尚州市の料理
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尚州市(サンジュシ、상주시)は慶尚北道に位置する地域。本ページでは尚州市の料理、特産品について解説する。
地域概要
尚州市は慶尚北道の中西部に位置し、聞慶市、醴泉郡、義城郡、亀尾市、金泉市、忠清北道の永同郡、沃川郡、報恩郡、槐山郡と接する。人口は10万1962人(2016年11月)[1]。市の西部には小白山脈が連なり、忠清北道の報恩郡、槐山郡へとまたがる俗離山(속리산)は景勝地として有名である。東部の洛東江(낙동강)沿いには咸昌平野と尚州平野が広がり、古くからの穀倉地帯として栄えた。代表的な観光地としては、俗離山の展望スポットである文蔵台(문장대)や、洛東江に臨み「洛東江第1景」と称えられる擎天台(경천대)、尚州自転車博物館などがある。また、2011年6月には咸昌邑(합창읍)、利安面(이안면)、恭倹面(공검면)の3地域がスローシティとして認定された。ソウル(高速ターミナル、または東ソウル総合ターミナル)から尚州総合バスターミナルまでは高速バスで約2時間30分の距離。
食文化の背景
676年に新羅が半島を統一すると、687年に全国を9つの州に分割して統治を行った。その州のひとつが尚州(沙伐州)である。その当時から中東部の中心地域として栄え、高麗時代(918~1392年)にも地方行政組織である12牧(後に8牧)のひとつに尚州が含まれている。また高麗時代後期から現在に至るまで半島の南東部は慶尚道と呼ばれているが、この名称も慶州(경주)と尚州の頭文字から取られたものである。こうした歴史的な背景を踏まえ、尚州の両班家に伝わった料理書『是議全書』の料理を再現することにも力を入れている。地理的には小白山脈のふもとで栽培されるリンゴ、ナシ、ブドウ、柿などの果物類や、洛東江流域で生産される米などが名産として知られ、「大韓民国農業の首都」を掲げている。また、古くから養蚕も盛んにおこなわれており、名産品である米、干し柿、カイコの3つを三白(삼백)と総称して尚州の象徴としている。
代表的な料理
尚州は韓牛の名産地であり、柿の皮を食べさせて飼育した名実尚柿韓牛の焼肉が名物である。
ハヌグイ(韓牛の焼肉/한우구이)
- 尚州畜産農協では尚州の特産物である干し柿の生産過程で出る柿の皮を利用し、韓牛の飼料とする試みを2000年初め頃から始めた。当初、「尚州の柿を食べる韓牛」としてブランド化を進め、後に「名実尚柿韓牛(명실상감한우)」との名称に変更した。柿の皮を利用した飼料の製造方法は特許登録もされている[2]。2009年10月には軒新洞(헌신동)に尚州畜産農協が直接運営する焼肉店「名実尚柿韓牛広報テーマタウン(명실상감한우 홍보테마타운)」をオープンした[3]。同店では名実尚柿韓牛の焼肉やユッケ(牛刺身、육회)、ロースピョンチェ(炙り薄切り肉の野菜巻き、로스편채)などのメニューを味わえる。また、ランチ200食限定のサンガムハヌタン(牛カルビのスープ、상감한우탕)は、これを目当てに行列ができるほどの人気を誇る。
カルグクス(韓国式の手打ちウドン/칼국수)
- 南尚州インターチェンジ近くには飲食店が集まっており、カルグクス(韓国式の手打ちうどん、칼국수)が名物として知られる。カルグクスとともにテジヤンニョムソクセグイ(豚肉の味付け網焼き、돼지양념석쇠구이)を提供する「元祖チチョン食堂(원조지천식당)」と、テジスユク(茹で豚、돼지수육)を提供する「新チチョン食堂(새지천식당)」の2軒が有名。
代表的な特産品
洛東江流域で生産される米や、全国の6割以上を生産する干し柿、またリンゴ、ブドウなどの果物を多く生産する。韓牛の名産地でもあり、柿の皮を飼料に加えて飼育する名実尚柿韓牛が有名である。
コッカム(干し柿/곳감)
尚州は干し柿の名産地であり、現在は全国の6割以上を生産する[4]。その歴史は朝鮮時代までさかのぼり、『睿宗実録』の1468年11月13日の項目には、文官である尹孝孫(윤효손)の上疏文に「今也乾柿之貢分於尙州(今は干し柿の貢物を尚州に分けると決めた)」との記録が残る[5]。また、1530年に編纂された地理志『新増東国輿地勝覧』の第28巻「慶尚道 尚州牧」の項目にも名産(土産)として柿が記されている[6]。
- 品種
- 主にトゥンシ(둥시)と呼ばれる品種が用いられる。トゥンシとは「丸い(둥글다)」「柿(시)」という意味である。また、タンニンが表面に染み出て黒ずんだものをモッカム(墨柿、먹감)と呼び、これが干し柿を作るのにもっともよいと評価される。
- 製造方法
- 皮を剥いた柿を専用のハンガーにかけ、45~60日程度乾燥させる。水分を5~60%程度まで減らしたものをパンゴンシ(半乾柿、반건시)と呼び、35~40%程度まで減らしたものをコンシ(乾柿、건시)と呼ぶ。また、種を取って食べやすい大きさに切って干したものをカムマルレンイ(切干柿、감말랭이)と呼ぶ。
- 旬
- 例年10月中旬から干し柿の生産が始まり、12月頃から出荷が始まる。12月から2月頃までが旬。それ以降は冷凍したものが流通する。
- 輸出
- 星州では日本、シンガポール、香港、マレーシアなどにマクワウリを輸出している。中でも日本への輸出がもっとも多く、2015年は168.4トンに上っている[7]。
- 関連施設
- 玉星里(옥성리)には星州農業技術センターに併設されて「マクワウリ生態学習院(참외생태학습원)」がある。ここではマクワウリの栽培方法や、品種改良の歩み、歴史について学ぶことができる。また、郡内各地にある流通センターには、シーズンになると簡易販売場が設けられ、そこでマクワウリを購入することもできる。
- 利用
- 星州ではマクワウリを使った加工食品作りも行われている。星山里(성산리)にある「スミダム(수미담)」では、マクワウリを煮詰めて水飴を作り、それを販売するとともにこれを利用した伝統菓子(한과)の生産も行っている。また、白雲里(백운리)の農家レストラン「ミル(밀)」では、マクワウリの漬物(장아찌)や、マクワウリ入りのビビンバ(비빔밥)蒸しパン(찐빵)などを作るとともに、マクワウリで甘味をつけた酢、水飴、コチュジャンなどを料理の味付けに利用している。
- スミダム(수미담)
- 住所:慶尚北道星州郡大家面星山2キル95-33(星山里1222-4)
- 住所:경상북도 성주군 성주읍 성산2길 95-33(성산리 1222-4)
- 電話:054-931-6464
代表的な酒類・飲料
尚州市のマッコリ
- 星州には伽泉醸造場の「星州伽耶山伽泉米生マッコリ(성주 가야산 가천 쌀생막걸리)」や、星州濁酒醸造場の「龍巌マッコリ(용암막걸리)」がある。
飲食店情報
以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。
- 名実尚柿韓牛(명실상감한우)
- 住所:慶尚北道尚州市嶺南第一路1119-9(軒新洞45-1)
- 住所:경상북도 상주시 영남제일로 1119-9(헌신동 45-1)
- 電話:054-531-9915
- 料理:ハヌグイ、ロースピョンチェ
- チチョン食堂(지천식당)
- 住所:慶尚北道尚州市南尚州路1460(梁村洞569-7)
- 住所:경상북도 상주시 남상주로 1460(양촌동 569-7)
- 電話:054-532-1715
- 料理:カルグクス、テジヤンニョムソクセグイ
エピソード
- 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2016年10月に初めて尚州市を訪れた。慶尚北道広報大使が取材、執筆する観光冊子『GB-Story Vol.3』にはこの時の取材をもとに、干し柿や名実尚柿韓牛を中心とした話が掲載されている。
脚注
- ↑ 주민등록 인구통계 、行政自治部ウェブサイト、2016年12月23日閲覧
- ↑ 브랜드소개 、尚州畜産農協ウェブサイト、2016年12月25日閲覧
- ↑ 홍보테마타운 소개 、尚州畜産農協ウェブサイト、2016年12月25日閲覧
- ↑ 상주의 농특산물 、尚州市ウェブサイト、2016年12月24日閲覧
- ↑ 상제·학교·공법·사창·정병 유방에 관한 윤효손의 상소문 、国史編纂委員会「朝鮮王朝実録」、2016年12月24日閲覧
- ↑ 신증동국여지승람 제28권 경상도 상주목 、韓国の知識コンテンツ、2016年12月24日閲覧
- ↑ 농산물 수출 실적 、星州郡ウェブサイト、2016年12月23日閲覧