「トックッ(韓国式の雑煮/떡국)」の版間の差分
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2025年1月23日 (木) 22:35時点における版
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トックッ(떡국)は、韓国式の雑煮。
概要
トッ(떡)は餅、クッ(국)は汁、またはスープの意。古くはピョンタン(餅湯、병탕)とも呼ばれた。牛の肩バラ肉(양지머리)や鶏肉を煮込んでスープを作り、うるち米で作った細長い棒状の餅を、小判型に薄く切って入れる。味付けは醤油、塩で整え、みじん切りニンニクなどを加える。そのほか溶き卵、刻み海苔、刻みネギを加えたり、炒めた牛肉や、またはサンジョク(牛肉や野菜の串焼き、산적)を載せることもある。また、具としてマンドゥ(餃子/만두)を加えたものは、トッマンドゥクッ(餅入り餃子スープ/떡만두국)と呼ぶ。日本の雑煮と同様、韓国でも正月料理として欠かせない一品であるが、正月にのみ食べられるという訳ではなく、食堂や粉食店では1年を通してメニューに載せられている。類似の料理としては、雪だるま型の餅を使うチョレンイトックッ(開城式の雑煮/조랭이떡국)がある。
- カレトク
- ソルラル(설날)
- ソルラル(설날)は、旧正月(陰暦1月1日)。旧正(クジョン、구정)とも呼ぶ。韓国における名節(명절、節句)のひとつであり、寒食(한식、冬至から105日後)、端午(단오、陰暦5月5日)、秋夕(추석、陰暦8月15日)とともに4大名節とされる。その前後を含めて連休となり、多くの人が帰省をしたり、家族や親族らと集まって過ごす。ソルラルの行事には、新年の挨拶である「歳拝(セベ、세배)」や、祖先祭祀の「茶礼(チャレ、차례)」、祖先の墓参りを指す「省墓(ソンミョ、성묘)」などがある。茶礼の際に祖先へ捧げる食膳を「茶礼床(チャレサン、차례상)」と呼び、供えられた料理の数々は、茶礼の後に参加者で分け合って食べる。これを祖先の徳にあやかるとの意味から「飲福(ウムボク、음복)」と呼び、トックッなどとともに正月料理となる。なお、陽暦の1月1日は新正(シンジョン、신정)と呼ばれる祝日ではあるが、その前後は連休ではなく、新年の行事はほぼ陰暦で行われる。2024年以降のソルラルは以下の通りである。
- 2024年2月10日(土)
- 2025年1月29日(水)
- 2026年2月17日(火)
- 2027年2月7日(日)
- 2028年1月27日(木)
- 2029年2月13日(火)
- 2030年2月3日(日)
- 2031年1月23日(木)
- 2032年2月11日(水)
- 2033年1月22日(日)
歴史
- 『東国歳時記』(1849年)の記述
- 洪錫謨によって1849年に書かれた『東国歳時記(동국세시기)』には、当時の歳時風俗が月ごとにまとめられており、1月の項目にはトックッに関する記述がある。「粳米の粉を蒸して大きな板のうえに置き、杵をもって無数に搗いてのち、長く引きのばしてつくった餅を白餅(흰떡)という。これを銭型に薄く輪切りにし、すまし汁に牛肉または雉肉を入れて炊き、とうがらし粉をふりかけたものを餅湯(떡국)という。これは祭祀の供え物として、お客の接待用としてつかわれるので、歳饌として無ければならないものである。お汁に入れてたいたものだから、昔の湿麺がこれに似たものである。店では時食としてこれを売る。俗に年齢をたずねるとき、餅湯を幾椀食べたか、といわれる所以である。」と説明されている。文末にあるように、トックッは正月に必ず食べる料理であることから、「トックッを何杯食べたか」との問いは年齢を尋ねる意味で使われる。[1]。
種類
トックッには次のような種類がある。
- クルトックッ(牡蠣入りの雑煮、굴떡국)
- タクチャントックッ(鶏肉入りの雑煮、닭장떡국)
- トッマンドゥクッ(餅入り餃子スープ/떡만두국)
- タスルギトックッ(カワニナ入りの雑煮、다슬기떡국)
- メセンイトックッ(カプサアオノリ入りの雑煮、매생이떡국)
- メセンイクルトックッ(カプサアオノリと牡蠣入りの雑煮、매생이굴떡국)
- ソゴギトックッ(牛肉入りの雑煮、소고기떡국)
- チョレンイトックッ(開城式の雑煮/조랭이떡국)
地域
正月料理の地域差
- トックッはソルラル(설날)の料理として親しまれるが、朝鮮半島の北部(平安道、咸鏡道、黄海道)ではマンドゥクッ(餃子スープ/만두국)を、中部(京畿道、江原道)ではトッマンドゥクッ(餅入り餃子スープ/떡만두국)を食べることが多く、トックッは主に南部(忠清道、慶尚道、全羅道)地域で優勢だとされる。もちろん家庭によってもさまざまであり、あくまでも傾向の目安に過ぎない。
エピソード
- キジの代わりに鶏
- 韓国には「キジの代わりに鶏(꿩 대신 닭)」ということわざがあり、必要なものがなければ似たもので代用が可能であることを意味する。もともとはトックッに入れるキジ肉がなかった際に、鶏肉で代用したことから生まれた表現であるとされる。現在ではキジ肉が稀少になり、牛肉を利用するのが一般的だが、全羅南道には郷土料理としてタクチャントックッ(鶏入りの雑煮、닭장떡국)があり、日本においても在日コリアンの家庭では鶏肉入りのトックッが多く作られている。
脚注
- ↑ 洪錫謨・他、姜在彦(訳注), 1971, 『朝鮮歳時記』平凡社, P20
外部リンク
- 制作者関連サイト
- 韓食生活(韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
- 八田靖史プロフィール(八田靖史のプロフィール)