唐津市の料理

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唐津市(タンジンシ、당진시)は忠清南道の北部に位置する地域。本ページでは唐津市の料理、特産品について解説する。

地域概要

唐津市は忠清南道の北部に位置する地域。市の北部は黄海と牙山湾に面し(韓国では珍しく北部のみが海に面している)、東部は忠清南道牙山市、南部は忠清南道礼山郡、南西部から西部は忠清南道瑞山市と接する。人口は16万8253人(2022年12月)[1]

  • 唐津市の地名由来
百済時代に「唐と往来をする港」という意味で、唐津浦(タンジンポ、당진포)と呼ばれる港があった[2]。統一新羅時代の757年に、地域の名前が旧称の伐首只(ポルスジ、벌수지)県から、唐津県へと改称された[3]

食文化の背景

隣接する礼山郡と、唐津市の一帯は広大な平野であり、両者の頭文字を取って礼唐平野(イェダンピョンヤ、예당평야)と呼ばれる。韓国を代表する穀倉地帯のひとつであり、稲作を中心とした農業が盛んである。北部を中心に港町として海産物が豊富であり、ワタリガニ(꽃게)、イイダコ(주꾸미)、シラス(실치、シラウオなどの稚魚)、アサリ(바지락)などが名産として知られる。市南部の沔川面(ミョンチョンミョン、면천면)地区は、ツツジの花の名所であり、これを原料に加えた薬酒「沔川杜鵑酒(ミョンチョントゥギョンジュ、면천두견주)」は高麗時代からの歴史があり、国の無形文化財第86-2号に指定されている。

代表的な料理

シルチフェ(生シラスの刺身和え/실치회)

シルチフェ(실치회)は、生シラスの刺身和え。シルチ(シラス、실치)は「糸のような魚」という意味で、正確にはシラウオ(뱅어)やギンポ(베도라치)などの稚魚を意味する。生シラスをセリやキャベツなどの生野菜とともに、甘辛酸っぱいタレで和えて食べる。市北西部の長古項(チャンゴハン、장고항)港が名産地で、地元の漁業関係者によれば「港からすぐのところに漁場があるため、鮮度を維持したまま水揚げできる」のが自慢であるという(八田靖史の取材記録より、2017年4月18日)。港近くの水産物流通センターや、近隣の飲食店ではシルチフェのほか、シルチクッ(生シラスとホウレンソウの味噌鍋、실치국)や、シルチジョン(生シラスのチヂミ、실치전)、シルチバプ(生シラスのビビンバ、실치밥)などの料理を味わえる。最盛期は4月から5月初め頃で、この時期には「長古項シラス祭り(장고항 실치축제)」が開催される。
  • 唐津のシルチ
韓食ペディアの執筆者である八田靖史が、地元の漁業関係者に聞いたところ、唐津市でとれるシルチはシラウオ(뱅어)の稚魚ではないかとのことであった(八田靖史の取材記録より、2017年4月18日)。資料によっては、ギンポ(베도라치)や、ギンポの一種である「흰베드라치(和名未詳)」の稚魚としている場合もある。シルチを干したものは、ペンオポ(たたみ干し、뱅어포)と呼ばれる。
  • ペンオポ(뱅어포)
ペンオポ(뱅어포)は、たたみ干し。唐津市ではシルチを板状に干したものを指す(たたみいわしと同様の製法)。そのまま炙って食べるほか、コチュジャンや水飴を混ぜたタレを表面に塗ってから焼くこともある。かつてはペンオポを「ニブシ(니부시)」とも呼び、日本語の「煮干し」がなまったものと推測される。

コッケジャン(ワタリガニの醤油漬け/꽃게장)

コッケジャン(꽃게장)は、ワタリガニの醤油漬け。カンジャンケジャン(간장게장)とも呼ぶ(「カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け/간장게장)」の項目も参照)。唐津市ではワタリガニ(꽃게)が名産品であり、専門店ではコッケジャンのほか、コッケタン(ワタリガニ鍋/꽃게탕)コッケチム(ワタリガニ蒸し/꽃게찜)などの料理も提供する。

ケンムクテンジャンチゲ(エゴマ入り味噌チゲ/깻묵된장찌개)

ケンムクテンジャンチゲ(깻묵된장찌개)は、エゴマ入り味噌チゲ。ケンムク(깻묵)は、ゴマ油(참기름)やエゴマ油(들기름)などのしぼりかすを意味し、テンジャンチゲは(된장찌개)味噌仕立ての鍋を指す(「テンジャンチゲ(味噌鍋/된장찌개)」の項目も参照)。もともとはエゴマ油を取った後のしぼりかすを利用してテンジャンチゲを作ったが、現在はエゴマ粉を使用して作る。唐津市の郷土料理であり、家庭料理として作られるほか市内の定食店などで提供される。ケンムクチゲ(깻묵찌개)、ケンムクテンジャン(깻묵된장)と呼ばれることもある。

コモクチ(大根の葉の塩漬け/꺼먹지)

コモクチ(꺼먹지)は、大根の葉の塩漬け。コモクチとは「黒い漬け物」という意味で、大根の葉が熟成を経て黒くなることから名前がついたとされる。コモクチは炒めて副菜とするほか、ケンムクテンジャンチゲ(エゴマ入り味噌チゲ/깻묵된장찌개)に入れたり、ピビムパプ(ビビンバ/비빔밥)ポッサム(茹で豚の葉野菜包み/보쌈)の具として味わう。専門店ではこれらを組み合わせた、コモクチジョンシク(大根の葉の塩漬け定食、꺼먹지정식)を提供するところもある。
  • 唐津コモクチピビムパプ
唐津コモクチピビムパプ(당진꺼먹지비빔밥)は、唐津市の郷土料理であるコモクチを具として利用したピビムパプ(ビビンバ/비빔밥)。2014年8月に、ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇訪問を記念して唐津市で開かれた「天主教アジア青年大会(천주교 아시아 청년대회)」で提供された。2015年6月には、唐津市農業技術センターの申請により、「唐津コモクチピビムパプ(당진꺼먹지비빔밥)」の名前で商標登録されている[4]

ウロンイサムパプ(タニシの包みごはん/우렁이쌈밥)

ウロンイサムパプ(우렁이쌈밥)は、タニシの包みごはん。ウロンイ(우렁이)はタニシ、サムパプ(쌈밥)は葉野菜でごはんを包んで食べる料理を指す(「サムパプ(葉野菜の包みごはん/쌈밥)」の項目も参照)。ウロンサムパプ(우렁쌈밥)とも呼ぶ。茹でたタニシを、テンジャン(味噌、된장)、豆腐などと混ぜてウロンイサムジャン(タニシ味噌、우렁이쌈장)を作り、ごはんとともに葉野菜で包んで味わう。このウロンイサムジャンがメニューとして掲載され、そこに葉野菜やごはんがついてくるところも多い。専門店では、ウロンイテンジャンチゲ(タニシの味噌チゲ、우렁이된장찌개)、ウロンイチョムチム(タニシと野菜の和え物、우렁이초무침)といった料理も提供し、これらを組み合わせた定食も提供する。市東部の新平面道城里(シンピョンミョン トソンニ、신평면 도성리)地区のシンダン交差点(신당교차로)付近に専門店が集まっている。
  • 味噌の種類
豆腐を入れてつくるウロンイサムジャン(タニシ味噌、우렁이쌈장)は、ウロンサムジャン(우렁쌈장)、あるいは単にサムジャン(쌈장)とも呼ぶ。このほか、カンテンジャン(濃く煮詰めた味噌、강된장)にタニシを加えた辛口の「トクチャン(덕장)」や、チョングッチャン(納豆に似た香りの味噌、청국장)にタニシを加えた「タムブクチムジャン(담북찜장)」を提供する店もある。

チョゲグイ(貝焼き/조개구이)

チョゲグイ(조개구이)は、貝焼き。ハマグリ(백합)、ホタテ(가리비)、タイラギ(키조개)などの貝を網焼きにして味わう。市東部の新平面雲井里(シンピョンミョン ウンジョンニ、신평면 운정리)地区にチョゲグイの専門店が集まっており、センソンフェ(刺身/생선회)や、チョゲチム(貝蒸し、조개찜)、ヘムルカルグクス(海鮮手打ちうどん、해물칼국수)などの料理も提供する。

代表的な特産品

  • パジラク(アサリ/바지락)松岳邑
  • ファントガムジャ(黄土ジャガイモ/황토감자)松岳邑

代表的な酒類・飲料

  • ミョンチョントゥギョンジュ(沔川杜鵑酒/면천두견주)沔川面
  • ペンニョンマッコルリ(白蓮マッコリ/백련막걸리)新平面金川里

飲食店情報

エピソード

脚注

  1. 주민등록 인구 및 세대현황 、行政安全部ウェブサイト、2023年1月10日閲覧
  2. 당진포리 、デジタル唐津文化大典、2023年5月8日閲覧
  3. 역사와유래 、唐津市ウェブサイト、2023年5月8日閲覧
  4. 보도자료/당진시, 교황방문 기념‘당진꺼먹지비빔밥’상표등록 、唐津市ウェブサイト、2023年5月13日閲覧

外部リンク

関連サイト
制作者関連サイト

関連項目