横城郡の料理
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横城郡(フェンソングン、횡성군)は江原道の南西部に位置する地域。本ページでは横城郡の料理、特産品について解説する。
地域概要
横城郡は江原道の南西部に位置する地域。郡の北部は江原道の洪川郡、東部は平昌郡、南部は寧越郡と原州市、西部は京畿道の楊平郡と接する。人口は4万6327人(2024年6月)[1]。
代表的な観光地としては、湖畔の散策路が人気の横城湖(횡성호수)19世紀に建てられたカトリック教会の横城豊水院天主教会(횡성 풍수원천주교회)、登山やトレッキングに人気の泰岐山(태기산)、横城リュージュ体験場(횡성루지체험장)などがある。
ソウル市からのアクセスは、ソウル駅から横城駅まで高速鉄道で約1時間20分の距離。東ソウル総合ターミナルから、横城市外バスターミナルまで市外バスで約2時間10分の距離である。
- 地名の由来
- 横城郡は高句麗時代に、横川県(횡천현)、または於斯買(어사매)と呼ばれた。横川と於斯買はどちらも「東西(横)に川が流れる」という意味で、蟾江(ソムガン、섬강)や酒泉江(チュチョンガン、주천강)が山岳地域の東部から平野部の西部に向かって流れていることを指す。朝鮮時代の1414年に近隣の洪川と発音が似ていることから、横城と改称されて現在に至る[2]。旧称の於斯買は、郡内で生産される米のブランド「横城米 於斯珍米(횡성쌀 어사진미)」にも使用されている。
食文化の背景
郡東部は太白山脈(テベクサンメク、태백산맥)の一角を成す山岳地系で、標高1258.8mの泰岐山(テギサン、태기산)を筆頭に1000m前後の山々が連なる。中部から西部にかけては高原地域や平野が広がり、全体として東高西低の地形をしている。高原地域では韓牛(한우)の飼育や高原野菜の栽培が盛んに行われているほか、平野部では米や果物の栽培が行われる。韓方材のツルニンジン(더덕)も名産品として名高い。
横城8大名品
- 地域の名産品として、8種類の食材、料理が「横城8大名品(횡성 8대명품)」として選定されている[3]。
- 横城韓牛(횡성한우)
- 横城ツルニンジン(횡성더덕)
- 安興あんまん(안흥찐빵)
- 横城米 於斯珍米(횡성쌀 어사진미)
- 横城リンゴ(횡성사과)
- 横城雑穀(횡성잡곡)
- 横城トマト(횡성토마토)
- 横城塩漬け白菜(횡성절임배추)
代表的な料理
ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이)
- ソゴギグイ(소고기구이)は、牛焼肉(「ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이)」の項目も参照)。横城郡では韓牛(한우)の飼育が盛んで、これを横城韓牛(횡성한우)と呼んでブランド化に力を入れている。郡内には横城韓牛を使用する焼肉店が多く、各部位を網焼き、鉄板焼きなどで味わえる(「横城韓牛(횡성한우)」の項目も参照)。横城郡は炭の産地でもあり、クヌギなどの炭(참숯)は山林庁が地域の名産品を認証する地理的表示林産物の第35号として登録されている[4]。
トドックイ(ツルニンジン焼き/더덕구이)
- トドックイ(더덕구이)は、ツルニンジン焼き(「トドックイ(ツルニンジン焼き/더덕구이)」の項目も参照)。皮をむき、叩いて繊維をほぐしたツルニンジンに薬味ダレを絡めて焼いて作る。ツルニンジンは横城郡の名産品で、山林庁が地域の名産品を認証する地理的表示林産物の第22号として登録されている[5]。郡内にはツルニンジン料理の専門店があり、さまざまなツルニンジン料理をコースに仕立てたハンジョンシク(韓定食/한정식)を味わえる。
アヌンチンパン(安興式のあんまん/안흥찐빵)
- アヌンチンパン(안흥찐빵)は、安興式のあんまん(「チンパン(あんまん/찐빵)」の項目も参照)。アヌン(안흥)は郡南東部の安興面(アヌンミョン、안흥면)を指す。1971年12月に嶺東高速道路 (영동고속도로)が開通する以前、ソウル市から東海岸に向かう場合は国道42号線を利用するのが一般的で、通過地点に当たる安興面では長距離を移動する人たちの空腹を満たすためにチンパンを作って販売した。これが評判を得て、店が増えたことから一帯は「安興チンパン村(안흥찐빵마을)」と呼ばれるようになった。現在は高速道路のサービスエリアなどでも販売される。2022年2月には複合文化空間の「安興チンパンモラクモラク村(안흥찐빵모락모락마을)」が開館し、チンパン作りの体験などが楽しめるようになっている。
チャンカルグクス(味噌味のウドン/장칼국수)
- チャンカルグクス(장칼국수)は、味噌味のウドン。チャン(장)はカンジャン(醤油、간장)やテンジャン(味噌、된장)などの総称。カルグクス(칼국수)は手打ちうどんの意(「カルグクス(韓国式の手打ちうどん/칼국수)」の項目も参照)。チャンカルグクスは江原道の各地域で親しまれるが、東部地域では味付けにコチュジャン(고추장)を、西部地域ではテンジャンや速成味噌のマクチャン(막장)を主に使用するとの違いがある。西部地域の横城郡ではマクチャンを主に用いて味付けをし、具材にはフユアオイ(아욱)を入れることが多い。チャンカルグクスの専門店では、他のカルグクスや、スジェビ(韓国式のすいとん/수제비)、マンドゥクッ(餃子スープ/만두국)などの料理も提供する。夏の季節メニューとして、コンジングクス(冷やし混ぜ麺/건진국수)を提供するところも多い。
コンジングクス(冷やし混ぜ麺/건진국수)
- コンジングクス(건진국수)は、冷やし混ぜ麺。直訳すると「引き上げた麺」という意味で、コンジン(건진)が「コンジダ(引き上げる、건지다)」の過去連体形、グクス(=ククス、국수)は麺を意味する。茹でた麺を鍋から引き上げて冷水にさらすことから名前がついたとされる。薄い平打ちの小麦麺を使うことが多く、千切りにしたエホバク(韓国カボチャ、애호박)を茹でるか、炒めたのちに辛味ダレで和え、これを具として麺に絡めて味わう。少量のダシ汁を注ぎ入れることもある。チャンカルグクス(味噌味のウドン/장칼국수)の専門店で、夏の季節メニューとして提供されることが多い。
- 安東式のコンジングクス
- 慶尚北道安東市にも同名のコンジングクス(安東式の冷やし麺/건진국수)という郷土料理がある。横城郡のコンジングクスとは異なり、干したアユ(은어)でダシを取った冷たいスープに大豆粉を混ぜた小麦麺を入れた料理を指す。近年はアユのかわりに、鶏肉やコンブでダシを取ることも多い。
代表的な特産品
横城韓牛(횡성한우)
- 横城韓牛(フェンソンハヌ、횡성한우)は、横城郡で生産される韓牛(한우)。郡内には畜産協同組合の運営する「横城畜協韓牛プラザ(횡성축협 한우프라자)」をはじめ、各地の焼肉店で味わうことができる。毎年10月頃には、「横城韓牛祭り(횡성한우축제)」が開催される。
- 横城韓牛のブランド化事業
- 横城郡では、他地域に先駆けて1995年より横城韓牛のブランド化事業(명품화 사업)を推進し[6]、肉質向上のために牡牛の去勢事業を実施したり、「横城韓牛(횡성한우)」の名前で商標登録を行った(1995年9月出願、1997年2月認可、2007年2月消滅)。1998年1月には国立農産物品質管理院から品質認証を受け、2006年9月には畜産物として初めて農林畜産食品部が地域の名産品を認証する地理的表示農産物の第17号に指定されている[7]。
- 2005年のAPEC首脳会議
- 横城韓牛のブランド価値を高めた事例のひとつに、2005年11月に釜山市で開催されたAPEC首脳会議がある。海雲台(ヘウンデ、해운대)の「ウェスティン朝鮮釜山(웨스틴 조선 부산)」に宿泊したアメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領は、到着してすぐの食事にハンバーガー(햄버거)を注文し、ホテルの総料理長は最高級の横城韓牛をパテに用いて提供した。これが話題となり、横城韓牛はブッシュ大統領が「ワンダフル!」と褒めたブランド牛として語られるようになった(未確認メモ:エピソードとしてはよく耳にするが、実際にワンダフルと褒めたことが確認できる資料は見つけられていない)。横城畜産協同組合が運営する焼肉店「横城畜協韓牛プラザ(횡성축협 한우프라자)」では、「ブッシュワンダフル(부시원더풀)」「ワンダフル盛り合わせ(원더풀모둠)」といったメニューがある。また、「ウェスティン朝鮮釜山」内のアイリッシュパブ「O’Kim’s(오킴스)」では、このエピソードにちなんだ「ミスタープレジデントバーガー(미스터 프레지던트 버거)」を提供している(ただし、レシピは多少の変更があり、横城韓牛ではなくオーストラリア産の牛肉を使用している)。
代表的な酒類・飲料
伝統酒
- 麹醇堂(국순당)
- 伝統酒メーカーの麹醇堂(ククスンダン、국순당)は、2006年より屯内面玄川里(トゥンネミョン ヒョンチョルリ、둔내면 현천리)に横城工場を構えている。近隣には酒泉江(チュチョンガン、주천강)が流れており、その名称はかつて岩の合間から酒の湧く泉があったとの伝承にちなむ。
飲食店情報
以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。
- 沈順女安興チンパン(심순녀 안흥찐빵)
- 住所:江原道横城郡安興面西東路1029(安興里600-3)
- 住所:강원도 횡성군 안흥면 서동로 1029(안흥리 600-3)
- 電話:033-342-4460
- 料理:チンパン(あんまん)
- 尹家李家(윤가이가)
- 住所:江原道横城郡晴日面クンゴシキル41(古時里209)
- 住所:강원도 횡성군 청일면 큰고시길 41(고시리 209)
- 電話:033-343-1208
- 料理:トドックイ(ツルニンジン焼き)
- 横城畜協韓牛プラザセマル店(횡성축협 한우프라자 새말점)
- 住所:江原道横城郡隅川面韓牛路1401(牛項里167)
- 住所:강원도 횡성군 우천면 한우로 1401(우항리 167)
- 電話:033-342-6680
- 料理:ソゴギグイ(牛焼肉)
- 横城畜協韓牛プラザ本店(횡성축협 한우프라자 본점)
- 住所:江原道横城郡横城邑横城路337(橋項里34)
- 住所:강원도 횡성군 횡성읍 횡성로 337(교항리 34)
- 電話:033-343-9908
- 料理:ソゴギグイ(牛焼肉)
エピソード
韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、2012年8月に初めて横城郡を訪れた。地元の畜産協同組合が運営する焼肉店「横城畜協韓牛プラザ」で横城韓牛のサーロイン(아래등심)と、ミスジ(부채살)を味わい、その感想を「ただひたすらに至福」と表現している[8]。このときのサーロインは1++等級のNo.9、ミスジは1+等級だった。年末に配信したメールマガジン「コリアうめーや!!第283号」では、2012年に食べた韓国料理のベストテンとして、このときの横城韓牛を2位にランキングしている[9]。
脚注
- ↑ 주민등록 인구 및 세대현황 、行政安全部ウェブサイト、2024年7月31日閲覧
- ↑ 횡성의 역사 、横城文化院ウェブサイト、2024年7月29日閲覧
- ↑ 횡성 8대명품 、横城郡ウェブサイト、2024年7月29日閲覧
- ↑ 지리적표시 등록 현황/횡성참숯 、韓国地理的表示特産品連合会ウェブサイト、2024年7月28日閲覧
- ↑ 지리적표시 등록 현황/횡성더덕 、韓国地理的表示特産品連合会ウェブサイト、2024年7月28日閲覧
- ↑ 횡성한우 、韓国横城韓牛体験館ウェブサイト、2024年7月31日閲覧
- ↑ 지리적표시 등록 현황/횡성한우고기 、韓国地理的表示特産品連合会ウェブサイト、2024年7月31日閲覧
- ↑ 八田靖史, 2014, 『八田靖史と韓国全土で味わう 絶品! ぶっちぎり108料理』, 三五館, P59
- ↑ コリアうめーや!!第283号 、韓食生活、2024年7月27日閲覧
外部リンク
- 関連サイト
- 制作者関連サイト
- 韓食生活(韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
- 八田靖史プロフィール(八田靖史のプロフィール)