「パッピンス(氷アズキ/팥빙수)」の版間の差分
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− | + | パッピンスのパッはアズキ、ピンスは漢字で「氷水」と書いてカキ氷のこと(「[[ピンス(かき氷/빙수)]]」の項目も参照)。日本では韓国式のカキ氷を総称してパッピンスと呼ぶことも多いが、厳密にはアズキ([[팥]])が載ったものだけをパッピンスと称する。総称としての呼び名はピンス([[빙수]])であり、アズキのかわりに果物を載せればクァイルピンス([[과일빙수]])、緑茶のアイスクリームを載せればノクチャピンス([[녹차빙수]])と呼ぶ。日本ではパピンスといった表記も見られるが、本辞典においては「パッピンス」を使用する。また、カキ氷の総称は「ピンス」と表記する。発音表記は[팓삥수]。 | |
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2024年7月19日 (金) 10:08時点における最新版
この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。 |
パッピンス(팥빙수)は、韓国式の氷アズキ。
名称
パッピンスのパッはアズキ、ピンスは漢字で「氷水」と書いてカキ氷のこと(「ピンス(かき氷/빙수)」の項目も参照)。日本では韓国式のカキ氷を総称してパッピンスと呼ぶことも多いが、厳密にはアズキ(팥)が載ったものだけをパッピンスと称する。総称としての呼び名はピンス(빙수)であり、アズキのかわりに果物を載せればクァイルピンス(과일빙수)、緑茶のアイスクリームを載せればノクチャピンス(녹차빙수)と呼ぶ。日本ではパピンスといった表記も見られるが、本辞典においては「パッピンス」を使用する。また、カキ氷の総称は「ピンス」と表記する。発音表記は[팓삥수]。
概要
パッピンスはアズキを載せたカキ氷。アズキ以外の具を一緒に載せることも多く、フルーツやソフトクリーム、求肥に似たカキ氷用の小さな餅、シリアルなどが定番として用いられる。甘さやコクを加えるために、牛乳や練乳を用いることも多い。近年では多様な具が用いられるようになっており、そのバリエーションは年々増加している。主に夏の季節メニューとしてカフェ、ファストフード店、屋台などで販売されるが、通年で提供する専門店もたくさん存在する。韓国人の好みとして食べる前に全体をよくかき混ぜるという習慣があったが、店によって、または個人の好みによって、混ぜないで食べる場合も増えてきている。大きな器に盛り付けて、複数名でシェアして食べることも多い。スーパーやコンビニエンスストアのアイス売り場では、カップ入りのパッピンスが市販されている。
歴史
開化期から日本統治時代
- 朝鮮時代のソウルには氷庫(빙고)と呼ばれる氷の貯蔵施設が置かれ、これを宮中ではファチェ(宮中式の清涼飲料、화채)などに仕立てて楽しんだ。こうした氷の利用をパッピンスの歴史としてとらえることもあるが、直接的には開化期から日本統治時代にかけて、日本から伝えられたと考えられる。韓福眞は著書『私たちの生活100年・飲食(우리 생활 100년-음식)』で、「1900年代から輸入の砂糖を利用した洋菓子や各種甘味製品が市販され、在来の餅菓類はやがて退化し、西洋のパン、ケーキ、アイスクリーム、菓子などが嗜好品として根付いていった」[1]と述べている。また、日本の菓子店がチンゴゲ(現在の忠武路2街あたり)にできて、アズキ入りの大福餅などを販売したことにも触れ、日本統治時代にアズキあんが普及したことを示している。また、この時期の甘味としてカキ氷の販売形態についても述べており、「夏にはカキ氷とアイスクリームが人気を集めた。カキ氷販売はリアカーに氷をかく機械を載せて歩き、カンナをかけるように氷を削り、器に盛って真ん中にスプーン1杯の砂糖をうずめ、ビンに入れた赤や黄色のシロップをかけて、スプーンを刺した。アズキを載せたカキ氷もある」[2]と記述している。1910年に初めての製氷工場が釜山にできた[3]ことを考えても、カキ氷が一般に普及したのはその後と考えるのが自然である。
- 【原文】「1900년대부터 수입한 설탕을 이용한 양과자 및 각종 당 제품의 시판으로 재래의 병과류는 점차 퇴화되고 서양의 빵, 케이크, 아이스크림, 과자 등이 기호 식품으로 뿌리 내리게 되었다」
- 【原文】「여름철에는 빙수와 아이스크림이 인기가 있었다. 빙수 장수는 리어카에 얼음 가는 기계를 싣고 다니며 대패질하듯이 얼음을 깎아 내어 그릇에 받아 가운데 설탕 한 숟가락을 묻고 병에 담긴 빨간 물과 노란 물을 흔들어 치고 사시를 꽂는다. 단팥을 얹은 빙수도 있다.」
1980年代
- 1985年12月にソウルの狎鴎亭洞で「現代百貨店狎鴎亭店」のオープンと同時に「ミルタプ(밀탑、Meal Top)」が入店した。東亜日報の記事(2014年6月12日)[4]によれば、オープン当初は生フルーツジュースの店として出発し、やがて凍らせた牛乳で作るミルクピンス(ミルクカキ氷)で人気を集めると、そちらが主力商品になった。「ミルタプ」は現在の韓国においても行列のできる専門店として人気が高い。
1990年代
- フルーツや餅などをたくさん載せた豪華なパッピンスは1990年代に入って登場したとされる。90年代末から、2000年代前半にかけては1999年5月にオープンした「アイスベリー(아이스베리)」が象徴的な存在として人気を集めた。「アイスベリー」ではフルーツのトッピングを選択できるほか、5人前を大きな器に盛り付けたキングオブピンスなどが人気を集めた。
2000年代
- 2004年には低脂肪のヨーグルトアイスが脚光を集め、元祖格の「レッドマンゴー(레드망고)」[5]などが急速に勢力を伸ばした。一時的にパッピンスはその陰に隠れた印象もあったが、ヨーグルトアイスの専門店でもパッピンスを扱っており、ブームの縮小とともに再びパッピンスは夏の代表的な涼味の座を取り戻した。
2010年代
- カフェブームとピンスの多様化
- 韓国では2000年代中盤から後半にカフェブームが沸き起こった。2007年7月から放映されたドラマ『コーヒープリンス1号店』の影響もあり、この頃から個性的なカフェが町に増えるようになった。パッピンスはこうしたカフェにおいても夏季限定のメニューとして人気を集め、また各店がそれぞれの個性を競い合ったことから多様化の道を歩むようになった。2009年7月にソウルの高速ターミナル駅に直結する「新世界百貨店江南店」地下のフードコートでオープンした「パッコンナムチプ(팥꽃나무집)」はイチゴを用いたタルギピンス(딸기빙수)や、黒ゴマ味のフギムジャピンス(흑임자빙수)で人気を集め、2010年にソウルの二村洞でオープンした「東氷庫(동빙고)」は紅茶味のロイヤルミルクティピンスで話題となった[6]。これ以降、パッピンスの種類は爆発的に増え、また夏を迎えるごとにその年の流行が注目されるようになった。
- さらさら食感のピンスが台頭
- また、2012年頃からはさらさら食感のカキ氷が流行し始め、氷を主役としたシンプルなアズキだけのピンスが台頭するようになった。2011年4月に新村でオープンした「ホミルバッ(호밀밭)」や、2012年7月に弘大でオープンした「京城パッチプオンヌモン(경성팥집 옥루몽)」[7]が主な担い手とされる。
2014年
- 2013年に韓国進出を果たした台湾の「Mango ChaCha(망고차차)」を筆頭に、マンゴーを載せたマンゴーピンス(망고빙수)が急速に拡大している。また、釜山で餅カフェからスタートした「ソルビン(설빙)」[8]が店舗数を急速に増やしており、きな粉を振りかけたインジョルミピンス(인절미빙수)が話題となっている。
種類
パッピンスには次のような種類がある。
定番系
- 緑茶アイスクリームを載せたり、緑茶パウダーを振りかけたピンス。
- ミルクピンス(氷ミルク/밀크빙수)
- ミルク味のピンス。または牛乳を凍らせてピンスに仕立てたもの。ウユピンス(우유빙수)とも呼ぶ。
- イェンナルピンス(옛날빙수)
- 直訳では昔風のピンス。アズキだけのシンプルなピンスを指したり、または餅、大福などをトッピングしたものを指すこともある。
フルーツ系
- バナナ、キウイ、イチゴ、スイカなどのフルーツをたくさん載せたピンス。
- タルギピンス(딸기빙수)
- イチゴをトッピングしたピンス。
- マンゴーピンス(망고빙수)
- 角切りのマンゴーや、マンゴーアイスなどをトッピングしたピンス。2013年に台湾からのチェーン店が進出し、2014年にブームとなった。
- メロンピンス(메론빙수)
- メロンをトッピングしたピンス。丸くくり抜いたメロンシャーベットをトッピングしたり、または器のかわりにくり抜いた丸ごとのメロンを用いる場合もある。
ドリンク系
- ミルクティーピンス(밀크티빙수)
- ミルクティー味のピンス。
- コピピンス(커피빙수)
- コーヒー味のピンス。
伝統系
- トッピンス(떡빙수)
- インジョルミ(きなこ餅/인절미)などの餅をトッピングしたピンス。
- スジョングァピンス(수정과빙수)
- 伝統飲料のスジョングァ(シナモン茶/수정과)をかけたピンス。ナツメや松の実、餅などをトッピングする。
個性派系
- ネムビピンス(냄비빙수)
- チゲ用のアルマイト鍋に盛り付けたピンス。
- オレオピンス(오레오빙수)
- 市販菓子のオレオをトッピングしたピンス。オレオを粉状に砕いて全体にトッピングをする。
- チーズピンス(치즈빙수)
- ブロック状にカットしたチーズケーキを載せたり、チーズソースをかけたピンス。
- ティラミスピンス(티라미수빙수)
- ブロック状にカットしたティラミスを載せたピンス。
日本における定着
- 日本でのはじまり
- 韓食ペディアの執筆者である八田靖史による確認によれば、2001年には東京、新大久保の韓国式洋食店「ボティチノ」てパッピンスを提供していた。新大久保では韓流の到来とともに飲食店が増え、2005年頃からは家庭料理店、カフェ、粉食店、屋台などへもパッピンスの提供が広がっていった。この頃から韓国料理のデザートとしてパッピンスが注目されるようになり、2008年5月には韓国のパッピンス専門店「アイスベリー」が日本進出を果たすに至った(2011年11月閉店)[9]」。
- 「ソルビン」の日本進出
- 2016年6月30日に東京、原宿で「ソルビン(설빙)」の日本1号店がオープンした。平日にもかかわらず開店前から250人もの行列ができ、オープン後も行列は伸び続けて最大4時間待ちとなった[10]。2017年2月3日には2号店が福岡、天神にオープンしている。
- 「HOMIBING」の日本進出
- 2017年11月2日に東京、新大久保で「HOMIBING(好味氷、호미빙)」の日本1号店がオープンした。
エピソード
- 歌手のユン・ジョンシン(윤종신)は2001年に「パッピンス」という曲を発表している。2014年6月にはその第2弾として「雪片のピンス~口の中のクリスマス(눈송이 빙수-입속의 크리스마스)」をリリースした。
地域
- 釜山市中区新昌洞(国際市場)
- アズキ、リンゴジャムなどを載せたレトロな屋台式カキ氷。国際市場内に屋台が連なっている。
脚注
- ↑ 한복진, 2001, 『우리 생활 100년-음식』, 현암사, P167
- ↑ 한복진, 2001, 『우리 생활 100년-음식』, 현암사, P170
- ↑ 인천냉면, 그리고 추억의 화평동 、仁川新聞(2012年7月15日)、2014年7月1日閲覧
- ↑ 한국 팥빙수, 美본토 첫 진출… “미국인 입맛 사로잡을 것” 、東亜日報(2014年6月12日)、2014年7月1日閲覧
- ↑ レッドマンゴー 、レッドマンゴー(公式ウェブサイト)、2014年7月1日閲覧
- ↑ 東氷庫 、コネスト、2014年7月1日閲覧
- ↑ 京城パッチプオンヌモン 、京城パッチプオンヌモン(公式ウェブサイト)、2014年7月1日閲覧
- ↑ ソルビン 、ソルビン(公式ウェブサイト)、2014年7月1日閲覧
- ↑ 新大久保「アイスベリー新大久保店」で100組目GET。 、韓食生活、2014年7月1日閲覧
- ↑ かき氷カフェ・ソルビン/日本1号店、初日に250人が行列 、流通ニュース、2017年3月23日閲覧
外部リンク
- 制作者関連サイト
- 韓食生活(韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
- 八田靖史プロフィール(八田靖史のプロフィール)