インジョルミ(きなこ餅/인절미)
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この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。 |
インジョルミ(인절미)は、きなこ餅。
名称
インジョルミは「引切味」「引切米」などの漢字を当てることが多く、引っ張って長く伸ばし食べやすいように切った餅との意味を表す。かつてはインジョルビョン(引切餅、인절병)とも呼んだ。本辞典ではインジョルミと表記する。発音表記は[인절미]。
概要
インジョルミ(인절미)は、きなこ餅。もち米を蒸してついたものに、きな粉をまぶして作る。少量の砂糖を加えることも多い。韓国ではうるち米を使って作る餅も多いが、もち米を使って作る餅としては代表的な種類のひとつである。伝統餅店、市場などで販売されるほか、伝統茶店でも提供される。近年はインジョルミときな粉をトッピングしたスイーツの人気も高く、中でもデザートカフェ「ソルビン(설빙)」のインジョルミピンス(きな粉餅カキ氷、인절미빙수)は2013年から14年にかけて大ブームとなった。こうしたインジョルミ風のスイーツは定番化しており、インジョルミ味のスナック菓子や、アイスクリームなども登場している。
歴史
インジョルミに関する記録は16世紀頃から見られる。
文献上の記録
- 『四声通解』(1517年)の記述
- 崔世珍(최세진)によって編纂された韻書『四声通解』に記載があり、インジョルミのことを「인졀미」と表記している。
- 『園幸乙卯整理儀軌』(1795年)の記述
- 1795年に朝鮮王朝第22代王の正祖(정조)が水原華城まで出かけたときの記録である『園幸乙卯整理儀軌(원행을묘정리의궤)』には、インジョルミが「各色引切味餅」という名称で記録されている。合わせて使用された食材も「高五寸粘米二斗赤豆大棗石耳各五升実荏子三升実栢子二升乾柿二串清一升」と併記されており、もち米以外に、アズキ、ナツメ、キクラゲ、エゴマ、松の実、干し柿、蜂蜜が使われていたことがわかる。
- 『是議全書』(19世紀末)の記述
- 19世紀末に書かれた『是議全書』(原著者不詳)のテチュインジョルミ(대추인절미)という項目には、ナツメ(대추)を用いたインジョルミの作り方が紹介されている。該当の記述は以下の通りである。
- 「よいもち米をしっかり水に浸した後に引き上げ、1升ぶん作るのであれば、ナツメひと升の種を取り、蒸し器に載せてじっくりと蒸し、一緒につけばよい。アズキ粉やきな粉をまぶす。」(原文1)
- 【原文1】
- 좋은 찹쌀을 담가 흠씬 불린 후 건져 1말하려면 대추 1말을 씨를 바르고, 지에 시루 위에 얹어 푹 쪄서 함께 찧으면 좋다. 거피팥고물이나 콩가루를 묻힌다.[1]
逸話
- 忠清南道公州市とインジョルミの逸話
- 忠清南道公州市には、インジョルミの由来について以下のような逸話が伝わっている[2]。1624年に時の王である仁祖(インジョ、인조)は、家臣による反乱事件(李适の乱)が起こった際、公州市まで避難をした。そのとき近所に住む、任(イム、임)という人物が仁祖王にきな粉餅を進上したのだが、仁祖王はこれをことのほか喜び、なんという名前の餅かを尋ねた。ところがその名前を知っている者がいなかったため、仁祖王は「イム氏が作る絶味(ジョルミ=非常に美味しい、절미)の餅)」という意味で、「イムジョルミ(임절미)」と名付けるよう指示をした。これがなまって、後にインジョルミとして定着するに至ったという話である。しかし、実際は1624年以前に書かれた文献にもインジョルミという名前の記述があり、後世に作られたエピソードである可能性も高い。公州市ではこれらの逸話にちなんで、インジョルミを公州餅(コンジュトク、공주떡)と呼ぶとともに、毎年「公州インジョルミ祭り(공주인절미축제)」を開催している。ただし、先にもあるようにインジョルミという名称自体は少なくとも16世紀にはすでに見られる。
種類
インジョルミには次のような種類がある。
- スッインジョルミ(쑥인절미)
- ヨモギを加えたインジョルミ。
- フギムジャインジョルミ(흑임자인절미)
- 黒ゴマをまぶしたインジョルミ。
- パッインジョルミ(팥인절미)
- アズキ粉をまぶしたインジョルミ。
日本における定着
日本の伝統餅店では他の餅と並んで定番のひとつとなっている。
2010年代
- ソルビンの進出
- インジョルミピンス(きなこ餅カキ氷、인절미빙수)を看板メニューとするデザートカフェ「ソルビン(설빙)」が2016年5月東京、原宿に日本1号店を出店した。その後、一時撤退したものの、2022年2月に東京、新大久保へ再進出を果たした。
エピソード
- 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は、留学時代の2000年に初めてインジョルミを食べた。待ち合わせに遅れた友人のひとりが、「これを買っていて遅くなった」と言い訳したのがインジョルミであり、そのエピソードは著書『八田式「イキのいい韓国語あります。」』にも収録されている[3]。
地域
- インジョルミの名称は公州市から生まれたとの説がある。
飲食店情報
以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。
<ソウル>
- ハプ清潭本店(합 청담본점)
- 住所:ソウル市江南区狎鴎亭路80キル13地下1階(清潭洞97-11)
- 住所:서울시 강남구 압구정로80길 13 지하1층(청담동 97-11)
- 電話:010-9727-8190
- 備考:インジョルミなどの伝統菓子を専門とするカフェ
脚注
- ↑ 이효지 외(엮음), 2004,『시의전서』, 신광출판사, P222
- ↑ 원조 한류스타의 화려한 컴백, 2017 공주 백제문화제 、公州市文化観光、2017年12月23日閲覧
- ↑ 八田靖史, 2003, 『八田式 イキのいい韓国語あります。』, 学習研究社, P215-216
外部リンク
- 制作者関連サイト
- 韓食生活(韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
- 八田靖史プロフィール(八田靖史のプロフィール)