「牙山市の料理」の版間の差分

提供: 韓食ペディア
ナビゲーションに移動 検索に移動
 
(同じ利用者による、間の46版が非表示)
1行目: 1行目:
 
{{Notice}}
 
{{Notice}}
  
'''牙山市'''(アサンシ、아산시)は忠清南道に位置する地域。本ページでは牙山市の料理、特産品について解説する。
+
'''牙山市'''(アサンシ、아산시)は[[忠清南道の料理|忠清南道]]に位置する地域。本ページでは牙山市の料理、特産品について解説する。
  
[[ファイル:15040901.JPG|thumb|400px|江華支石墓]]
+
[[ファイル:15062501.JPG|thumb|400px|外岩民俗村]]
  
 
== 地域概要 ==
 
== 地域概要 ==
牙山市は忠清南道の北部に位置し、同じ忠清南道の天安市、公州市、礼山郡、唐津市、京畿道の平沢市と接する。人口は30万8007人(2015年4月)<ref>[http://www.asan.go.kr/population 인구현황] 、牙山市ウェブサイト、2015年5月22日閲覧</ref>。韓国でも有数の温泉地として知られ、温陽温泉、牙山温泉、道高温泉などを有する。中でも温陽温泉の歴史は記録上、百済時代、統一新羅時代までさかのぼるとされ、高麗時代にはこの地域を温水郡と呼んだ。朝鮮時代には歴代の王も温陽温泉を訪れ、休養をしたり、病気の治療を行っている<ref>[http://www.asan.go.kr/culture/node/6786 1300년 온천역사] 、牙山市ウェブサイト、2015年5月22日閲覧</ref>。ソウル(東ソウルバスターミナル、南部バスターミナル)から高速バスで約2時間の距離。またはソウル駅から高速鉄道のKTXに乗れば天安牙山駅まで約40分で到着する。ソウルの地下鉄1号線が温陽温泉駅まで伸びているので、時間はかかるものの例えば市庁駅から乗ると約2時間20分で到着する。
+
牙山市は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の北部に位置する地域。市の北部は[[京畿道の料理|京畿道]]の[[平沢市の料理|平沢市]]、東部は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の[[天安市の料理|天安市]]、南部は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の[[公州市の料理|公州市]]、南西部は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の[[礼山郡の料理|礼山郡]]、西部は[[忠清南道の料理|忠清南道]]の[[唐津市の料理|唐津市]]と接する。また、市の北西部は牙山湾(아산만)に面し、黄海へとつながる。人口は33万6690人(2023年3月)<ref>[https://jumin.mois.go.kr/ 주민등록 인구 및 세대현황] 、行政安全部ウェブサイト、2023年4月9日閲覧</ref>。韓国でも有数の温泉地として知られ、温陽温泉(オニャンオンチョン、온양온천)、牙山温泉(アサンオンチョン、아산온천)、道高温泉(トゴオンチョン、도고온천)などを有する。中でも温陽温泉の歴史は記録上、百済時代、統一新羅時代までさかのぼるとされ、高麗時代にはこの地域を温水郡(オンスグン、온수군)と呼んだ歴史もある。朝鮮時代には歴代の王も温陽温泉を訪れ、休養をしたり、病気の治療を行っている<ref>[http://www.asan.go.kr/culture/node/6786 1300년 온천역사] 、牙山市ウェブサイト、2015年5月22日閲覧</ref>。[[ソウル市の料理|ソウル市]](東ソウルバスターミナル、南部バスターミナル)から高速バスで約2時間の距離。またはソウル駅から高速鉄道のKTXに乗れば天安牙山駅まで約40分で到着する。[[ソウル市の料理|ソウル市]]の地下鉄1号線が温陽温泉駅まで伸びているので、時間はかかるものの例えば市庁駅から乗ると約2時間20分で到着する。
  
 
== 食文化の背景 ==
 
== 食文化の背景 ==
牙山市の北部は牙山湾に面し、かつては汽水域でとれるウナギ([[장어]])をはじめ多くの海産物が名産であった。ところが1970年代になって牙山湾防潮堤、挿橋川防潮堤などが相次いで建設されたことで、それまで海だった場所は人造湖へと変貌を遂げた。現在は仁州面傑梅里などにわずかな海が残るのみとなっており、漁業人口は激減している。一方で、ウナギ料理の専門店は仁州(インジュ、인주)地区にまだ多く、現在は養殖物が主となってはいるが、仁州ウナギ(인주장어)の名前で地元の名物になっている。そのほか市内の塩峙(ヨムチ、염치)地区には牛焼肉の専門店が集っており、松岳面駅村里の外岩民俗村(외암민속촌)では自家製の味噌や酒などを販売するとともに、入口付近の飲食店ではキビ餅([[수수부꾸미]])が名物となっている。
+
牙山市の北部は牙山湾に面し、かつては汽水域でとれるウナギ([[장어]])をはじめ多くの海産物が名産であった。ところが1970年代になって牙山湾防潮堤、挿橋川防潮堤などが相次いで建設されたことで、それまで海だった場所は人造湖へと変貌を遂げた。現在は仁州面傑梅里などにわずかな海が残るのみとなっており、漁業人口は激減している。一方で、ウナギ料理の専門店は仁州(インジュ、인주)地区にまだ多く、現在は養殖物が主となってはいるが、仁州ウナギ(インジュジャンオ、인주장어)の名前で地元の名物になっている。また、一部店舗では数少ないながら天然物のウナギも扱う。そのほか市内の塩峙(ヨムチ、염치)地区には牛焼肉の専門店が集っており、松岳面駅村里の「外岩民俗村(ウェアムミンソクチョン、외암민속촌)」では自家製の味噌や酒などを販売するとともに、入口付近の飲食店ではススブクミ(タカキビ餅、[[수수부꾸미]])が名物となっている。
  
 
== 代表的な料理 ==
 
== 代表的な料理 ==
15行目: 15行目:
  
 
=== チャンオグイ(ウナギ焼き/장어구이) ===
 
=== チャンオグイ(ウナギ焼き/장어구이) ===
[[ファイル:15040902.JPG|thumb|300px|ペンデンイフェムチム]]
+
*仁州チャンオ
:チャンオグイはウナギ焼き。江華島と金浦市を分かつ江華海峡(강화해협)は、塩辛い川のようだという意味で塩河(염하)と呼ばれ、一帯では古くからウナギがよくとれた。近年は天然物の減少から漁獲量は激減しているが、それでも塩河沿いのトリミ(더리미)地区にはウナギ料理の専門店が集まっており、養殖、または天然環境で育てた養殖ウナギのチャンオグイを味わうことができる。
+
:牙山市の仁州(インジュ、인주)地区にはチャンオグイの専門店が集まっている。韓国観光公社が配布する『韓国の味紀行』という冊子(WEBでも閲覧可)ではその始まりを以下のように紹介している。
 +
:「1973年に牙山湾の防潮堤が建設され牙山湾は塞がれ湖になりましたが、1977年には観光地として開発されることになり、観光客のための飲食店が立ち並び始めました。牙山湾の防潮堤と挿橋川の防潮堤の間の仁州面にうなぎの蒲焼きの食堂ができたのは、その直後の1980年代からだと言われています。昔ならではのノウハウを生かした韓方ソースを考案し、観光客の口コミで牙山湾のうなぎの蒲焼きが全国的に知られるようになりました。初めは数軒だったお店も徐々に増え、現在ではうなぎの蒲焼き村が形成されています。」<ref>[http://japanese.visitkorea.or.kr/jpn/taste/taste_index.jsp?cid=998506&regionCode=34,9 忠清南道味紀行] 、韓国観光公社ウェブサイト、2015年6月25日閲覧</ref>
 +
*老舗のチャンオグイ
 +
:牙山市の得山洞(トゥクサンドン、득산동)には1936年創業の老舗チャンオグイ店「恋春(연춘)」がある([[牙山市の料理#老舗|老舗 恋春(연춘)]]参照)。
  
 
=== ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이) ===
 
=== ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이) ===
:ペンデンイフェはツマリエツの刺身。ペンデンイ([[밴댕이]])の和名はサッパであるが、仁川・江華島地域では見た目のよく似たツマリエツ([[반지]])をペンデンイと呼んでいる。4~7月を最盛期とするが、最近は冬でも全羅南道から冷蔵品が直送されており、旬以外の時期でも見かけるようになった。ペンデンイフェは新鮮なものを刺身にしたものか、または刺身を生野菜とともに辛いタレで和えたフェムチム(刺身和え、[[회무침]])でも味わう。フェムチムの場合は丼ごはんが用意され、フェドッパプ(刺身丼、[[회덮밥]])のように混ぜて食べることも多い。華道(화도)地区の後浦港(후포항)には「船首ペンデンイ村(선수밴댕이마을)」と呼ばれる地域があり、ペンデンイフェを中心とした刺身専門店が集まっている。
+
[[ファイル:15062502.JPG|thumb|300px|塩峙韓牛村]]
 +
:ソゴギグイ([[소고기구이]])は、牛焼肉(「[[ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이)]]」の項目も参照)。1980年代後半から市内の塩峙(ヨムチ、염치)地区には韓牛([[한우]])を扱う焼肉店が集まり始め、塩峙韓牛村、塩峙韓牛特化通りなどと呼ばれている。韓牛を使った焼肉のほか、[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]なども名物に数えられる。古株店の「京東食堂(경동식당)」にはコドゥンシム([[고등심]])と呼ばれる希少部位があり、これは[[トゥンシム(牛ロースの焼肉/등심)]]の一部を指すものだが、カットしたときの形状がコドゥンオ(サバ、[[고등어]])に似ていることからコドゥンオトゥンシム(サバロース、[[고등어등심]])、それを略してコドゥンシムと呼んだものである。
  
=== ススブクミ(餡を入れたキビ餅/수수부꾸미) ===
+
=== ススブクミ(タカキビ餅/수수부꾸미) ===
[[ファイル:15040903.JPG|thumb|300px|コッケタン]]
+
[[ファイル:15062503.JPG|thumb|300px|ススブクミ]]
:コッケタンはワタリガニ鍋。江華島沖はワタリガニの好漁場であり、4~6月には卵を持ったメスが西海岸の各漁港に水揚げされる。地元ではこの時期をいちばんの旬と考えるが、秋にももう1度旬があり、9月にはオスのワタリガニを、10~12月にはメスのワタリガニを味わう。内可面外浦里(내가면 외포리)にはコッケタンや、カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け、간장게장)を提供するワタリガニ料理の専門店が集まっており、「外浦里ワタリガニ村(외포리 꽃게마을)」と呼ばれる。
+
:ススブクミ([[수수부꾸미]])は、タカキビ餅。松岳面駅村里にある外岩民俗村の入口付近には飲食店があり、白あんを入れて焼いたススブクミが名物となっている。
 +
 
 +
=== 農家レストラン(농가맛집) ===
 +
:牙山市では農家の食文化を観光アイテムとして活用する「農家レストラン([[농가맛집]])」の発掘、開発、普及に力を入れている。また、これは国が地方と連携して行っている施策の一環でもある。農家の家屋や、その一部を飲食店、または体験プログラムの場として利用するもので、牙山市の農業技術センターによれば、2014年11月時点で松岳面江長里の「オドルゲ(오돌개)」、外岩里民俗村内の「豊徳古宅(풍덕고택)」の2ヶ所が稼働している(八田靖史の取材記録より、2014年11月6日)。
  
 
== 代表的な特産品 ==
 
== 代表的な特産品 ==
島嶼地域であることから魚介類が豊富であり、また農業も盛んに行われている。高麗人参の産地として知られるほか、獅子足ヨモギ(사자발쑥)と呼ばれる薬用ヨモギの栽培も盛んであるなど、漢方材の生産地という側面もある。
+
牙山市では農業、畜産業が盛んで、一部の特産品ではブランド化も進められている。
  
=== 高麗人参 ===
+
=== 牙山マルグンサル(아산맑은쌀) ===
[[ファイル:15040904.JPG|thumb|300px|江華高麗人参センター]]
+
:米は牙山市の特産品であり「牙山マルグンサル(아산맑은쌀)」というブランド米を流通させている。マルグンサルとは澄んだ米、清浄な米という意味である。
:江華郡は高麗人参の名産地であり、その経緯を江華郡のウェブサイトでは、「朝鮮戦争が起こると高麗人参の本拠地である開城の人たちがここに避難し、1953年から本格的に栽培が行われた」(原文1)<ref>[http://www.ganghwa.incheon.kr/open_content/tour/special_product/goods/ginseng.jsp 특산물 강화인삼] 、江華郡ウェブサイト、2015年4月7日閲覧</ref>と説明している。現在も江華郡では高麗人参の栽培が盛んに行われており、また2010年頃からは田んぼを再利用しての栽培も始まっている。もともと高麗人参栽培は畑作が中心であるが、土地の栄養を吸い尽くしてしまうため連作ができないとの特性があり、農地の確保が難しかった。田んぼでの栽培はまだ技術的に難しい部分も残るが、農地拡充の可能性を広げるため江華郡でも盛んに技術が研究されている。また、江華高麗人参農協では外部へのPRを目的として、観光客向けに高麗人参堀りの体験プログラムなども実施している(八田靖史の取材記録より、2015年3月30日)。
 
  
:【原文1】한국전쟁이 터지자 인삼의 본거지인 개성사람들이 이곳에 피난와 1953년부터 본격 재배가 이루어 졌다.
+
=== 道後温泉硫黄豚(도고온천유황돈) ===
 
+
[[ファイル:15062504.JPG|thumb|300px|温陽温泉伝統市場内にある道後温泉硫黄豚の販売店]]
*江華高麗人参センター
+
:硫黄泉で有名な道後温泉地区では、硫黄を飼料に加えて育てた豚を特産品として育成している。市内の精肉店で販売されるほか、飲食店でも提供されている。
:江華郡庁や江華市外バスターミナルからほど近い中心部の江華邑甲串里には、五日市場の風物市場(풍물시장)と並んで江華高麗人参センター(강화인삼센터)がある。交通の便利な場所であるため、江華島観光では人気のスポットとなっており、生の高麗人参をはじめ、蜂蜜漬けや韓方茶、菓子などの高麗人参製品も購入できる。なお、生の高麗人参を日本に持ち込む場合は、丁寧に土を除いたうえで検疫を通す必要がある<ref>[http://www.kansyoku-life.com/2013/10/1632.html 韓国から生の高麗人参を持ち帰る方法(個人消費用)。] 、韓食生活、2015年4月9日閲覧</ref>。
 
  
 
== 代表的な酒類・飲料 ==
 
== 代表的な酒類・飲料 ==
=== 江華郡のマッコリ ===
+
=== 牙山市のマッコリ ===
:主要な銘柄にチャヌムルの「高香(고향)」、江華温水醸造場の「民族(민족)」がある。また、特産品を活かした高麗人参マッコリや、ヨモギマッコリなども市販されている。
+
:特産品の牙山マルグンサルを利用したマッコリなどが流通しており、オナ濁酒共同製造場(온아탁주공동제조장)、陰峰醸造場(음봉양조장)、タウォン酒家(다원주가)といった酒造会社がマッコリを造っている。
  
*江華温水醸造場(강화온수양조장)
+
=== 牙山蓮葉酒(아산연엽주) ===
[[ファイル:15040905.JPG|thumb|300px|江華温水醸造場]]
+
:忠清南道牙山市松岳面外岩里の李家に伝わるハスの葉を加えた民俗酒。もち米とうるち米を混ぜて原料とした醸造酒で、忠清南道の無形文化財第11号に指定される<ref>[http://www.cha.go.kr/korea/heritage/search/Culresult_Db_View.jsp?mc=NS_04_03_01&VdkVgwKey=22,00110000,34 1300년 아산연엽주] 、文化財庁ウェブサイト、2015年6月24日閲覧</ref>。
:仁川市江華郡吉祥面に位置する江華温水醸造場は1924年の創業(実際は1923年の創業で法的な登記が1924年)で、ソウル、京畿道地域においてはもっとも古い醸造場である。3代目の社長によれば「ソウル、京畿道地域で現在営業する醸造場の多くが、江華温水醸造場で必要な技術を学んでおり、その人数は3~400人になるだろう」とのことである(八田靖史の取材記録より、2015年3月30日)。醸造場の建物は築100年を超えるもので、建築的な価値も高いとされる。
 
  
 
== 老舗 ==
 
== 老舗 ==
[[ファイル:15040906.JPG|thumb|300px|1953年創業のウリオク]]
+
[[ファイル:15062505.JPG|thumb|300px|恋春のチャンオグイ(右)とタックイ]]
*牙山市得山洞に位置するウナギ料理店の「恋春」は1936年創業である。牙山市においてはもっとも古い飲食店であり、また韓国内でもウナギ料理の専門店としてもっとも古い。1926年に造られた人造湖の神井湖畔に位置し、日本統治時代に建てられた家屋をそのまま残している。店主によれば「温泉地である牙山には創業当時、日本人が休養地としてよく訪れており、日本人に向けた高級料理としてウナギを出すようになった。当時は近くに光興楼という楼閣があったため、『光興楼観光食堂』という名前を掲げ、ウナギ料理と韓定食を扱った。後に『迎春』と名前を変え、また現在は『恋春』としている。春を迎える、春に恋するというのは、もともとウナギのオフシーズンである9月末から3月は営業をせず、春を待って営業を始めたことに由来する」(八田靖史の取材記録より、2014年12月17日)。現在もメニューにはチャンオグイ(ウナギ焼き、장어구이)を筆頭に掲げ、ウナギと同じタレで焼いたタックイ(鶏肉焼き、닭구이)も他店ではあまり見ない名物として親しまれる。
+
*恋春(연춘)
:店名:恋春(연춘)
+
:牙山市の得山洞(トゥサンドン、득산동)に位置するウナギ料理店の「恋春(연춘)」は1936年創業である。牙山市においてはもっとも古い飲食店であり、また韓国内でもウナギ料理の専門店としてもっとも古い。1926年に造られた人造湖の神井湖(シンジョンホ、신정호)湖に位置し、日本統治時代に建てられた家屋をそのまま残している。店主によれば「温泉地である牙山には創業当時、日本人が休養地としてよく訪れており、日本人に向けた高級料理としてウナギを出すようになった。当時は近くに光興楼という楼閣があったため、『光興楼観光食堂』という名前を掲げ、ウナギ料理と韓定食を扱った。後に『迎春』と名前を変え、また現在は『恋春』としている。春を迎える、春に恋するというのは、もともとウナギのオフシーズンである9月末から3月は営業をせず、春を待って営業を始めたことに由来する」(八田靖史の取材記録より、2014年12月17日)。現在もメニューにはチャンオグイ(ウナギ焼き、장어구이)を筆頭に掲げ、ウナギと同じタレで焼いたタックイ(鶏肉焼き、[[닭구이]])も他店ではあまり見ない名物として親しまれる。
:住所:忠清南道牙山市神井湖キル67(得山洞15-3)
 
:住所:충청남도 아산시 신정호길 67(득산동 15-3)
 
:電話:041-545-2866
 
  
 
== 飲食店情報 ==
 
== 飲食店情報 ==
60行目: 61行目:
 
:住所:충청남도 아산시 송악면 강당로 36(역촌리 71-1)
 
:住所:충청남도 아산시 송악면 강당로 36(역촌리 71-1)
 
:電話:041-544-7554
 
:電話:041-544-7554
:料理:ススブクミ、チャンチグクス
+
:料理:ススブクミ(タカキビ餅)、[[チャンチグクス(にゅうめん/잔치국수)|チャンチグクス(にゅうめん)]]
 
 
 
*恋春(연춘)
 
*恋春(연춘)
 
:住所:忠清南道牙山市神井湖キル67(得山洞15-3)
 
:住所:忠清南道牙山市神井湖キル67(得山洞15-3)
 
:住所:충청남도 아산시 신정호길 67(득산동 15-3)
 
:住所:충청남도 아산시 신정호길 67(득산동 15-3)
 
:電話:041-545-2866
 
:電話:041-545-2866
:料理:チャンオグイ、タックイ
+
:料理:[[チャンオグイ(ウナギ焼き/장어구이)|チャンオグイ(ウナギ焼き)]]、タックイ(鶏焼き)
  
 
*塩峙食堂(염치식당)
 
*塩峙食堂(염치식당)
72行目: 72行目:
 
:住所:충청남도 아산시 염치읍 염성길 110(염치읍 268-10)
 
:住所:충청남도 아산시 염치읍 염성길 110(염치읍 268-10)
 
:電話:041-542-2768
 
:電話:041-542-2768
:料理:ソゴギグイ
+
:料理:[[ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이)|ソゴギグイ(牛焼肉)]]
  
 
*イルシンチョクタン(일신족탕)
 
*イルシンチョクタン(일신족탕)
78行目: 78行目:
 
:住所:충청남도 아산시 시민로 382(온천동 221-11)
 
:住所:충청남도 아산시 시민로 382(온천동 221-11)
 
:電話:041-545-2696
 
:電話:041-545-2696
:料理:ウジョクタン
+
:料理:[[ウジョクタン(牛の足のスープ/우족탕)|ウジョクタン(牛の足のスープ)]]
  
 
== エピソード ==
 
== エピソード ==
 
*韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2014年11月に初めて牙山市を訪れた。以後、2014年12月、2015年2月の計3度訪問している。
 
*韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2014年11月に初めて牙山市を訪れた。以後、2014年12月、2015年2月の計3度訪問している。
*2014年12月に八田靖史が牙山市観光課を訪れた際、担当者にチョクタン(牛足のスープ、족탕)の店を尋ねたつもりが、同音異義語である足湯のパンフレットを出され、慌てて訂正したことがある。
+
*2014年12月に八田靖史が牙山市観光課を訪れた際、担当者にチョクタン(牛足のスープ、[[족탕]])の店を尋ねたつもりが、同音異義語である足湯のパンフレットを出され、慌てて訂正したことがある。
  
 
== 脚注 ==
 
== 脚注 ==
88行目: 88行目:
  
 
== 外部リンク ==
 
== 外部リンク ==
*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活]
+
;関連サイト
*[http://tour.ganghwa.incheon.kr/ 江華郡文化観光(韓国語)]
+
*[http://www.asan.go.kr/culture/ 牙山市文化観光(韓国語)]
 +
;制作者関連サイト
 +
*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
 +
*[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール)
  
 
== 関連項目 ==
 
== 関連項目 ==
*[[カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け/간장게장)]]
+
{{DEFAULTSORT:あさんしのりようり}}
*[[コッケタン(ワタリガニ鍋/꽃게탕)]]
+
*[[トゥンシム(牛ロースの焼肉/등심)]]
 +
*[[ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이)]]
 +
*[[ウジョクタン(牛の足のスープ/우족탕)]]
 +
*[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]
 +
*[[チャンチグクス(にゅうめん/잔치국수)]]
 
*[[チャンオグイ(ウナギ焼き/장어구이)]]
 
*[[チャンオグイ(ウナギ焼き/장어구이)]]
 
{{DEFAULTSORT:あさんしのりようり}}
 
 
[[Category:韓食ペディア]]
 
[[Category:韓食ペディア]]
 
[[Category:忠清南道・大田市・世宗市の料理]]
 
[[Category:忠清南道・大田市・世宗市の料理]]

2024年7月20日 (土) 02:28時点における最新版

この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。

牙山市(アサンシ、아산시)は忠清南道に位置する地域。本ページでは牙山市の料理、特産品について解説する。

外岩民俗村

地域概要

牙山市は忠清南道の北部に位置する地域。市の北部は京畿道平沢市、東部は忠清南道天安市、南部は忠清南道公州市、南西部は忠清南道礼山郡、西部は忠清南道唐津市と接する。また、市の北西部は牙山湾(아산만)に面し、黄海へとつながる。人口は33万6690人(2023年3月)[1]。韓国でも有数の温泉地として知られ、温陽温泉(オニャンオンチョン、온양온천)、牙山温泉(アサンオンチョン、아산온천)、道高温泉(トゴオンチョン、도고온천)などを有する。中でも温陽温泉の歴史は記録上、百済時代、統一新羅時代までさかのぼるとされ、高麗時代にはこの地域を温水郡(オンスグン、온수군)と呼んだ歴史もある。朝鮮時代には歴代の王も温陽温泉を訪れ、休養をしたり、病気の治療を行っている[2]ソウル市(東ソウルバスターミナル、南部バスターミナル)から高速バスで約2時間の距離。またはソウル駅から高速鉄道のKTXに乗れば天安牙山駅まで約40分で到着する。ソウル市の地下鉄1号線が温陽温泉駅まで伸びているので、時間はかかるものの例えば市庁駅から乗ると約2時間20分で到着する。

食文化の背景

牙山市の北部は牙山湾に面し、かつては汽水域でとれるウナギ(장어)をはじめ多くの海産物が名産であった。ところが1970年代になって牙山湾防潮堤、挿橋川防潮堤などが相次いで建設されたことで、それまで海だった場所は人造湖へと変貌を遂げた。現在は仁州面傑梅里などにわずかな海が残るのみとなっており、漁業人口は激減している。一方で、ウナギ料理の専門店は仁州(インジュ、인주)地区にまだ多く、現在は養殖物が主となってはいるが、仁州ウナギ(インジュジャンオ、인주장어)の名前で地元の名物になっている。また、一部店舗では数少ないながら天然物のウナギも扱う。そのほか市内の塩峙(ヨムチ、염치)地区には牛焼肉の専門店が集っており、松岳面駅村里の「外岩民俗村(ウェアムミンソクチョン、외암민속촌)」では自家製の味噌や酒などを販売するとともに、入口付近の飲食店ではススブクミ(タカキビ餅、수수부꾸미)が名物となっている。

代表的な料理

牙山市の料理には国内有数の温泉地としての姿が密接にかかわっている。他地域から大勢の観光客が訪れるためウナギ焼きや牛焼肉といった高級料理が発達した。

チャンオグイ(ウナギ焼き/장어구이)

  • 仁州チャンオ
牙山市の仁州(インジュ、인주)地区にはチャンオグイの専門店が集まっている。韓国観光公社が配布する『韓国の味紀行』という冊子(WEBでも閲覧可)ではその始まりを以下のように紹介している。
「1973年に牙山湾の防潮堤が建設され牙山湾は塞がれ湖になりましたが、1977年には観光地として開発されることになり、観光客のための飲食店が立ち並び始めました。牙山湾の防潮堤と挿橋川の防潮堤の間の仁州面にうなぎの蒲焼きの食堂ができたのは、その直後の1980年代からだと言われています。昔ならではのノウハウを生かした韓方ソースを考案し、観光客の口コミで牙山湾のうなぎの蒲焼きが全国的に知られるようになりました。初めは数軒だったお店も徐々に増え、現在ではうなぎの蒲焼き村が形成されています。」[3]
  • 老舗のチャンオグイ
牙山市の得山洞(トゥクサンドン、득산동)には1936年創業の老舗チャンオグイ店「恋春(연춘)」がある(老舗 恋春(연춘)参照)。

ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이)

塩峙韓牛村
ソゴギグイ(소고기구이)は、牛焼肉(「ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이)」の項目も参照)。1980年代後半から市内の塩峙(ヨムチ、염치)地区には韓牛(한우)を扱う焼肉店が集まり始め、塩峙韓牛村、塩峙韓牛特化通りなどと呼ばれている。韓牛を使った焼肉のほか、ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)なども名物に数えられる。古株店の「京東食堂(경동식당)」にはコドゥンシム(고등심)と呼ばれる希少部位があり、これはトゥンシム(牛ロースの焼肉/등심)の一部を指すものだが、カットしたときの形状がコドゥンオ(サバ、고등어)に似ていることからコドゥンオトゥンシム(サバロース、고등어등심)、それを略してコドゥンシムと呼んだものである。

ススブクミ(タカキビ餅/수수부꾸미)

ススブクミ
ススブクミ(수수부꾸미)は、タカキビ餅。松岳面駅村里にある外岩民俗村の入口付近には飲食店があり、白あんを入れて焼いたススブクミが名物となっている。

農家レストラン(농가맛집)

牙山市では農家の食文化を観光アイテムとして活用する「農家レストラン(농가맛집)」の発掘、開発、普及に力を入れている。また、これは国が地方と連携して行っている施策の一環でもある。農家の家屋や、その一部を飲食店、または体験プログラムの場として利用するもので、牙山市の農業技術センターによれば、2014年11月時点で松岳面江長里の「オドルゲ(오돌개)」、外岩里民俗村内の「豊徳古宅(풍덕고택)」の2ヶ所が稼働している(八田靖史の取材記録より、2014年11月6日)。

代表的な特産品

牙山市では農業、畜産業が盛んで、一部の特産品ではブランド化も進められている。

牙山マルグンサル(아산맑은쌀)

米は牙山市の特産品であり「牙山マルグンサル(아산맑은쌀)」というブランド米を流通させている。マルグンサルとは澄んだ米、清浄な米という意味である。

道後温泉硫黄豚(도고온천유황돈)

温陽温泉伝統市場内にある道後温泉硫黄豚の販売店
硫黄泉で有名な道後温泉地区では、硫黄を飼料に加えて育てた豚を特産品として育成している。市内の精肉店で販売されるほか、飲食店でも提供されている。

代表的な酒類・飲料

牙山市のマッコリ

特産品の牙山マルグンサルを利用したマッコリなどが流通しており、オナ濁酒共同製造場(온아탁주공동제조장)、陰峰醸造場(음봉양조장)、タウォン酒家(다원주가)といった酒造会社がマッコリを造っている。

牙山蓮葉酒(아산연엽주)

忠清南道牙山市松岳面外岩里の李家に伝わるハスの葉を加えた民俗酒。もち米とうるち米を混ぜて原料とした醸造酒で、忠清南道の無形文化財第11号に指定される[4]

老舗

恋春のチャンオグイ(右)とタックイ
  • 恋春(연춘)
牙山市の得山洞(トゥサンドン、득산동)に位置するウナギ料理店の「恋春(연춘)」は1936年創業である。牙山市においてはもっとも古い飲食店であり、また韓国内でもウナギ料理の専門店としてもっとも古い。1926年に造られた人造湖の神井湖(シンジョンホ、신정호)湖に位置し、日本統治時代に建てられた家屋をそのまま残している。店主によれば「温泉地である牙山には創業当時、日本人が休養地としてよく訪れており、日本人に向けた高級料理としてウナギを出すようになった。当時は近くに光興楼という楼閣があったため、『光興楼観光食堂』という名前を掲げ、ウナギ料理と韓定食を扱った。後に『迎春』と名前を変え、また現在は『恋春』としている。春を迎える、春に恋するというのは、もともとウナギのオフシーズンである9月末から3月は営業をせず、春を待って営業を始めたことに由来する」(八田靖史の取材記録より、2014年12月17日)。現在もメニューにはチャンオグイ(ウナギ焼き、장어구이)を筆頭に掲げ、ウナギと同じタレで焼いたタックイ(鶏肉焼き、닭구이)も他店ではあまり見ない名物として親しまれる。

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

  • ソルメジャント(솔뫼장터)
住所:忠清南道牙山市松岳面講堂路36(駅村里71-1)
住所:충청남도 아산시 송악면 강당로 36(역촌리 71-1)
電話:041-544-7554
料理:ススブクミ(タカキビ餅)、チャンチグクス(にゅうめん)
  • 恋春(연춘)
住所:忠清南道牙山市神井湖キル67(得山洞15-3)
住所:충청남도 아산시 신정호길 67(득산동 15-3)
電話:041-545-2866
料理:チャンオグイ(ウナギ焼き)、タックイ(鶏焼き)
  • 塩峙食堂(염치식당)
住所:忠清南道牙山市塩峙邑塩星キル110(塩峙邑268-10)
住所:충청남도 아산시 염치읍 염성길 110(염치읍 268-10)
電話:041-542-2768
料理:ソゴギグイ(牛焼肉)
  • イルシンチョクタン(일신족탕)
住所:忠清南道牙山市市民路382(温泉洞221-11)
住所:충청남도 아산시 시민로 382(온천동 221-11)
電話:041-545-2696
料理:ウジョクタン(牛の足のスープ)

エピソード

  • 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2014年11月に初めて牙山市を訪れた。以後、2014年12月、2015年2月の計3度訪問している。
  • 2014年12月に八田靖史が牙山市観光課を訪れた際、担当者にチョクタン(牛足のスープ、족탕)の店を尋ねたつもりが、同音異義語である足湯のパンフレットを出され、慌てて訂正したことがある。

脚注

  1. 주민등록 인구 및 세대현황 、行政安全部ウェブサイト、2023年4月9日閲覧
  2. 1300년 온천역사 、牙山市ウェブサイト、2015年5月22日閲覧
  3. 忠清南道味紀行 、韓国観光公社ウェブサイト、2015年6月25日閲覧
  4. 1300년 아산연엽주 、文化財庁ウェブサイト、2015年6月24日閲覧

外部リンク

関連サイト
制作者関連サイト

関連項目