パジョン(ネギのチヂミ/파전)
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パジョン(파전)は、ネギのチヂミ。
概要
パ(파)はネギ、ジョン(전)は漢字では「煎」と書いて、野菜、魚介、肉などに、小麦粉や溶き卵の衣をつけて鉄板で焼いたものを表す(「チョン(チヂミ/전)」の項目も参照)。ネギは葉ネギを使用し、小麦粉を溶いた生地とともにフライパンなどで焼いて作る。具には葉ネギとともに、アサリ、牡蠣、エビ、イカなどの魚介類や、豚肉なども用いる。家庭料理として作られるほか、居酒屋、民俗酒場では定番のメニューであり、特にマッコリ(韓国式の濁酒/막걸리)との相性がよいとされる。具に魚介を多く用いたパジョンは、ヘムルパジョン(海鮮ネギチヂミ、해물파전)と呼ばれる。また、釜山市の東莱(トンネ、동래)地区は古くから葉ネギの産地であり、地域名を冠した東莱パジョン(동래파전)が郷土料理として知られる。
種類
トンネパジョン(東莱式のネギ焼き/동래파전)
- トンネパジョンは東莱地区に伝わるネギのチヂミ。トンネは東莱という地名、パがネギ、ジョンがチヂミを意味する。朝鮮時代より東莱地区は葉ネギ(쪽파)の産地として知られ、東莱区福泉洞(トンネグ ポクチョンドン、동래구 복천동)に位置する東莱市場(トンネシジャン、동래시장)での扱いも多かった。市場内にはパジョンを作って販売する店が集まり、これが広まって地域の名物としての名声を得るに至った。トンネパジョンの特徴としては、生地に米粉やもち粉を用いること、魚介類をふんだんに入れること、蒸し焼きにして全体をとろっと柔らかな食感に仕上げること、チョコチュジャン(唐辛子酢味噌、초고추장)をつけて食べること、などがあげられる。葉ネギの旬は春であり、かつては旧暦の3月3日(サムジンナル)に食べる習慣もあった。
- 「東莱ハルメパジョン」の創業
- トンネパジョンの老舗として東莱区福泉洞の「東莱ハルメパジョン(동래할매파전)」がある。創業は1940年とされるが、1930年代から東莱市場にて初代のカン・メヒ(강매희)さんが露店を営んでいたとされる。店を構えたのは1950年代であり、その当時は「第一食堂(제일식당)」という名前であった。1970年代に現在の「東莱ハルメパジョン」に店名を変更。時代とともに嫁から嫁へと代が受け継がれ、2代目の李允善(이윤선)さん、3代目の金玉子(김옥자)さんに続いて、現在は4代目の金貞姫(김정희)さんが店を切り盛りしている。
- 「東莱ハルメパジョン」における調理手順
- 「東莱ハルメパジョン」では店内に調理スペースを置き、一連の流れを見ることができるようになっている。調理の手順は以下のようになる(八田靖史の取材記録より、2017年8月25日)。
- 鉄板に油をしき、葉ネギを縦方向に載せる。
- 葉ネギの上に具を載せる。具は季節ごとに多少異なり、アサリ、ハマグリ、タイラギ、エビ、テナガダコ、牛肉のほか、冬季は牡蠣、ムール貝も加える。
- 2の上に葉ネギをさらに載せる。このとき最初に敷いた葉ネギとは、葉先と根を互い違いにする。
- 生地を上から流しかける。生地はごくゆるめであり、米粉、もち粉、ダシ汁、ジャン(醤、장)などが入る。この生地を店ではマックンムル(맛국물)と呼んでいる。
- へらで全体をひっくり返し、90度回して縦と横を入れ替える。
- 全体を縦に長く伸ばし、上から油をかける。
- 全体に生地(マックンムル)をかける。
- 形を正方形に整える。この縦に長く伸ばしたり、正方形に整えたりする作業を、4代目店主の金貞姫さんは「アコーディオンを演奏するように」と表現している。
- 全体を90度回して縦と横を入れ替えた後、全体をひっくり返す。
- 卵をひとつ器に割り入れ、ざっと溶いたものを生地にかける。
- 全体をフタで覆って蒸し焼きにする。
- 卵が半熟に固まったらフタを取り、大皿に移して提供する。
脚注
外部リンク
- 制作者関連サイト
- 韓食生活(韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
- 八田靖史プロフィール(八田靖史のプロフィール)