星州郡の料理
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星州郡(ソンジュグン、성주군)は慶尚北道に位置する地域。本ページでは星州郡の料理、特産品について解説する。
地域概要
星州郡は慶尚北道の南西部に位置し、北東部は慶尚北道の漆谷郡、西部は広域市の大邱市、南部は慶尚北道の高霊郡、南西部は慶尚南道の居昌郡、西部から北部にかけては慶尚北道の金泉市と接する。人口は4万4640人(2018年14月)[1]。南西部に位置する標高1430mの伽耶山(カヤサン、가야산)は小白山脈の一角を成し、西部から北部、南部にかけては全体的に山の深い地形をしている。東部には洛東江(ナクトンガン、낙동강)が流れ、大邱市との境界となっている。洛東江に注ぐ支流の伊川(イチョン、이천)や白川(ペクチョン、백천)が郡の中央部を流れ、その周囲に広がる平野部が地域の中心地となっている。代表的な観光地としては、世宗大王子胎室(王族の胎盤やへその緒を安置)や、朝鮮時代の集姓村(同族村)であるハンゲ村(ハンゲマウル、한개마을)などがある。また星山里(ソンサルリ、성산리)地区には星山洞古墳群(ソンサンドンコブングン、성산동고분군)があり、伽耶諸国のひとつであった星山伽耶の支配層が埋葬されていると推定される。ソウル市から星州郡までは、ソウル南部ターミナルから星州バス停留所まで高速バスで約3時間10分の距離。隣接する大邱市の大邱西部停留場からは市外バスで約1時間20分の距離である。
食文化の背景
星州市では朝鮮時代に多くの両班(支配階級)が集姓村(同族村)を作った。星州市を発祥地とする本貫は他地域と比較しても群を抜いて多く、星州李氏、星州裵氏、星州都氏、星州(星山)呂氏など28姓氏を数える。その代表が2007年に重要民俗文化財第255号にも指定された月恒面大山里(ウォランミョン テサルリ、월항면 대산리)地区のハンゲマウルである。こうした両班の食文化が現代にも伝えられており、祭祀料理をもとにしたコノムルチム(干物の蒸し煮、건어물찜)はその象徴的な存在だと言える。また、星州は全国的に有名なマクワウリ(참외)の名産地であり、農林畜産食品部が地域の名産品を認証する地理的表示農産物の第10号として星州マクワウリ(성주참외)が登録されている[2]。星州では大半の農家がマクワウリを栽培しており、その生産量は実に全国の7割を超える。そのほか、スイカ、リンゴ、ナシ、完熟トマト、ミニトマト、キュウリなどの農作物も栽培されている。
代表的な料理
祭祀料理をもとにしたコノムルチムや、キジ肉を使った料理が名物である。
コノムルチム(干物の蒸し煮/건어물찜)
- 星州では祭祀膳にコノムル(건어물)と呼ばれる干物類を多く捧げる。これを祭祀後にまとめて醤油で甘辛く煮付けたものをコノムルチムと呼ぶ。チム(찜)は蒸し煮の総称。有名食堂である「カムコル食堂(감골식당)」ではコノムルチムを看板料理のひとつとしており、干しダラ(북어)、アカエイ(가오리)、スルメイカ(오징어)、鶏肉、鶏の玉ひも(排卵前の卵と卵管)、昆布といった食材を煮込んで提供する。
クォンシャブシャブ(キジ肉のシャブシャブ/꿩샤브샤브)
- 星州にはキジ肉料理を出す店が多く、クォンシャブシャブ(キジのシャブシャブ/꿩샤브샤브)や、クォンタン(キジ肉の鍋、꿩탕)クォンマンドゥ(キジ肉餃子、꿩만두)といった料理を味わえる。
代表的な特産品
かつてはスイカの名産地であったが、1980年代に入ってマクワウリ栽培が盛んになった。盆地型で降水量が少なく、日射量が多いことからマクワウリ栽培に向いているとされる。
チャメ(マクワウリ/참외)
- 星州市はかつてスイカの名産地であったが、1980年代に入ってマクワウリ栽培が主流となった。星州市の気候条件などがマクワウリ栽培に向いていたのも要因であるが、シーズンに1度しか収穫できないスイカに比べて、マクワウリは最大で3~4回収穫できるメリットが農家にとっては大きかったとされる(八田靖史の取材記録より、2016年10月26日)。現在では全国に流通する約7割のマクワウリを星州市で生産している[3]。
- 品種
- 現在の韓国で栽培されているマクワウリは大半がクムサラギ(금싸라기)の系統であり、もともとは日本品種の銀泉を改良したものである。星州においてもクムサラギ系統のマクワウリが主流として栽培されている。
- 栽培方法
- 病害虫を防ぐ目的から、カボチャに接ぎ木をして栽培する方法が主流である。もっともはやい2月末の収穫を目指す場合、10~11月に種をまき、接ぎ木をしたうえで12~1月に畑へと植え替える。
- 旬
- 本来は4~6月がいちばんの旬であるが、近年は出荷が早まっており、2月末頃から市場に出回る。9月から10月にはすべての出荷が終わり、貯蔵がきかないこともあって冬場に出回ることはない。
- 輸出
- 星州では日本、シンガポール、香港、マレーシアなどにマクワウリを輸出している。中でも日本への輸出がもっとも多く、2015年は168.4トンに上っている[4]。
- 関連施設
- 玉星里(옥성리)には星州農業技術センターに併設されて「マクワウリ生態学習院(참외생태학습원)」がある。ここではマクワウリの栽培方法や、品種改良の歩み、歴史について学ぶことができる。また、郡内各地にある流通センターには、シーズンになると簡易販売場が設けられ、そこでマクワウリを購入することもできる。
- 利用
- 星州市ではマクワウリを使った加工食品作りも行われている。星山里(ソンサルリ、성산리)地区にある「スミダム(수미담)」では、マクワウリを煮詰めて水飴を作り、それを販売するとともにこれを利用した伝統菓子(한과)の生産も行っている。また、白雲里(백운리)の農家レストラン「ミル(밀)」では、マクワウリの漬物(장아찌)や、マクワウリ入りのピビムパプ(ビビンバ/비빔밥)や蒸しパン(찐빵)などを作るとともに、マクワウリで甘味をつけた酢、水飴、コチュジャンなどを料理の味付けに利用している。
- スミダム(수미담)
- 住所:慶尚北道星州郡大家面星山2キル95-33(星山里1222-4)
- 住所:경상북도 성주군 성주읍 성산2길 95-33(성산리 1222-4)
- 電話:054-931-6464
トゥンギョジャン(大麦の糠味噌/등겨장)
- 大麦の糠を原料に作った促成味噌の一種。シグムジャン(시금장)とも呼ぶ。かつて春窮期に味噌やコチュジャンの代替として即席で作った。主に包み味噌(쌈장)や、混ぜ味噌(비빔장)、チゲ(찌개)用として使われる。
代表的な酒類・飲料
星州郡のマッコリ
- 星州には伽泉醸造場の「星州伽耶山伽泉米生マッコリ(성주 가야산 가천 쌀생막걸리)」や、星州濁酒醸造場の「龍巌マッコリ(용암막걸리)」がある。
飲食店情報
以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。
- カムコル食堂(감골식당)
- 住所:慶尚北道星州郡星州邑京山キル9-3(京山里 613-1)
- 住所:경상북도 성주군 성주읍 경산길 9-3(경산리 613-1)
- 電話:054-933-2416
- 料理:コノムルチム
- ミル(밀)
- 住所:慶尚北道星州郡修倫面徳雲路1566(白雲里1038)
- 住所:경상북도 성주군 수륜면 덕운로 1566(백운리 1038)
- 電話:054-931-2660
- 料理:韓定食、ビビンバ
エピソード
- 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2016年10月に初めて星州郡を訪れた。慶尚北道広報大使が取材、執筆する観光冊子『GB-Story Vol.3』にはこの時の取材をもとに、チャメやコノムルチムを中心とした話が掲載されている。
脚注
外部リンク
- 関連サイト
- 制作者関連サイト
- 韓食生活(韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
- 八田靖史プロフィール(八田靖史のプロフィール)
- 韓国語食の大辞典アプリ版(八田靖史制作の韓国料理専門辞典)