「尚州市の料理」の版間の差分
(同じ利用者による、間の25版が非表示) | |||
3行目: | 3行目: | ||
'''尚州市'''(サンジュシ、상주시)は慶尚北道に位置する地域。本ページでは尚州市の料理、特産品について解説する。 | '''尚州市'''(サンジュシ、상주시)は慶尚北道に位置する地域。本ページでは尚州市の料理、特産品について解説する。 | ||
− | [[ファイル: | + | [[ファイル:16122601.JPG|thumb|400px|擎天台から眺める洛東江]] |
== 地域概要 == | == 地域概要 == | ||
− | + | 尚州市は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の中西部に位置する地域。市の北部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[聞慶市の料理|聞慶市]]、北東部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[醴泉郡の料理|醴泉郡]]、西部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[義城郡の料理|義城郡]]、南東部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[亀尾市の料理|亀尾市]]、南部は[[慶尚北道の料理|慶尚北道]]の[[金泉市の料理|金泉市]]、南西部は[[忠清北道の料理|忠清北道]]の[[永同郡の料理|永同郡]]の、西部は[[忠清北道の料理|忠清北道]]の[[沃川郡の料理|沃川郡]]と[[報恩郡の料理|報恩郡]]、北西部は[[忠清北道の料理|忠清北道]]の[[槐山郡の料理|槐山郡]]と接する。人口は10万0159人(2018年7月)<ref>[http://www.mois.go.kr/frt/sub/a05/totStat/screen.do 주민등록 인구 및 세대현황] 、行政安全部ウェブサイト、2018年8月14日閲覧</ref>。市の西部には小白山脈が連なり、[[忠清北道の料理|忠清北道]]の[[報恩郡の料理|報恩郡]]、[[槐山郡の料理|槐山郡]]へとまたがる俗離山(ソンニサン、속리산)は景勝地として有名である。東部の洛東江(ナクトンガン、낙동강)沿いには平野部が広がり、古くからの穀倉地帯として栄えた。代表的な観光地としては、俗離山の展望スポットである文蔵台(ムンジャンデ、문장대)や、洛東江に臨み「洛東江第1景」と称えられる擎天台(キョンチョンデ、경천대)があり、また自転車の町としても知られることから尚州自転車博物館がある。2011年6月には咸昌邑(ハムチャンウプ、합창읍)、利安面(イアンミョン、이안면)、恭倹面(コンガムミョン、공검면)の3地区がスローシティとして認定された。[[ソウル市の料理|ソウル市]]から尚州市までは、ソウル高速バスターミナル、東ソウル総合ターミナルから尚州総合バスターミナルまで高速バスで約2時間30分の距離である。 | |
+ | |||
+ | *慶尚道の地名由来 | ||
+ | :朝鮮半島の南東部を占める地域を広く慶尚道と呼び、高麗時代の1314年に[[慶州市の料理|慶州市]]、尚州市の頭文字を取って名付けられた。 | ||
== 食文化の背景 == | == 食文化の背景 == | ||
− | + | 676年に新羅が半島を統一すると、687年に全国を9つの州に分割して統治を行った。その州のひとつが尚州(沙伐州)である。その当時から中東部の中心地域として栄え、高麗時代(918~1392年)にも地方行政組織である12牧(後に8牧)のひとつに尚州が含まれている。また高麗時代後期から現在に至るまで半島の南東部は慶尚道と呼ばれているが、この名称も[[慶州市の料理|慶州市]]と尚州市の頭文字から取られたものである。こうした歴史的な背景を踏まえ、尚州市の両班家に伝わった料理書『是議全書』の料理を再現することにも力を入れている。地理的には小白山脈のふもとで栽培されるリンゴ、ナシ、ブドウ、柿などの果物類や、洛東江流域で生産される米などが名産として知られ、「大韓民国農業の首都」を掲げている。また、古くから養蚕も盛んにおこなわれており、名産品である米、干し柿、カイコの3つを三白(サムベク、삼백)と総称して尚州市の象徴としている。 | |
== 代表的な料理 == | == 代表的な料理 == | ||
− | + | 尚州市は韓牛の名産地であり、柿の皮を食べさせて飼育した名実尚柿韓牛(ミョンシルサンガムハヌ、명실상감한우)の焼肉が名物である。 | |
=== ハヌグイ(韓牛の焼肉/한우구이) === | === ハヌグイ(韓牛の焼肉/한우구이) === | ||
− | [[ファイル: | + | [[ファイル:16122602.JPG|thumb|300px|名実尚柿韓牛のロースピョンチェ]] |
− | : | + | :尚州畜産農協では尚州市の特産物である干し柿の生産過程で出る柿の皮を利用し、韓牛の飼料とする試みを2000年初め頃から始めた。当初、「尚州の柿を食べる韓牛」としてブランド化を進め、後に「名実尚柿韓牛」との名称に変更した。柿の皮を利用した飼料の製造方法は特許登録もされている<ref>[http://gamso.nonghyup.com/user/indexSub.do?codyMenuSeq=12064077&siteId=gamso 브랜드소개] 、尚州畜産農協ウェブサイト、2016年12月25日閲覧</ref>。2009年10月には軒新洞(ホンシンドン、헌신동)に尚州畜産農協が直接運営する焼肉店「名実尚柿韓牛広報テーマタウン店(명실상감한우 홍보테마타운점)」をオープンした<ref>[http://gamso.nonghyup.com/user/indexSub.do?codyMenuSeq=12064084&siteId=gamso 홍보테마타운 소개] 、尚州畜産農協ウェブサイト、2016年12月25日閲覧</ref>。同店では名実尚柿韓牛の焼肉や[[ユッケ(牛刺身/육회)]]、ロースピョンチェ(炙り薄切り肉の野菜巻き、로스편채)などのメニューを味わえる。また、ランチ200食限定の[[カルビタン(牛カルビのスープ/갈비탕)|サンガムハヌタン(牛カルビのスープ、상감한우탕)]]は、これを目当てに行列ができるほどの人気を誇る。 |
=== カルグクス(韓国式の手打ちウドン/칼국수) === | === カルグクス(韓国式の手打ちウドン/칼국수) === | ||
− | : | + | [[ファイル:16122603.JPG|thumb|300px|カルグクス]] |
+ | :南尚州インターチェンジ近くには飲食店が集まっており、[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)]]が名物として知られる。[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)|カルグクス]]とともにテジヤンニョムソクセグイ(豚肉の味付け網焼き、돼지양념석쇠구이)を提供する「元祖チチョン食堂(원조지천식당)」と、テジスユク(茹で豚、돼지수육)を提供する「新チチョン食堂(새지천식당)」の2軒が有名である。 | ||
== 代表的な特産品 == | == 代表的な特産品 == | ||
− | + | 洛東江流域で生産される米や、全国の6割以上を生産する干し柿、またリンゴ、ブドウなどの果物を多く生産する。 | |
=== コッカム(干し柿/곳감) === | === コッカム(干し柿/곳감) === | ||
− | [[ファイル: | + | [[ファイル:16122604.JPG|thumb|300px|干し柿の生産風景]] |
− | + | 尚州市は干し柿の名産地であり、現在は全国の6割以上を生産する<ref>[http://www.sangju.go.kr/main/main.jsp?home_url=sangju&befor_home_url=sangju&befor_code=FARMING_SPECIAL_TRADITION&club_seq=0&code=FARMING_SPECIAL_SPECIAL 상주의 농특산물] 、尚州市ウェブサイト、2016年12月24日閲覧</ref>。その歴史は朝鮮時代までさかのぼり、『睿宗実録』の1468年11月13日の項目には、文官である尹孝孫(윤효손)の上疏文に「今也乾柿之貢分於尙州(今は干し柿の貢物を尚州に分けると決めた)」との記録が残る<ref>[http://sillok.history.go.kr/id/kha_10011013_002 상제·학교·공법·사창·정병 유방에 관한 윤효손의 상소문] 、国史編纂委員会「朝鮮王朝実録」、2016年12月24日閲覧</ref>。また、1530年に編纂された地理志『新増東国輿地勝覧』の第28巻「慶尚道 尚州牧」の項目にも名産(土産)として柿が記されている<ref>[http://db.itkc.or.kr/itkcdb/text/nodeViewIframe.jsp?seojiId=kc_mk_g012&bizName=MK&gunchaId=av028&muncheId=01&finId=001 신증동국여지승람 제28권 경상도 상주목] 、韓国の知識コンテンツ、2016年12月24日閲覧</ref>。 | |
*品種 | *品種 | ||
32行目: | 36行目: | ||
*製造方法 | *製造方法 | ||
− | : | + | :干し柿製造メーカーの「尚州コッカム名家(상주 곶감명가)」によれば皮を剥いた柿を専用のハンガーにかけ、45~60日程度乾燥させる。水分を5~60%程度まで減らしたものをパンゴンシ(半乾柿、반건시)と呼び、35~40%程度まで減らしたものをコンシ(乾柿、건시)と呼ぶ。また、種を取って食べやすい大きさに切って干したものをカムマルレンイ(切干柿、감말랭이)と呼ぶ(八田靖史の取材記録より、2016年10月30日)。 |
+ | :*尚州コッカム名家(상주 곶감명가) | ||
+ | ::住所:慶尚北道尚州市仁坪1キル21-14(仁坪洞1-1) | ||
+ | ::住所:경상북도 상주시 인평1길 21-14(인평동 1-1) | ||
+ | ::電話:054-534-7273 | ||
*旬 | *旬 | ||
41行目: | 49行目: | ||
*関連施設 | *関連施設 | ||
− | [[ファイル: | + | [[ファイル:16122605.JPG|thumb|300px|樹齢750年の柿の木]] |
:*尚州コッカム流通センター(상주곶감유통센터) | :*尚州コッカム流通センター(상주곶감유통센터) | ||
::軒新洞には尚州コッカム流通センターは売店を併設しており、干し柿をはじめ、柿酢、柿醤油、柿菓子、柿マッコリなどの商品も販売する。 | ::軒新洞には尚州コッカム流通センターは売店を併設しており、干し柿をはじめ、柿酢、柿醤油、柿菓子、柿マッコリなどの商品も販売する。 | ||
+ | ::*尚州コッカム流通センター(상주곶감유통센터) | ||
+ | :::住所:慶尚北道尚州市嶺南第一路1154(軒新洞214) | ||
+ | :::住所:경상북도 상주시 영남제일로 1154(헌신동 214) | ||
+ | :::電話:054-536-0907 | ||
:*尚州コッカム公園(상주곶감공원) | :*尚州コッカム公園(상주곶감공원) | ||
::素陰里には干し柿をテーマにした公園がある。園内には柿をテーマにしたオブジェなどが展示されている。 | ::素陰里には干し柿をテーマにした公園がある。園内には柿をテーマにしたオブジェなどが展示されている。 | ||
50行目: | 62行目: | ||
*祭り | *祭り | ||
− | [ | + | :毎年12月には尚州コッカム祭り(상주곶감축제)が開催される<ref>[http://www.xn--439a1q688bj3g65a37o.com/ 상주곶감축제] 、尚州コッカム祭りウェブサイト、2016年12月26日閲覧</ref>。 |
− | : | + | |
+ | *エピソード | ||
+ | :尚州市の山林緑地課内にはコッカム管理係という部署がある。韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2016年10月の取材時、コッカム管理係の係長から名刺をもらって部署の存在を知り、尚州市のコッカムにかける姿勢にいたく感動した<ref>[http://sangju.go.kr/dept/main.jsp?dept_code=DEPT_FOREST&code=DEPT_FOREST_2&home_url=dept 부서주요업무] 、尚州市山林緑地課ウェブサイト、2016年12月26日閲覧</ref>。 | ||
== 代表的な酒類・飲料 == | == 代表的な酒類・飲料 == | ||
=== 尚州市のマッコリ === | === 尚州市のマッコリ === | ||
+ | 銀尺醸造場(은척양조장)のウンジャコルタッペギ(은자골탁배기)や、カラム酒造(가람주조)のプンアク米マッコリ(풍악쌀막걸리)、綾巌醸造場のオルムコル米マッコリ(얼음골쌀막걸리)などがある。 | ||
*ウンジャコルタッペギ(은자골탁배기) | *ウンジャコルタッペギ(은자골탁배기) | ||
− | : | + | :銀尺面鳳中里の「銀尺醸造場(은척양조장)」が製造する銘柄で、尚州市産の三白米(삼백미)を原料に自家製の麹([[누룩]])を用いる。2016年には農林畜産食品部が推進する「訪ね行く醸造場([[찾아가는 양조장]])」にも選定された。 |
== 飲食店情報 == | == 飲食店情報 == | ||
以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。 | 以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。 | ||
− | * | + | *名実尚柿韓牛広報テーマタウン店(명실상감한우 홍보테마타운점) |
:住所:慶尚北道尚州市嶺南第一路1119-9(軒新洞45-1) | :住所:慶尚北道尚州市嶺南第一路1119-9(軒新洞45-1) | ||
:住所:경상북도 상주시 영남제일로 1119-9(헌신동 45-1) | :住所:경상북도 상주시 영남제일로 1119-9(헌신동 45-1) | ||
67行目: | 82行目: | ||
:料理:ハヌグイ、ロースピョンチェ | :料理:ハヌグイ、ロースピョンチェ | ||
− | * | + | *元祖チチョン食堂(원조지천식당) |
:住所:慶尚北道尚州市南尚州路1460(梁村洞569-7) | :住所:慶尚北道尚州市南尚州路1460(梁村洞569-7) | ||
:住所:경상북도 상주시 남상주로 1460(양촌동 569-7) | :住所:경상북도 상주시 남상주로 1460(양촌동 569-7) | ||
80行目: | 95行目: | ||
== 外部リンク == | == 外部リンク == | ||
− | + | ;関連サイト | |
*[http://www.sangju.go.kr/tour/ 観光尚州(韓国語)] | *[http://www.sangju.go.kr/tour/ 観光尚州(韓国語)] | ||
+ | ;制作者関連サイト | ||
+ | *[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト) | ||
+ | *[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール) | ||
== 関連項目 == | == 関連項目 == | ||
− | |||
{{DEFAULTSORT:さんしゆしのりようり}} | {{DEFAULTSORT:さんしゆしのりようり}} | ||
[[Category:韓食ペディア]] | [[Category:韓食ペディア]] | ||
[[Category:慶尚北道・大邱市の料理]] | [[Category:慶尚北道・大邱市の料理]] | ||
+ | *[[カルビタン(牛カルビのスープ/갈비탕)]] | ||
+ | *[[ユッケ(牛刺身/육회)]] | ||
+ | *[[カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)]] |
2024年11月17日 (日) 03:55時点における最新版
この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。 |
尚州市(サンジュシ、상주시)は慶尚北道に位置する地域。本ページでは尚州市の料理、特産品について解説する。
地域概要
尚州市は慶尚北道の中西部に位置する地域。市の北部は慶尚北道の聞慶市、北東部は慶尚北道の醴泉郡、西部は慶尚北道の義城郡、南東部は慶尚北道の亀尾市、南部は慶尚北道の金泉市、南西部は忠清北道の永同郡の、西部は忠清北道の沃川郡と報恩郡、北西部は忠清北道の槐山郡と接する。人口は10万0159人(2018年7月)[1]。市の西部には小白山脈が連なり、忠清北道の報恩郡、槐山郡へとまたがる俗離山(ソンニサン、속리산)は景勝地として有名である。東部の洛東江(ナクトンガン、낙동강)沿いには平野部が広がり、古くからの穀倉地帯として栄えた。代表的な観光地としては、俗離山の展望スポットである文蔵台(ムンジャンデ、문장대)や、洛東江に臨み「洛東江第1景」と称えられる擎天台(キョンチョンデ、경천대)があり、また自転車の町としても知られることから尚州自転車博物館がある。2011年6月には咸昌邑(ハムチャンウプ、합창읍)、利安面(イアンミョン、이안면)、恭倹面(コンガムミョン、공검면)の3地区がスローシティとして認定された。ソウル市から尚州市までは、ソウル高速バスターミナル、東ソウル総合ターミナルから尚州総合バスターミナルまで高速バスで約2時間30分の距離である。
- 慶尚道の地名由来
- 朝鮮半島の南東部を占める地域を広く慶尚道と呼び、高麗時代の1314年に慶州市、尚州市の頭文字を取って名付けられた。
食文化の背景
676年に新羅が半島を統一すると、687年に全国を9つの州に分割して統治を行った。その州のひとつが尚州(沙伐州)である。その当時から中東部の中心地域として栄え、高麗時代(918~1392年)にも地方行政組織である12牧(後に8牧)のひとつに尚州が含まれている。また高麗時代後期から現在に至るまで半島の南東部は慶尚道と呼ばれているが、この名称も慶州市と尚州市の頭文字から取られたものである。こうした歴史的な背景を踏まえ、尚州市の両班家に伝わった料理書『是議全書』の料理を再現することにも力を入れている。地理的には小白山脈のふもとで栽培されるリンゴ、ナシ、ブドウ、柿などの果物類や、洛東江流域で生産される米などが名産として知られ、「大韓民国農業の首都」を掲げている。また、古くから養蚕も盛んにおこなわれており、名産品である米、干し柿、カイコの3つを三白(サムベク、삼백)と総称して尚州市の象徴としている。
代表的な料理
尚州市は韓牛の名産地であり、柿の皮を食べさせて飼育した名実尚柿韓牛(ミョンシルサンガムハヌ、명실상감한우)の焼肉が名物である。
ハヌグイ(韓牛の焼肉/한우구이)
- 尚州畜産農協では尚州市の特産物である干し柿の生産過程で出る柿の皮を利用し、韓牛の飼料とする試みを2000年初め頃から始めた。当初、「尚州の柿を食べる韓牛」としてブランド化を進め、後に「名実尚柿韓牛」との名称に変更した。柿の皮を利用した飼料の製造方法は特許登録もされている[2]。2009年10月には軒新洞(ホンシンドン、헌신동)に尚州畜産農協が直接運営する焼肉店「名実尚柿韓牛広報テーマタウン店(명실상감한우 홍보테마타운점)」をオープンした[3]。同店では名実尚柿韓牛の焼肉やユッケ(牛刺身/육회)、ロースピョンチェ(炙り薄切り肉の野菜巻き、로스편채)などのメニューを味わえる。また、ランチ200食限定のサンガムハヌタン(牛カルビのスープ、상감한우탕)は、これを目当てに行列ができるほどの人気を誇る。
カルグクス(韓国式の手打ちウドン/칼국수)
- 南尚州インターチェンジ近くには飲食店が集まっており、カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)が名物として知られる。カルグクスとともにテジヤンニョムソクセグイ(豚肉の味付け網焼き、돼지양념석쇠구이)を提供する「元祖チチョン食堂(원조지천식당)」と、テジスユク(茹で豚、돼지수육)を提供する「新チチョン食堂(새지천식당)」の2軒が有名である。
代表的な特産品
洛東江流域で生産される米や、全国の6割以上を生産する干し柿、またリンゴ、ブドウなどの果物を多く生産する。
コッカム(干し柿/곳감)
尚州市は干し柿の名産地であり、現在は全国の6割以上を生産する[4]。その歴史は朝鮮時代までさかのぼり、『睿宗実録』の1468年11月13日の項目には、文官である尹孝孫(윤효손)の上疏文に「今也乾柿之貢分於尙州(今は干し柿の貢物を尚州に分けると決めた)」との記録が残る[5]。また、1530年に編纂された地理志『新増東国輿地勝覧』の第28巻「慶尚道 尚州牧」の項目にも名産(土産)として柿が記されている[6]。
- 品種
- 主にトゥンシ(둥시)と呼ばれる品種が用いられる。トゥンシとは「丸い(둥글다)」「柿(시)」という意味である。また、タンニンが表面に染み出て黒ずんだものをモッカム(墨柿、먹감)と呼び、これが干し柿を作るのにもっともよいと評価される。
- 製造方法
- 干し柿製造メーカーの「尚州コッカム名家(상주 곶감명가)」によれば皮を剥いた柿を専用のハンガーにかけ、45~60日程度乾燥させる。水分を5~60%程度まで減らしたものをパンゴンシ(半乾柿、반건시)と呼び、35~40%程度まで減らしたものをコンシ(乾柿、건시)と呼ぶ。また、種を取って食べやすい大きさに切って干したものをカムマルレンイ(切干柿、감말랭이)と呼ぶ(八田靖史の取材記録より、2016年10月30日)。
- 尚州コッカム名家(상주 곶감명가)
- 住所:慶尚北道尚州市仁坪1キル21-14(仁坪洞1-1)
- 住所:경상북도 상주시 인평1길 21-14(인평동 1-1)
- 電話:054-534-7273
- 旬
- 例年10月中旬から干し柿の生産が始まり、12月頃から出荷が始まる。12月から2月頃までが旬。それ以降は冷凍したものが流通する。
- 輸出
- アメリカやタイなどに輸出をしている。
- 関連施設
- 尚州コッカム流通センター(상주곶감유통센터)
- 軒新洞には尚州コッカム流通センターは売店を併設しており、干し柿をはじめ、柿酢、柿醤油、柿菓子、柿マッコリなどの商品も販売する。
- 尚州コッカム流通センター(상주곶감유통센터)
- 住所:慶尚北道尚州市嶺南第一路1154(軒新洞214)
- 住所:경상북도 상주시 영남제일로 1154(헌신동 214)
- 電話:054-536-0907
- 尚州コッカム公園(상주곶감공원)
- 素陰里には干し柿をテーマにした公園がある。園内には柿をテーマにしたオブジェなどが展示されている。
- 樹齢750年の柿の木(하늘아래 첫 감나무)
- 素陰里には樹齢750年以上の柿の木がある。いまなお実をつけ、秋には収穫されて干し柿が作られる。
- 祭り
- 毎年12月には尚州コッカム祭り(상주곶감축제)が開催される[7]。
- エピソード
- 尚州市の山林緑地課内にはコッカム管理係という部署がある。韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2016年10月の取材時、コッカム管理係の係長から名刺をもらって部署の存在を知り、尚州市のコッカムにかける姿勢にいたく感動した[8]。
代表的な酒類・飲料
尚州市のマッコリ
銀尺醸造場(은척양조장)のウンジャコルタッペギ(은자골탁배기)や、カラム酒造(가람주조)のプンアク米マッコリ(풍악쌀막걸리)、綾巌醸造場のオルムコル米マッコリ(얼음골쌀막걸리)などがある。
- ウンジャコルタッペギ(은자골탁배기)
- 銀尺面鳳中里の「銀尺醸造場(은척양조장)」が製造する銘柄で、尚州市産の三白米(삼백미)を原料に自家製の麹(누룩)を用いる。2016年には農林畜産食品部が推進する「訪ね行く醸造場(찾아가는 양조장)」にも選定された。
飲食店情報
以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。
- 名実尚柿韓牛広報テーマタウン店(명실상감한우 홍보테마타운점)
- 住所:慶尚北道尚州市嶺南第一路1119-9(軒新洞45-1)
- 住所:경상북도 상주시 영남제일로 1119-9(헌신동 45-1)
- 電話:054-531-9915
- 料理:ハヌグイ、ロースピョンチェ
- 元祖チチョン食堂(원조지천식당)
- 住所:慶尚北道尚州市南尚州路1460(梁村洞569-7)
- 住所:경상북도 상주시 남상주로 1460(양촌동 569-7)
- 電話:054-532-1715
- 料理:カルグクス、テジヤンニョムソクセグイ
エピソード
- 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2016年10月に初めて尚州市を訪れた。慶尚北道広報大使が取材、執筆する観光冊子『GB-Story Vol.3』にはこの時の取材をもとに、干し柿や名実尚柿韓牛を中心とした話が掲載されている。
脚注
- ↑ 주민등록 인구 및 세대현황 、行政安全部ウェブサイト、2018年8月14日閲覧
- ↑ 브랜드소개 、尚州畜産農協ウェブサイト、2016年12月25日閲覧
- ↑ 홍보테마타운 소개 、尚州畜産農協ウェブサイト、2016年12月25日閲覧
- ↑ 상주의 농특산물 、尚州市ウェブサイト、2016年12月24日閲覧
- ↑ 상제·학교·공법·사창·정병 유방에 관한 윤효손의 상소문 、国史編纂委員会「朝鮮王朝実録」、2016年12月24日閲覧
- ↑ 신증동국여지승람 제28권 경상도 상주목 、韓国の知識コンテンツ、2016年12月24日閲覧
- ↑ 상주곶감축제 、尚州コッカム祭りウェブサイト、2016年12月26日閲覧
- ↑ 부서주요업무 、尚州市山林緑地課ウェブサイト、2016年12月26日閲覧
外部リンク
- 関連サイト
- 制作者関連サイト
- 韓食生活(韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
- 八田靖史プロフィール(八田靖史のプロフィール)