「固城郡の料理」の版間の差分

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2024年7月17日 (水) 04:06時点における版

この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。
恐竜の足跡化石

固城郡(コソングン、고성군)は慶尚南道の南部に位置する地域。本ページでは固城郡の料理、特産品について解説する。なお、江原道に読み方の共通する高城郡(コソングン、고성군)があって混同しやすいので注意。

地域概要

松鶴洞古墳群

固城郡は慶尚南道の南部に位置する地域。郡の北部は慶尚南道晋州市、北東部は慶尚南道昌原市、南部は慶尚南道統営市、西部は慶尚南道泗川市と接する。また、東部から南部にかけては、統営市と接する部分を除いて南海岸に面する。人口は4万9306人(2024年1月)[1]

代表的な観光地としては、ユネスコの世界文化遺産に登録された伽耶時代の松鶴洞古墳群(송학동 고분군)や、文禄・慶長の役(壬辰倭乱)における唐項浦海戦の歴史を伝える唐項浦観光地(당항포 관광지)、恐竜の足跡化石がある固城恐竜博物館(고성공룡박물관)、固城仮面博物館(고성탈박물관)などがある。

ソウル市からのアクセスは、ソウル南部ターミナルから、固城旅客自動車ターミナルまで市外バスで約4時間10分の距離。釜山市の釜山西部市外バスターミナル(沙上)から、固城旅客自動車ターミナルまで市外バスで約1時間40分の距離である。

小伽倻の歴史

固城博物館
小伽倻(ソガヤ、소가야)は、現在の固城郡を中心として慶尚南道泗川市晋州市の一部に存在した伽耶諸国のひとつ。高麗時代の僧侶、一然(イリョン、일연)によって1281年に編纂された歴史書『三国遺事(삼국유사)』には、「阿羅伽耶は現在の固城」と記されている[2]。初代王は金末露(キム・マルロ、김말로)。554年に新羅との戦いに敗れて滅亡した。固城郡には、小伽耶の時代に作られた松鶴洞古墳群(ソンハクトン コブングン、송학동 고분군)があり、土器類、金銅の耳飾り、馬具などが出土している。隣接して固城博物館があり、展示資料では小伽耶について「古代東アジアの国際交易都市」と紹介し、中国や西海岸地域の文物を伽耶へと引き入れ、新羅や大伽耶の文物を西海岸や日本へと運ぶ出発地になったと説明している。
  • 伽耶古墳群(가야고분군)
伽耶古墳群は、紀元前1世紀頃から6世紀まで朝鮮半島南部に存在した伽耶諸国の古墳群。2023年9月にユネスコの世界文化遺産に登録された。固城郡の松鶴洞古墳群に加え、慶尚南道金海市の大成洞古墳群(대성동 고분군)、慶尚南道昌寧郡の校洞と松峴洞古墳群(교동과 송현동 고분군)、慶尚南道咸安郡の末伊山古墳群(말이산 고분군)、慶尚南道陜川郡の玉田古墳群(옥천고분군)、慶尚北道高霊郡の池山洞古墳群(지산동 고분군)、全羅北道南原市の酉谷里と斗楽里古墳群(유곡리와 두락리 고분군)の計7地域にまたがっている。
  • 日本の姉妹都市
2023年4月より、岡山県笠岡市とは姉妹都市の関係にある[3]

食文化の背景

固城湾

固城郡の代表的な料理として、「固城9味(고성9미)」が以下のように選定されている[4]

  • 固城9味(고성9미)
一部はふたつの料理をまとめて1味に数えている。

代表的な料理

ヨムソクッパプ(ヤギのスープごはん/염소국밥)

ヨムソクッパプ(염소국밥)は、ヤギのスープごはん。ヨムソは(염소)はヤギ、クッパプ(국밥)はスープごはん(クッパ)を意味する(「クッパプ(クッパ/국밥)」の項目も参照)。黒ヤギ(흑염소)を用いることが多く、骨や肉などを長時間煮込んでスープを作る。肉は食べやすい大きさに切って具としても味わう。固城邑西外里(コソンウプ ソウェリ、고성읍 서외리)に位置する「固城市場(コソンシジャン、고성시장)」の名物として知られ、老舗の専門店がある。専門店ではヨムソプルコギ(ヤギ肉の網焼き、염소불고기)もメニューに載せており、ヨムソプルコギを食べながら焼酎を飲み、ヨムソクッパプで締めるのも定番である。
  • チョンジェンイクッパプ(총쟁이국밥)
ヨムソクッパプは別名をチョンジェンイクッパプ(총쟁이국밥)とも呼び、チョンジェンイ(총쟁이)は猟師を意味する。猟師の家に嫁いだパク・トクソン(박덕선)さんが、朝鮮戦争後の時代に固城市場でヨムソクッパプを販売したところ好評を博し、俗称的に店名を「チョンジェンイチプ(猟師の店)」、料理名を「チョンジェンイクッパプ(猟師のスープごはん、총쟁이국밥)」と呼ぶようになった[5]。この呼び名が現在まで伝わって、ヨムソクッパプの別名として使われている。

セウグイ(エビ焼き/새우구이)

セウグイ(새우구이)は、エビ焼き。固城郡ではバナメイエビ(흰다리새우)の養殖が盛んであり、地元ではワンセウ(直訳は王エビ、왕새우)の名前でも呼ばれる。専門店ではバナメイエビを塩焼きにしたセウグイのほか、セウティギム(エビの天ぷら/새우튀김)でも味わえる。養殖ではあるが秋が旬で、それ以外の時期には専門店でも販売をしないことがある。

トダリスックッ(マコガレイとヨモギのスープ/도다리쑥국)

トダリスックッ
トダリスックッ(도다리쑥국)は、マコガレイとヨモギのスープ。トダリ(도다리)はマコガレイ(문치가자미)の地方名、スッ()はヨモギ、クッ()はスープを表す。3~5月頃を旬とするマコガレイを、同じく春が旬のヨモギと合わせて、香りのよいスープに仕立てる季節料理である。刺身店、魚介料理店などで季節限定の料理として提供される。

ハヌグイ(韓牛の焼肉/한우구이)

ハヌグイ(한우구이)は、韓牛の焼肉。ハヌ(한우)は韓牛、グイ(=クイ、구이)は焼き物を意味する。固城郡で生産される韓牛のブランドとして「固城精誠韓牛(고성정성한우)」がある。

カリビチム(ホタテ蒸し/가리비찜)

カリビチム
カリビチム(가리비찜)は、ホタテ蒸し。カリビはホタテ(가리비)、チム()は蒸し物を意味する。蒸したホタテを、チョゴチュジャン(唐辛子酢味噌、초고추장)や醤油につけて味わう。専門店ではカリビグイ(ホタテ焼き、가리비구이)でも味わう。10〜12月を最盛期とする。
  • ホタテの養殖
固城郡では南西部の紫蘭湾(チャランマン、자란만)を中心にホタテ(가리비)の養殖が盛んである。全国で唯一、養殖ホタテを専門とする水産協同組合の「慶南ホタテ垂下式水産業協同組合(경남가리비수하식수산업협동조합)」がある。正確にはホタテガイ(큰가리비, 참가리비)ではなく、ホンアメリカイタヤ(アメリカイタヤガイ、해만가리비)やその近似種、またはホンアメリカイタヤの改良種(홍가리비단풍가리비)を指す。養殖ホタテの生産量は慶尚南道が全国の94.8%(2023年)を占める[6]

ケッチャンオフェ(ハモの刺身/갯장어회)

ケッチャンオフェ(갯장어회)は、ハモの刺身(「ケッチャンオフェ(ハモの刺身/갯장어회)」の項目も参照)。ハモは日本への輸出用としての需要が高かったため、日本語のハモ(하모)という呼び名が残っており、ハモフェ(하모회)、ハモサシミ(하모사시미)とも呼ぶ。5月頃からシーズンが始まるが、真夏を旬とする。

コンリョンパン(恐竜パン/공룡빵)

コンリョンパン(공룡빵)は、恐竜パン。コンリョン(공룡)は恐竜、パン()は焼き菓子を指す。恐竜の形を模したひと口大の焼き菓子で、主に露店などで販売される。固城郡では恐竜の足跡化石があるなど、恐竜が地域を象徴するマスコット的な存在になっている。

代表的な特産品

月坪里モチトウモロコシ

郡南部に位置する月坪里一帯はモチトウモロコシ(찰옥수수)の名産地。固城湾沿いの地域であり、海風を受けて育つことで糖度が高く、モチモチとした食感に育つと語られる。7~9月頃に旬を迎え、この時期には巨済市統営市から固城郡を経て昌原市へと伸びる国道14号線(14번 국도)沿いに茹でたモチトウモロコシを販売する露店が並ぶ。

代表的な酒類・飲料

マッコリ

郡内では、固城邑西外里(コソンウプ ソウェリ、고성읍 서외리)の「固城醸造場(고성양조장)」や、下二面徳湖里(ハイミョン トコリ、하이면 덕호리)の「下二法松濁酒(하이법송탁주)」、上里面滌煩亭里(サンニミョン チョクパンジョンニ、상리면 척번정리)の「上里醸造場(상리양조장)」のなどの酒造がマッコリを生産している。
  • 月坪里区長酒(월평리 구장술)
「月坪里区長酒(ウォルピョンニ クジャンスル、월평리 구장술)」は固城郡に伝わる酒席に関する逸話。月坪里は固城郡南部の地域名であり、区長は現在の里長(行政区画の里を統括する役職、이장)を意味する。この言葉は酒席において、「酒がなくなったときに料理が出てきて、料理がなくなったときに酒が出てくる」状況を指したもので、接待する側の注文が適切でないことや、代金を節約したい気持ちを暗に非難する意味合いが含まれる。月坪里生まれで地域の区長を務めた実在の人物が、近隣の住民を頻繁に酒と料理でもてなしていたことが、言葉のルーツとされている。ただし、実際には酒代を節約するどころか、家が傾くほどに大勢の人を厚くもてなしていたとされ、地域住民の尊敬を集めていたことから、実情と言葉の意味が異なるとの指摘もなされている[7]

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

  • 鶏林セウナラ(계림새우나라)
住所:慶尚南道固城郡固城邑新月路31(新月里407-2)
住所:경상남도 고성군 고성읍 신월로 31(신월리 407-2)
電話:055-672-4616
料理:カリビチム(ホタテ蒸し)、海鮮料理
  • 恐竜アルフェッチプ(공룡알횟집)
住所:慶尚南道固城郡固城邑恐竜路3078(水南里600-8)
住所:경상남도 고성군 고성읍 공룡로 3078(수남리 600-8)
電話:055-674-1158
料理:センソンフェ(刺身)
  • サムソン食堂(삼성식당)
住所:慶尚南道固城郡固城邑東外路151番キル10-17(東外里278-28)
住所:경상남도 고성군 고성읍 동외로151번길 10-17(동외리 278-28)
電話:055-674-4887
料理:ポックッ(フグのスープ)

エピソード

韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、2017年1月に初めて固城郡を訪れた。ホタテ(가리비)の名産地と聞いてそれを楽しみにしていたが、残念ながら固城郡では食事の機会がなく、隣接する慶尚南道泗川市に移動してようやくカリビチム(ホタテ蒸し、가리비찜)を味わうことができた。固城郡で食べられなかったことは長い間の心残りであったが、2024年3月に再び固城郡を訪れてようやく念願がかなった。

脚注

  1. 주민등록 인구 및 세대현황 、行政安全部ウェブサイト、2024年2月26日閲覧
  2. 三国遺事 巻1 紀異第一/五伽耶 、韓国史データベース、2024年2月24日閲覧
  3. 慶尚南道固城郡と姉妹都市協定を締結しました 、岡山県笠岡市ウェブサイト、2024年2月24日閲覧
  4. 테마여행/고성 9미 、固城郡ウェブサイト、2024年2月26日閲覧
  5. 최원준의 음식 사람 <31> 경남 고성 ‘총쟁이국밥’ 、国際新聞(2021年4月6日付記事)、2024年2月24日閲覧
  6. 통계청「어업생산동향조사」어업별 품종별 통계 、KOSIS(国家統計ポータル)、2024年2月24日閲覧
  7. 8. 월평리 구장 술 、閑山新聞(2004年4月17日付記事)、2024年2月26日閲覧

外部リンク

関連サイト
制作者関連サイト

関連項目