「江陵市の料理」の版間の差分
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− | * | + | *スルメイカのスイーツ |
− | + | :注文津港などに店舗を構える「マシワオジンオパン(마시와오징어빵)」では、イカスミを用いたソフトクリームや、カステラ生地にアンコと細切りのスルメを入れた焼き菓子などを販売している。 | |
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2017年7月10日 (月) 09:49時点における版
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この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。 |
江陵市(カンヌンシ、강릉시)は江原道に位置する地域。本ページでは江陵市の料理、特産品について解説する。
地域概要
江陵市は江原道の中東部に位置し、江原道の東海市、旌善郡、平昌郡、洪川郡、襄陽郡と接する。江原道東部の中心都市であり、人口は21万3727人と、江原道では原州市、春川市に次いで3番目に多い(2017年4月)[1]。市の東部は東海岸に面して漁港や海水浴場が多く、西部は太白山脈の一角を成し、雪岳山(설악산)、五台山(오대산)といった名峰を抱える。海と山の両方を楽しめる観光地として人気が高い。ほか、歴史的な見どころとして、1760年頃に建てられた両班の邸宅である船橋荘(선교장)や、東海岸を望む景観のよい楼閣の鏡浦台(경포대)、儒学者の栗谷李珥と、母の申師任堂が生まれ育った烏竹軒(오죽헌)などがある。ソウル(東ソウル総合ターミナル、ソウル高速バスターミナル)から江陵(江陵高速バスターミナル、江陵市外バスターミナル)までは高速バスで約2時間20分~2時間50分の距離。鉄道の場合、ソウルの清涼里駅から江陵駅まではムグンファ号で6時間以上かかるが、2017年末の完工を予定している高速鉄道のKTXでは1時間台前半まで短縮されるとしている。
- 2018年平昌冬季オリンピック・パラリンピック
- 2018年平昌冬季オリンピック・パラリンピックの一部競技は江陵市でも開催される。江陵スピードスケート競技場や、江陵アイスアリーナ、江陵ホッケーセンター、江陵カーリングセンター、関東ホッケーセンターで、スピードスケート、フィギュアスケート、アイスホッケー、カーリングなどの氷上競技が開催される。
食文化の背景
江陵市の東部は東海岸に面しており、沙川港(사천항)、江陵港(강릉항)、金津港(금진항)、注文津港(주문진항)、江門港(강문항)など、全部で15の港を有する64.5 kmの海岸線が伸びる[2]。各漁港では豊富な水産物が水揚げされ、スルメイカ、カレイ、クロソイ、ハタハタ、シワイカナゴなどの特産品がある。それぞれ刺身や、焼き魚、ムルフェ(水刺身/물회)といった調理法で味わう。また、海からの恵みは海産物だけの留まらず、市内の草堂(チョダン、초당)地区ではにがりのかわりに海水を用いた豆腐作りが盛んである。農作物としてはジャガイモの生産が盛んであり、2015年における春ジャガイモ(봄감자)の栽培面積は全羅南道宝城郡、忠清南道唐津市に次いで全国3位であり[3]、同じく高冷地ジャガイモ(고랭지감자)の栽培面積、および生産量は、江原道平昌郡に次いで全国2位である[4]。また、沙川(サチョン、사천)地区のヘサリ村(해살이마을)ではケドゥルプ(개두릅)と呼ばれるハリギリの芽が名産となっている。そのほか沙川地区で生産される韓菓(ハングァ、한과)や、毎年10月に江陵コーヒー祭り(강릉커피축제)が開かれることでも有名である。
代表的な料理
東海岸有数の港町だけあって海からの恵みを活かした郷土料理が多い。海水を使って作る豆腐のチョダントゥブや、特産品であるハタハタを鍋仕立てにしたトルムクチゲ、タナカゲンゲを蒸し煮にしたチャンチチムなどが代表的である。スルメイカや、ジャガイモを利用した料理も多いが、この2種については代表的な特産品の項目で詳述する。
チョダントゥブ(草堂豆腐/초당두부)
- チョダントゥブは草堂(초당)地区で作られている豆腐。チョダンが地名、トゥブが豆腐を意味する。にがりのかわりに海水を汲んで作っているのが特徴。現在は海中深くまでパイプを通して清浄な水を汲み上げ、これを各店舗、または豆腐工場にて共同で使用している。豆腐は押し固める前の状態であるスンドゥブ(순두부)と、押し固めて成形したモトゥブ(순두부)の2種類が中心。地域の飲食店ではスンドゥブ、モトゥブをメインとした定食メニューを味わうことができる。店によっては、副産物であるおからを利用したピジチゲ(おからの鍋/비지찌개)や、豆腐を入れたチャンポン(激辛スープの海鮮麺/짬뽕)を提供するところもある。こうした飲食店や豆腐工場の集まった一帯は「草堂豆腐村(초당두부마을)」と呼ばれる。
- スンドゥブ
- 押し固める前のもろもろとした豆腐を液体ごと器に盛り付け、少量の薬味醤油を加えて味わう。いわゆるスンドゥブチゲのように辛く味付けをするのではなく、豆腐本来の甘味と、海水によるほんのりとした塩気で味わう。
- モトゥブ
- 押し固めて四角く成形した豆腐をできたての温かいままに、または温めたうえで薬味醤油をかけて味わう。
- 草堂豆腐の由来
- 草堂豆腐は16世紀中頃、三陟府使として赴任していた許曄(허엽)によって作られたとの説があり、草堂とは許曄の号を指す[5]。許曄は小説『洪吉童伝』を書いた許筠(허균)の父親でもある。
トルムクチゲ(ハタハタの鍋/도루묵찌개)
- トルムクチゲはハタハタの鍋。トルムク(도루묵)がハタハタ、チゲ(찌개)が鍋料理を意味する。内臓を取った丸ごとのハタハタを、鍋で長ネギ、豆腐などの具とともに辛く煮込んで作る。11月から12月上旬頃まではメスが卵を持っており、この時期のトルムクチゲがもっとも人気が高い。焼き魚にしたトルムックイ(도루묵구이)もハタハタの代表的な食べ方である。
- ハタハタの名前に関する逸話
- ハタハタの呼び名であるトルムクには命名に関する逸話がある。ハタハタはかつてムク(묵)という名前で呼ばれており、現在は北朝鮮に位置する咸鏡道の名産品であった。朝鮮時代にある王様が戦乱を避けて咸鏡道へ逃れた際、地元民からハタハタを献上され、これがたいへん美味しいかったことから名前を尋ねた。地元民がムクと答えると、王様はもっとふさわしい名前がよいだろうと、その色合いからウノ(銀魚、은어)と命名した。戦乱が落ち着いて都に戻った王様は、ハタハタの味が忘れられず、もう1度食べたいとわざわざ運ばせた。ところが長距離を移動したハタハタは味が落ちており、それに怒った王様は銀魚という名前を取り上げ、もとのムクに戻せと命じた。韓国語で「もとに」は「トロ(도로)」と発音し、もとのハタハタで「トロムク(도로묵)。これがなまって現在のトロムクになったとされる。ちなみに現在の韓国語でウノ(은어)はアユのことを指す。
チャンチチム(タナカゲンゲの蒸し煮/장치찜)
- チャンチムはタナカゲンゲの蒸し煮。チャンチ(장치)がタナカゲンゲの江原道方言、チム(찜)は蒸し煮を意味する。タナカゲンゲの標準名は「ポルレムンチ(벌레문치)」と呼ぶ。ぶつ切りにしたタナカゲンゲをジャガイモや長ネギとともに辛い味付けで煮込んで作る。身はゼラチン質の白身でぷるぷると柔らかい。注文津(주문진)地区が名産であり、注文津港の近くに専門店が集まる。タナカゲンゲは日本の山陰地域で「ばばぁ」「ばばちゃん」とも呼ばれている。
ウロクミヨックッ(クロソイのワカメスープ/우럭미역국)
- ウロクミヨックッはクロソイのワカメスープ。ウロク(우럭)がクロソイ、ミヨックッがワカメスープを表す(「ミヨックッ(ワカメスープ/미역국)」)の項目も参照。クロソイのアラを煮込んでダシを取り、たっぷりのワカメを加えて煮込んで作る。江門港(강문항)に隣接して刺身店の集まる江門活魚刺身タウンの名物として知られる。
ハングァ(韓菓/한과)
- ハングァは沙川(사천)地区で作られている伝統菓子。菓子店の集まる一帯はモレネ韓菓村(모래내한과마을)と呼ばれる。
代表的な特産品
東海岸沿いの各漁港で水揚げされるスルメイカは江陵の代表的な特産品である。また栽培量の多いジャガイモや、ハリギリの芽も名産として知られる。
オジンオ(スルメイカ/오징어)
- スルメイカは江原道から慶尚北道にかけて東海岸沿いの各漁港で水揚げされ、江陵では注文津港(주문진항)が名産地として有名である。3月頃から走りのスルメイカが市場に並び、初夏から夏にかけて旬を迎える。また秋イカがとれる毎年9~10月に「注文津スルメイカ祭り(주문진오징어축제)」が開催される。主要な食べ方として、オジンオフェ(スルメイカの刺身、오징어회)、オジンオムルフェ(スルメイカの冷や汁風刺身、오징어물회)、オジンオスンデ(スルメイカの印籠蒸し、오징어순대)などがあげられるほか、塩辛や、乾物のスルメなどの加工品も生産される。
- スルメイカのスイーツ
- 注文津港などに店舗を構える「マシワオジンオパン(마시와오징어빵)」では、イカスミを用いたソフトクリームや、カステラ生地にアンコと細切りのスルメを入れた焼き菓子などを販売している。
カムジャ(ジャガイモ/감자)
- ジャガイモについて。
- カムジャソンピョン(ジャガイモ餅/감자송편)
- カムジャオンシミ(ジャガイモ団子/감자옹심이)柄山洞
- カムジャジョン(ジャガイモチヂミ/감자전)城南洞
ケドゥルプ(ハリギリの芽/개두릅)
代表的な酒類・飲料
江陵市のマッコリ
- 余糧面の余糧醸造場(여량양조장)では、トウモロコシを用いた旌善アウラジオクススマッコリ(정선 아우라지 옥수수 막걸리)を生産し、また舍北邑のムネル酒造(무낼주조)では、主要銘柄である旌善水出洞米マッコリ(정선 수출동 쌀막걸리)に加えて、旌善アリラン市場で販売する目的で開発されたキバナオウギ入りの旌善五日場ファンギマッコリを生産する。
コーヒー
- コピ(コーヒー/커피)
- コーヒーについて。
老舗
- ソジチョガットゥル(서지초가뜰)
- ソンジュクトゥギョンジュ(松竹杜鵑酒/송죽두견주)
モッパプ・チルサン(韓定食/못밥, 질상)
飲食店情報
以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。
- クァンドク食堂(광덕식당)
- 住所:江原道江陵市中央市場キル22-3(城南洞53-11)
- 住所:강원도 강릉시 중앙시장길 22-3(성남동 53-11)
- 電話:033-642-6851
- 料理:ソモリクッパプ
- クイ本部25時(구이본부25시)
- 住所:江原道江陵市注文津邑海岸路1723(橋項里167-1)
- 住所:강원도 강릉시 주문진읍 해안로 1723(교항리 167-1)
- 電話:033-662-8044
- 料理:トルムクチゲ、センソングイ
- 宮中王トッカルビ(궁중왕떡갈비)
- 住所:江原道江陵市栗谷路2789-1(城南洞50)
- 住所:강원도 강릉시 율곡로 2789-1(성남동 50)
- 電話:033-641-0056
- 料理:トッカルビ
- マシワオジンオパン(마시와오징어빵)
- 住所:江原道江陵市注文津邑海岸路1754(注文里312-458)
- 住所:강원도 강릉시 주문진읍 해안로 1754(주문리 312-458)
- 電話:なし
- 料理:イカスミソフトクリーム、イカ饅頭
- マンソン食堂(만선식당)
- 住所:江原道江陵市空港キル46(柄山洞384-1)
- 住所:강원도 강릉시 공항길 46(병산동 384-1)
- 電話:033-653-1851
- 料理:カムジャオンシミ
- ベニタッカンジョン(배니닭강정)
- 住所:江原道江陵市金城路13番キル5(城南洞51-120)
- 住所:강원도 강릉시 금성로13번길 5(성남동 51-120)
- 電話:033-643-9038
- 料理:タッカンジョン
- ソジチョガットゥル(서지초가뜰)
- 住所:江原道江陵市蘭谷キル76番キル43-9(蘭谷洞264)
- 住所:강원도 강릉시 난곡길76번길 43-9(난곡동 264)
- 電話:033-646-4430
- 料理:モッパプ、チルサン
- ウォルソン食堂(월성식당)
- 住所:江原道江陵市注文津邑市場3キル4-1(注文里312-147)
- 住所:강원도 강릉시 주문진읍 시장3길 4-1(주문리 312-147)
- 電話:033-661-9910
- 料理:チャンチチム
- 草堂ハルモニスンドゥブ(초당 할머니순두부)
- 住所:江原道江陵市草堂スンドゥブキル77(草堂洞307-4)
- 住所:강원도 강릉시 초당순두부길 77(초당동 307-4)
- 電話:033-652-2058
- 料理:スンドゥブ
- テグァンフェ食堂(태광회식당)
- 住所:江原道江陵市滄海路382(江門洞245-2)
- 住所:강원도 강릉시 창해로 382(강문동 241-7)
- 電話:033-653-9612
- 料理:刺身、ウロクミヨックッ
エピソード
- 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2000年8月に初めて江陵市を訪れた。当時は留学生であり、韓国人の友人らと夏休みを利用しての旅行であった。海水浴をしたり、五台山をハイキングとしたりと満喫するなど、まさしく海と山の両方を楽しんだ。なお、このときに撮影した水着での写真は、デビュー作である『八田式 イキのいい韓国語あります。』(学研)の表紙を飾っている。
脚注
- ↑ 주민등록 인구통계 、行政自治部ウェブサイト、2017年5月2日閲覧
- ↑ 항구 、デジタル江陵文化大全、2017年5月6日閲覧
- ↑ 봄감자 주산지시군 재배면적 、統計庁ウェブサイト、2017年5月6日閲覧
- ↑ 고랭지감자 주산지시군 생산량 、統計庁ウェブサイト、2017年5月6日閲覧
- ↑ 초당두부 、江陵市ウェブサイト(솔향강릉)、2017年5月6日閲覧