「ソボロパン(ソボロパン/소보로빵)」の版間の差分

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== 歴史 ==
 
== 歴史 ==
 
[[ファイル:24072304.JPG|thumb|300px|東京、銀座「銀座木村屋」のバターそぼろバンズ]]
 
[[ファイル:24072304.JPG|thumb|300px|東京、銀座「銀座木村屋」のバターそぼろバンズ]]
詳細は明らかでないが、名称の「ソボロ」が日本語であることを考えると、日本統治時代を前後して日本から伝わった可能性が高いとされる。ソボロパンの「ソボロ」は、もともとはドイツのシュトロイゼル(streusel)がルーツと見られ、小麦粉、バター、砂糖などを混ぜ合わせた生地をサクサクとしたそぼろ状に焼いて菓子、ケーキなどのトッピングに利用するものを指す。このシュトロイゼルを「そぼろ」と訳し、パンに載せて焼いたものを日本では「ソボロパン」(ソボロバンズとの名称も見られる)と呼んで、少なくとも1920~30年代には書籍への記述が確認できる(下記参照)。また、同時期にはパン以外にもソボロを載せた焼き菓子が作られている<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1052812/1/49 『最新菓子製法講義 : 特輯録』, 日本製麺麭製菓学校出版部, 1932年(P81)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号49-69)、2024年2月28日閲覧</ref><ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1025577/1/24 小川昌作 著『近代的焼菓子の研究 : 附・洋生菓子初歩,キヤンデー初歩』, 製菓実験社, 1934年(P16)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号24-80)、2024年2月28日閲覧</ref><ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1027584/1/47 吉川尚正 著『製パン法全解』,製菓実験社, 1934年, 製菓実験社, 1934年(P72)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号47-61)、2024年2月28日閲覧</ref><ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1055206/1/17 畑山一雄 著『焼菓子の製法と解説』第1巻, 製菓書院, 1937年(P16-17)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号17-75)、2024年2月28日閲覧</ref>。
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詳細は明らかでないが、名称の「ソボロ」が日本語であることを考えると、日本統治時代を前後して日本から伝わった可能性が高いとされる。ソボロパンの「ソボロ」は、もともとはドイツのシュトロイゼル(streusel)がルーツと見られ、小麦粉、バター、砂糖などを混ぜ合わせた生地をサクサクとしたそぼろ状に焼いて菓子、ケーキなどのトッピングに利用するものを指す。このシュトロイゼルを「そぼろ」と訳し、パンに載せて焼いたものを日本では「ソボロパン」(ソボロバンズとの名称も見られる)と呼んで、少なくとも1920~30年代には書籍への記述が確認できる(下記参照)。また、同時期にはパン以外にもソボロを載せた焼き菓子が作られている<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1052812/1/49 『最新菓子製法講義 : 特輯録』, 日本製麺麭製菓学校出版部, 1932年(P81)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号49/69)、2024年2月28日閲覧</ref><ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1025577/1/24 小川昌作 著『近代的焼菓子の研究 : 附・洋生菓子初歩,キヤンデー初歩』, 製菓実験社, 1934年(P16)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号24/80)、2024年2月28日閲覧</ref><ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1027584/1/47 吉川尚正 著『製パン法全解』,製菓実験社, 1934年, 製菓実験社, 1934年(P72)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号47/61)、2024年2月28日閲覧</ref><ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1055206/1/17 畑山一雄 著『焼菓子の製法と解説』第1巻, 製菓書院, 1937年(P16-17)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号17/75)、2024年2月28日閲覧</ref>。
  
 
=== 日本のそぼろパンに関する記録 ===
 
=== 日本のそぼろパンに関する記録 ===
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;『現代食糧大観』(1929年)の記述
 
;『現代食糧大観』(1929年)の記述
:1929年4月2日に東京の上野公園で開催された「糧友会主催食糧展覧会」にて市販パンの審査会が行われ、出品された菓子パンの中に「ソボロバンズ」が含まれている<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1075748/1/250 糧友会 編『現代食糧大観』, 糧友会, 1929(P475)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号250-395)、2024年2月28日閲覧</ref>。「バンズ(buns)」は丸パンを意味し、「シュトロイゼル・バンズ(streusel buns)」を「ソボロバンズ」と訳したものと見られる。
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:1929年4月2日に東京の上野公園で開催された「糧友会主催食糧展覧会」にて市販パンの審査会が行われ、出品された菓子パンの中に「ソボロバンズ」が含まれている<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1075748/1/250 糧友会 編『現代食糧大観』, 糧友会, 1929(P475)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号250/395)、2024年2月28日閲覧</ref>。「バンズ(buns)」は丸パンを意味し、「シュトロイゼル・バンズ(streusel buns)」を「ソボロバンズ」と訳したものと見られる。
  
 
;『全国商工精励青年大会出席者研究録 第2回』(1934年)の記述
 
;『全国商工精励青年大会出席者研究録 第2回』(1934年)の記述
:1934年10月12~14日に大日本聯合青年団主催の「全国商工精励青年大会」が開催され、佐賀県でパン製造販売業を営む香月一氏が「パン原料竝に製造研究」との題目で発表を行い、菓子パンの種類を「アンパン、クリームパン、ジャムパン、ソボロパン、バタパン」と列挙している<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1034441/1/92 『全国商工精励青年大会出席者研究録』第2回, 大日本聯合青年団, 1934(P173)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号92-120)、2024年2月28日閲覧</ref>。
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:1934年10月12~14日に大日本聯合青年団主催の「全国商工精励青年大会」が開催され、佐賀県でパン製造販売業を営む香月一氏が「パン原料竝に製造研究」との題目で発表を行い、菓子パンの種類を「アンパン、クリームパン、ジャムパン、ソボロパン、バタパン」と列挙している<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1034441/1/92 『全国商工精励青年大会出席者研究録』第2回, 大日本聯合青年団, 1934(P173)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号92/120)、2024年2月28日閲覧</ref>。
  
 
;『糧友 第9巻第11号(第106号)』(1934年)の記述
 
;『糧友 第9巻第11号(第106号)』(1934年)の記述
:1934年11月に刊行された雑誌『糧友 第9巻第11号(第106号)』に「発酵パンの作り方」との記事があり、発酵パンの種類に触れて「菓子パンは、生地を甘くしたものと詰物を使ったものとある。前者に『そぼろ』かけパン、バターロール、シナモンロール等があり、後者には餡パン、ジャムパン、クリームパンなどがある」と説明している<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1585031/1/52 『糧友』9(11)(106), 食糧協会, 1934年(P69)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号52-104)、2024年2月28日閲覧</ref>。
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:1934年11月に刊行された雑誌『糧友 第9巻第11号(第106号)』に「発酵パンの作り方」との記事があり、発酵パンの種類に触れて「菓子パンは、生地を甘くしたものと詰物を使ったものとある。前者に『そぼろ』かけパン、バターロール、シナモンロール等があり、後者には餡パン、ジャムパン、クリームパンなどがある」と説明している<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1585031/1/52 『糧友』9(11)(106), 食糧協会, 1934年(P69)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号52/104)、2024年2月28日閲覧</ref>。
  
 
;『パンの話』(1949年)の記述
 
;『パンの話』(1949年)の記述
:1949年3月に刊行された書籍『パンの話』(著・筑田勇弥)に、ソボロパンのレシピが掲載されている<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1158586/1/107 筑田勇弥 著『パンの話』, 富民社, 1949年(P201)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号107-112)、2024年2月28日閲覧</ref>。
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:1949年3月に刊行された書籍『パンの話』(著・筑田勇弥)に、ソボロパンのレシピが掲載されている<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1158586/1/107 筑田勇弥 著『パンの話』, 富民社, 1949年(P201)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号107/112)、2024年2月28日閲覧</ref>。
  
 
;『最新各種製パンの秘訣』(1949年)の記述
 
;『最新各種製パンの秘訣』(1949年)の記述
:1949年12月に刊行された書籍『最新各種製パンの秘訣』(著・締木新太郎)には、メロンパンのレシピに補足する形で、「メロンパンと系統を同じくするものにソボロパンがある。これは表皮のビスケット生地を硬くボロボロに造って大小無数の粒上にしたものを丸めた発酵パンの生地に付着させたものである。ホイロのとり方も焼き方もメロンパンと同じである」と述べている<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1065367/1/80 締木新太郎 著『最新各種製パンの秘訣』, 太洋書院, 1949年(P147)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号80-122)、2024年2月28日閲覧</ref>。
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:1949年12月に刊行された書籍『最新各種製パンの秘訣』(著・締木新太郎)には、メロンパンのレシピに補足する形で、「メロンパンと系統を同じくするものにソボロパンがある。これは表皮のビスケット生地を硬くボロボロに造って大小無数の粒上にしたものを丸めた発酵パンの生地に付着させたものである。ホイロのとり方も焼き方もメロンパンと同じである」と述べている<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1065367/1/80 締木新太郎 著『最新各種製パンの秘訣』, 太洋書院, 1949年(P147)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号80/122)、2024年2月28日閲覧</ref>。
  
 
;『小麦粉 原料とその加工品』(1964年)の記述
 
;『小麦粉 原料とその加工品』(1964年)の記述
:1964年に刊行された書籍『小麦粉 : 原料とその加工品』では、菓子パンのひとつとして「バンズ(buns)」の項目で、「ソボロ・バンズ(streussel buns)」のレシピを紹介している。原語を「シュトロイゼル・バンズ」として付記している<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/2505100/1/256 『小麦粉 : 原料とその加工品』, 日本麦類研究会, 1964年(P479)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号256-373)、2024年2月28日閲覧</ref>。
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:1964年に刊行された書籍『小麦粉 : 原料とその加工品』では、菓子パンのひとつとして「バンズ(buns)」の項目で、「ソボロ・バンズ(streussel buns)」のレシピを紹介している。原語を「シュトロイゼル・バンズ」として付記している<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/2505100/1/256 『小麦粉 : 原料とその加工品』, 日本麦類研究会, 1964年(P479)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号256/373)、2024年2月28日閲覧</ref>。
  
 
=== 1910~40年代 ===
 
=== 1910~40年代 ===
:韓国においてソボロパンが作られ始めた時期は明らかになっていない。1910年代には日本人経営の製菓店を中心にパンの製造、販売が始まっており、1919年に満洲製粉株式会社が鎮南浦工場を設立したのを皮切りとして大規模な製粉工場ができてゆくと<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1910130/1/5 『朝鮮に於ける製粉業の現在及將來』, 朝鮮銀行調査課, 1934年(P3)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号5-29)、2024年2月28日閲覧</ref>、1920年代後半には製菓店やベーカリーが増えて多くのパンが販売された。あくまでも参考ではあるが、1917年に[[釜山市の料理|釜山市]]大庁町3丁目(現在の大庁洞3街、대청동3가)のベーカリー「トミナガ」が出した新聞広告には、「アンパン、クリームパン、ジャムパン、ロシヤパン」といった菓子パンの名前が並んでいる<ref>[https://nl.go.kr/NL/contents/search.do?resultType=&kwd=%E3%81%82%E3%82%93%E3%81%B1%E3%82%93&infoTxt=#viewKey=CNTS-00112821784&viewType=C 광고, アンパン(1917年7月30日付『朝鮮時報』3面)] 、韓国国立中央図書館、2024年2月29日閲覧</ref>。これらの菓子パンと並んで、日本統治時代のどこかでソボロパンが作られ始めた可能性は推測できる。
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:韓国においてソボロパンが作られ始めた時期は明らかになっていない。1910年代には日本人経営の製菓店を中心にパンの製造、販売が始まっており、1919年に満洲製粉株式会社が鎮南浦工場を設立したのを皮切りとして大規模な製粉工場ができてゆくと<ref>[https://dl.ndl.go.jp/pid/1910130/1/5 『朝鮮に於ける製粉業の現在及將來』, 朝鮮銀行調査課, 1934年(P3)] 、国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号5/29)、2024年2月28日閲覧</ref>、1920年代後半には製菓店やベーカリーが増えて多くのパンが販売された。あくまでも参考ではあるが、1917年に[[釜山市の料理|釜山市]]大庁町3丁目(現在の大庁洞3街、대청동3가)のベーカリー「トミナガ」が出した新聞広告には、「アンパン、クリームパン、ジャムパン、ロシヤパン」といった菓子パンの名前が並んでいる<ref>[https://nl.go.kr/NL/contents/search.do?resultType=&kwd=%E3%81%82%E3%82%93%E3%81%B1%E3%82%93&infoTxt=#viewKey=CNTS-00112821784&viewType=C 광고, アンパン(1917年7月30日付『朝鮮時報』3面)] 、韓国国立中央図書館、2024年2月29日閲覧</ref>。これらの菓子パンと並んで、日本統治時代のどこかでソボロパンが作られ始めた可能性は推測できる。
  
 
=== 1980年代 ===
 
=== 1980年代 ===
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