チュクミボックム(イイダコ炒め/주꾸미볶음)

2023年2月3日 (金) 00:02時点におけるHatta (トーク | 投稿記録)による版 (→‎日本における定着)
この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。

チュクミボックム주꾸미볶음)は、イイダコ炒め。

チュクミボックム

名称

チュクミ(주꾸미)はイイダコ。ボックム(=ポックム、볶음)は炒め物の意。チュクミは標準語の(주꾸미)に対し、もともとは全羅南道方言[1]である「쭈꾸미」が広く使われており、チュクミボックムも「쭈꾸미볶음」と表記、発音する例が多い。日本での表記は「チュクミポックム」とすることもあるが、本辞典においては「チュクミボックム」を使用する。また、2022年以降はチュクミボックムの専門店が増えたことから、食材名である「チュクミ」がチュクミボックムの意味で使われる例も増えている(日本における定着参照)。発音表記は[주꾸미보끔]。

  • 語源
チュクミは古い俗称をチュックモ(죽금어)と呼び、漢字で「竹今魚」と書いて、「タケノコが出る時期(春)に旬を迎える魚介」との意味がある。このチュックモが変化して、チュクミになったとの説が知られている。

概要

丸ごとのイイダコをタマネギ、ニンジンなどの野菜とともに辛いコチュジャン(唐辛子味噌、고추장)のタレで炒めた料理を指す。家庭料理として作られるほか、海鮮料理店、居酒屋などでも提供される。専門店では浅い鉄板鍋を卓上に用意し、多めの煮汁で炒め煮るように調理をすることもある。イイダコは西海岸沿いが主産地であり、メスが卵を持つ春頃が旬として知られる。イイダコを用いた料理としては、ほかに辛味ダレに絡めて網焼きにしたチュクミグイ(イイダコ焼き、주꾸미구이)、野菜などを入れた鍋でさっとゆがいて味わうチュクミシャブシャブ(イイダコのしゃぶしゃぶ、주꾸미샤브샤브)、ゆがいたイイダコを唐辛子酢味噌につけて食べるチュクミスッケ(茹でイイダコ、주꾸미숙회)などがある。類似の料理としては、テナガダコを同様に炒めたナクチボックム(テナガダコ炒め/낙지볶음)や、スルメイカを用いたオジンオボックム(イカ炒め/오징어볶음)がある。

アルマニポックムパプ

アルマニポックムパプ(알마니볶음밥)は、とびこチャーハン。チュクミボックムを食べて残った汁に、ごはんを入れてポックムパプ(チャーハン/볶음밥)を作る際、トッピングとしてとびこ(날치알)を加えたものを指す。アルマニの、アル()は「卵」、マニ(마니)は本来「많이」が正しい表記で「多い」という意味を表す。ソウル市の弘大(ホンデ、홍대)などにある専門店「ホンスチュクミ(홍스쭈꾸미)」のメニューとして広まり、日本では「アルマニチャーハン」「アルマニポックンパ」などの名称でも呼ばれる。

歴史

文献上の記録

『茲山魚譜』(1814年)の記述
丁若銓の書いた魚類学書『茲山魚譜(자산어보)』には、イイダコについての記述があり、名称を「蹲魚(준어)」、俗称を「竹今魚(죽금어)」と紹介している。俗称の「竹今魚(죽금어)」が、現在の呼び名である「주꾸미」になったとの説がある。

1960年代

万石洞チュクミ通り
仁川市の東区万石洞(トング マンソクドン、동구 만석동)には、チュクミボックムの専門店が集まる「万石洞チュクミ通り(만석동 주꾸미거리)」がある。元祖とされる「ウ・スニム元祖ハルモニチュクミ(우순임 원조할머니주꾸미)」は1960年代の創業で、近隣の工場や港湾で働く人たちに向け、ナクチボックム(テナガダコ炒め/낙지볶음)をより安価なイイダコで代用してチュクミボックムを作ったと語っている[2]

種類

主材料であるイイダコにトッピングをしたバリエーションメニューがある。

イイダコと豚バラ肉(삼겹살)の炒め鍋。チュサム(쭈삼)とも呼ばれる。
イイダコとエビ(새우)の炒め鍋。
イイダコと豚バラ肉(삼겹살)とエビ(새우)の炒め鍋。
イイダコと牛の小腸(곱창)とエビ(새우)の炒め鍋。
イイダコと牛バラ肉(차돌박이)の炒め鍋。

日本における定着

2020年3月に専門店の「ホンスチュクミ(홍스쭈꾸미)」が、東京、新大久保に韓国に進出したことで話題となり[3]、2021~22年にかけて同地域に専門店が相次いでオープンした。2022年5月に「チュクミドサ(쭈꾸미도사)」、同8月に「今日はチュクミ(오늘은 쭈꾸미)」が韓国から進出する頃には、チュクミブームとしてメディアで紹介されることが増え、新大久保以外の地域にも波及していった。韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、Twitterでブームの背景について考察し、「コロナ禍により韓国旅行が難しくなったタイミングで本場の人気店が進出してきたこと」「それ以前からの海鮮料理トレンドに乗ったこと」「新大久保を得意とするインフルエンサーの増加で話題の広がり方が早まっていること」「専門店だけでなく旧来の人気店も新メニューとして出す店が増えたこと」などをあげている[4]

  • 丸大食品のチュクミボックム
丸大食品は2022年3月に家庭で手軽に作れるチュクミボックムの素として「韓美食堂 チュクミボックム」を発売した[5]

エピソード

韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、留学時代の2000年にクラスメートがチュクミボックムの美味しさを熱く語っているのを聞いて、初めて料理の存在を知った。だが、その後も留学中に食べた記憶はなく、2008年3月が初めてではないかと思われる。その話は留学時代のエピソードとともに、メールマガジン「コリアうめーや!!第171号」にて報告されている[6]

地域

  • ソウル市江東区城内洞
ソウル市の江東区城内洞(カンドング ソンネドン、강동구 성내동)にはチュクミボックムの専門店が集まった「城内洞チュクミ特化通り(성내동 쭈꾸미골목)」がある。
  • ソウル市東大門区龍頭洞
ソウル市の東大門区龍頭洞(トンデムング ヨンドゥドン、동대문구 용두동)には、チュクミボックムの専門店が集まった「龍頭洞チュクミ特化通り(용두동 쭈꾸미 특화거리)」がある。通りの一画には、イイダコを模した銅像が置かれている。
  • 仁川市東区万石洞
仁川市の東区万石洞(トング マンソクドン、동구 만석동)には、チュクミボックムの専門店が集まる「万石洞チュクミ通り(만석동 주꾸미거리)」がある。
  • 忠清南道保寧市
忠清南道保寧市の武昌浦(ムチャンポ、무창포)はイイダコの名産地として知られ、春に「武昌浦イイダコ・カレイ祭り(무창포 주꾸미·도다리 축제)」を開催している。

脚注

  1. 쭈꾸미 、우리말샘、2023年2月2日閲覧
  2. 인천, 어디까지 가봤니? -5회 : 고향이 되어줄게요 '인천 만석동' (Full ver.) 、OBS TV YouTubeチャンネル、2023年2月2日閲覧
  3. チュクミブーム到来!新大久保「ホンスチュクミ」で食べ方や味を徹底レポ 、macaroni、2023年2月3日閲覧
  4. 2022年11月2日のツイート 、八田靖史のTwitter、2023年2月2日閲覧
  5. NEWS RELEASE 2022年春季新商品を発売(PDF) 、丸大食品、2023年2月3日閲覧
  6. コリアうめーや!!第171号 春だチュクミだ!旬を味わえ大会!! 、韓食生活、2023年2月2日閲覧

外部リンク

制作者関連サイト

関連項目