「キムパプ(海苔巻き/김밥)」の版間の差分

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*端の部分
 
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:具のはみ出た端の部分を「コダリ(꼬다리)」「コンダリ(꽁다리)」「コンジ(꽁지)」などと呼ぶ。盛り付けの際に高さを調えるため除かれる場合もあるが、逆に食べ応えがあるので好まれることも多い。逆に端の部分を強調して見栄えに活かすために、わざと具がはみ出すよう巻く場合もある。
 
:具のはみ出た端の部分を「コダリ(꼬다리)」「コンダリ(꽁다리)」「コンジ(꽁지)」などと呼ぶ。盛り付けの際に高さを調えるため除かれる場合もあるが、逆に食べ応えがあるので好まれることも多い。逆に端の部分を強調して見栄えに活かすために、わざと具がはみ出すよう巻く場合もある。
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== 地域 ==
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*ソウル市
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:[[ソウル市の料理|ソウル市]]の鍾路区礼智洞(チョンノグ イェジドン、종로구 예지동)に位置する広蔵市場(クァンジャンシジャン、광장시장)は、ひと口大の海苔巻きをカラシ醤油につけて食べる通称「麻薬キムパプ(マヤッキムパプ、마약김밥)」が名物として有名である。
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*忠清南道扶余郡
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:[[忠清南道の料理|忠清南道]][[扶余郡の料理|扶余郡]]は、シイタケ([[표고버섯]])が名産品のひとつで、これを具に加えたキムパプが名物のひとつになっている。定林寺(チョンニムサ、정림사)址の近くにある「ピョゴノンブネキムパプ(표고농부네김밥)」の看板商品として知られる。
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*釜山市
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:[[釜山市の料理|釜山市]]の海雲台区中洞(ヘウンデグ チュンドン、해운대구 중동)に位置する海雲台市場(ヘウンデシジャン、해운대시장)では、ウオンキムパプ(ゴボウ入りの海苔巻き、[[우엉김밥]])が名物となっている。甘く煮付けたゴボウを具にとしたもので、もともとはカンピョウの煮物を具にしていたが、食材の仕入れがより容易であるゴボウへと変わっていったのが発祥の由来とされる(八田靖史の取材記録より、2011年8月27日)。
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*慶尚北道慶州市
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:[[慶尚北道の料理|慶尚北道]][[慶州市の料理|慶州市]]には、個性的なキムパプを提供する以下の有名店がある。
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:;キョリキムパプ(교리김밥)
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::キョリキムパプ(교리김밥)は、錦糸卵をたっぷり入れた海苔巻き。塔洞(タプトン、탑동)に本店のある「校里キムパプ(キョリキムパプ、교리김밥)」の看板メニューで、実際のメニュー名は単に[[キムパプ(海苔巻き/김밥)|キムパプ]]であるが、料理名を指してキョリキムパプと呼ぶことも多い。同店は1960年代に小規模な商店として出発し、1970年代に[[キムパプ(海苔巻き/김밥)|キムパプ]]の販売を開始、1980年代に入って近隣の料亭で働く人たちから評判を集め、その後、2010年代にテレビ番組で紹介されたことから一躍有名になった(店舗内の案内板より)。
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:;ウオンキムパプ(우엉김밥)
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[[ファイル:23110109.JPG|thumb|300px|ウオンキムパプ]]
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::ウオンキムパプ(우엉김밥)は、ウオンジョリム(ゴボウの煮物、[[우엉김밥]])を大量に載せた海苔巻き。城東市場(ソンドンシジャン、성동시장)にある「ポベキムパプ(보배김밥)」の看板メニューである。もともとは普通の[[キムパプ(海苔巻き/김밥)|キムパプ]]を販売していたが、あるとき付け合わせのたくあんをウオンジョリム(ゴボウの煮物、[[우엉조림]])に変えたところ評判がよく、見た目にも映えたことから定着し、現在は[[キムパプ(海苔巻き/김밥)|キムパプ]]の上にどさっと大量に載せている。醤油と水飴で甘く煮付けられたゴボウの味付けは日本式で、幼少期に福岡県朝倉郡で暮らしていた頃に、店主の母がよく作ってくれたものを再現している。
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*慶尚南道統営市
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:[[慶尚南道の料理|慶尚南道]][[統営市の料理|統営市]]には、一般的なキムパプとは異なり、具を入れず、味付けもせず、ごはんだけを海苔でひと口大に巻く[[チュンムキムパプ(ひと口海苔巻き/충무김밥)]]が郷土料理として親しまれている。チュンム(충무)は[[統営市の料理|統営市]]の旧称を指す。具のかわりに副菜として[[カクトゥギ(大根の角切りキムチ/깍두기)]]と、オジンオムチム(スルメイカの和え物、[[오징어무침]])を添えて、これでワンセットとなる。発祥は諸説あるが、時間を置いても痛みにくいようにごはんと具を別にする配慮から生まれた工夫であり、食事の時間が不定期になりがちな漁師の間で広まったとされる説や、旅客船で移動をする人たちに向けて販売したのが始まりとの説もある。有名店に「トゥンボハルメキムパプ(뚱보할매김밥)」「ハニルキムパプ(한일김밥)」などがある。
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*済州道
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:[[済州道の料理|済州道]]は、アワビ([[전복]])、ミナミアカザエビ([[딱새우]])、サンマ([[꽁치]])などを使った個性的なキムパプが近年話題となっている。チョンボクキムパプ([[전복김밥]])と呼ばれるアワビのキムパプは、アワビの肝を混ぜたごはんでつるんとした食感の卵焼きを巻き込んだもので、「済州キムマンボク(제주김만복)」という店が開発して話題となった。タクセウキムパプ([[딱새우김밥]])と呼ばれる、ミナミアカザエビのキムパプは、エビカツを中に入れた海苔巻きで、「セウリ(새우리)」という店の看板商品である。サンマを使ったコンチキムパプ([[꽁치김밥]])は、[[西帰浦市の料理|西帰浦市]]にある西帰浦毎日オルレ市場(ソグィポ メイル オルレシジャン、서귀포 매일 올레시장)の名物で、サンマの焼き魚を丸ごと巻き込んだものである。
  
 
== 脚注 ==
 
== 脚注 ==

2025年3月12日 (水) 23:37時点における版

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キムパプ

キムパプ김밥)は、海苔巻き。

概要

キム()は海苔、パプ()はごはんの意。板海苔の上にごはんを敷き、具を芯にして円形に巻く。具には牛肉、卵焼き、たくあん、ホウレンソウ、ニンジン、シイタケ、ハム、キムチ、ツナ、チーズなど多様なものが用いられる。日本の太巻きと同じく複数の材料を具として入れるのが一般的で、仕上げとして外側の海苔にゴマ油を塗ることが多い。またごはんも酢飯ではなく、塩とゴマ油で味付けをする。屋台、粉食店、食堂などで売られるほか、家庭でも多く作られる。特に外出時や行事などの弁当としては欠かすことのできない料理である。中に入れる具によって、ソゴギキムパプ(牛肉海苔巻き、소고기김밥)、キムチキムパプ(キムチ海苔巻き、김치김밥)、チャムチキムパプ(ツナ入り海苔巻き/참치김밥)、チーズキムパプ(チーズ海苔巻き、치즈김밥)などと呼ばれる。また海苔を内側に巻いて裏巻きにしたヌドゥキムパプ(裏巻きの海苔巻き/누드김밥)、おにぎりの別名であるサムガッキムパプ(おにぎり/삼각김밥)などの種類もある。具を何も入れず細巻きにしたチュンムキムパプ(ひと口海苔巻き/충무김밥)慶尚南道統営市の郷土料理として知られる。類似の料理として、茹でた春雨を海苔で巻いて揚げたキムマリ(春雨の海苔巻き揚げ/김말이)がある。

  • 端の部分
具のはみ出た端の部分を「コダリ(꼬다리)」「コンダリ(꽁다리)」「コンジ(꽁지)」などと呼ぶ。盛り付けの際に高さを調えるため除かれる場合もあるが、逆に食べ応えがあるので好まれることも多い。逆に端の部分を強調して見栄えに活かすために、わざと具がはみ出すよう巻く場合もある。

地域

  • ソウル市
ソウル市の鍾路区礼智洞(チョンノグ イェジドン、종로구 예지동)に位置する広蔵市場(クァンジャンシジャン、광장시장)は、ひと口大の海苔巻きをカラシ醤油につけて食べる通称「麻薬キムパプ(マヤッキムパプ、마약김밥)」が名物として有名である。
  • 忠清南道扶余郡
忠清南道扶余郡は、シイタケ(표고버섯)が名産品のひとつで、これを具に加えたキムパプが名物のひとつになっている。定林寺(チョンニムサ、정림사)址の近くにある「ピョゴノンブネキムパプ(표고농부네김밥)」の看板商品として知られる。
  • 釜山市
釜山市の海雲台区中洞(ヘウンデグ チュンドン、해운대구 중동)に位置する海雲台市場(ヘウンデシジャン、해운대시장)では、ウオンキムパプ(ゴボウ入りの海苔巻き、우엉김밥)が名物となっている。甘く煮付けたゴボウを具にとしたもので、もともとはカンピョウの煮物を具にしていたが、食材の仕入れがより容易であるゴボウへと変わっていったのが発祥の由来とされる(八田靖史の取材記録より、2011年8月27日)。
  • 慶尚北道慶州市
慶尚北道慶州市には、個性的なキムパプを提供する以下の有名店がある。
キョリキムパプ(교리김밥)
キョリキムパプ(교리김밥)は、錦糸卵をたっぷり入れた海苔巻き。塔洞(タプトン、탑동)に本店のある「校里キムパプ(キョリキムパプ、교리김밥)」の看板メニューで、実際のメニュー名は単にキムパプであるが、料理名を指してキョリキムパプと呼ぶことも多い。同店は1960年代に小規模な商店として出発し、1970年代にキムパプの販売を開始、1980年代に入って近隣の料亭で働く人たちから評判を集め、その後、2010年代にテレビ番組で紹介されたことから一躍有名になった(店舗内の案内板より)。
ウオンキムパプ(우엉김밥)
ウオンキムパプ
ウオンキムパプ(우엉김밥)は、ウオンジョリム(ゴボウの煮物、우엉김밥)を大量に載せた海苔巻き。城東市場(ソンドンシジャン、성동시장)にある「ポベキムパプ(보배김밥)」の看板メニューである。もともとは普通のキムパプを販売していたが、あるとき付け合わせのたくあんをウオンジョリム(ゴボウの煮物、우엉조림)に変えたところ評判がよく、見た目にも映えたことから定着し、現在はキムパプの上にどさっと大量に載せている。醤油と水飴で甘く煮付けられたゴボウの味付けは日本式で、幼少期に福岡県朝倉郡で暮らしていた頃に、店主の母がよく作ってくれたものを再現している。
  • 慶尚南道統営市
慶尚南道統営市には、一般的なキムパプとは異なり、具を入れず、味付けもせず、ごはんだけを海苔でひと口大に巻くチュンムキムパプ(ひと口海苔巻き/충무김밥)が郷土料理として親しまれている。チュンム(충무)は統営市の旧称を指す。具のかわりに副菜としてカクトゥギ(大根の角切りキムチ/깍두기)と、オジンオムチム(スルメイカの和え物、오징어무침)を添えて、これでワンセットとなる。発祥は諸説あるが、時間を置いても痛みにくいようにごはんと具を別にする配慮から生まれた工夫であり、食事の時間が不定期になりがちな漁師の間で広まったとされる説や、旅客船で移動をする人たちに向けて販売したのが始まりとの説もある。有名店に「トゥンボハルメキムパプ(뚱보할매김밥)」「ハニルキムパプ(한일김밥)」などがある。
  • 済州道
済州道は、アワビ(전복)、ミナミアカザエビ(딱새우)、サンマ(꽁치)などを使った個性的なキムパプが近年話題となっている。チョンボクキムパプ(전복김밥)と呼ばれるアワビのキムパプは、アワビの肝を混ぜたごはんでつるんとした食感の卵焼きを巻き込んだもので、「済州キムマンボク(제주김만복)」という店が開発して話題となった。タクセウキムパプ(딱새우김밥)と呼ばれる、ミナミアカザエビのキムパプは、エビカツを中に入れた海苔巻きで、「セウリ(새우리)」という店の看板商品である。サンマを使ったコンチキムパプ(꽁치김밥)は、西帰浦市にある西帰浦毎日オルレ市場(ソグィポ メイル オルレシジャン、서귀포 매일 올레시장)の名物で、サンマの焼き魚を丸ごと巻き込んだものである。

脚注


外部リンク

制作者関連サイト

関連項目