星州郡の料理
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星州郡(ソンジュグン、성주군)は慶尚北道に位置する地域。本ページでは星州郡の料理、特産品について解説する。
地域概要
星州郡は慶尚北道の南西部に位置し、金泉市、漆谷郡、高霊郡、大邱広域市、慶尚南道の陜川郡、居昌郡と接する。人口は4万5184人(2016年11月)[1]。南西部に位置する伽耶山(1430m)を筆頭に、郡全体を山々に囲まれる盆地地形である。代表的な観光地としては、世宗大王子胎室(王族の胎盤やへその緒を安置)や、朝鮮時代の集姓村(同族村)であるハンゲマウル(한개마을)などがある。また星山里には星山洞古墳群があり、伽耶諸国のひとつであった星山伽耶の支配層が眠っていると推定される。ソウル(南部ターミナル)から星州バス停留所までは市外バスで約3時間10分。大邱の西部停留所からは市外バスで約1時間20分の距離。
食文化の背景
星州は朝鮮時代に多くの両班(支配階級)が集姓村を作った。この星州を発祥地とする本貫は他地域と比較しても群を抜いて多く、星州李氏、星州裵氏、星州都氏、星州(星山)呂氏など28姓氏を数える。その代表が2007年に重要民俗文化財第255号にも指定された月恒面大山里(월항면 대산리)のハンゲマウルである。こうした両班の食文化が現代にも伝えられており、祭祀料理をもとにしたコノムルチム(干物の蒸し煮/건어물찜)はその象徴的な存在だと言える。また、星州は全国的に有名なマクワウリ(참외)名産地であり、農林部が地域の名産品を認証する地理的表示農産物の第10号として星州マクワウリ(성주참외)が登録されている[2]。星州では大半の農家がマクワウリを栽培しており、その生産量は実に全国の7割を超える。そのほか、スイカ、リンゴ、ナシ、完熟トマト、ミニトマト、キュウリなどの農作物も栽培されている。
代表的な料理
祭祀料理をもとにしたコノムルチムや、キジ肉を使った料理が名物である。
コノムルチム(干物の蒸し煮/건어물찜)
- 星州では祭祀膳にコノムル(건어물)と呼ばれる干物類を多く捧げる。これを祭祀後にまとめて醤油で甘辛く煮付けたものをコノムルチムと呼ぶ。チム(찜)は蒸し煮の総称。有名食堂である「カムコル食堂(감골식당)」ではコノムルチムを看板料理のひとつとしており、干しダラ(북어)、アカエイ(가오리)、スルメイカ(오징어)、鶏肉、鶏の玉ひも(排卵前の卵と卵管)、昆布といった食材を煮込んで提供する。
クォンシャブシャブ(キジ肉のシャブシャブ/꿩샤브샤브)
- 郡内の酉谷里(ユゴンニ、유곡리)地区には安東権氏(안동권씨)の同族村であるタルシル村があり、朝鮮時代中期の官僚である権橃が開いた。山に囲まれたこの地域は金の鶏が村全体を抱いているようだと表現され、鶏谷との意味でタルシル、またそれを漢字で酉谷と表現する。この村には現在も安東権氏の末裔30余戸が暮らしており、先祖を祀った共同祭祀を行う。このとき祭祀膳に捧げられるのが伝統菓子のハングァ(韓菓)であり、現在は地域の特産品として販売もされている。その製法は安東権氏の家門に代々受け継がれた門外不出のものであり、嫁いできた女性以外は実の娘であっても教わることができない。実際の製造は村の女性たちが農作業の合間に集まってすべて手作業で行っている。購入する場合は10日前までに予約が必要。
代表的な特産品
山間部の地形を活かした特産品があり、中でも秋にとれるマツタケと川魚のアユが有名である。
チャメ(マクワウリ/참외)
- 奉化郡は面積の83%が山林であり、山林面積の約4割をマツ(アカマツ、チョウセンゴヨウ)が占める。こうした環境により古くからマツタケの産地として知られ、山林庁が地域の名産品を認証する地理的表示林産物の第10号として奉化マツタケは登録されている(江原道襄陽郡、慶尚北道盈徳郡、蔚珍郡もマツタケの登録がある)[3]。奉化におけるマツタケのシーズンは9月下旬から10月中旬であり、この時期に毎年「奉化マツタケ祭り(봉화송이축제)」が開催される[4]。
- チャメハングァ(マクワウリ味の伝統菓子/등겨장)
- 飲食店においてはソンイグイ(マツタケ焼き、송이구이)、ソンイトルソッパプ(マツタケ釜飯、송이돌솥밥)、ソンイジョンゴル(マツタケ鍋、송이전골)といった食べ方が一般的である。またシーズンになると焼肉店などでもマツタケを扱い、地元名産の韓牛と一緒に焼いて食べるのも人気が高い。
トゥンギョジャン(大麦の糠味噌/등겨장)
- 奉化郡は面積の83%が山林であり、山林面積の約4割をマツ(アカマツ、チョウセンゴヨウ)が占める。こうした環境により古くからマツタケの産地として知られ、山林庁が地域の名産品を認証する地理的表示林産物の第10号として奉化マツタケは登録されている(江原道襄陽郡、慶尚北道盈徳郡、蔚珍郡もマツタケの登録がある)[5]。奉化におけるマツタケのシーズンは9月下旬から10月中旬であり、この時期に毎年「奉化マツタケ祭り(봉화송이축제)」が開催される[6]。
代表的な酒類・飲料
星州郡のマッコリ
- 奉化郡には現在6ヶ所の醸造場があり[7]、法田醸造場(법전양조장)の清凉酒(청량주)、奉化醸造場(봉화양조장)の奉化純麹生マッコリ(봉화 순곡생막걸리)、三洞醸造場(삼동양조장)の清涼山マッコリ(청량산 막걸리)、小川濁・薬酒醸造場(소천탁 약주양조장)の小川長生マッコリ(소천장생막걸리)、春陽醸造場(춘양양조장)の太白山米マッコリ(태백산 쌀막걸리)、石浦醸造場(석포양조장)の石浦マッコリ(석포막걸리)といった銘柄が流通している。
奉化仙酒(봉화선주)
- 刀川里(도천리)地区の海軒古宅(해헌고택)に代々住む安東金氏の家系に受け継がれた伝統酒。米と小麦麹を原料として五加皮、松葉、桂皮などの韓方材を加えた蒸留酒で、種類としては五加皮酒(오가피술)に当たるが、五加皮(오가피)の薬効から不老不死の酒になぞらえて仙酒と名付けられている[8]。
飲食店情報
以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。
- カムコル食堂(감골식당)
- 住所:慶尚北道星州郡星州邑京山キル9-3(京山里 613-1)
- 住所:경상북도 성주군 성주읍 경산길 9-3(경산리 613-1)
- 電話:054-933-2416
- 料理:コノムルチム
- ミル(밀)
- 住所:慶尚北道星州郡修倫面徳雲路1566(白雲里1038)
- 住所:경상북도 성주군 수륜면 덕운로 1566(백운리 1038)
- 電話:054-931-2660
- 料理:韓定食、ビビンバ
エピソード
- 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2016年10月に初めて星州郡を訪れた。慶尚北道広報大使が取材、執筆する観光冊子『GB-Story Vol.3』にはこの時の取材をもとに、チャメやコノムルチムを中心とした話が掲載されている。
脚注
- ↑ 주민등록 인구통계 、行政自治部ウェブサイト、2016年12月22日閲覧
- ↑ 성주참외 、国立農産物品質管理院ウェブサイト、2016年12月22日閲覧
- ↑ 지리적표시 임산물 제10호 - 봉화송이 、山林庁ウェブサイト、2016年4月12日閲覧
- ↑ 봉화송이축제 、奉化観光ウェブサイト、2016年4月12日閲覧
- ↑ 지리적표시 임산물 제10호 - 봉화송이 、山林庁ウェブサイト、2016年4月12日閲覧
- ↑ 봉화송이축제 、奉化観光ウェブサイト、2016年4月12日閲覧
- ↑ 봉화양조장 상세 정보 、봉화장터、2016年4月12日閲覧
- ↑ 봉화선주 、奉化仙酒ウェブサイト、2016年5月7日閲覧