「サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)」の版間の差分

編集の要約なし
 
(同じ利用者による、間の20版が非表示)
4行目: 4行目:
  
 
== 名称 ==
 
== 名称 ==
サムゲタン([[삼계탕]])は漢字で「参鶏湯、蔘鶏湯」と書き、サム(삼)は高麗人参([[인삼]])、ゲ(계)は鶏、タン([[탕]])はスープを表す。かつてはケサムタン(鶏参湯、[[계삼탕]])とも呼んだ。サムゲタンのサム(삼)は1字で高麗人参を意味する「蔘」を用いるのが正しいが、一般的には「参鶏湯」が広く使用されている。カタカナでは「サンゲタン」と表記する例も見られる。本辞典においては「サムゲタン」を使用する。発音表記は[삼계탕/삼게탕]。
+
[[ファイル:14112004.JPG|thumb|300px|高麗人参]]
 +
サムゲタン([[삼계탕]])は漢字で「参鶏湯、蔘鶏湯」と書き、サム(삼)は高麗人参([[인삼]])、ゲ(계)は鶏、タン([[탕]])はスープを表す。かつてはケサムタン(鶏参湯、[[계삼탕1|계삼탕]])とも呼んだ。サムゲタンの「サム」は1字で高麗人参を意味する「蔘」を用いるのが正しいが、一般的には「参鶏湯」が広く使用されている。カタカナでは「サンゲタン」と表記する例も見られる。本辞典においては「サムゲタン」を使用する。発音表記は[삼계탕/삼게탕]。
  
 
*日本語訳
 
*日本語訳
 
:料理名が、高麗人参、鶏、スープを意味するため、「高麗人参と鶏のスープ」、あるいは「高麗人参と鶏の鍋」といった訳がまず考えられる。そのうえで鶏は生後30~45日程度のものを用いるので、単に鶏とせず、「ひな鶏」「若鶏」といった用語に置き換えることも多い。やや説明調であるが、「鶏の腹に高麗人参やもち米、ナツメなどを詰めて煮込んだ料理」と調理法に触れる例も多く見られる。本辞典では簡潔さを優先して「ひな鶏のスープ」としているが、料理名からも高麗人参は不可欠の食材なので、できればそちらも加えるのが望ましい。
 
:料理名が、高麗人参、鶏、スープを意味するため、「高麗人参と鶏のスープ」、あるいは「高麗人参と鶏の鍋」といった訳がまず考えられる。そのうえで鶏は生後30~45日程度のものを用いるので、単に鶏とせず、「ひな鶏」「若鶏」といった用語に置き換えることも多い。やや説明調であるが、「鶏の腹に高麗人参やもち米、ナツメなどを詰めて煮込んだ料理」と調理法に触れる例も多く見られる。本辞典では簡潔さを優先して「ひな鶏のスープ」としているが、料理名からも高麗人参は不可欠の食材なので、できればそちらも加えるのが望ましい。
  
:韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、「高麗人参とひな鶏のスープ」を多く使用している。サムゲタンはかつて「ケサムタン(鶏参湯、[[계삼탕1|계삼탕]])」とも呼ばれたが、鶏よりも高麗人参のほうが主役だとして「鶏」と「参」の順序を入れ替えたとのエピソードがあるため、ひな鶏と高麗人参」ではなく「高麗人参とひな鶏」の順序に配慮しながら訳すのが正しいとも主張している<ref>八田靖史, 2023, 『ラジオ まいにちハングル講座 2023年7月号(韓食ものがたり)』, NHK出版, P94</ref>。
+
:韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、「高麗人参とひな鶏のスープ」を多く使用している。サムゲタンはかつて「ケサムタン(鶏参湯、[[계삼탕1|계삼탕]])」とも呼ばれたが、高麗人参のほうを重要視して、「鶏」と「参」の順序を入れ替えたとのエピソードがあるため、「ひな鶏と高麗人参」ではなく順序に配慮しながら「高麗人参とひな鶏」と訳すのが正しいとも主張している<ref>八田靖史, 2023, 『ラジオ まいにちハングル講座 2023年7月号(韓食ものがたり)』, NHK出版, P94</ref>。
 +
 
 +
=== ケサムタン(鶏参湯) ===
 +
:サムゲタンは、かつてケサムタン(鶏参湯、[[계삼탕1|계삼탕]])と呼ばれたが、高麗人参のほうを重要視して、サムゲタンと入れ替えたとのエピソードがある。この話は1989年に作家の趙豊衍(チョ・プンヨン、조풍연)が出版した『ソウル雑学辞典(서울 잡학 사전)』から引用されることが多く、同書では「ケサムタンが『サムゲタン』になったのは高麗人参が大衆化し、外国人たちが高麗人参の価値を認めるようになって、サムを上に置いて名称を変えたものと考えられる」<ref>趙豊衍, 1989, 『ソウル雑学辞典(서울 잡학 사전)』, 正東出版社, P431</ref>と述べられている。
  
 
== 概要 ==
 
== 概要 ==
 +
[[ファイル:24082101.JPG|thumb|300px|サムゲタン。左上に高麗人参酒が添えられている]]
 
サムゲタンは、ひな鶏の腹にもち米、高麗人参、ナツメ、ニンニク、銀杏などを詰めて煮込んで作る。味付けはごく薄い塩味にとどめ、食べる人が卓上の塩やコショウを好みで加える。主に専門店で食べられるメニューであるが、一般の食堂でも出すところがある。夏負けを防ぐスタミナ料理として食べられることが多く、[[ポシンタン(犬肉の鍋/보신탕)]]とともに、伏日([[복날]])に食べる料理として知られる。伏日は三伏([[삼복]])とも呼び、夏至から数えて3度目の庚の日である「初伏([[초복]])」と、4度目の庚の日である「中伏([[중복]])」、立秋後初めての庚の日である「末伏([[말복]])」の総称であり、1年の中で最も暑い時期とされる。類似の料理としては、ハーフサイズの[[パンゲタン(半羽のサムゲタン/반계탕)]]や、烏骨鶏を用いて作る[[オゴルゲタン(烏骨鶏のサムゲタン/오골계탕)]]がある。
 
サムゲタンは、ひな鶏の腹にもち米、高麗人参、ナツメ、ニンニク、銀杏などを詰めて煮込んで作る。味付けはごく薄い塩味にとどめ、食べる人が卓上の塩やコショウを好みで加える。主に専門店で食べられるメニューであるが、一般の食堂でも出すところがある。夏負けを防ぐスタミナ料理として食べられることが多く、[[ポシンタン(犬肉の鍋/보신탕)]]とともに、伏日([[복날]])に食べる料理として知られる。伏日は三伏([[삼복]])とも呼び、夏至から数えて3度目の庚の日である「初伏([[초복]])」と、4度目の庚の日である「中伏([[중복]])」、立秋後初めての庚の日である「末伏([[말복]])」の総称であり、1年の中で最も暑い時期とされる。類似の料理としては、ハーフサイズの[[パンゲタン(半羽のサムゲタン/반계탕)]]や、烏骨鶏を用いて作る[[オゴルゲタン(烏骨鶏のサムゲタン/오골계탕)]]がある。
  
 
=== 食べ方 ===
 
=== 食べ方 ===
:味付けは薄味にとどめてあることが多く、好みによって卓上の塩やコショウを加えて食べる。小皿に入って塩が出てくることもあり、鶏の身をつけて食べてもよい。丸ごとのひな鳥を用いるため、慣れないと食べ方が難しいが、スプーンで突き崩して解体しておくと食べやすい。一例として、まず背中の中心にスプーンを突き入れて前後に分け、次いで関節の継ぎ目から左右のモモ肉、手羽肉を外すと食べやすい。中には全体を細かく突き崩して身をほぐし、スープやもち米と一体化させて食べる人もる。韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、身をほぐしながらヤゲン軟骨を発掘するのを密かな楽しみとしている。
+
:味付けは薄味にとどめてあることが多く、好みによって卓上の塩やコショウを加えて食べる。小皿に入って塩が出てくることもあり、鶏の身をつけて食べてもよい。丸ごとのひな鳥を用いるため、慣れないと食べ方が難しいが、スプーンで突き崩して解体すると食べやすくなる。一例として、まず背中の中心にスプーンを突き入れて前後に分け、次いで関節の継ぎ目から左右のモモ肉、手羽肉と外していく方法がある。中には全体を細かく突き崩して身をほぐし、スープやもち米と一体化させて食べる人もる。韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、身をほぐしながらヤゲン軟骨を発掘するのを密かな楽しみとしている。
  
 
:;高麗人参酒
 
:;高麗人参酒
24行目: 29行目:
  
 
=== 具 ===
 
=== 具 ===
:ひな鶏のほか、高麗人参([[인삼]])、もち米([[찹쌀]])、ナツメ([[대추]])、栗([[밤]])、銀杏([[은행]])、ニンニク([[마늘]])、クコの実([[구기자]])、松の実([[잣]])などを用いる。高麗人参は6年根を最高級とするが、一般的には3~4年根を使用することが多い。韓方材のキバナオウギ([[황기]])や鹿角([[녹각]])などを一緒に煮込むことも多く、具のように入って出てくる場合もあるが、食用とするものではない(そもそも固くて食べられない)。
+
[[ファイル:24082102.JPG|thumb|300px|サムゲタンに入る具材の例]]
 +
:ひな鶏のほか、高麗人参([[인삼]])、もち米([[찹쌀]])、緑豆([[녹두]])ナツメ([[대추]])、栗([[밤]])、銀杏([[은행]])、ニンニク([[마늘]])、クコの実([[구기자]])、松の実([[잣]])などを用いる。高麗人参は6年根を最高級とするが、一般的には3~4年根を使用することが多い。韓方材のキバナオウギ([[황기]])や鹿角([[녹각]])などを一緒に煮込むことも多く、具のように入って出てくる場合もあるが、食用とするものではない(そもそも固くて食べられない)。
  
 
:;トッピング
 
:;トッピング
30行目: 36行目:
  
 
:;ナツメは食べてもよい?
 
:;ナツメは食べてもよい?
:具として入っているナツメは、他の食材から毒となる悪い成分を吸うために入れられているため、食べないほうがいいとのうんちくがある。これは根拠のない俗説であり、食べてもまったく問題はない。
+
:具として入っているナツメは、他の食材から毒となる悪い成分を吸うために入れられているため、食べないほうがよいと語られる場合がある。実際は食べてもまったく問題はない。
  
 
=== 伏日(복날)===
 
=== 伏日(복날)===
 +
[[ファイル:24082103.JPG|thumb|300px|伏日にはサムゲタン専門店に行列ができる]]
 
:伏日(ポンナル、[[복날]])は、「初伏(チョボク、[[초복]])」「中伏(チュンボク、[[중복]])」「末伏(マルボク、[[말복]])」の総称。夏至から数えて3度目の庚(かのえ)の日を初伏、4度目の庚の日を中伏、立秋を過ぎて最初の庚の日を末伏と呼び、これを総称して「三伏(サムボク、[[삼복]])」とも呼ぶ。伏日は陰陽五行思想に基づいた習慣であり、1年の中でもっとも暑い時期であることから、強い陽気に押されて陰気が地表近くに「伏」せている「日」を指す。陰気が濃密になることにより、人間に害をなす鬼神が横行しやすくなるため、体調を崩す(夏負けする)と考えられる。その対策として栄養価の高い料理を食べることが推奨され、伏日の代表的な料理には、サムゲタンや、[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)]]、[[タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)]]、[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]、[[ポシンタン(犬肉の鍋/보신탕)]]、[[チュオタン(ドジョウ汁/추어탕)]]などがあげられる。伏日はほぼ10日間隔となるが、暦の関係で中伏と末伏は20日間隔になることもあり、これを越伏(ウォルボク、[[월복]])と呼ぶ。末伏は立秋と重なることもある。よく似た習慣として日本の土用丑があるが、十干十二支に「庚」と「丑」の組み合わせはなく、伏日と土用丑が重なることはない。
 
:伏日(ポンナル、[[복날]])は、「初伏(チョボク、[[초복]])」「中伏(チュンボク、[[중복]])」「末伏(マルボク、[[말복]])」の総称。夏至から数えて3度目の庚(かのえ)の日を初伏、4度目の庚の日を中伏、立秋を過ぎて最初の庚の日を末伏と呼び、これを総称して「三伏(サムボク、[[삼복]])」とも呼ぶ。伏日は陰陽五行思想に基づいた習慣であり、1年の中でもっとも暑い時期であることから、強い陽気に押されて陰気が地表近くに「伏」せている「日」を指す。陰気が濃密になることにより、人間に害をなす鬼神が横行しやすくなるため、体調を崩す(夏負けする)と考えられる。その対策として栄養価の高い料理を食べることが推奨され、伏日の代表的な料理には、サムゲタンや、[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)]]、[[タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)]]、[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]、[[ポシンタン(犬肉の鍋/보신탕)]]、[[チュオタン(ドジョウ汁/추어탕)]]などがあげられる。伏日はほぼ10日間隔となるが、暦の関係で中伏と末伏は20日間隔になることもあり、これを越伏(ウォルボク、[[월복]])と呼ぶ。末伏は立秋と重なることもある。よく似た習慣として日本の土用丑があるが、十干十二支に「庚」と「丑」の組み合わせはなく、伏日と土用丑が重なることはない。
 
:伏日が庚の日であるのは陰陽五行思想をもとに、庚が五行(木・火・土・金・水)の「金」、五季のうち夏が「火」に相当し、「火克金(火は金属を溶かす=火が強まると金が弱まる)」の考え方から、庚の日はもっとも盛夏の影響を受ける日とされる。伏日には弱まった「金」の要素を補充することが好ましく、いずれも「金」に相当する五畜の「犬」、五菜の「葱」、五味の「辛味」を掛け合わせた[[ポシンタン(犬肉の鍋/보신탕)]]が、かつては伏日の代表的な料理であった(各要素は資料によって異なる場合がある)。しかし、近年は犬肉を食肉とすることへの忌避が強まったことから、韓国ではサムゲタンなどの鶏料理や、[[ポシンタン(犬肉の鍋/보신탕)]]の犬肉を牛肉で代替した[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]などを食べる人が多い。[[北朝鮮の料理|朝鮮民主主義人民共和国]]では、伏日に[[ポシンタン(犬肉の鍋/보신탕)]]を食べる習慣が残っている。
 
:伏日が庚の日であるのは陰陽五行思想をもとに、庚が五行(木・火・土・金・水)の「金」、五季のうち夏が「火」に相当し、「火克金(火は金属を溶かす=火が強まると金が弱まる)」の考え方から、庚の日はもっとも盛夏の影響を受ける日とされる。伏日には弱まった「金」の要素を補充することが好ましく、いずれも「金」に相当する五畜の「犬」、五菜の「葱」、五味の「辛味」を掛け合わせた[[ポシンタン(犬肉の鍋/보신탕)]]が、かつては伏日の代表的な料理であった(各要素は資料によって異なる場合がある)。しかし、近年は犬肉を食肉とすることへの忌避が強まったことから、韓国ではサムゲタンなどの鶏料理や、[[ポシンタン(犬肉の鍋/보신탕)]]の犬肉を牛肉で代替した[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]などを食べる人が多い。[[北朝鮮の料理|朝鮮民主主義人民共和国]]では、伏日に[[ポシンタン(犬肉の鍋/보신탕)]]を食べる習慣が残っている。
48行目: 55行目:
  
 
== 歴史 ==
 
== 歴史 ==
 +
[[ファイル:22122817.JPG|thumb|300px|タッペクスク]]
 
サムゲタンの詳細な発祥の経緯は明らかになっていない。サムゲタンの歴史を語る場合、類似の料理である[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)]]や、ヨンゲペクスク(ひな鶏の水煮、[[영계백숙]])、タックッ(鶏のスープ、[[닭국]])などをルーツと考えて紐解く場合と、朝鮮時代より富裕層に飲用されていた薬湯の参鶏湯([[삼계탕2|삼계탕]])、または鶏参湯([[계삼탕2|계삼탕]])から転じたとする場合があり、この両者を複合的に考えることも多い。人文学者の周永河(チュ・ヨンハ、주영하)は著書『食卓の上の韓国史』の中で、「参鶏湯という食べ物が本格的に飲食店のメニューとして登場するのは、一九五〇年代なかば以降」<ref>周永河, 2021, 『食卓の上の韓国史』, 慶應義塾大学出版会, P101</ref>と述べている。
 
サムゲタンの詳細な発祥の経緯は明らかになっていない。サムゲタンの歴史を語る場合、類似の料理である[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)]]や、ヨンゲペクスク(ひな鶏の水煮、[[영계백숙]])、タックッ(鶏のスープ、[[닭국]])などをルーツと考えて紐解く場合と、朝鮮時代より富裕層に飲用されていた薬湯の参鶏湯([[삼계탕2|삼계탕]])、または鶏参湯([[계삼탕2|계삼탕]])から転じたとする場合があり、この両者を複合的に考えることも多い。人文学者の周永河(チュ・ヨンハ、주영하)は著書『食卓の上の韓国史』の中で、「参鶏湯という食べ物が本格的に飲食店のメニューとして登場するのは、一九五〇年代なかば以降」<ref>周永河, 2021, 『食卓の上の韓国史』, 慶應義塾大学出版会, P101</ref>と述べている。
  
88行目: 96行目:
 
:;「高麗参鶏湯」の開業
 
:;「高麗参鶏湯」の開業
 
:[[ソウル市の料理|ソウル市]]の中区西小門洞(チュング ソソムンドン、중구 서소문동)に本店を構える「高麗参鶏湯(고려삼계탕)」は、現存するもっとも古いサムゲタンの専門店として知られる。1960年に明洞で創業ののち、1978年に現在の場所へと移転した<ref>[https://www.krsamgyetang.com/main/?skin=sub_01_01.html 고려삼계탕/브랜드 소개] 、高麗参鶏湯公式ウェブサイト、2024年8月16日閲覧</ref>。
 
:[[ソウル市の料理|ソウル市]]の中区西小門洞(チュング ソソムンドン、중구 서소문동)に本店を構える「高麗参鶏湯(고려삼계탕)」は、現存するもっとも古いサムゲタンの専門店として知られる。1960年に明洞で創業ののち、1978年に現在の場所へと移転した<ref>[https://www.krsamgyetang.com/main/?skin=sub_01_01.html 고려삼계탕/브랜드 소개] 、高麗参鶏湯公式ウェブサイト、2024年8月16日閲覧</ref>。
 +
 +
=== 1990年代 ===
 +
==== パンゲタンの登場 ====
 +
:ハーフサイズのサムゲタンを[[パンゲタン(半羽のサムゲタン/반계탕)]]と呼ぶ。1998年2月22日付の「東亜日報」に、「『[[パンゲタン(半羽のサムゲタン/반계탕)|パンゲタン]]』をご存じですか」という記事が掲載されており、アジア通貨危機による経済不安から、証券街として知られる[[ソウル市の料理]]の汝矣島(ヨイド、여의도)で飲食店の値下げが相次いでいることを伝えている。事例のひとつとして、「サムゲタン専門店の『Panax(파낙스)』では、鶏半羽の『[[パンゲタン(半羽のサムゲタン/반계탕)]]』を5000ウォンで出している。2週間前までは9000ウォンのサムゲタンのみだった」<ref>[https://newslibrary.naver.com/viewer/index.naver?articleId=1998022200209102001 '반계탕'을 아시나요] 、NAVERニュースライブラリー(東亜日報1998年2月22日記事)、2024年8月21日閲覧</ref>と紹介しており、[[パンゲタン(半羽のサムゲタン/반계탕)|パンゲタン]]が値下げ対応の一環として考案された可能性を推測できる。
  
 
== 種類 ==
 
== 種類 ==
 +
[[ファイル:22040404.JPG|thumb|300px|オゴルゲタン]]
 
:;鶏の種類
 
:;鶏の種類
 
:*[[オゴルゲタン(烏骨鶏のサムゲタン/오골계탕)]]
 
:*[[オゴルゲタン(烏骨鶏のサムゲタン/오골계탕)]]
  
 
:;追加素材の種類
 
:;追加素材の種類
 +
[[ファイル:24082104.JPG|thumb|300px|チョンボクサムゲタン]]
 
:*ノクトゥサムゲタン(緑豆入りのサムゲタン、[[녹두삼계탕)]]
 
:*ノクトゥサムゲタン(緑豆入りのサムゲタン、[[녹두삼계탕)]]
 
:*ナクチサムゲタン(テナガダコ入りのサムゲタン、[[낙지삼계탕)]]
 
:*ナクチサムゲタン(テナガダコ入りのサムゲタン、[[낙지삼계탕)]]
146行目: 160行目:
 
;「グレイス」の創業
 
;「グレイス」の創業
 
:1985年6月に東京、麻布十番でサムゲタン専門店の「グレイス」が創業した<ref>[https://samgetang.jp/%E7%A5%9D30%E5%91%A8%E5%B9%B4%E8%A8%98%E5%BF%B5/ 祝30周年記念] 、グレイス公式ウェブサイト、2024年8月20日閲覧</ref>。
 
:1985年6月に東京、麻布十番でサムゲタン専門店の「グレイス」が創業した<ref>[https://samgetang.jp/%E7%A5%9D30%E5%91%A8%E5%B9%B4%E8%A8%98%E5%BF%B5/ 祝30周年記念] 、グレイス公式ウェブサイト、2024年8月20日閲覧</ref>。
 +
 +
=== 第2次韓流との連動 ===
 +
:日本における第2次韓流は2010~12年頃に盛り上がり、K-POP、特にガールズグループの躍進が大きく注目された。同時期にはBBクリームやカタツムリクリームなどの化粧品が話題となったこともあり、韓食ペディアの執筆者である八田靖史はこの時期の韓国料理トレンドを「ガールズグループが象徴する韓国人の美と健康が大きなキーワード」<ref>桑畑優香、八田靖史、まつもとたくお、吉野太一郎, 2024, 『韓流ブーム(ハヤカワ新書)』, 早川書房, P77</ref>と分析している。代表的な料理に薬膳料理のサムゲタンがあるほか、必須アミノ酸を多く含んで肌美容によいと話題になった[[プゴクッ(干しダラのスープ/북어국)]]や、乳酸菌の豊富さがクローズアップされた[[マッコリ(韓国式の濁酒/막걸리)]]、果実酢の「ホンチョ(紅酢、[[홍초]])」などがあげられる。
 +
 +
:サムゲタンはこの時期に冷凍食品として注目され、東京、新大久保の韓国スーパー「ソウル市場」が火付け役となった。メディアで取り上げられることも多く、2010年9月にお笑いタレントの劇団ひとりが『はなまるマーケット』(TBS系列)で、2011年12月に美容家のIKKOが『笑っていいとも!』で紹介したことなどが大きな話題となった。
  
 
== 地域 ==
 
== 地域 ==
31,667

回編集