パンゲタン(半羽のサムゲタン/반계탕)

2024年8月21日 (水) 11:30時点におけるHatta (トーク | 投稿記録)による版 (→‎パンゲタンの歴史)
この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。

パンゲタン반계탕)は、半羽のサムゲタン。

概要

パン(반)は半分。ゲ(=ケ、계)は鶏。タン()はスープを表す。パンサムゲタン(반삼계탕)とも呼び、サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)のハーフサイズを意味する。ひな鶏の腹にもち米、高麗人参、ナツメ、ニンニク、銀杏などを詰めて煮込み、できあがったところで頭から尻のほうまで縦半分に切る。最初からパンゲタンとして作る場合は、左右に具をひとつずつ入れる工夫もある。味付けはごく薄い塩味にとどめ、食べる人が卓上の塩やコショウを好みで加える。主に専門店で食べられるメニューであるが、一般の食堂でも出すところがある。夏負けを防ぐスタミナ料理として食べられることが多く、ポシンタン(犬肉の鍋/보신탕)サムゲタンとともに、伏日(복날)に食べる料理として知られる。伏日は三伏(삼복)とも呼び、夏至から数えて3度目の庚の日である「初伏(초복)」と、4度目の庚の日である「中伏(중복)」、立秋後初めての庚の日である「末伏(말복)」の総称であり、1年の中で最も暑い時期とされる。伏日の詳細についてはサムゲタンか、ポシンタンの項目を参照。

伏日(복날)

伏日(ポンナル、복날)は、「初伏(チョボク、초복)」「中伏(チュンボク、중복)」「末伏(マルボク、말복)」の総称。夏至から数えて3度目の庚(かのえ)の日を初伏、4度目の庚の日を中伏、立秋を過ぎて最初の庚の日を末伏と呼び、これを総称して「三伏(サムボク、삼복)」とも呼ぶ。伏日は陰陽五行思想に基づいた習慣であり、1年の中でもっとも暑い時期であることから、強い陽気に押されて陰気が地表近くに「伏」せている「日」を指す。陰気が濃密になることにより、人間に害をなす鬼神が横行しやすくなるため、体調を崩す(夏負けする)と考えられる。その対策として栄養価の高い料理を食べることが推奨され、伏日の代表的な料理には、サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)や、タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)ポシンタン(犬肉の鍋/보신탕)チュオタン(ドジョウ汁/추어탕)などがあげられる。伏日はほぼ10日間隔となるが、暦の関係で中伏と末伏は20日間隔になることもあり、これを越伏(ウォルボク、월복)と呼ぶ。末伏は立秋と重なることもある。よく似た習慣として日本の土用丑があるが、十干十二支に「庚」と「丑」の組み合わせはなく、伏日と土用丑が重なることはない。
伏日が庚の日であるのは陰陽五行思想をもとに、庚が五行(木・火・土・金・水)の「金」、五季のうち夏が「火」に相当し、「火克金(火は金属を溶かす=火が強まると金が弱まる)」の考え方から、庚の日はもっとも盛夏の影響を受ける日とされる。伏日には弱まった「金」の要素を補充することが好ましく、いずれも「金」に相当する五畜の「犬」、五菜の「葱」、五味の「辛味」を掛け合わせたポシンタン(犬肉の鍋/보신탕)が、かつては伏日の代表的な料理であった(各要素は資料によって異なる場合がある)。しかし、近年は犬肉を食肉とすることへの忌避が強まったことから、韓国ではサムゲタンなどの鶏料理や、ポシンタン(犬肉の鍋/보신탕)の犬肉を牛肉で代替したユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)などを食べる人が多い。朝鮮民主主義人民共和国では、伏日にポシンタン(犬肉の鍋/보신탕)を食べる習慣が残っている。
2024年以降の伏日
  • 2024年7月15日(月)、7月25日(木)、8月14日(水)
  • 2025年7月20日(日)、7月30日(水)、8月9日(土)
  • 2026年7月15日(水)、7月25日(土)、8月14日(金)
  • 2027年7月20日(火)、7月30日(金)、8月9日(月)
  • 2028年7月14日(金)、7月24日(月)、8月13日(日)
  • 2029年7月19日(木)、7月29日(日)、8月8日(水)
  • 2030年7月14日(日)、7月24日(水)、8月13日(火)
  • 2031年7月19日(土)、7月29日(火)、8月8日(金)
  • 2032年7月13日(火)、7月23日(金)、8月12日(木)
  • 2033年7月18日(月)、7月28日(木)、8月17日(水)

歴史

サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)から派生した料理であり、料理全体の歴史については同項目を参照。

パンゲタンの歴史

1998年2月22日付の「東亜日報」に、「『パンゲタン』をご存じですか」という記事が掲載されており、アジア通貨危機による経済不安から、証券街として知られるソウル市の料理の汝矣島(ヨイド、여의도)で飲食店の値下げが相次いでいることを伝えている。事例のひとつとして、「サムゲタン専門店の「Panax(파낙스)」では、鶏半羽の『パンゲタン』を5000ウォンで出している。2週間前までは9000ウォンのサムゲタンのみだった」[1]と紹介しており、パンゲタンは値下げ対応の一環として考案された可能性が推測できる。

脚注

  1. '반계탕'을 아시나요 、NAVERニュースライブラリー(東亜日報1998年2月22日記事)、2024年8月21日閲覧

外部リンク

制作者関連サイト

関連項目