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タッカンマリ(닭한마리)は、丸鶏の鍋。
名称
タッカンマリは丸鶏の鍋。タッが鶏、ハンマリは一羽という意味で、直訳をするなら「鶏一羽」となる。丸鶏を一羽そのまま使ったことに由来し、客が「鶏一羽!」と注文したところから、そのまま料理名へと転化したとされる。日本ではダッカンマリ、タッハンマリ、ダッハンマリ、タクハンマリ、ダクハンマリ、タガンマリといった表記も見られるが、本辞典においては「タッカンマリ」を使用する。発音表記は[다칸마리]。
概要
タッカンマリは丸鶏を使用した鍋。鶏一羽をそのままの形で煮込む場合と、ぶつ切りにして提供する場合がある。水炊きにしたものを、つけダレで味わう方式が一般的で、具にはジャガイモ、長ネギ、ニラ、韓国餅(떡)などを加える。店によっては高麗人参、ナツメ、ハリギリ(엄나무)などの漢方材を加えることもある。残ったスープにはカルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)を入れて味わうのが定番である。また、カルスグクスのほかにマンドゥ(餃子/만두)を加えたり、残ったスープでごはんを炒めて食べることもある。もともとはソウルの東大門を発祥とする料理で、現在は東大門駅からも近い鍾路5街に専門店が集まっている。このエリアは東大門タッカンマリ通り、鍾路5街タッカンマリ通りなどと呼ばれ、連日大勢の人が訪れる。いわばソウルの郷土料理であり、他地域においては比較的近年までほとんど存在を知られていなかったと言ってよい。それとは対照的に日本人観光客の間では、インターネットサイトやガイドブックなどで取り上げられたこともあって、2000年代初頭から話題の料理として知名度を上げてきた。
食べ方
- 卓上での作業
- タッカンマリは卓上で鍋を火にかけ調理しながら味わう。このとき下煮をした丸鶏がそのまま登場する場合、客が自らハサミで食べやすい大きさにカットする必要がある。日本人客の場合は店員がかわりにやってくれることもあるが、韓国人客の多くは自分たちで行う。骨の継ぎ目を探り当てつつハサミを入れていくのに少しのコツがいるものの、慣れてしまえばこれもタッカンマリを味わう楽しさといえる。また、ビギナー客を伴って訪れた場合、この作業をスムーズに行えるとたいへんカッコいい。参考動画「タッカンマリ(丸鶏の水炊き、닭한바리)をハサミでカットする方法」。
- 店によっても異なるが、テーブルに浅漬けの白菜キムチや、刻みニンニクが置かれている。好みによってこれを鍋の中に投入してもよい。
- つけダレの作り方
- タッカンマリのつけダレは、醤油、酢、マスタード、タデギ(다대기、唐辛子ペースト)の4種類を基本とする。これを好みで混ぜ合わせ、煮えた鶏肉をつけて味わう。濃い場合は、鍋のスープを足し薄めて調節をする。店によっては最初から混ぜ合わせたものが用意されることもある。つけダレに刻んだ生のニラや、ニンニクを加えることもある。
調理器具
- 鍋
- 東大門タッカンマリ通りでは、洗面器か、金だらいのようなとってのない鍋が用いられることが多い。使いこまれてボコボコになった鍋ほど味があるとして喜ぶファンは多い。
- ハサミ
- 鶏肉をカットするために、大ぶりなハサミとトングが卓上に用意される。
トッピング
- タッカンマリを注文する際に、サリ(사리)と呼ばれるトッピングを追加することができる。店によっても異なるが、ジャガイモ、韓国餅、長ネギ、カルグクスなどが代表的な例である。
類似料理との差異
- タッカンマリと比較される類似料理にサムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)と、タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)があり、主に以下のような差異がある。それぞれまったく違う料理と言えるが、タッカンマリを知らない韓国人にはタッペクスクと混同されることも多い。
料理名 | タッカンマリ | サムゲタン | タッペクスク |
---|---|---|---|
鶏のサイズ | 700g~1.2kg程度の鶏を用いて1羽が2~4人前となる | 3~500g程度のひな鶏を用いて1羽が1人前となる | 700g~1.2kg程度の鶏を用いて1羽が2~4人前となる |
具 | 野菜や餅を一緒に煮込み、漢方材を足すこともある | 腹にもち米や漢方材を詰めて煮る | 基本的には鶏だけを煮て漢方材を加える |
味付け | 鶏を辛いつけダレで味わう | 薄い塩味、好みで塩を足してもよい | 鶏を塩、コショウで味わう |
提供方式 | 金ダライのような鍋で煮ながら味わう | 1人前のトゥッペギ(뚝배기、素焼きの器)に盛り付ける | 鶏だけを大皿に盛り付ける |
料理の後 | 残ったスープにカルグクスやごはんを入れる | 特になし | 煮汁で粥を作る |
歴史
1970年代
韓国では1960年代後半から高速道路の整備が進み、各地で高速バスが運行するようになった。1968年に誕生した東大門市外バスターミナルは1970年に京釜高速道路が全線開通すると、地方から東大門の卸売市場を訪れる人たちで賑わった。こうした高速バスの利用客に対し、すぐ提供できてボリュームのある料理として生まれたのがタッカンマリである。もともとはタッカルグクス(닭칼국수、鶏を入れた韓国式うどん)として販売されていたものが、徐々にアレンジされて現在の姿になったと考えられる。現在タッカンマリを提供する店で、残ったスープにカルグクスを入れることや、料理名をタッカンマリカルグクス(닭한마리칼국수)と表記する店があるのもその名残であろう。なお、東大門市外バスターミナルは1978年8月に江南のソウル高速バスターミナルと統合され、跡地は1970年にオープンした東大門総合市場の駐車場として使われた後、2014年2月にホテル「JWマリオット東大門スクエアソウル」がオープンした。[1]
- 「陳玉華ハルメ元祖タッカンマリ」の開店
- タッカンマリの元祖店とされる「陳玉華ハルメ元祖タッカンマリ」は公式ウェブサイトにおいて、1978年に東大門総合市場の飲食店街にて、タッカルグクスの店として創業。その後、1981年に現在の場所へ移転し、店名を「陳玉華元祖タッカンマリ」に変更したと記述している。[2]
- 韓国観光公社の記述
- 韓国観光公社は公式ウェブサイトにおいて、「ソウル東大門タッカンマリ通り」というページで、タッカンマリの発祥を以下のように説明している。執筆者や執筆時期は明らかにされていないが、情報提供者として鍾路区庁、タッカンマリ通りの食堂らがあげられている。
- 「その路地に点在するタッカンマリ店は短くて5年、長くて30年を越える歳月を過ごしている。だが、今の店舗ができる前、個人宅でタッカルグクスを販売していた時期までさかのぼれば、その路地におけるタッカンマリ店の歴史は30年よりはるか前までさかのぼらなければならない。当時タッカルグクスを売っていたおばあさんの家を28年前に引き継いで、今まで「タッカンマリ」を扱ってきた飲食店の主人に話を聞いてみると、おばあさんのひとりが現在のタッカンマリスタイルではない、鶏肉を入れたカルグクスを作って出していたという。瓦ぶき伝統家屋の板の間と個室でお客さんを受けた。今の社長はその家をそっくり引き継いで、当時庭だったところにホールを作って食卓を置いた。今残っている店の中でもっとも古い店は「陳玉華ハルメタッカンマリ」だ。しかし店で火事が起きて、2009年2月に建て直した。この店もまた、当初は今のようなタッカンマリではなくタッカルグクスを販売した。すなわち東大門タッカンマリ通りの元祖はタッカルグクスであったという訳だ」(原文1)。[3]
- 【原文1】「그 골목 닭한마리집들은 짧게는 5년부터 길게는 30년이 넘는 세월 동안 그 자리를 지키고 있다. 그러나 지금의 식당이 있기 전 개인집에서 닭칼국수를 팔던 시절까지 거슬러 올라가면 그 골목 닭한마리집의 역사는 30년 보다 훨씬 더 전으로 거슬러올라가야 한다. 당시 닭칼국수를 팔던 할머니집을 28년 전에 인수해서 지금까지 '닭한마리'를 팔던 식당 주인의 이야기를 들어보면 할머니 한 분이 지금의 '닭한마리'식의 요리가 아니라 닭고기를 넣고 칼국수를 끓여 팔았다고 한다. 기와 얹은 한옥집 마루와 방에서 손님을 받았다. 지금의 사장은 그 집을 고스란히 인수해서 당시 마당이었던 곳에 홀을 만들고 식탁을 놓았다. 지금 남아 있는 집들 가운데서 가장 오래된 집은 '진옥화 닭한마리'이다. 그러나 식당에 불이 났고 2009년 2월 재건축 하였다. 이 집 또한 처음에는 지금의 '닭한마리'식의 요리가 아니라 '닭칼국수'를 팔았다. 그러니까 동대문 닭한마리 골목 요리의 원조는 닭칼국수인 셈이다.」。
2000年代
2000年代に入ってインターネットサイトや、ガイドブックなどで東大門のタッカンマリ通りが取り上げられるようになると、日本人観光客の姿も増えるようになった。代表的な旅行サイトであるソウルナビでは、2000年5月14日に店舗紹介記事が、2002年1月25日に飲食体験レポートとして「(11)『タッハンマリ』を食べに行こう!」が掲載された。これらは同サイトの掲示板でも話題となり、クチコミの広がりによってタッカンマリの知名度をおおいに向上させた。現在は記事がリニューアルされている。[4]
種類
タッカンマリには次のような種類がある。
- ハンバンタッカンマリ(한방닭한마리)
- 漢方材を加えたタッカンマリ
- トジョンタッカンマリ(토종닭한마리)
- 地鶏を使用したタッカンマリ
- タッカンマリバン(닭한마리반)
- 鶏一羽半という意味で、半羽追加。二羽の場合はタットゥマリ(닭두마리)となる。
日本における定着
2002~06年頃まで
ソウルの東大門タッカンマリ通りが日本人観光客の間で話題になるとともに、東京では2002~03年頃からタッカンマリをメニューに掲げる店が登場し始めている。
- 東京での事例
- 代表的な店に東京、新大久保で2003年にオープンした「まいうKOREA」や、2004年4月に東京、神宮前にオープンした「Korean Organic nabi」(現在は閉店)などがある。韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2006年の時点で、東京に10軒程度のタッカンマリ提供店を確認していた。[5] ただし、この時期のタッカンマリは店によって解釈がさまざまで、東大門スタイルのタッカンマリとは細部で異なる場合が多かった。
- 福岡での事例
- 2005年12月に福岡市中央区天神で株式会社クリエイト・レストランツが「鶏一羽(タクハンマリ)」(現在は閉店)という専門店をオープンした。
2010~12年頃まで
この頃、日本では第2次韓流とも呼ばれるK-POPブームが起こり、若い世代の韓国ファンが増えるとともに、韓国料理店の多様化も進んだ。この時期にはタッカンマリの専門店が増え、新たな話題の韓国料理としてちょっとしたブームの様相を呈した。八田靖史は2012年9月2日、WebマガジンのWoman typeによる「次にブレイクする韓国フードはサッパリヘルシー系!? 鶏を丸ごと煮込むコラーゲンたっぷり『タッカンマリ』に注目!」という記事において、ブームの背景を解説するとともに、都内の専門店を紹介した。[6]
- 東京での事例
- 2010年11月に東京、新大久保で専門店の「コリア タッカンマリ」がオープンした。
- 2012年10月に東京、表参道で専門店の「タッカンマリ×2」(現在は休店)がオープンした。スンドゥブチゲ(순두부찌개、柔らかい豆腐の鍋)の専門店「東京純豆腐」のプロデュースであり、またその創業1号店を、タッカンマリ専門店にリニューアルしたとのことで話題となった。
- 家庭向け商品の登場
- 2012年8月に永谷園が、2012年秋冬の限定商品として「生姜タッカンマリ風鍋の素」を発売した。
2014年
韓国から専門店の進出が重なった。
- 大阪での事例
- 2014年11月20日にソウルの蘆原区孔陵洞に本店のある「コンヌンタッカンマリ」が大阪、今里で日本1号店をオープンした[7]。
- 福岡での事例
- 2014年12月5日にソウルの東大門にある「陳元祖タッカンマリ」から公認を得た「陳」が福岡、天神にオープンした[8]。
エピソード
- 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は留学時代の2000年にソウルの汝矣島で初めてタッカンマリを食べた。つけダレにニラを加えて食べるタイプの店で、そのイメージが強かったせいか、自分でタッカンマリを作るときはついニラを入れたくなると語る。また、つけダレに用いる醤油は、甘味がある韓国のチンガンジャン(진간장、濃口醤油)でないと求める味に仕上がらない、などとわかったようなことを言ったりもする。
地域
- ソウル市鍾路区鍾路5街
- 細い路地の中に専門店が密集しており、東大門タッカンマリ通り、鍾路5街タッカンマリ通りなどと呼ばれる。
脚注
- ↑ 동대문시외버스터미널 、위키백과、2014年10月8日閲覧
- ↑ 회사 연역 、陳玉華ハルメ元祖タッカンマリ公式ウェブサイト、2014年10月8日閲覧
- ↑ 서울 종로구 서울 동대문 닭한마리 골목 、韓国観光公社公式ウェブサイト「대한민국 구석구석」、2014年10月8日閲覧
- ↑ チンオックァ・ハルメ・ウォンジョ・タッカンマリ/陳玉華ハルメ元祖タッハンマリ 、ソウルナビ、2014年10月8日閲覧
- ↑ 東京タッカンマリ提供店リスト。 、韓食生活、2014年10月8日閲覧
- ↑ 次にブレイクする韓国フードはサッパリヘルシー系!? 鶏を丸ごと煮込むコラーゲンたっぷり「タッカンマリ」に注目! 、Woman type、2014年10月8日閲覧
- ↑ 本日オープンいたしました! 、鶏一匹のブログ、2014年11月21日閲覧
- ↑ タッカンマリ専門店陳 、公式ウェブサイト、2014年12月21日閲覧
外部リンク
- 制作者関連サイト
- 韓食生活(韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
- 八田靖史プロフィール(八田靖史のプロフィール)
- 韓国語食の大辞典アプリ版(八田靖史制作の韓国料理専門辞典)