「チキン(韓国チキン/치킨)」の版間の差分

 
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*定番の副菜
 
*定番の副菜
:チキンを食べる際の副菜として、チキンム(チキン大根、[[치킨무]])と呼ばれる角切り大根の酢漬けが定番として添えられる。デリバリーの場合はパックに入ったチキンムが一緒についてくる。飲食店ではオーロラソースをかけた千切りキャベツも定番である。
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:チキンを食べる際の副菜として、チキンム(チキン大根、[[치킨무]])と呼ばれる角切り大根の酢漬けが定番として添えられる。デリバリーの場合はパックに入ったチキンムが一緒についてくる。千切りキャベツにオーロラソースをかけたヤンベチュセルロドゥ(キャベツサラダ、[[양배추샐러드]])も定番である。
  
 
== 歴史 ==
 
== 歴史 ==
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[[ファイル:24071039.jpg|thumb|300px|ソウル市の明洞にある「栄養センター本店(영양센타본점)」。店頭のオーブンで丸鶏を回転させながら焼いている]]
 
チキンの歴史は諸説あり、どの時点を始まりとするかは語り手によって見解が大きく異なる。丸鶏料理の原形として[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)]]などから紐解く場合があるほか、1459年頃(?)に書かれた料理書『山家要録([[산가요록]])』に掲載される「炮鶏(ポゲ、[[포계]])」<ref>[https://terms.naver.com/entry.naver?docId=5680898&categoryId=62882&cid=62882 포계 · 닭고기구이] 、NAVER知識百科(다시 보고 배우는 산가요록)、2024年7月3日閲覧</ref>という鶏肉を油で焼いた料理をルーツとする説や、朝鮮戦争(1950~53年)後に米軍基地などを通じてフライドチキンが入ってきたことを直接的な起源と考える説などがある。
 
チキンの歴史は諸説あり、どの時点を始まりとするかは語り手によって見解が大きく異なる。丸鶏料理の原形として[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)]]などから紐解く場合があるほか、1459年頃(?)に書かれた料理書『山家要録([[산가요록]])』に掲載される「炮鶏(ポゲ、[[포계]])」<ref>[https://terms.naver.com/entry.naver?docId=5680898&categoryId=62882&cid=62882 포계 · 닭고기구이] 、NAVER知識百科(다시 보고 배우는 산가요록)、2024年7月3日閲覧</ref>という鶏肉を油で焼いた料理をルーツとする説や、朝鮮戦争(1950~53年)後に米軍基地などを通じてフライドチキンが入ってきたことを直接的な起源と考える説などがある。
  
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;『山家要録』(1459年頃?)の記述
 
;『山家要録』(1459年頃?)の記述
 
:全循義(전순의)によって1459年頃(?)に書かれた料理書の『山家要録([[산가요록]])』には、「炮鶏(ポゲ、[[포계]])」という鶏肉を油で焼いた料理の調理法が紹介されている。調理法は以下の通りである。
 
:全循義(전순의)によって1459年頃(?)に書かれた料理書の『山家要録([[산가요록]])』には、「炮鶏(ポゲ、[[포계]])」という鶏肉を油で焼いた料理の調理法が紹介されている。調理法は以下の通りである。
「肉付きのよい鶏1羽をぶつ切りにして24~25片にする。まず鍋に油を引いて熱したのち、鶏肉を入れて手早くひっくり返して炒める。醤油とゴマ油を小麦粉に混ぜてたれを作り、酢とともに提供する」(原文1)
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:「肉付きのよい鶏1羽をぶつ切りにして24~25片にする。まず鍋に油を引いて熱したのち、鶏肉を入れて手早くひっくり返して炒める。醤油とゴマ油を小麦粉に混ぜてたれを作り、酢とともに提供する」(原文1)
  
【原文1】
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:【原文1】
肥鷄一隻 切作二十四五介 先於鍋內煉油 卽下肉 促手飜之 淸醬眞油 和眞末 作汁 和醋供之
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:肥鷄一隻 切作二十四五介 先於鍋內煉油 卽下肉 促手飜之 淸醬眞油 和眞末 作汁 和醋供之
  
 
=== 1950年代 ===
 
=== 1950年代 ===
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*[[トンダク(丸鶏揚げ/통닭)#ヌルンジトンダク(おこげチキン/누룽지통닭)|ヌルンジトンダク(おこげチキン/누룽지통닭)]]
 
*[[トンダク(丸鶏揚げ/통닭)#ヌルンジトンダク(おこげチキン/누룽지통닭)|ヌルンジトンダク(おこげチキン/누룽지통닭)]]
 
*[[トンダク(丸鶏揚げ/통닭)#マヌルトンダク(ニンニクチキン/마늘통닭)|マヌルトンダク(ニンニクチキン/마늘통닭)]]
 
*[[トンダク(丸鶏揚げ/통닭)#マヌルトンダク(ニンニクチキン/마늘통닭)|マヌルトンダク(ニンニクチキン/마늘통닭)]]
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*[[トンダク(丸鶏揚げ/통닭)#ワンガルビトンダク(焼肉味の丸鶏揚げ/왕갈비통닭)|ワンガルビトンダク(焼肉味の丸鶏揚げ/왕갈비통닭)]]
 
*[[タッカンジョン(鶏の蜜揚げ/닭강정)]]
 
*[[タッカンジョン(鶏の蜜揚げ/닭강정)]]
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ファイル:23010824.JPG|フライドチキンと[[ヤンニョムチキン(辛口のフライドチキン/양념치킨)|ヤンニョムチキン]]
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ファイル:24052613.JPG|[[トンダク(丸鶏揚げ/통닭)#マヌルトンダク(ニンニクチキン/마늘통닭)|マヌルトンダク]]
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ファイル:25032005.JPG|[[トンダク(丸鶏揚げ/통닭)#ワンガルビトンダク(焼肉味の丸鶏揚げ/왕갈비통닭)|ワンガルビトンダク]]
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ファイル:22122809.JPG|[[タッカンジョン(鶏の蜜揚げ/닭강정)|タッカンジョン]]
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== 地域 ==
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[[ファイル:24010305.jpg|300px|thumb|[[京畿道の料理|京畿道]][[水原市の料理|水原市]]の水原トンダク通り]]
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*仁川市中区新浦洞
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:[[仁川市の料理|仁川市]]の中区新浦洞(チュング シンポドン、중구 신포동)に位置する新浦国際市場(シンポクッチェシジャン、신포국제시장)はタッカンジョンが名物で、市場の入口付近に専門店が集まっている。
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*京畿道水原市
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:[[京畿道の料理|京畿道]][[水原市の料理|水原市]]の八達路1街(パルタルロイルガ、팔달로1가)、南水洞(ナムスドン、남수동)には[[トンダク(丸鶏揚げ/통닭)]]の専門店が集まっており、一帯を「水原トンダク通り(수원통닭거리)」と呼ぶ。多くの店ではトンダクのほか、フライドチキンや[[ヤンニョムチキン(辛口のフライドチキン/양념치킨)]]なども一緒に提供し、2019年以降は映画『エクストリーム・ジョブ(극한직업)』から派生したワンガルビトンダク(焼肉味の丸鶏揚げ、[[왕갈비통닭]])が地域の新名物として人気を集める。
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*江原道束草市中央洞
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:[[江原道の料理|江原道]][[束草市の料理|束草市]]の中央洞(チュンアンドン、중앙동)に位置する束草観光水産市場(ソクチョ クァングァン スサンシジャン、속초관광수산시장)には「タッカンジョン通り(닭강정골목)」があり、名物として人気を集めている。イートインの客席を設けているところもあるが、本来はテイクアウトが主流であり、購入したタッカンジョンの箱を手にした観光客も多く見かける。店によってツルニンジン([[더덕]])や、エゴマの葉([[더덕]])などを加えた個性派のアレンジもある。
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*忠清北道丹陽郡
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:[[忠清北道の料理|忠清北道]][[丹陽郡の料理|丹陽郡]]はニンニクの産地として有名で、代表的な集散地の丹陽九景市場(タニャンクギョンシジャン、단양구경시장)では、マヌルトンダクなどのニンニク料理が名物となっている。
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*大邱市
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:[[大邱市の料理|大邱市]]では、2013年よりチキンと[[メクチュ(ビール/맥주)|ビール]]の祭典「大邱チメクフェスティバル(대구치맥페스티벌)」を開催している。[[大邱市の料理|大邱市]]は盆地地形のため夏は非常に暑く、冷えた[[メクチュ(ビール/맥주)|ビール]]が美味しいことに加え、韓国内で人気を集める多くのチキン専門フランチャイズが[[大邱市の料理|大邱市]]から誕生していることにちなむ。主なブランドとしては、1978年に東区孝睦洞(トング ヒョモクトン、동구 효목동)からスタートした「メキシカンチキン(맥시칸치킨)」<ref>[http://www.mexican.co.kr/2016/inner.php?sMenu=G3000 연혁] 、メキシカンチキンウェブサイト、2017年8月11日閲覧</ref>、1978年に寿城区(スソング、수성구)で創業しカンジャンチキン(醤油味のチキン、[[간장치킨]])の元祖とされている「ホデグ大邱トンダク(허대구 대구통닭)」<ref>[http://www.dgchicken.com/sub01/sub03.php 연혁] 、ホデグ大邱トンダクウェブサイト、2017年8月15日閲覧</ref>、1985年に[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[安東市の料理|安東市]]で創業し、1989年に[[大邱市の料理|大邱市]]でフランチャイズ事業を開始した「メキシカーナチキン(맥시카나치킨)」<ref>[http://month.foodbank.co.kr/section/section_view.php?secIndex=4314&page=4&section=004&back=S&section_list=people.php (주)멕시카나 최광은 대표이사 회장] 、月刊食堂、2017年8月11日閲覧</ref><ref>[http://news.tf.co.kr/read/economy/1023828.htm '처갓집, 멕시카나'···원조 치킨집들 '다 어디 갔어?'] 、BizFACT、2017年8月11日閲覧</ref>、1999年に達西区(タルソグ、달서구)でオープンした「ホシギトゥマリチキン(호식이두마리치킨)」<ref>[https://kbmaeil.com/news/articleView.html?idxno=239743 대구 토종 브랜드 `호식이 두마리` 치킨] 、慶北毎日、2017年8月11日閲覧</ref>、2004年に西区飛山洞でオープンした「タンタンチキン(땅땅치킨)」などがあげられる<ref>[http://www.codd.co.kr/site/bbs/content.php?co_id=2_1 회사소개] 、タンタンチキンウェブサイト、2017年8月11日閲覧</ref>。
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*慶尚北道安東市
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:[[慶尚北道の料理|慶尚北道]][[安東市の料理|安東市]]の旧市場(クシジャン、구시장)では、1970年代後半にマヌルトンダクが人気を集めたあと、1980年代後半に入れ替わる形で[[チムタク(鶏と野菜の醤油煮/찜닭)]]が登場して郷土料理になったとの逸話がある<ref>[https://folkency.nfm.go.kr/topic/%EC%95%88%EB%8F%99%EC%B0%9C%EB%8B%AD 안동찜닭] 、韓国民俗大百科事典、2024年7月7日閲覧</ref>。
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*全羅南道順天市
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:[[全羅南道の料理|全羅南道]][[順天市の料理|順天市]]では、1984年創業の「プンミトンダク(풍미통닭)」がマヌルトンダクの専門店として有名で、地元の名物として親しまれている。
  
 
== 脚注 ==
 
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*[[ヤンニョムチキン(辛口のフライドチキン/양념치킨)]]
 
*[[ヤンニョムチキン(辛口のフライドチキン/양념치킨)]]
 
*[[オムライス(オムライス/오므라이스)]]
 
*[[オムライス(オムライス/오므라이스)]]
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*[[チムタク(鶏と野菜の醤油煮/찜닭)]]
 
*[[トンダク(丸鶏揚げ/통닭)]]
 
*[[トンダク(丸鶏揚げ/통닭)]]
 
*[[ソウル市の料理]]
 
*[[ソウル市の料理]]
 
*[[仁川市の料理]]
 
*[[仁川市の料理]]
 
*[[京畿道の料理]]
 
*[[京畿道の料理]]
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*[[水原市の料理]]
 
*[[議政府市の料理]]
 
*[[議政府市の料理]]
 
*[[平沢市の料理]]
 
*[[平沢市の料理]]
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*[[江原道の料理]]
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*[[束草市の料理]]
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*[[忠清北道の料理]]
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*[[丹陽郡の料理]]
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*[[大邱市の料理]]で
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*[[慶尚北道の料理]]
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*[[安東市の料理]]
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*[[全羅南道の料理]]
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2025年4月25日 (金) 23:23時点における最新版

この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。

チキン치킨)は、韓国チキン。

チキン

概要

チキン(치킨)は本来鶏肉を意味するが、フライドチキン(후라이드치킨프라이드치킨후라이드)、オーブン焼きチキン(오븐치킨)、トンダク(丸鶏揚げ/통닭)ヤンニョムチキン(辛口のフライドチキン/양념치킨)など、韓国におけるフライドチキンとその派生料理を含めた総称としても用いられる。丸鶏、またはぶつ切りの鶏肉に衣をつけて揚げたり、丸鶏をローストしたりして作る。韓国には大手フランチャイズのチキン専門店が多数あるほか、小規模な専門店や、市場でのテイクアウト店などが数多くある。ホプ(호프)と呼ばれるビール専門の居酒屋で提供されることも多い。韓国では国民食と呼ばれるほどに人気が高く、ビールとの組み合わせで宴席の主菜になるほか、日常の食事、間食、夜食などさまざまな場面で食べられる。

  • チメク
チキンとビールの組み合わせは、両者の頭文字を取ってチメク(치맥)と呼ばれる。
  • 定番の副菜
チキンを食べる際の副菜として、チキンム(チキン大根、치킨무)と呼ばれる角切り大根の酢漬けが定番として添えられる。デリバリーの場合はパックに入ったチキンムが一緒についてくる。千切りキャベツにオーロラソースをかけたヤンベチュセルロドゥ(キャベツサラダ、양배추샐러드)も定番である。

歴史

 
ソウル市の明洞にある「栄養センター本店(영양센타본점)」。店頭のオーブンで丸鶏を回転させながら焼いている

チキンの歴史は諸説あり、どの時点を始まりとするかは語り手によって見解が大きく異なる。丸鶏料理の原形としてタッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)などから紐解く場合があるほか、1459年頃(?)に書かれた料理書『山家要録(산가요록)』に掲載される「炮鶏(ポゲ、포계)」[1]という鶏肉を油で焼いた料理をルーツとする説や、朝鮮戦争(1950~53年)後に米軍基地などを通じてフライドチキンが入ってきたことを直接的な起源と考える説などがある。

文献上の記録

『山家要録』(1459年頃?)の記述
全循義(전순의)によって1459年頃(?)に書かれた料理書の『山家要録(산가요록)』には、「炮鶏(ポゲ、포계)」という鶏肉を油で焼いた料理の調理法が紹介されている。調理法は以下の通りである。
「肉付きのよい鶏1羽をぶつ切りにして24~25片にする。まず鍋に油を引いて熱したのち、鶏肉を入れて手早くひっくり返して炒める。醤油とゴマ油を小麦粉に混ぜてたれを作り、酢とともに提供する」(原文1)
【原文1】
肥鷄一隻 切作二十四五介 先於鍋內煉油 卽下肉 促手飜之 淸醬眞油 和眞末 作汁 和醋供之

1950年代

1953年7月27日に朝鮮戦争(1950~53年)の休戦協定が結ばれると、同10月1日には韓米相互防衛条約により韓国内で米軍が駐留するようになった。これをきっかけとして米軍基地の周辺では軍関係者向けの飲食店が増え、チキンをはじめするアメリカの食文化が伝わるきっかけとなった。基地から流出した食材を応用した料理も発達し、京畿道議政府市平沢市ではプデチゲ(ソーセージ鍋/부대찌개)が名物料理となった。

1960年代

1960年にソウル市の明洞(ミョンドン、명동)で創業した「栄養センター本店(영양센타 본점)」は、当時珍しかった電気オーブンを店頭に設置し、丸鶏を回転させながら焼くパフォーマンスで話題を集めた。同店は韓国におけるチキンの草分け店とされ、2009年8月に同じ明洞内で移転をしたものの、店頭の電気オーブンで焼くスタイルは現在も継続している。電気オーブンで焼いたチキンは、チョンギグイトンダク(丸鶏のオーブン焼き/전기구이통닭)と呼ばれる。
1960年代後半になると、養鶏や食用油の生産が盛んになり、丸鶏に塩、コショウなどをすり込み、小麦粉(밀가루)、または天ぷら粉(튀김가루)などの薄衣をつけてそのまま揚げたトンダク(丸鶏揚げ/통닭)が市場などで販売されるようになった。トンダクは広義のチキンに含まれる料理として現在も人気が高く、フライドチキンやヤンニョムチキン(辛口のフライドチキン/양념치킨)よりも歴史が古いことから、イェンナルトンダク(昔風の丸鶏揚げ、옛날통닭)とも呼ばれる。

1970年代

1977年にソウル市の中区忠武路1街(チュング チュンムロイルガ、중구 충무로1가)にある「新世界百貨店本店(신세계백화점 본점)」で「リムスチキン(림스치킨)」が創業した。同店は韓国初の本格的なチキン専門フランチャイズとなった。

1980年代

1960~80年代にかけての高度経済成長は「漢江の奇跡」と呼ばれ、1980年に入ると韓国では世界的なスポーツイベントを誘致するに至った。1986年に仁川市でアジア競技大会、1988年にソウルオリンピックが開催されると、韓国内では海外の食文化へも関心が高まり、この時期を前後してトンカス(トンカツ/돈가스)や、オムライス(オムライス/오므라이스)などの軽洋食(경양식)が流行ったり、海外からファストフード店が進出してきたりした。1984年4月25日にはソウル市の鍾路区鍾路2街(チョンノグ チョンノイガ、종로구 종로2가)で「KFC(ケンタッキーフライドチキン)」の1号店がオープンした。

1990年代

1990年代後半の韓国はアジア通貨危機により経済的に苦しんだ時期で、会社を解雇された人たちが生活の糧を求めてチキンの専門店を始める例が増えた。

種類

代表的なものに以下の種類がある。

地域

 
京畿道水原市の水原トンダク通り
  • 仁川市中区新浦洞
仁川市の中区新浦洞(チュング シンポドン、중구 신포동)に位置する新浦国際市場(シンポクッチェシジャン、신포국제시장)はタッカンジョンが名物で、市場の入口付近に専門店が集まっている。
  • 京畿道水原市
京畿道水原市の八達路1街(パルタルロイルガ、팔달로1가)、南水洞(ナムスドン、남수동)にはトンダク(丸鶏揚げ/통닭)の専門店が集まっており、一帯を「水原トンダク通り(수원통닭거리)」と呼ぶ。多くの店ではトンダクのほか、フライドチキンやヤンニョムチキン(辛口のフライドチキン/양념치킨)なども一緒に提供し、2019年以降は映画『エクストリーム・ジョブ(극한직업)』から派生したワンガルビトンダク(焼肉味の丸鶏揚げ、왕갈비통닭)が地域の新名物として人気を集める。
  • 江原道束草市中央洞
江原道束草市の中央洞(チュンアンドン、중앙동)に位置する束草観光水産市場(ソクチョ クァングァン スサンシジャン、속초관광수산시장)には「タッカンジョン通り(닭강정골목)」があり、名物として人気を集めている。イートインの客席を設けているところもあるが、本来はテイクアウトが主流であり、購入したタッカンジョンの箱を手にした観光客も多く見かける。店によってツルニンジン(더덕)や、エゴマの葉(더덕)などを加えた個性派のアレンジもある。
  • 忠清北道丹陽郡
忠清北道丹陽郡はニンニクの産地として有名で、代表的な集散地の丹陽九景市場(タニャンクギョンシジャン、단양구경시장)では、マヌルトンダクなどのニンニク料理が名物となっている。
  • 大邱市
大邱市では、2013年よりチキンとビールの祭典「大邱チメクフェスティバル(대구치맥페스티벌)」を開催している。大邱市は盆地地形のため夏は非常に暑く、冷えたビールが美味しいことに加え、韓国内で人気を集める多くのチキン専門フランチャイズが大邱市から誕生していることにちなむ。主なブランドとしては、1978年に東区孝睦洞(トング ヒョモクトン、동구 효목동)からスタートした「メキシカンチキン(맥시칸치킨)」[2]、1978年に寿城区(スソング、수성구)で創業しカンジャンチキン(醤油味のチキン、간장치킨)の元祖とされている「ホデグ大邱トンダク(허대구 대구통닭)」[3]、1985年に慶尚北道安東市で創業し、1989年に大邱市でフランチャイズ事業を開始した「メキシカーナチキン(맥시카나치킨)」[4][5]、1999年に達西区(タルソグ、달서구)でオープンした「ホシギトゥマリチキン(호식이두마리치킨)」[6]、2004年に西区飛山洞でオープンした「タンタンチキン(땅땅치킨)」などがあげられる[7]
  • 慶尚北道安東市
慶尚北道安東市の旧市場(クシジャン、구시장)では、1970年代後半にマヌルトンダクが人気を集めたあと、1980年代後半に入れ替わる形でチムタク(鶏と野菜の醤油煮/찜닭)が登場して郷土料理になったとの逸話がある[8]
  • 全羅南道順天市
全羅南道順天市では、1984年創業の「プンミトンダク(풍미통닭)」がマヌルトンダクの専門店として有名で、地元の名物として親しまれている。

脚注

  1. 포계 · 닭고기구이 、NAVER知識百科(다시 보고 배우는 산가요록)、2024年7月3日閲覧
  2. 연혁 、メキシカンチキンウェブサイト、2017年8月11日閲覧
  3. 연혁 、ホデグ大邱トンダクウェブサイト、2017年8月15日閲覧
  4. (주)멕시카나 최광은 대표이사 회장 、月刊食堂、2017年8月11日閲覧
  5. '처갓집, 멕시카나'···원조 치킨집들 '다 어디 갔어?' 、BizFACT、2017年8月11日閲覧
  6. 대구 토종 브랜드 `호식이 두마리` 치킨 、慶北毎日、2017年8月11日閲覧
  7. 회사소개 、タンタンチキンウェブサイト、2017年8月11日閲覧
  8. 안동찜닭 、韓国民俗大百科事典、2024年7月7日閲覧

外部リンク

制作者関連サイト

関連項目