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ソウル市(서울시)は韓国の北西部に位置する首都。本ページではソウルの料理、特産品について解説する。
地域概要
ソウル市(ソウルシ、서울시)は韓国の北西部に位置する地域。正式にはソウル特別市(ソウルトゥッピョルシ、서울특별시)と呼ぶ。韓国の首都であり、唯一の特別市である。ソウル(서울)とは固有語で都を意味する。市全体を大きく囲むように京畿道と接しており、西部の一部は仁川市と接する。人口は980万6538人(2018年7月)で、韓国の市としてはもっとも多い[1]。主要な観光地としては、朝鮮時代の王宮である景福宮(キョンボックン、경복궁)、徳寿宮(トクスグン、덕수궁)といった歴史的なスポットに加え、ソウルを一望できるNソウルタワー(エヌソウルタウォ、N서울타워)や、東大門市場(トンデムンシジャン、동대문시장)、南大門市場(ナムデムンシジャン、남대문시장)といったショッピングスポットもある。繁華街の明洞(ミョンドン、명동)、弘大(ホンデ、홍대)、梨泰院(イテウォン、이태원)、カロスキル(カロスキル、가로수길)といった地域の人気も高い。ソウルへのアクセスは金浦国際空港が市内にあるほか、仁川国際空港からも空港鉄道や地下鉄で結ばれている。また、国内交通の中心であるソウル駅や龍山駅からは高速鉄道が、ソウル高速バスターミナル、東ソウル総合ターミナル、ソウル南部ターミナルからは高速バスが地方都市とを結んでいる。
食文化の背景
ソウル市は朝鮮時代(1392~1910年)に都が置かれ、長らく国の中心として栄えてきた。ソウル市の食文化を語るうえで、王宮において王や王族の食事として作られた宮中料理の存在は欠かせないものである。宮中料理は国家の催す宴会などを通じて両班(官僚を輩出する支配階級、양반)の家庭にも広まり、また1910年からの日本統治時代には、宮中の調理人が料亭に勤めたことで大衆化が進んだ。市内の鍾路区楽園洞(チョンノグ ナグォンドン、종로구 낙원동)には伝統餅の専門店が集まっているが、これも宮中で働いていた尚宮(女官、상궁)らが店を出したものである。現在のソウル市にはこうした流れを汲む、宮中料理店、韓定食店、伝統茶店などが営業をする。このほかソウル市を発祥とする料理としては、ソルロンタン(牛スープ/설렁탕)や、タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)が有名である。また、各地域に特定料理の専門店が集まる通りが形成されており、中区奨忠洞(チュング チャンチュンドン、중구 장충동)のチョッパル(豚足の煮物/족발)や、中区新堂洞(チュング シンダンドン、중구 신당동)のシンダンドントッポッキ(新堂洞式の餅炒め/신당동떡볶이)、冠岳区新林洞(クァナック シルリムドン、관악구 신림동)のスンデボックム(腸詰炒め/순대볶음)などが名物として知られる。
代表的な料理
朝鮮王朝宮中飲食
- チョソンワンジョ クンジュンウムシク(朝鮮王朝宮中料理/조선왕조 궁중음식)
- トク(餅/떡)鍾路区楽園洞
ソルロンタン(牛スープ/설렁탕)
牛の各部位を煮込んだスープ。朝鮮時代の農業祭で神に捧げた牛を大釜で煮込んだのが発祥との説がある。料理名は祭祀を行った東大門区祭基洞の先農壇(선농단)に由来とも。
タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)
シンダンドントッポッキ(新堂洞式の餅炒め/신당동떡볶이)
ソウルの専門店通り
- カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け/간장게장)瑞草区新沙洞
- カムジャクッ(豚の背骨とジャガイモの鍋/감자국)恩平区鷹岩洞、碌磻洞
- コルベンイムチム(ツブ貝の和え物/골뱅이무침)中区苧洞2街
- テジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)麻浦区孔徳洞
- センソングイ(焼き魚/생선구이)鍾路区鍾路5街
- スンデボックム(腸詰炒め/순대볶음)冠岳区新林洞
- アグチム(アンコウの蒸し煮/아구찜)瑞草区新沙洞
- チョッパル(豚足/족발)中区奨忠洞
- ハムンネンミョン(咸興冷麺/함흥냉면)中区五壮洞
ソウルの市場グルメ
- カルチジョリム(タチウオの煮物/갈치조림)中区南倉洞
- キルムトッポッキ(餅炒め/기름떡볶이)鍾路区通仁洞
- ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이)城東区馬場洞
代表的な特産品
首都のソウルは都市化が進んでおり、農地は少ないながらも景福宮米、モッコル梨といった特産品がある。
キョンボックンサル(景福宮米/경복궁쌀)
江西区(カンソグ、강서구)の開花洞(ケファドン、개화동)、五谷洞(オゴクトン、오곡동)一帯で栽培されている米。キョンボックンとはソウルにある朝鮮王朝の王宮名に由来する。
モッコルベ(モッコル梨/먹골배)
中浪区(チュンナング、중랑구)の墨洞(ムクトン、묵동)一帯で栽培されている梨。ファンシルベ(黄実梨、황실배)とも呼ぶ。モッコルは地域名を指し、直訳すると「墨の谷」という意味である。日本統治時代に栽培が始まり、宮中へも進上された歴史を持つが、近年は都市化が進んだことで生産量は減少している。現在、モッコルベは京畿道南楊州市での生産が盛んである。
代表的な酒類・飲料
マッコリ
- 長寿マッコリ(장수막걸리)
伝統酒
- 三亥酒(삼해주)
焼酎
- チャミスル(잠이슬)
ビール
江西区にはクラフトビールを生産する「Sevenbrau(세븐브로이맥주)」がある。
老舗
飲食店情報
各地域の料理
江南区(강남구)
江東区(강동구)
- カムジャタン(豚の背骨とジャガイモの鍋/감자탕)千戸洞
江北区(강북구)
江西区(강서구)
冠岳区(관악구)
- ペクスンデ(辛くない腸詰炒め/백순대)新林洞
- 辛いヤンニョム(薬味ダレ)を絡めないスンデ(腸詰め)炒め。料理名は「白スンデ」という意味で、塩、コショウやエゴマの粉で味付けをする。新林洞スンデタウンの名物。
- スンデボックム(腸詰炒め/순대볶음)新林洞
広津区(광진구)
- ヤンコチ(羊肉の串焼き/양꼬치)紫陽洞
九老区(구로구)
衿川区(금천구)
芦原区(노원구)
道峰区(도봉구)
東大門区(동대문구)
銅雀区(동작구)
麻浦区(마포구)
- カルメギサル(豚ハラミ焼き/갈매기살)桃花洞
- カルメギサル(豚ハラミ焼き/갈매기살)敦義洞
- テジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)孔徳洞
- ソグムグイ(豚肉の塩焼き/소금구이)西橋洞
- チョッパル(豚足/족발)孔徳洞
- チュムルロク(揉みダレ牛焼肉/주물럭)龍江洞
- ティギム(天ぷら/튀김)孔徳洞
- 天ぷら。孔徳市場の名物で、各種ジョン(チヂミ)とともに種類豊富なティギムが販売されている。イカ、エビなどの定番素材に加え、食パンのティギムといった珍ネタもある。
西大門区(서대문구)
- コプテギ(豚皮の焼肉/껍데기)滄川洞
- シンゲチ(卵チーズ入りラーメン/신계치)滄川洞
- 溶き卵とチーズを具とした辛ラーメン。辛ラーメン(신라면)、卵(계란)、チーズ(치즈)の頭文字を取って名付けられた。新村の繁華街で泥酔した後に食べるべきもの。
瑞草区(서초구)
- カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け/간장게장)方背洞
- カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け/간장게장)新沙洞
- ワタリガニの醤油漬け。80年代に増えたアグチム(アンコウの蒸し煮)専門店で、カンジャンケジャンも評判を得て両者とも名物になった。ワタリガニは鍋や蒸し物も味わえる。
- コプチャングイ(牛ホルモン焼き/곱창구이)端草洞
- アグチム(アンコウの蒸し煮/아구찜)方背洞
- アグチム(アンコウの蒸し煮/아구찜)新沙洞
城東区(성동구)
- トゥンコル(脊髄刺し/등골)馬場洞
- ソゴギグイ(牛焼肉/소고기구이)馬場洞
- 牛焼肉。馬場畜産物市場の一角に専門店の集まる一角があり、仲卸店などが経営をしている。煙が立ち込める裏路地風の雰囲気と、希少部位を盛り合わせで味わえるのが魅力。
城北区(성북구)
松坡区(송파구)
陽川区(양천구)
永登浦区(영등포구)
竜山区(용산구)
- カムジャタン(豚の背骨とジャガイモの鍋/감자탕)漢江路2街 ※再開発により専門店通りは消失
- ステイク(牛肉とソーセージ炒め/스테이크)南営洞
恩平区(은평구)
- カムジャクッ(豚の背骨とジャガイモの鍋/감자국)鷹岩洞、碌磻洞
鍾路区(종로구)
- キルムトッポッキ(餅炒め/기름떡볶이)通仁洞
- 油で炒めたトッポッキ。コチュジャンベースのタレで煮込むのではなく、下味をつけた餅を鉄板で炒めて作る。通仁市場の名物であり醤油味、唐辛子味の2種が販売されている。
- クルタレ(糸飴/꿀타래)仁寺洞
- タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)鍾路5街
- テグメウンタン(マダラの辛い鍋/대구매운탕)礼智洞
- テジコプチャン(豚ホルモン焼き/돼지곱창)恵化洞
- テジコプチャン(豚ホルモン焼き/돼지곱창)鍾路6街
- トク(餅/떡)楽園洞
- 伝統餅。楽園洞は餅の専門店が多く、祭祀用、贈答用など種類豊富な餅を販売する。かつて宮中で働いた厨房女官や待令熟手(男性調理人)らがこの地で店を開いたのが始まり。
- トンパン(ウンコ型お焼き/똥빵)仁寺洞
- マヤッキムパプ(ひと口大の海苔巻き/마약김밥)礼智洞
- 広蔵市場名物のひと口海苔巻き。ニラ、ニンジン、たくあんを具にカラシ醤油で味わう。食べると後を引き、また食べたくなることから、麻薬キムパプ(海苔巻き)と呼ばれる。
- ポリパプ(麦飯のビビンバ/보리밥)礼智洞
- ピンデトク(緑豆のチヂミ/빈대떡)礼智洞
- 緑豆のチヂミ。広蔵市場の名物であり、屋台に石臼を設置し、その場で緑豆をひいて生地を作る。具には白菜の白キムチや緑豆モヤシを加え、コーン油でカリッと焼きあげる。
- センソングイ(焼き魚/생선구이)鍾路5街
- 焼き魚。イシモチ、サワラ、サバ、サンマなどの焼き魚を定食形式で提供している。細い路地に専門店が集まっており、店頭で煙をもうもうと立てながら焼いている姿も見もの。
- ユッケ(牛刺身/육회)礼智洞
- チパンイクァジャ(杖状の菓子/지팡이과자)仁寺洞
- カルグクス(手打ちウドン/칼국수)楽園洞
- ヘジャンクッ(牛の血のスープごはん/해장국)清進洞
中区 (중구)
- カルチジョリム(タチウオの煮物/갈치조림)南倉洞
- コルベンイムチム(ツブ貝の和え物/골뱅이무침)苧洞2街
- ナクチボックム(テナガダコの炒め物/낙지볶음)武橋洞、端林洞
- トンカス(とんかつ/돈가스)南山洞2街、芸場洞
- テジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)新堂洞
- テジコプチャン(豚ホルモン焼き/돼지곱창)黄鶴洞
- テジコプチャン(豚ホルモン焼き/돼지곱창)乙支路6街
- シンダンドントッポッキ(新堂洞式の餅炒め/신당동떡볶이)新堂洞
- 新堂洞式のトッポッキ(餅炒め)。餃子やゆで卵、ラーメンなどたくさんの具を加え、鍋料理のように即席で作る。食後にソフトクリームを食べるところまでが定番のコース。
- ヤチェホットク(春雨入りのお焼き/야채호떡)南倉洞
- 春雨入りのお焼き。小麦粉を練った生地にチャプチェ(春雨炒め)を詰め、醤油ダレを塗って味わう。南大門市場の名物となっており、2番ゲートの前に有名な露店がある。
- チョッパル(豚足/족발)奨忠洞
- 豚足。醤油ダレで飴色に煮た豚足をスライスし、葉野菜などに包んで味わう。もとは平安道や黄海道の料理であり、朝鮮戦争以降に北から避難して来た人たちが広めたとされる。
- チムタク(北部式鶏の丸茹で/찜닭)新堂洞
- ハムンネンミョン(咸興冷麺/함흥냉면)五壮洞
- 咸興冷麺。北朝鮮の咸興(ハムン)を本場とする冷麺で、サツマイモ澱粉を原料としてコシの強い細麺を作るのが特徴。エイの刺身を載せたフェネンミョン(刺身冷麺)も有名。
中浪区(중랑구)
全域
- ムルネンミョン(冷麺/물냉면)
- 冷たい牛スープに蕎麦麺を入れて味わう平壌式の冷麺。北朝鮮の平壌を本場とするが、ソウルでは乙支路エリアなどに専門店が多く、北朝鮮出身者や子孫が経営する場合が多い。
- ソルロンタン(牛スープ/설렁탕)
- 牛の各部位を煮込んだスープ。朝鮮時代の農業祭で神に捧げた牛を大釜で煮込んだのが発祥との説がある。料理名は祭祀を行った東大門区祭基洞の先農壇(선농단)に由来とも。
- チョソンワンジョ クンジュンウムシク(朝鮮王朝宮中料理/조선왕조 궁중음식)
- 朝鮮王朝宮中飲食。朝鮮時代に宮中で作られた王の食事を指し、現在は国の重要無形文化財第38号に指定されている。第3代の技能保有者は韓福麗氏と鄭吉子氏。
エピソード
韓食ペディアの執筆者である八田靖史は1997年2月に初めてソウルを訪れた。当時は大学2年生であり、日韓交流のプログラムに参加するのが目的であった。プログラムの終了後もしばらくソウルに滞在し、テジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)、スンドゥブチゲ(柔らかい豆腐の鍋/순두부찌개)、スジェビ(韓国式のすいとん/수제비)などを食べ歩いた。中でも印象的だったのが、当時のソウルで流行していたタッカルビ(鶏肉の鉄板焼き/닭갈비)であった。そこにまつわる淡い恋物語は当時配信していたメールマガジン「コリアうめーや!!第25号」に記されている[2]。
脚注
- ↑ 주민등록 인구통계 、行政安全部ウェブサイト、2018年8月6日閲覧
- ↑ コリアうめーや!!第25号 あの日あの時あの人と…… 、韓食生活、2018年12月1日閲覧
外部リンク
- 関連サイト
- 制作者関連サイト
- 韓食生活(韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
- 八田靖史プロフィール(八田靖史のプロフィール)
- 韓国語食の大辞典アプリ版(八田靖史制作の韓国料理専門辞典)