この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。 |
丹陽郡(タニャングン、단양군)は忠清北道に位置する地域。本ページでは丹陽郡の料理、特産品について解説する。
地域概要
丹陽郡は忠清北道の北東部に位置し、北部は江原道の寧越郡、東部は慶尚北道の栄州市、南部は慶尚北道の醴泉郡、聞慶市、西部は忠清北道の堤川市と接する。人口は3万0282人(2018年6月)[1]。郡の東部から南部にかけて小白山脈が伸びており、1000m前後の山々が連なって、これが慶尚北道との境界をなしている。郡の中央部には南漢江(ナマンガン、남한강)が流れる。代表的な観光地としては、丹陽八景(タニャンパルギョン、단양팔경)と呼ばれる美しい景勝地や、鍾乳洞の古薮洞窟(コスドングル、고수동굴)、丹陽九景市場(タニャンクギョンシジャン、단양구경시장)などがある。ダイナミックな自然を活かしたパラグライダー体験、ラフティング体験なども盛んである。ソウルから丹陽郡までは、東ソウル総合ターミナルから丹陽市外バス共用ターミナルまで高速バスで約2時間30分の距離。
食文化の背景
丹陽郡の中心部には、ソウル市などを流れる漢江(ハンガン、한강)の上流に当たる南漢江(ナマンガン、남한강)が流れており、かつては中央との物流を支える水運の要衝地であった。南漢江でとれるコウライケツギョ(쏘가리)が名産であるほか、韓国を代表するニンニク(마늘)の名産地として有名である。丹陽郡のニンニクは寒地型の在来種で、「ユッチョクマヌル(6片ニンニク、육쪽마늘)とも呼ばれる。これを利用した郷土料理も多い。近年はアロニア(ブラックチョークベリー、아로니아)の栽培にも力を入れている。
- 丹陽九景市場
- 丹陽九景市場(タニャンクギョンシジャン、단양구경시장)は、丹陽邑道田里(タニャンウプ トジョンニ、단양읍 도전리)に位置する市場。地元でとれたニンニクの集散地であり、収穫のシーズンである6月下旬になると大勢の人が集まって賑わう。市場内ではニンニクの販売を行うほか、マヌルスンデ(ニンニク入りの腸詰め、마늘순대)、マヌルトンダク(ニンニクフライドチキン、마늘통닭)、マヌルマンドゥ(ニンニク餃子、마늘만두)、フンマヌルパン(黒ニンニク饅頭、흑마늘빵)など、自慢のニンニクを利用した名物グルメも多い。
代表的な料理
マヌルソッパプ(ニンニク釜飯/마늘솥밥)
- マヌルソッパプ(마늘솥밥)は、ニンニク釜飯。数かけのニンニクを豆や雑穀とともに炊き込んで作る。専門店ではたくさんの副菜を用意して定食形式で提供する。マヌルトッカルビ(ニンニク入りの焼肉風ハンバーグ、마늘떡갈비)や、マヌルスユク(ニンニクソースをかけた茹で豚、마늘수육)といった料理を主菜として用意するほか、マヌルチャンアチ(ニンニクの醤油漬け、마늘장아찌)など副菜にもニンニクがふんだんに利用される。
ソガリメウンタン(コウライケツギョ鍋/쏘가리매운탕)
- ソガリメウンタン(쏘가리매운탕)は、コウライケツギョ鍋(「ソガリメウンタン(コウライケツギョ鍋/쏘가리매운탕)」の項目も参照)。南漢江(ナマンガン、남한강)でとれる高級魚であり、近年は希少価値も高い。
代表的な特産品
ユッチョクマヌル(6片ニンニク)
- ユッチョクマヌル(육쪽마늘)は、6片種のニンニク。寒地型の在来種で、鱗片数が6片(7、8片の場合もある)と、鱗片のひとつひとつが大きいことを特徴とする。外来種である暖地型に比べて生産量では劣るものの、辛味、香味が強く、貯蔵性に優れるとされる。丹陽郡は韓国を代表するユッチョクマヌルの名産地であり、石灰質の土壌と昼夜の寒暖差が栽培に適している。2007年5月には「丹陽ニンニク(단양마늘)」の名前で、農林畜産食品部が地域の名産品を認証する地理的表示農産物の第29号として登録された[2]。
- ユッチョクマヌルパン
- ユッチョクマヌルパン(육쪽마늘빵)は、江原道江陵市のベーカリー「Pain Famille(팡파미유)」で販売されるガーリッククリームチーズパン。丹陽郡のユッチョクマヌルを使用し、形状も上部を6片にカットしている。2019年に韓国のテレビ番組が取り上げたのをきっかけとして有名になり、ソウル市の百貨店で出張販売を行ったところ、海外の観光客からも注目を集めるようになった。マレーシアやインドネシアなどでは「コリアンクリームチーズガーリックブレッド」として広まり、日本では2021年5月に「俺のBakery」が期間限定で発売したことから「マヌルパン」の名前でブームになった。
アロニア
- アロニア(아로니아)は、ブルーベリーに似たバラ科の果実。英語では「Black Choke Berry」と呼ばれる。丹陽郡では2013年に「アロニア加工センター(아로니아 가공센터)」が設立され、栽培に力を入れている。実を販売するほか、ジュースやジャムなどの加工品も生産している。
代表的な酒類・飲料
飲食店情報
以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。
- タンゴウルマヌルマンドゥ(단고을마늘만두)
- 住所:忠清北道丹陽郡丹陽邑道田5キル37(道田里614)
- 住所:충청북도 단양군 단양읍 도전5길 37(도전리 614)
- 電話:043-421-3339
- 料理:マンドゥ(餃子)
- 丹陽トジョンマヌルスンデ(단양토종마늘순대)
- 住所:忠清北道丹陽郡丹陽邑道田6キル29(道田里539)
- 住所:충청북도 단양군 단양읍 도전6길 29(도전리 539)
- 電話:043-421-4292
- 料理:ニンニク入りのスンデ(韓国式の腸詰)
- 丹陽フンマヌルパン(단양흑마늘빵)
- 住所:忠清北道丹陽郡丹陽邑道田5キル28(道田里540)
- 住所:충청북도 단양군 단양읍 도전5길 28(도전리 540)
- 電話:043-423-3867
- 料理:黒ニンニク饅頭
- ソンウォンマヌル薬膳料理(성원마늘약선요리)
- 住所:忠清北道丹陽郡丹陽邑三峰路59(上津里402)
- 住所:충청북도 단양군 단양읍 삼봉로 59(상진리 402)
- 電話:043-421-8777
- 料理:ニンニク定食
- チャンダリ食堂(장다리식당)
- 住所:忠清北道丹陽郡丹陽邑三峰路370(別谷里28-1)
- 住所:충청북도 단양군 단양읍 삼봉로 370(별곡리 28-1)
- 電話:043-423-3960
- 料理:ニンニク定食
- オソントンダク(오성통닭)
- 住所:忠清北道丹陽郡丹陽邑道田5キル31(道田里615)
- 住所:충청북도 단양군 단양읍 도전5길 31(도전리 615)
- 電話:043-421-8400
- 料理:ニンニク入りのフライドチキン
エピソード
韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2003年1月に初めて丹陽郡を訪れた。名物であるマヌルソッパプ(ニンニク釜飯、마늘솥밥)が目当てであり、ニンニクがゴロゴロしているのを想像していたのに、実際には2かけしか入っておらず期待が外れた[3]。2014年5月に再訪した際は、それが3かけに増えており、そのささやかなグレードアップにひとりほくそ笑んだ[4]。
脚注
- ↑ 주민등록 인구 및 세대현황 、行政安全部ウェブサイト、2018年7月10日閲覧
- ↑ 지리적표시 농산물 、国立農産物品質管理院ウェブサイト、2023年5月6日閲覧
- ↑ コリアうめーや!!第53号 激臭の予感、恐怖のニンニク釜飯見参!! 、韓食生活、2018年7月10日閲覧
- ↑ [hhttp://www.kansyoku-life.com/2014/05/4783.html 出張報告~堤川、丹陽、栄州、安東、機張、大田での美食三昧。] 、韓食生活、2018年7月10日閲覧
外部リンク
- 関連サイト
- 制作者関連サイト
- 韓食生活(韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
- 八田靖史プロフィール(八田靖史のプロフィール)