「ネンミョン(冷麺/냉면)」の版間の差分
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− | + | ネンミョンは漢字で「冷麺」と書き、冷たい麺料理を指す。韓国で食べられているネンミョンは大きく、冷たいスープに麺を入れて食べるムルレンミョン(물냉면)と、辛い薬味ダレを麺に絡めて食べるピビムネンミョン(비빔냉면)に分けられ、ネンミョンはこれらの総称でもある。また、北朝鮮では同様の漢字語をレンミョン(랭면)と発音する。日本では冷麺(れいめん)と呼ばれることも多いが、本辞典では「ネンミョン」を使用する。発音表記は[냉면]。 | |
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+ | ネンミョンは朝鮮半島で食べられている冷たい麺料理のこと。そば粉、でんぷん(サツマイモ、ジャガイモ、緑豆などを原料とする)を用い、押し出し式(生地に圧力をかけて小さな穴から押し出す方式)で麺を作るのが大きな特徴である。大きくムルレンミョン(スープ冷麺)と、ピビムネンミョン(混ぜ冷麺)に分類される。 | ||
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スンドゥブチゲは、柔らかい豆腐(=スンドゥブ)を主材料として作る鍋料理。アサリや豚肉、タマネギ、長ネギなどの野菜、キノコなどを具とし、味付けには塩、粉唐辛子、ニンニク、ゴマ油などを用いる。仕上げとして生卵を落とすことも多い。飲食店では主に1人前のトゥッペギ(チゲ用に使う素焼きの鍋、[[뚝배기]])で調理をするが、大きな鍋で作ったものをシェアして食べることもある。韓国にはスンドゥブチゲの専門店が多数あり、また食堂や居酒屋などでもメニューに載る。家庭料理として作られることも多い。専門店では牡蠣、エビ、イカなどを入れたものや、キムチ、牛肉、餃子などをメインの具としたものも提供する。 | スンドゥブチゲは、柔らかい豆腐(=スンドゥブ)を主材料として作る鍋料理。アサリや豚肉、タマネギ、長ネギなどの野菜、キノコなどを具とし、味付けには塩、粉唐辛子、ニンニク、ゴマ油などを用いる。仕上げとして生卵を落とすことも多い。飲食店では主に1人前のトゥッペギ(チゲ用に使う素焼きの鍋、[[뚝배기]])で調理をするが、大きな鍋で作ったものをシェアして食べることもある。韓国にはスンドゥブチゲの専門店が多数あり、また食堂や居酒屋などでもメニューに載る。家庭料理として作られることも多い。専門店では牡蠣、エビ、イカなどを入れたものや、キムチ、牛肉、餃子などをメインの具としたものも提供する。 | ||
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*「BCD TOFU HOUSE」の日本進出 | *「BCD TOFU HOUSE」の日本進出 | ||
:2005年11月にアメリカに拠点を持つ「BCD TOFU HOUSE」が東京、新大久保でオープン。この時点で「BCD TOFU HOUSE」は韓国、中国、タイなどにもすでに進出していた。東京地域におけるスンドゥブチゲブームの草創期を担った1軒だが、2010年7月に閉店している。 | :2005年11月にアメリカに拠点を持つ「BCD TOFU HOUSE」が東京、新大久保でオープン。この時点で「BCD TOFU HOUSE」は韓国、中国、タイなどにもすでに進出していた。東京地域におけるスンドゥブチゲブームの草創期を担った1軒だが、2010年7月に閉店している。 | ||
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2015年5月6日 (水) 12:59時点における版
この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。 |
ネンミョン(냉면)は、朝鮮半島で食べられている冷麺のこと。韓国では主に専門店で食べられるほか、焼肉店では最後の食事メニューとしても親しまれる。現在は北朝鮮に位置する平壌、咸興が主な本場とされ、韓国においてもこれら地域の出身者やその子孫らが専門店を営んでいることが多い。
名称
ネンミョンは漢字で「冷麺」と書き、冷たい麺料理を指す。韓国で食べられているネンミョンは大きく、冷たいスープに麺を入れて食べるムルレンミョン(물냉면)と、辛い薬味ダレを麺に絡めて食べるピビムネンミョン(비빔냉면)に分けられ、ネンミョンはこれらの総称でもある。また、北朝鮮では同様の漢字語をレンミョン(랭면)と発音する。日本では冷麺(れいめん)と呼ばれることも多いが、本辞典では「ネンミョン」を使用する。発音表記は[냉면]。
概要
ネンミョンは朝鮮半島で食べられている冷たい麺料理のこと。そば粉、でんぷん(サツマイモ、ジャガイモ、緑豆などを原料とする)を用い、押し出し式(生地に圧力をかけて小さな穴から押し出す方式)で麺を作るのが大きな特徴である。大きくムルレンミョン(スープ冷麺)と、ピビムネンミョン(混ぜ冷麺)に分類される。
ムルレンミョン
スンドゥブチゲは、柔らかい豆腐(=スンドゥブ)を主材料として作る鍋料理。アサリや豚肉、タマネギ、長ネギなどの野菜、キノコなどを具とし、味付けには塩、粉唐辛子、ニンニク、ゴマ油などを用いる。仕上げとして生卵を落とすことも多い。飲食店では主に1人前のトゥッペギ(チゲ用に使う素焼きの鍋、뚝배기)で調理をするが、大きな鍋で作ったものをシェアして食べることもある。韓国にはスンドゥブチゲの専門店が多数あり、また食堂や居酒屋などでもメニューに載る。家庭料理として作られることも多い。専門店では牡蠣、エビ、イカなどを入れたものや、キムチ、牛肉、餃子などをメインの具としたものも提供する。
食べ方
- 石釜ごはん
- 専門店では注文ごとに1人前ずつ炊いた石釜ごはんが提供されることも多い。この石釜ごはんは器に取り分けた後、残ったおこげに水、または麦茶、コーン茶などを注いでヌルンジ(おこげ湯、누룽지)とする。ヌルンジは石釜によって熱され、即席の茶漬けのようにして味わう。香ばしさを楽しむとともに、消化を助けるという働きも持つ。
- 卵
- スンドゥブチゲは食べる直前に生卵を落とすことが多い。ただし、地域によってはスープが薄まるとして嫌う場合もあり、特に釜山(プサン)を中心とした南部では入れないことのほうが多い。専門店では好みによって入れるかどうかを決められるよう、卓上に生卵を用意しておき、客が自ら割り入れるようにしているところもある。
- ピビムパプ
- 専門店では大豆モヤシなどの野菜と、刻み海苔、すりゴマ、ゴマ油などを混ぜたものが大きな器に入って用意されることがある。これはごはんとスンドゥブチゲを好みで入れて、よくかき混ぜ、即席のピビムパプ(混ぜごはん、비빔밥)として味わうためのものである。一部の専門店によれば、混ぜて食べることで高温のスンドゥブチゲが適度に冷めるため、忙しいランチタイムに短時間で食べられるよう始まった工夫だと語られる。
歴史
1960年代
もともとスンドゥブはチゲとしてでなく、出来たての豆腐そのものに薬味醤油をかけて食べるものであった。現在のようなスンドゥブチゲは1960年前後に、ソウル市庁近くの小公洞(ソゴンドン)、西小門洞(ソソムンドン)あたりで専門店が増えたことから広まったとされる。これらのエリアは有名繁華街の明洞(ミョンドン)からも近いため、発祥地を明洞として語るケースもままある。その背景としては、近隣に大きな豆腐工場があったため、そこから仕入れをする形で近隣にスンドゥブチゲの専門店が増えたと説明される。
- 「小公洞トゥッペギチプ」の開店
- 「小公洞トゥッペギチプ(소공동 뚝배기집)」は1962年に小公洞で創業し[1]、現在の韓国においてはもっとも古いスンドゥブチゲの専門店とされる。2代目のホ・ヨンソク社長は「父が店を始める前に市場などでチゲとして販売するケースはあったようだが、店舗として構えたのは『小公洞トゥッペギチプ』が初めて」(八田靖史の取材記録より、2010年2月)と語っており、それを根拠とすれば1950年代後半から1960年代前半にはスンドゥブチゲが料理として存在していたと推測される。
- 「チョンウォンスンドゥブ」の開店
- 「チョンウォンスンドゥブ(정원순두부)」は1969年に西小門洞で創業した。店では「当時、小公洞、西小門洞の付近には豆腐工場があり、そのため近隣にスンドゥブチゲ店がたくさんあった」(八田靖史の取材記録より、2009年2月24日)と説明している。
1980~90年代
1980年代から90年代にかけて、韓国系移民によるスンドゥブチゲ専門店がアメリカで増えていった。代表的な店舗には「ニュージャージー小公洞スンドゥブ(뉴저지 소공동순두부)」(1984年創業)、「ビバリースンドゥブ(베버리 순두부)」(1986年創業)、「BCD TOFU HOUSE(북창동순두부)」(1996年創業)などがある。これらの店はコリアンタウンを中心に店舗を拡大し、やがてアメリカ人からもヘルシーフードとして人気を集めるまでに成長した。その背景には日本料理としての豆腐人気も少なからずあり、連動する形で広まったとも言える。また、アメリカでのスンドゥブチゲブームは、後に日本での定着にも影響していった(日本における定着参照)。
アメリカにおける進化
アメリカで専門店が増えたことによって、スンドゥブチゲは韓国とはまた違った独自の進化を遂げることとなった。それらの多くは外国料理であるスンドゥブチゲをいかに定着させるかを考えた工夫であり、大きくは以下のような例があげられる。こうした進化はやがて韓国にも逆輸入されたり、また日本をはじめとしたスンドゥブチゲに馴染みのなかった第三国への普及も促進することになった。
- 段階的に辛さを選べる(1辛~5辛など)
- 具をトッピングとして選べる
- サイドメニューに焼肉があり、セットにもできる
種類
スンドゥブチゲには次のような種類がある。
- ヘムルスンドゥブチゲ(해물순두부찌개)
- 牡蠣、エビ、イカなどの海産物を入れたスンドゥブチゲ
- クルスンドゥブチゲ(굴순두부찌개)
- 牡蠣を入れたスンドゥブチゲ
- キムチスンドゥブチゲ(김치순두부찌개)
- キムチを入れたスンドゥブチゲ
- プデスンドゥブチゲ(부대순두부찌개)
- ソーセージやランチョンミート、チーズなどを入れたプデチゲ(ソーセージ鍋/부대찌개)風のスンドゥブチゲ
- ソゴギスンドゥブチゲ(소고기순두부찌개)
- 牛肉を入れたスンドゥブチゲ
- テジゴギスンドゥブチゲ(돼지고기순두부찌개)
- 豚肉を入れたスンドゥブチゲ
- ポソッスンドゥブチゲ(버섯순두부찌개)
- キノコを入れたスンドゥブチゲ
- マンドゥスンドゥブチゲ(만두순두부찌개)
- 餃子を入れたスンドゥブチゲ
- トゥルケスンドゥブチゲ(들께순두부찌개)
- エゴマを入れたスンドゥブチゲ
- カレースンドゥブチゲ(카레순두부찌개)
- カレー味のスンドゥブチゲ
日本における定着
日本では2000年代前半からスンドゥブチゲの専門店が誕生し始め、2000年代後半にかけて急速な広がりを見せた。2003~4年頃からの韓流人気とも同調する形であったが、当初は韓国よりもアメリカでのブームを輸入するという形で普及が進んだ。両者の相乗効果によって大きな知名度を獲得できたとも言える。
2003年
日本における専門店の登場は大阪がもっとも早かった。2003年に先駆的な2軒がオープンしている。
- 「まん馬」の開店
- 2003年8月に大阪、堂島で「まん馬」がオープンした。日本で店を開いたことについて、岡田正比古社長は「アメリカ旅行をした際、ロサンゼルスのコリアンタウンでスンドゥブチゲと出合ったのがそもそものきっかけだった。初めて食べる味だったが、辛さのなかにもまろやかさとコクがあって美味しい。これを日本に持ち帰ったら人気が出るのでは、との思いから大阪に戻って店を開いた」[2]と語っている。
- 「OKKII」の開店
- 2003年10月に大阪、豊中で「OKKII」がオープンした。以前からスンドゥブチゲの店を日本で出したいと考えていた金友香社長は「アメリカで専門店が展開しているのを知り、すぐさま現地での修行を決意。ロサンゼルスの専門店に飛び込みで承諾をもらい、料理のレシピや、提供のノウハウを一つひとつ習得していった」[3]と語っている。
2004年
- 「BSD DUBU HOUSE」の日本進出
- 2004年6月に韓国で展開する「LA北倉洞スンドゥブ(LA북창동순두부)」の日本進出店として名古屋で「BSD DUBU HOUSE」がオープンした。
2005年
- 「BCD TOFU HOUSE」の日本進出
- 2005年11月にアメリカに拠点を持つ「BCD TOFU HOUSE」が東京、新大久保でオープン。この時点で「BCD TOFU HOUSE」は韓国、中国、タイなどにもすでに進出していた。東京地域におけるスンドゥブチゲブームの草創期を担った1軒だが、2010年7月に閉店している。
エピソード
- 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は留学時代の2000年に延世語学堂の学生食堂で当時1800ウォンのスンドゥブチゲをよく食べていた。また、たまの贅沢として語学堂の近所にある粉食店「タルギコル(달기골)」にて、3300ウォンのキムチスンドゥブを食べるのが当時としては至福の喜びだった。
地域
- 江原道江陵市草堂洞
- 草堂洞は古くから豆腐作りが盛んで、現在も豆腐料理店や豆腐工場が集まっている。この地域の豆腐は、にがりのかわりに東海岸の海水を用いるのが特徴。この地域では薬味醤油をかけて食べる昔ながらのスンドゥブを味わえる。
- 慶尚北道慶州市北軍洞
- 普門湖の周辺にスンドゥブチゲの専門店が集まっている。この地域では大豆を石臼でひいて豆腐を作ったメットルスンドゥブ(石臼スンドゥブ、맷돌순두부)を自慢としている。
- 全羅北道益山市金馬面
- 弥勒寺址周辺にスンドゥブチゲの専門店が集まっている。
- 全羅北道完州郡花心里
- 花心里には古くから豆腐工場があり、1960年代に近くを訪れる登山客のためスンドゥブチゲを提供したところ話題となった。店頭で揚げるピジドノッ(おからドーナツ、비지더넛)も有名。
脚注
- ↑ 소공동 뚝배기집 역사, 연혁 、소공동 뚝배기집、2015年3月27日閲覧
- ↑ 八田靖史, 2013, 『韓国料理には、ご用心!』, 三五館, P67
- ↑ 八田靖史, 2013, 『韓国料理には、ご用心!』, 三五館, P67