密陽市の料理

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密陽市(ミリャンシ、밀양시)は慶尚南道の北東部に位置する地域。本ページでは密陽市の料理、特産品について解説する。

嶺南楼

地域概要

密陽市は慶尚南道の北東部に位置する地域。市の北部は慶尚北道清道郡と、北東部は広域市の蔚山市、南東部は慶尚南道梁山市、南部は慶尚南道金海市、南西部は慶尚南道昌原市、西部は慶尚南道昌寧郡と接する。人口は10万1649人(2024年3月)[1]

代表的な観光地として、密陽江(ミリャンガン、밀양강)沿いに建つ楼閣の嶺南楼(ヨンナムヌ、영남루)や、新羅時代の654年に創建した古刹の表忠寺(ピョチュンサ、표충사)、渓谷にできた臼型の淵のホバク沼(ホバクソ、호박소)、氷の谷を意味するオルムコル(얼음골)などがある。

ソウル市からのアクセスは、ソウル駅から密陽駅まで高速鉄道で約2時間20~40分。ソウル高速バスターミナルから密陽市外バスターミナルまで高速バスで約3時間55分。釜山市の釜山駅から密陽駅までは高速鉄道で約43分。釜山西部市外バスターミナル(沙上)から密陽市外バスターミナルまでは高速バスで約1時間の距離である。

  • 密陽アリラン
 
嶺南楼の近くに置かれた密陽アリランの碑。脇のボタンを押すと歌が流れる
密陽アリラン(밀양아리랑)は、密陽市に伝わる伝統民謡。アリランは朝鮮民謡の代表格であり、地方ごとの個性を持つが、密陽アリランは、江原道旌善郡の旌善アリラン、全羅南道珍島郡の珍島アリランとともに3大アリランと呼ばれる。毎年5月には密陽アリラン大祝祭(밀양아리랑대축제)が開催される[2]

食文化の背景

 
密陽江

密陽市は北部と東部に高い山が多く、中央部を北から南に流れる密陽江(ミリャンガン、밀양강)に沿って平野が広がる。山間部でとれる山菜料理のほか、密陽江や支流の丹場川(タンジャンチョン、단장천)でとれる川魚料理が豊富であり、中でもアユ(은어)が名産品として知られる。郷土料理としてはテジクッパプ(豚のスープごはん/돼지국밥)が有名であり、密陽市を発祥とする説が有力なひとつに考えられている。

代表的な料理

 
密陽式のテジクッパプ

テジクッパプ(豚スープごはん/돼지국밥)

テジクッパプ(돼지국밥)は、豚スープごはん(「テジクッパプ(豚のスープごはん/돼지국밥)」の項目も参照)。豚骨や牛骨を煮込んだスープにごはんを入れて味わう。テジクッパプの発祥については諸説あるが、1938年に密陽市の武安市場(ムアンシジャン、무안시장)で誕生したとの説が有力なひとつと考えられている[3]。密陽市にはテジクッパプを専門とする老舗が多く、地名を冠して密陽テジクッパプ(밀양돼지국밥)の名前でも呼ばれる。
  • 密陽アリラン市場
 
密陽アリラン市場
市中心部の「密陽アリラン市場(밀양아리랑시장)」では、飲食店通り(먹거리골목)の名物として親しまれ、老舗店の「タンゴルチプ(단골집)」が有名である。同店では希望をするとカワミドリの葉(방아잎)を追加でき、スープに入れて香りのアクセントとする。
  • 密陽テジクッパプの発祥
1938年に市西部の武安市場で、「梁山食堂(양산식당)」を営んでいたチェ・ソンダル(최성달)氏が初めて作ったとされる。同店の系譜は一族によって受け継がれ、「梁山食堂」が現在は「東部食肉食堂(동부식육식당)」と名前を変えて営業を続けているほか、姉妹店として近隣に「武安食肉食堂(무안식육식당)」「第一食肉食堂(제일식육식당)」がある。

ウノグイ(アユの焼き魚/은어구이)

ウノグイ(은어구이)は、アユの焼き魚(「ウノグイ(アユの焼き魚/은어구이)」の項目も参照)。ウノ(은어)は漢字で「銀魚」と書いてアユのこと。グイ(=クイ、구이)は焼き物を総称する。市内を流れる密陽江(ミリャンガン、밀양강)や支流の丹場川(タンジャンチョン、단장천)沿いに専門店が多くあり、アユの養殖場を併設しているところもある。専門店ではウノグイのほか、ウノフェ(アユの刺身、은어회)、ウノティギム(アユの天ぷら、은어튀김)、ウノジョリム(アユの煮付け、은어조림)などの料理を提供する。
  • 洛東江河口堰
洛東江河口堰(낙동강 하굿둑、낙동강 하구둑)は、1987年に洛東江(ナクトンガン、낙동강)の河口部である釜山市沙下区(サハグ、사하구)に作られた河口堰。海水の遡上を遮断することで、生活用水、農業用水の確保を安定的にする一方、生態系への影響も大きく、密陽市においては名産であった天然のアユ(은어)が激減した。

フギョムソプルコギ(黒ヤギの焼肉/흑염소불고기)

フギョムソプルコギ(흑염소불고기)は、黒ヤギの焼肉(「フギョムソグイ(黒ヤギの焼肉/흑염소구이)」の項目も参照)。市東部の載薬山(チェヤクサン、재약산)には古くから野生の黒ヤギ(흑염소)が生息しており、ふもとの表忠寺(ピョチュンサ、표충사)付近に牧場や専門店が集まっている。

代表的な特産品

オルムコルのリンゴ

市北東部のオルムコル(얼음골)はリンゴ(사과)の名産地であり、「オルムコルサグァ(オルムコルのリンゴ、얼음골사과)」の名前でブランドとなっている。毎年11月には「密陽オルムコルリンゴ祭り(밀양음골사과축제)」が開催される。
  • オルムコル
オルムコル(얼음골)は「氷の谷」を意味する景勝地。市北東部の山内面南明里(サンネミョン ナムミョンニ、산내면 남명리)に位置し、真夏にも天然の氷が見られる神秘的な場所として天然記念物第224号に指定されている。岩場内に滞留した冬の冷たい空気が、春から夏にかけて押し出される際に水分を凍らせるものと考えられている。かつては3~8月頃までは氷が見られたが、近年の気候変動により溶ける時期が早まっている[4]

ナツメ

市東部の丹場面(タンジャンミョン、단장면)は、ナツメ(대추)の名産地として知られる。収穫時期の10月には「密陽ナツメ祭り(밀양대추축제)」が開催される。

代表的な酒類・飲料

マッコリ

丹場面(タンジャンミョン、단장면)の「密陽クラシックスル都家(밀양클래식술도가)」は、醸造の際にクラシック音楽を流すことで酵母の活発化を促す製法を用い、クラシックマッコリ(클래식막걸리)、密陽濁酒(밀양탁주)などの銘柄を生産する。他の地元銘柄には、密陽醸造場(밀양양조장)の密陽生マッコリ(밀양생막걸리)、下南醸造場(하남양조장)のチョソンマッコリ(조선막걸리)などがある。

校洞方文酒

校洞方文酒(キョドンパンムンジュ、교동방문주)は、市中心部の校洞(キョドン、교종)に代々住む、旧家の密陽孫氏(ミリャンソンシ、밀양손씨)一族に伝わる伝統酒。もち米(찹쌀)、緑豆(녹두)などを原料とした醸造酒で、黄色みを帯びた色合いから黄金酒(황금주)との別名もある。

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

  • タンゴルチプ(단골집)
住所:慶尚南道密陽市常設市場3キル18-16(内一洞174-1)
住所:경상남도 밀양시 상설시장3길 18-16(내일동 174-1)
電話:055-354-7980
料理:テジクッパプ(豚のスープごはん)

エピソード

韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、2024年3月に初めて密陽市を訪れた。郷土料理としてテジクッパプ(豚のスープごはん/돼지국밥)が有名であることは知っていたが、同市を訪れるにあたって改めて調べたところ、想像以上に老舗が多く、じっくりとした食べ歩きの必要性を感じた。あいにく短い滞在時間しかなかったため、次回に向けてのリストアップにいまも余念がない。

脚注

  1. 주민등록 인구 및 세대현황 、行政安全部ウェブサイト、2024年4月27日閲覧
  2. 밀양아리랑대축제 、密陽文化観光ウェブサイト、2024年4月13日閲覧
  3. 밀양돼지국밥 、密陽文化観光ウェブサイト、2024年4月14日閲覧
  4. 기후변화 위기 보고서 밀양 얼음골의 얼음이 사라지고 있다고? 、大韓民国気象庁チャンネル(YouTube)、2024年4月27日閲覧

外部リンク

関連サイト
制作者関連サイト

関連項目