牙山市の料理

2015年6月24日 (水) 19:25時点におけるHatta (トーク | 投稿記録)による版 (→‎老舗)
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牙山市(アサンシ、아산시)は忠清南道に位置する地域。本ページでは牙山市の料理、特産品について解説する。

江華支石墓

地域概要

牙山市は忠清南道の北部に位置し、同じ忠清南道の天安市、公州市、礼山郡、唐津市、京畿道の平沢市と接する。人口は30万8007人(2015年4月)[1]。韓国でも有数の温泉地として知られ、温陽温泉、牙山温泉、道高温泉などを有する。中でも温陽温泉の歴史は記録上、百済時代、統一新羅時代までさかのぼるとされ、高麗時代にはこの地域を温水郡と呼んだ。朝鮮時代には歴代の王も温陽温泉を訪れ、休養をしたり、病気の治療を行っている[2]。ソウル(東ソウルバスターミナル、南部バスターミナル)から高速バスで約2時間の距離。またはソウル駅から高速鉄道のKTXに乗れば天安牙山駅まで約40分で到着する。ソウルの地下鉄1号線が温陽温泉駅まで伸びているので、時間はかかるものの例えば市庁駅から乗ると約2時間20分で到着する。

食文化の背景

牙山市の北部は牙山湾に面し、かつては汽水域でとれるウナギ(장어)をはじめ多くの海産物が名産であった。ところが1970年代になって牙山湾防潮堤、挿橋川防潮堤などが相次いで建設されたことで、それまで海だった場所は人造湖へと変貌を遂げた。現在は仁州面傑梅里などにわずかな海が残るのみとなっており、漁業人口は激減している。一方で、ウナギ料理の専門店は仁州(インジュ、인주)地区にまだ多く、現在は養殖物が主となってはいるが、仁州ウナギ(인주장어)の名前で地元の名物になっている。そのほか市内の塩峙(ヨムチ、염치)地区には牛焼肉の専門店が集っており、松岳面駅村里の外岩民俗村(외암민속촌)では自家製の味噌や酒などを販売するとともに、入口付近の飲食店ではキビ餅(수수부꾸미)が名物となっている。

代表的な料理

牙山市の料理には国内有数の温泉地としての姿が密接にかかわっている。他地域から大勢の観光客が訪れるためウナギ焼きや牛焼肉といった高級料理が発達した。

チャンオグイ(ウナギ焼き/장어구이)

 
ペンデンイフェムチム
牙山市の仁州地区にはウナギ焼きの専門店が集まっている。韓国観光公社が配布する『韓国の味紀行』という冊子(WEBでも閲覧可)ではその始まりを以下のように紹介している。
「1973年に牙山湾の防潮堤が建設され牙山湾は塞がれ湖になりましたが、1977年には観光地として開発されることになり、観光客のための飲食店が立ち並び始めました。牙山湾の防潮堤と挿橋川の防潮堤の間の仁州面にうなぎの蒲焼きの食堂ができたのは、その直後の1980年代からだと言われています。昔ならではのノウハウを生かした韓方ソースを考案し、観光客の口コミで牙山湾のうなぎの蒲焼きが全国的に知られるようになりました。初めは数軒だったお店も徐々に増え、現在ではうなぎの蒲焼き村が形成されています。」[3]
牙山市得山洞には1936年創業の老舗チャンオグイ店「恋春」がある(老舗参照)。

ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이)

ペンデンイフェはツマリエツの刺身。ペンデンイ(밴댕이)の和名はサッパであるが、仁川・江華島地域では見た目のよく似たツマリエツ(반지)をペンデンイと呼んでいる。4~7月を最盛期とするが、最近は冬でも全羅南道から冷蔵品が直送されており、旬以外の時期でも見かけるようになった。ペンデンイフェは新鮮なものを刺身にしたものか、または刺身を生野菜とともに辛いタレで和えたフェムチム(刺身和え、회무침)でも味わう。フェムチムの場合は丼ごはんが用意され、フェドッパプ(刺身丼、회덮밥)のように混ぜて食べることも多い。華道(화도)地区の後浦港(후포항)には「船首ペンデンイ村(선수밴댕이마을)」と呼ばれる地域があり、ペンデンイフェを中心とした刺身専門店が集まっている。

ススブクミ(餡を入れたキビ餅/수수부꾸미)

 
コッケタン
コッケタンはワタリガニ鍋。江華島沖はワタリガニの好漁場であり、4~6月には卵を持ったメスが西海岸の各漁港に水揚げされる。地元ではこの時期をいちばんの旬と考えるが、秋にももう1度旬があり、9月にはオスのワタリガニを、10~12月にはメスのワタリガニを味わう。内可面外浦里(내가면 외포리)にはコッケタンや、カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け、간장게장)を提供するワタリガニ料理の専門店が集まっており、「外浦里ワタリガニ村(외포리 꽃게마을)」と呼ばれる。

代表的な特産品

島嶼地域であることから魚介類が豊富であり、また農業も盛んに行われている。高麗人参の産地として知られるほか、獅子足ヨモギ(사자발쑥)と呼ばれる薬用ヨモギの栽培も盛んであるなど、漢方材の生産地という側面もある。

高麗人参

 
江華高麗人参センター
江華郡は高麗人参の名産地であり、その経緯を江華郡のウェブサイトでは、「朝鮮戦争が起こると高麗人参の本拠地である開城の人たちがここに避難し、1953年から本格的に栽培が行われた」(原文1)[4]と説明している。現在も江華郡では高麗人参の栽培が盛んに行われており、また2010年頃からは田んぼを再利用しての栽培も始まっている。もともと高麗人参栽培は畑作が中心であるが、土地の栄養を吸い尽くしてしまうため連作ができないとの特性があり、農地の確保が難しかった。田んぼでの栽培はまだ技術的に難しい部分も残るが、農地拡充の可能性を広げるため江華郡でも盛んに技術が研究されている。また、江華高麗人参農協では外部へのPRを目的として、観光客向けに高麗人参堀りの体験プログラムなども実施している(八田靖史の取材記録より、2015年3月30日)。
【原文1】한국전쟁이 터지자 인삼의 본거지인 개성사람들이 이곳에 피난와 1953년부터 본격 재배가 이루어 졌다.
  • 江華高麗人参センター
江華郡庁や江華市外バスターミナルからほど近い中心部の江華邑甲串里には、五日市場の風物市場(풍물시장)と並んで江華高麗人参センター(강화인삼센터)がある。交通の便利な場所であるため、江華島観光では人気のスポットとなっており、生の高麗人参をはじめ、蜂蜜漬けや韓方茶、菓子などの高麗人参製品も購入できる。なお、生の高麗人参を日本に持ち込む場合は、丁寧に土を除いたうえで検疫を通す必要がある[5]

代表的な酒類・飲料

江華郡のマッコリ

主要な銘柄にチャヌムルの「高香(고향)」、江華温水醸造場の「民族(민족)」がある。また、特産品を活かした高麗人参マッコリや、ヨモギマッコリなども市販されている。
  • 江華温水醸造場(강화온수양조장)
 
江華温水醸造場
仁川市江華郡吉祥面に位置する江華温水醸造場は1924年の創業(実際は1923年の創業で法的な登記が1924年)で、ソウル、京畿道地域においてはもっとも古い醸造場である。3代目の社長によれば「ソウル、京畿道地域で現在営業する醸造場の多くが、江華温水醸造場で必要な技術を学んでおり、その人数は3~400人になるだろう」とのことである(八田靖史の取材記録より、2015年3月30日)。醸造場の建物は築100年を超えるもので、建築的な価値も高いとされる。

老舗

 
1953年創業のウリオク
  • 恋春
牙山市得山洞に位置するウナギ料理店の「恋春」は1936年創業である。牙山市においてはもっとも古い飲食店であり、また韓国内でもウナギ料理の専門店としてもっとも古い。1926年に造られた人造湖の神井湖畔に位置し、日本統治時代に建てられた家屋をそのまま残している。店主によれば「温泉地である牙山には創業当時、日本人が休養地としてよく訪れており、日本人に向けた高級料理としてウナギを出すようになった。当時は近くに光興楼という楼閣があったため、『光興楼観光食堂』という名前を掲げ、ウナギ料理と韓定食を扱った。後に『迎春』と名前を変え、また現在は『恋春』としている。春を迎える、春に恋するというのは、もともとウナギのオフシーズンである9月末から3月は営業をせず、春を待って営業を始めたことに由来する」(八田靖史の取材記録より、2014年12月17日)。現在もメニューにはチャンオグイ(ウナギ焼き、장어구이)を筆頭に掲げ、ウナギと同じタレで焼いたタックイ(鶏肉焼き、닭구이)も他店ではあまり見ない名物として親しまれる。
店名:恋春(연춘)
住所:忠清南道牙山市神井湖キル67(得山洞15-3)
住所:충청남도 아산시 신정호길 67(득산동 15-3)
電話:041-545-2866

飲食店情報

以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。

  • ソルメジャント(솔뫼장터)
住所:忠清南道牙山市松岳面講堂路36(駅村里71-1)
住所:충청남도 아산시 송악면 강당로 36(역촌리 71-1)
電話:041-544-7554
料理:ススブクミ、チャンチグクス
  • 恋春(연춘)
住所:忠清南道牙山市神井湖キル67(得山洞15-3)
住所:충청남도 아산시 신정호길 67(득산동 15-3)
電話:041-545-2866
料理:チャンオグイ、タックイ
  • 塩峙食堂(염치식당)
住所:忠清南道牙山市塩峙邑塩星キル110(塩峙邑268-10)
住所:충청남도 아산시 염치읍 염성길 110(염치읍 268-10)
電話:041-542-2768
料理:ソゴギグイ
  • イルシンチョクタン(일신족탕)
住所:忠清南道牙山市市民路382(温泉洞221-11)
住所:충청남도 아산시 시민로 382(온천동 221-11)
電話:041-545-2696
料理:ウジョクタン

エピソード

  • 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2014年11月に初めて牙山市を訪れた。以後、2014年12月、2015年2月の計3度訪問している。
  • 2014年12月に八田靖史が牙山市観光課を訪れた際、担当者にチョクタン(牛足のスープ、족탕)の店を尋ねたつもりが、同音異義語である足湯のパンフレットを出され、慌てて訂正したことがある。

脚注

  1. 인구현황 、牙山市ウェブサイト、2015年5月22日閲覧
  2. 1300년 온천역사 、牙山市ウェブサイト、2015年5月22日閲覧
  3. 忠清南道味紀行 、韓国観光公社ウェブサイト、2015年6月25日閲覧
  4. 특산물 강화인삼 、江華郡ウェブサイト、2015年4月7日閲覧
  5. 韓国から生の高麗人参を持ち帰る方法(個人消費用)。 、韓食生活、2015年4月9日閲覧

外部リンク

関連項目