扶安郡の料理

提供: 韓食ペディア
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扶安郡(プアングン、부안군)は全羅北道に位置する地域。本ページでは扶安郡の料理、特産品について解説する。

金佐鎮将軍像

地域概要

扶安郡は全羅北道の南西部に位置し、全羅北道の金堤市、井邑市、高敞郡と接する。また、後述するセマングム防潮堤によって群山市とも結ばれている。人口は5万7534人(2014年12月)[1]。郡の約3分の2を西海岸に突き出た辺山半島(ピョンサンバンド、변산반도)が占め、北東部の一部は湖南平野(ホナムピョンヤ、호남평야)の一角を成す。辺山半島の大半は辺山半島国立公園(변산반도국립공원)として指定されており、内陸部の山岳地域から海岸部に至るまで多様な自然景観を楽しむことができる。代表的な観光地に、百済時代の633年に創建された古刹の来蘇寺(ネソサ、내소사)、同じく634年に創建された開岩寺(ケアムサ、개암사)、時代劇などのロケ地として使われる扶安映像テーマパーク(부안영상테마파크)などがある。ソウル(ソウル高速バスターミナル)からは高速バスで約2時間50分の距離。

食文化の背景

南塘港

半島として西海岸に突き出た扶安郡は三方を海に囲まれ、また広大な干潟を有していることから四季折々の海産物に恵まれた地域である。例えば、格浦港(キョッポハン、격포항)のある刺身店では、春はマダイ(도미)、夏はスズキ(농어)、秋はコノシロ(전어)、冬はボラ(숭어)とそれぞれ旬の刺身を主力商品とし、そこに加えて3~4月は卵を持ったイイダコ(주꾸미)、5~6月はコウイカ(갑오징어)も提供している(八田靖史の取材記録より、2010年4月4日)。また、扶安の食文化においては干潟からの恵みを欠かすことはできず、アサリ(바지락)、バカガイ(개량조개)、アカガイ(피조개)、タイラガイ(키조개)、シオフキ(동죽)などがよくとれる。こうした干潟を利用した塩田事業も古くから栄え、天日塩を特産品とするとともに、豊富な海産物を用いた塩辛(젓갈)の生産も盛んである。一方で、養蚕事業も盛んであることから郡内には桑畑が多く、桑の葉(뽕잎)や、桑の実(오디)を利用した郷土料理も多い。食品以外では、高麗時代から青磁の生産地として栄えた歴史を持ち、現在も陶磁器作りが盛んである。

セマングム干拓事業

  • 事業概要

セマングムとは扶安郡、金堤市、群山市にまたがる大規模な干拓地である。セマングムのセは「新しい」、マンは万頃平野の「万」、グムは金堤平野の「金」(金堤の金はキムと読むが、別の読み方ではグムとも読める)から取られている。扶安の辺山半島から古群山群島を経て群山市までを全長33.9kmの防潮堤(2010年4月に完成)で結び、その内側を干拓することによって総面積4万100ha(面積でソウルの3分の2に相当)という広大な土地を新たに造成する[2]。この事業が計画されたのは1970~80年代で、当初は農業用地の確保がいちばんの目的であった。ところが地元や環境団体の反対もあって事業が長期化したことにより、当初の目的はすでに意味を失っており、現在は東北アジア地域における経済の中心地としての開発と変更されている。

  • 食文化への影響

干拓事業によって多くの干潟が埋立てられ、漁業にも大きな影響が出ている。一例として、界火(ケファ、개화)地区はハマグリの主産地として全国的に有名だったが、干拓事業によって生産量が激減した。あるハマグリ料理の専門店では、長らく使ってきた地元産を諦め、北朝鮮の海州産に切り替えた(八田靖史の取材記録より、2010年4月5日)。

代表的な料理

パジラッチュク(アサリ粥/바지락죽)

パジラッチュクはアサリ粥。地元でとれたアサリをむき身にして、米と一緒にゴマ油で炒め、水を加えてじっくり煮込んで作る。具にはアサリのほか、刻んだ野菜やキノコ、緑豆などを加え、店によっては高麗人参や、桑の葉などを加えて作ることもある。アサリの旬は春だが、専門店ではほぼ通年で味わえる。辺山面大項里に専門店が集まっている。

ペカプクイ(ハマグリ焼き/백합구이)

ペカプクイはハマグリ焼き。界火

チョッカルジョンシク(塩辛定食/젓갈정식)

オディハンジョンシク(桑韓定食/오디한정식)

カボジンオグイ(コウイカ焼き/갑오징어구이)

チュクミシャブシャブ(イイダコのシャブシャブ/쭈꾸미샤브샤브)

セジョゲシャブシャブ(トリガイのしゃぶしゃぶ/새조개샤브샤브)

セジョゲシャブシャブはトリガイのしゃぶしゃぶ。生のトリガイを野菜とともに海鮮ダシでさっとゆがき、醤油ダレや、チョコチュジャン(唐辛子酢味噌、초고추장)などで味わう。西海岸に面した浅水湾、特に南塘港の名物として知られ、韓国でトリガイといえばこの地域がもっとも有名である。旬は真冬であり、12~3月頃まで提供されるが、その中でも1~2月を最盛期とする。また、春に旬を迎えるイイダコ(주꾸미)をトリガイと一緒にゆがいて味わうことも多い。最後残ったスープにインスタントの袋ラーメンを入れて食べるのも定番である。毎年1~3月には南塘港、浅水湾一帯で「洪城南塘港トリガイ祭り(홍성 남당항 새조개축제)」が開催される。[3]
  • 韓国観光公社の記述
韓国観光公社が配布する『韓国の味紀行』という冊子(WEBでも閲覧可)では以下のように紹介されている。
「1980年代初盤には浅水湾にトリガイはいませんでした。トリガイは、沿岸5~30メートルの深さの泥底に生息していますが、1984年の干拓事業で浅水湾北端に砂が生じ、自然とトリガイが生息できる環境ができました。浅水湾の防潮堤工事が終わり、ある漁夫が干潟で偶然にトリガイを見つけましたが、初めは何か分からずに全て捨ててしまいました。しかしそれが日本で最高の寿司の材料として使われるという噂が立ってからは、ほとんどが日本に輸出されるようになりました。韓国でこの珍しい貝を食べ始めたのは、1990年代後半に一部の美食家によりその味が知られるようになってからのことです。さっと煮て食べると、やわらかい身はほのかに甘く、初めて味わう人も感嘆せざるをえないほどでした。その後、毎年12月になるとトリガイを味わうために南塘港を訪ねる人が増え始め、最近ではトリガイが無くなり販売できなくなるほどになりました。 」[4]

テハグイ(コウライエビ焼き/대하구이)

テハグイ
テハグイはコウライエビ焼き。コウライエビは日本で大正エビとの別名もある。活きたままのコウライエビを塩焼きにし、殻を剥いてそのまま味わう。トリガイと同じく南塘港の名物として知られ、9~10月頃を最盛期とする。界隈の飲食店ではテハグイのほか、コウライエビを薬味醤油に漬け込んだテハジャン(コウライエビの薬味醤油漬け、대하장)も提供する。毎年9~10月頃には南塘港、浅水湾一帯で「洪城南塘港コウライエビ祭り(홍성 남당항 대하축제)」が開催される。[5]

ソモリクッパプ(牛頭肉のスープごはん/소머리국밥)

ソモリクッパプ
ソモリクッパプは牛頭肉のスープごはん。牛の頭部をじっくり煮込んでスープをとり、ごはんとともに食べやすく切った頭部の肉を具として加える。味付けは薄い塩味で、アミの塩辛を加えてもよい。郡の中心部にある洪城伝統市場に専門店が立ち並んでおり、市場の名物としても知られる。

代表的な特産品

内陸部では牛肉を中心とした畜産業が盛んで、西部の海岸地域ではトリガイ、コウライエビなどが名産である。広川地区は海苔の生産や、洞窟を利用したアミの塩辛作りでも有名。

海苔

広川海苔を使用した日本向けの商品
洪城郡の広川地区は忠清南道や全羅北道の沿岸部、島嶼部などで生産する海苔の集散地として名高い。「広川海苔(광천김)」の名はブランドとして広く認知されており、日本をはじめとした諸外国にも輸出されている。一例として、五星コーポレーションが販売する「ソンガネ韓国のり」は、缶のパッケージに「広川(クァンチョン)海苔使用」との説明書きを載せ、「韓国西海岸にある広川は潮の干満の差が大きく良質で味の良い海苔が取れることで有名な地域」と記している。[6]

アミの塩辛

広川地区では1950年代にアミの塩辛を洞窟内で熟成させる技術を確立した(1960年代半ばとする情報もある)。洞窟内は年間を通して温度が一定であり、品質を保つのにも適している。韓国語で洞窟のことをトグル(토굴)と呼び、ここで保存したアミの塩辛は「トグルセウジョッ(洞窟のアミの塩辛)」と呼ばれる。アミの塩辛はキムチの材料として欠かせないため、越冬用のキムチを大量に漬け込むキムジャン(김장)のシーズンを目前とした、毎年10月に「広川トグルセウジョッ・広川海苔祭り(광천토굴새우젓·광천김축제)」が開催される。[7]
  • 洪城郡の記述
洪城郡の観光ページではトグルセウジョッの由来について以下のように紹介している。
「もともとアミの塩辛はチョレンイと呼ばれる甕に貯蔵したが、夏に腐敗して嫌なにおいの塩辛になる場合が多かった。 このにおいを出さない方法を考えていた故ユン・ビョンウォン氏が実験的に1954年、廃金鉱にアミの塩辛を置き、キムチを漬ける季節に行ってみるとよく熟成しているのを発見した。ユン・ビョンウォン氏が洞窟を堀って以来、洞窟の効果を体験した村の人々は相次いで洞窟を掘り始めた。洞窟は石が多くて水のたくさん落ちるところがよいのだが、このような土壌をよく選んだ後、機械の力を借りず純粋に人の労働力でのみ掘った。この洞窟の中にアミの塩辛の甕を置き始めて以来、広川のアミの塩辛は「トグルセウジョッ(洞窟のアミの塩辛)」として知られるようになり、現在は西海岸と南海岸でとれたアミをここに貯蔵し、「広川トグルセウジョッ」として生まれかわらせ、代表的なアミの塩辛の販売団地として地位を築いた」(原文1)[8]
【原文1】「원래 새우젓은 조랭이 또는 조쟁이라 불리는 항아리에 저장하는데, 여름에 부패하여 고랑젓이 되는 경우가 많았다. 이 고랑젓이 생기지 않는 방법을 고민하다가 고(故) 윤병원 씨가 실험적으로 1954년 금광 폐광에 새우젓을 넣어 보았다가 김장철에 가보니 잘 숙성되어 있는 것을 발견하게 되었다. 윤병원 씨가 토굴을 판 이후에 토굴의 효험을 체험한 마을 사람들은 연이어 토굴을 파기 시작하였다. 토굴은 돌이 많고 물이 많이 떨어지는 곳이 좋은 곳인데, 이러한 토질을 잘 고른 다음 기계의 힘을 빌리지 않고 순진히 사람의 노동력으로만 팠다. 이 토굴속에 새우젓 독을 넣기 시작한 이래, 광천새우젓은 토굴새우젓으로 소문하게 되었고, 현재는 서해와 남해에서 잡은 새우를 이 곳에 저장해 광천토굴새우젓으로 재탄생하여 대표적인 새우젓 판매단지로 자리 잡았다.」。

韓牛

洪城韓牛はブランド牛のひとつとして名高い。多く内陸部の丘陵地において、ワラや穀物などをエサに昔ながらの方法で飼育している。洪城韓牛は2012年に大韓民国代表ブランド大賞を受賞し、2014年には大韓民国地域ブランド特産物部門優秀賞を受賞した。[9]

代表的な酒類・飲料

ポンジュ

扶安郡のマッコリ

主要な銘柄に結城醸造場の「結城マッコリ(결성막걸리)」、ホンドン酒造の「内浦マッコリ(내포막걸리)」がある。

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

  • 界火会館(개화회관)
住所:全羅北道扶安郡幸安面辺山路95(新基里211-2)
住所:전라북도 부안군 행안면 변산로 95(신기리 211-2)
電話:063-581-0333
料理:ペカプクイ
  • 格浦港フェッチプ(격포항횟집)
住所:全羅北道扶安郡辺山面格浦港キル24-5、2階(格浦里788-12)
住所:전라북도 부안군 변산면 격포항길 24-5, 2층(격포리 788-12)
電話:063-584-8833
料理:チュクミシャブシャブ
  • コムソシィムト(곰소쉼터)
住所:全羅北道扶安郡鎭西面青瓷路1086(鎭西里1219-19)
住所:전라북도 부안군 진서면 청자로 1086(진서리 1219-19)
電話:063-584-8007
料理:チョッカルジョンシク
  • タンサンマル(당산마루)
住所:全羅北道扶安郡扶安邑堂山路71(西外里177)
住所:전라북도 부안군 부안읍 당산로 71(서외리 177)
電話:063-581-1626
料理:オディハンジョンシク、ポンニプコドゥンオ
  • 元祖パジラッチュク(원조바지락죽)
住所:全羅北道扶安郡辺山面ムクチョンキル18(大項里90-12)
住所:전라북도 부안군 변산면 묵정길 18(대항리 90-12)
電話:063-583-9763
料理:パジラッチュク
  • ヘビョンチョン(해변촌)
住所:全羅北道扶安郡辺山面馬浦路27(馬浦里617-1)
住所:전라북도 부안군 변산면 마포로 27(마포리 617-1)
電話:063-581-5740
料理:カボジンオグイ、オジュク

エピソード

  • 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2009年5月に初めて扶安郡を訪れた。以後、2010年4月、10月の計3度訪問している。
  • 2010年4月には「韓国語ジャーナル第33号」(アルク)の取材で訪れ、「干潟の恵みと四季の魚介、扶安まんぷくガイド」という記事にまとめた。

脚注

  1. 행정자료-인구현황 、扶安郡ウェブサイト、2015年1月18日閲覧
  2. 새만금의 위치 、セマングム開発庁ウェブサイト、2015年1月19日閲覧
  3. 홍성남당항새조개축제 、洪城郡ウェブサイト、2015年1月18日閲覧
  4. 忠清南道の味紀行 、韓国観光公社ウェブサイト、2015年1月17日閲覧
  5. 홍성남당항대하축제 、洪城郡ウェブサイト、2015年1月18日閲覧
  6. ソンガネ韓国海苔(缶) 、五星コーポレーションウェブサイト、2015年1月18日閲覧
  7. 광천토굴새우젓·광천김축제 、洪城郡ウェブサイト、2015年1月18日閲覧
  8. 광천토굴의 역사 、洪城郡ウェブサイト、2015年1月18日閲覧
  9. 홍성군 특산품 한우 、洪城郡ウェブサイト、2015年1月18日閲覧

外部リンク

関連項目