
  • 安東チャムマボリパン(안동참마보리빵)
特産品の山芋を使ったチャムマボリパン(山芋饅頭、참마보리빵)の専門売場。サイズの小さなどら焼き風で、甘さ控えめのあんこと、生地のもっちりとした粘り気を特徴とする。
住所:慶尚北道安東市慶東路671(南部洞237-3)
住所:경상북도 안동시 경동로 671(남부동 237-3)
電話:054-857-4466
最終訪問日:2014年11月9日
  • 安東ヨンガチムタク(안동영가찜닭)
安東の旧市場近くに位置するチムタク(鶏と野菜の醤油煮/찜닭)の専門店。チムタクのみならず、チキン(韓国チキン/치킨)や、チョリムダク(鶏の醤油煮、쪼림닭)、マヌルダク(ニンニクチキン、마늘닭)など幅広い鶏料理を用意する。
住所:慶尚北道安東市繁栄キル19(西部洞182-6)
住所:경상북도 안동시 번영길 19(서부동 182-6)
電話:054-854-3378
最終訪問日:2016年10月1日
  • イジョン(이정)
ポソップルコギ(キノコと牛肉の鍋、버섯불고기)、ポソッチョンゴル(キノコ鍋/버섯전골)、ピョゴポソッチョン(シイタケのチヂミ、표고버섯전)などキノコ料理を専門とする店。郷土料理のカンコドゥンオ(塩サバ焼き/간고등어)も提供。
住所:慶尚北道安東市石洲路191(象牙洞520)
住所:경상북도 안동시 석주로 191(상아동 520)
電話:054-852-2478
最終訪問日:2016年6月21日

エピソード

韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2003年1月に初めて安東市を訪れた。河回村や安東民俗博物館を訪ね、郷土料理であるホッチェサバプ(祭祀風定食/헛제사밥)カンコドゥンオ(塩サバ焼き/간고등어)アンドンシッケ(安東式の甘酒/안동식혜)を味わうという定番の観光を満喫した。中でもホッチェサバプの醤油で味わうピビムパプ(ビビンバ/비빔밥)にいたく感動し、それを後に自身の執筆するメールマガジン『コリアうめーや!!第48号』にて、これをモチーフとした拙い昔話風の物語を書いたりもした[12]

脚注

  1. 행정동별 주민등록 인구 및 세대현황 、行政安全部ウェブサイト、2025年2月11日閲覧
  2. 행정구역별・지목별 국토이용현황_시군구 、KOSIS(国家統計ポータル)、2023年1月26日閲覧
  3. 농촌진흥청장 김재수, 2010, 『전통향토음식용어사전』, 농촌진흥청 국립농업과학원 농식품자원부 전통한식과, P124
  4. 소개 및 유래 、ポボリチャルトク公式ウェブサイト、2025年2月6日閲覧
  5. 안동 '버버리 찰떡' 다시 등장 、毎日新聞(2004年12月3日記事)、2025年2月6日閲覧
  6. 되돌아온 안동 '버버리 찰떡' 、朝鮮日報(2004年12月6日記事)、2025年2月6日閲覧
  7. 英 패션 '버버리'도 꼼짝 못한 버버리단팥빵 、毎日新聞(2015年1月27日記事)、2025年2月6日閲覧
  8. 안동소주 세계화 1년, BTS같은 글로벌 명주를 빚는다 、慶尚北道ウェブサイト(2024年4月23日付報道資料)、2025年2月8日閲覧
  9. 〔무형문화유산 12〕안동 소주 、慶尚北道ウェブサイト、2025年2月8日閲覧
  10. 『朝鮮銀行月報 第13巻 第9号』, 朝鮮銀行, 1922年(P65) 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号35/92)、2025年2月8日閲覧
  11. 『慶北沿線発展誌』, 逵捨蔵, 1931年(P293) 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号168/227)、2025年2月8日閲覧
  12. コリアうめーや!!第48号 安東むかしむかし物語その1 、韓食生活、2018年8月12日閲覧

外部リンク

関連サイト

安東観光

制作者関連サイト

関連項目