この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。 |
沃川郡(オクチョングン、옥천군)は忠清北道に位置する地域。本ページでは沃川郡の料理、特産品について解説する。
地域概要
沃川郡は忠清北道の南部に位置し、北部は忠清北道の報恩郡、東部は慶尚北道の尚州市、南部は忠清北道の永同郡と忠清南道の錦山郡、西部は広域市の大田市と接する。人口は5万1723人(2018年6月)[1]。郡の東部は小白山脈が南北に伸びており、中央部には広範囲に錦江(クムガン、금강)の上流域が蛇行する。代表的な観光地としては、20世紀前半に活躍した詩人、鄭芝溶(チョン・ジヨン、정지용)の生家と文学館。また、朴正煕元大統領夫人の陸英修(ユク・ヨンス、육영수)生家などがある。ソウルから沃川郡までは、東ソウル総合ターミナルから沃川市外バス共用停留所まで高速バスで約2時間の距離。また、ソウル駅から沃川駅までムグンファ号で約2時間15分の距離。
食文化の背景
郡の中央部を錦江が流れていることから川魚料理が発達している。オイカワ(피라미)をフライパンの上で放射状に並べ、辛い薬味ダレをかけて揚げ焼きにしたトリベンベンイ(オイカワの薬味ダレ焼き、도리뱅뱅이)や、いろいろな川魚を煮込んですりつぶし、その汁に麺を入れて食べるセンソングクス(淡水魚のスープ麺、생선국수)は代表的な郷土料理である。京釜高速道路の錦江休憩所(クムガンヒュゲソ、금강휴계소)付近には川魚料理の専門店が集まっている。
代表的な料理
トリベンベンイ(川魚の薬味ダレ焼き/도리뱅뱅이)
トリベンベンイ(도리뱅뱅이)は、川魚の薬味ダレ焼き。トリベンベン(도리뱅뱅)とも呼ぶ。以前はオイカワ(피라미)を使うことが多かったが、近年はワカサギ(빙어)で作ることが多い。フライパンの中央から放射状に魚をぐるっと敷き詰め、薬味ダレをかけて多めの油でカリッと焼き上げる。
- 語源
トリベンベンイの語源は諸説ある。トリ(도리)は、トゥルレ(縁、둘레)の古語でフライパンの縁を指すとの説や、トルリダ(回す、돌리다)を指すとの説などがある。ベンベンイは、ベンベン(뱅뱅)が「ぐるぐる」を意味し、イ(이)は名詞化させる接尾辞であることから、「フライパンの縁に向けてぐるぐると並べたもの」「ぐるぐると回すように並べたもの」のように、魚の並べ方を指した料理名として解釈される場合が多い。また、建築用語として「垂木を支えるために柱の上に渡す木材」を「도리」と呼ぶため、魚を並べる姿を木材を丁寧に組む様子に見立てたなどの説がある。
センソングクス(川魚のスープ麺/생선국수)
センソングクス(생선국수)は、川魚のスープ麺。センソン(생선)は魚、グクス(=ククス、국수)は麺を意味する。下煮をした川魚をすりつぶして味噌仕立てのスープ状にし、素麺を入れて作る。川魚は店によっていろいろだが、ライギョ(가물치)、フナ(붕어)、コウライニゴイ(누치)、ナマズ(메기)、ハス(칠어)などが用いられる。
その他の料理
- マジュジョリム(カマツカの煮付け/마주조림)
- ムルチョルミョン(スープ麺/물쫄면)
- インサムメギタン(高麗人参とナマズの鍋/인삼메기탕)
代表的な特産品
- ポクスンア(モモ/복숭아)
- インサム(高麗人参/인삼)
- ポド(ブドウ/포도)
代表的な酒類・飲料
飲食店情報
以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。
- 江辺食堂(강변식당)
- 住所:忠清北道沃川郡東二面條令2キル3(條令里600)
- 住所:충청북도 옥천군 동이면 조령2길 3(조령리 600)
- 電話:043-733-6900
- 料理:トリベンベンイ、センソングクス
- 釜山食堂(부산식당)
- 住所:忠清北道沃川郡東二面條令2キル25(條令里589)
- 住所:충청북도 옥천군 동이면 조령2길 25(조령리 589)
- 電話:043-732-3478
- 料理:トリベンベンイ、センソングクス
- チナン食堂(찐한식당)
- 住所:忠清北道沃川郡青山面芝田キル14(校坪里257-5)
- 住所:충청북도 옥천군 청산면 지전길 14(교평리 257-5)
- 電話:043-732-3859
- 料理:トリベンベンイ、センソングクス
エピソード
韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2008年5月に初めて沃川郡を訪れた。当時、NHK『テレビでハングル講座』のテキストに連載していた「マシッソヨ!紀行」の取材であり、錦江休憩所近くの飲食店にてトリベンベンイとセンソングクスを食べた。それを踏まえ10月号の記事に、「どちらの料理も川魚の魅力を、頭からしっぽまで、文字通り余すことなく味わうことができる見事な調理法だ」との感想を残している。
脚注
- ↑ 주민등록 인구 및 세대현황 、行政安全部ウェブサイト、2018年7月10日閲覧
外部リンク
- 関連サイト
- 制作者関連サイト
- 韓食生活(韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
- 八田靖史プロフィール(八田靖史のプロフィール)