スンドゥブチゲ(柔らかい豆腐の鍋/순두부찌개)
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スンドゥブチゲ(순두부찌개)は、柔らかい豆腐の鍋。
名称
スンドゥブはにがりを打って押し固める前の豆腐を意味し、チゲは汁気の少ない鍋料理を総称する。また、スンドゥブのドゥブは漢字語の豆腐であり、漢字で全体を「純豆腐」、「順豆腐」と表記することもあるが、スンドゥブのスンは語源が明らかになっておらず当て字に過ぎない。語源としては水豆腐(ストゥブ)が転化したとの説や、スナントゥブ(柔らかい豆腐、순한 두부)が転化したとの説がある。飲食店のメニューではチゲを省略してスンドゥブとだけ表記をしたり、定食を意味するペッパン(백반)をつけてスンドゥブペッパンとすることもある。また、日本ではスントゥブ、スンドゥーフ、スンドゥプといった表記も見られるが、本辞典においては「スンドゥブチゲ」を使用する。発音表記は[순두부찌개]。
概要
スンドゥブチゲは、柔らかい豆腐(=スンドゥブ)を主材料として作る鍋料理。アサリや豚肉、タマネギ、長ネギなどの野菜、キノコなどを具とし、味付けには塩、粉唐辛子、ニンニク、ゴマ油などを用いる。仕上げとして生卵を落とすことも多い。飲食店では主に1人前のトゥッペギ(뚝배기、チゲ用に使う素焼きの鍋)で調理をするが、大きな鍋で作ったものをシェアして食べることもある。韓国にはスンドゥブチゲの専門店が多数あり、また食堂や居酒屋などでもメニューに載る。家庭料理として作られることも多い。専門店では牡蠣、エビ、イカなどを入れたものや、キムチ、牛肉、餃子などをメインの具としたものも提供する。
歴史
1960年代
もともとスンドゥブはチゲとしてでなく、出来たてに薬味醤油をかけて食べるものであった。現在の韓国においてもっとも古いスンドゥブチゲ専門店は、1962年創業の「小公洞トゥッペギチプ(소공동 뚝배기집)」である。2代目社長であるホ・ヨンソク氏は「父が店を始める前に市場などでチゲとして販売するケースはあったようだが、店舗として構えたのは『小公洞トゥッペギチプ』が初めて」(八田靖史の取材記録より、2010年2月) と語っており、それを根拠とすれば1950年代後半から1960年代前半にはスンドゥブチゲが料理として存在していたと推測される。
「小公洞トゥッペギチプ」の開店
- 「小公洞トゥッペギチプ」は1962年に小公洞で創業した。
「チョンウォンスンドゥブ」の開店
- 「チョンウォンスンドゥブ」は1969年に西小門洞で創業した。店では「当時、小公洞、西小門洞の付近には豆腐工場があり、そのため近隣にスンドゥブチゲ店がたくさんあった」(八田靖史の取材記録より、2009年2月24日)と説明している。
2010年代
2010年から11年頃に豚肉の特殊部位を扱う専門店が続々と増えてブームになった。これは2008年頃からの韓牛ブームによって、牛肉の特殊部位を提供する店が増えたことも影響していると考えられる。カルメギサルはハンジョンサル(항정살、首すじの肉、豚トロ)、カブリサル(가브리살、バラ肉を包んでいる肉 )、コプテギ(껍데기、豚皮)などとともに代表的な豚肉の特殊部位として定着している。
種類
カルメギサルには次のような種類がある。
- センカルメギサル(생갈매기살)
- 味付けなしのカルメギサル
- ヤンニョムカルメギサル(양념갈매기살)
- 辛い薬味ダレを絡めたカルメギサル
- マヌルカルメギサル(마늘갈매기살)
- ニンニクダレを絡めたカルメギサル
日本における定着
日本では焼肉店などで豚ハラミとして提供されている。韓国料理のカルメギサルとしては、まだほとんど馴染みがなく、これからの定着が期待される。
エピソード
- 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は留学時代の2000年に豚焼肉店でメニューにカルメギサルを発見し、韓国ではカモメの肉を食べるのだと本気で勘違いをした過去がある。
地域
- ソウル市麻浦区桃花洞
- 孔徳駅の近くにカルメギサルの専門店が集まっており、麻浦カルメギサル通りと呼ばれる。
- ソウル市鍾路区敦義洞
- 鍾路3街駅の近くにカルメギサルの専門店が集まっており、鍾路3街カルメギサル通り(종로3가 갈매기살골목)と呼ばれる。
- 京畿道城南市中院区麗水洞
- 麗水洞にカルメギサルの専門店が集まっている。
脚注