「ポシンタン(犬肉の鍋/보신탕)」の版間の差分
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+ | 漢字では補身湯と書き、ポシン(보신)は栄養価の高いものを摂取して身体を強健にすること。タン([[탕]])はスープの意。古くはケジャン([[개장]])、またはクジャン(狗醤、[[구장]])と呼ばれたが、現在は犬肉忌避の風潮から直接的な名称が嫌われ、ポシンタンのほか、ヨンヤンタン(栄養湯、[[영양탕]])、サチョルタン(四節湯、[[사철탕]])などと呼ばれる。また北朝鮮では犬肉のことを俗にタンゴギ(甘い肉、[[단고기]])と呼ぶため、タンコギタン([[단고기탕]])、タンコギジョンゴル([[단고기전골]])という名前でも呼ばれる。下茹でした犬肉を食べやすい大きさに裂き、茹で汁に調味料、香辛料を混ぜた調味ダレを加え、長ネギ、セリ、エゴマの葉などの野菜とともに鍋で煮込んで作る。臭み消しのために粉唐辛子やニンニク、エゴマ粉などを多用するのも特徴的である。主に専門店でのみ作られる料理で、一般の食堂でメニューに載ることは少ない。そのほか犬肉には、鍋料理のチョンゴル([[전골]])、茹で肉のスユク([[수육]])といった食べ方がある。夏負けを防ぐスタミナ料理や、病気の時に栄養をつける料理として食べられることが多く、[[サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)]]とともに、伏日([[복날]])に食べる料理として知られる。伏日は三伏([[삼복]])とも呼び、夏至から数えて3度目の庚の日である「初伏([[초복]])」と、4度目の庚の日である「中伏([[중복]])」、立秋後初めての庚の日である「末伏([[말복]])」の総称であり、1年の中で最も暑い時期とされる。 | ||
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+ | :伏日(ポンナル、[[복날]])は、「初伏(チョボク、[[초복]])」「中伏(チュンボク、[[중복]])」「末伏(マルボク、[[말복]])」の総称。夏至から数えて3度目の庚(かのえ)の日を初伏、4度目の庚の日を中伏、立秋を過ぎて最初の庚の日を末伏と呼び、これを総称して「三伏(サムボク、[[삼복]])」とも呼ぶ。伏日は陰陽五行思想に基づいた習慣であり、1年の中でもっとも暑い時期であることから、強い陽気に押されて陰気が地表近くに「伏」せている「日」を指す。陰気が濃密になることにより、人間に害をなす鬼神が横行しやすくなるため、体調を崩す(夏負けする)と考えられる。その対策として栄養価の高い料理を食べることが推奨され、伏日の代表的な料理には、[[サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)]]や、[[タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)]]、[[タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)]]、[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]、ポシンタン、[[チュオタン(ドジョウ汁/추어탕)]]などがあげられる。伏日はほぼ10日間隔となるが、暦の関係で中伏と末伏は20日間隔になることもあり、これを越伏(ウォルボク、[[월복]])と呼ぶ。末伏は立秋と重なることもある。よく似た習慣として日本の土用丑があるが、十干十二支に「庚」と「丑」の組み合わせはなく、伏日と土用丑が重なることはない。 | ||
+ | :伏日が庚の日であるのは陰陽五行思想をもとに、庚が五行(木・火・土・金・水)の「金」、五季のうち夏が「火」に相当し、「火克金(火は金属を溶かす=火が強まると金が弱まる)」の考え方から、庚の日はもっとも盛夏の影響を受ける日とされる。伏日には弱まった「金」の要素を補充することが好ましく、いずれも「金」に相当する五畜の「犬」、五菜の「葱」、五味の「辛味」を掛け合わせたポシンタンが、かつては伏日の代表的な料理であった(各要素は資料によって異なる場合がある)。しかし、近年は犬肉を食肉とすることへの忌避が強まったことから、韓国では[[サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)]]などの鶏料理や、ポシンタンの犬肉を牛肉で代替した[[ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)]]などを食べる人が多い。[[北朝鮮の料理|朝鮮民主主義人民共和国]]では、伏日にポシンタンを食べる習慣が残っている。 | ||
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*[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト) | *[http://kansyoku-life.com/ 韓食生活](韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト) | ||
*[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール) | *[http://www.kansyoku-life.com/profile 八田靖史プロフィール](八田靖史のプロフィール) | ||
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2023年10月19日 (木) 00:45時点における最新版
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ポシンタン(보신탕)は、犬肉の鍋。
概要
漢字では補身湯と書き、ポシン(보신)は栄養価の高いものを摂取して身体を強健にすること。タン(탕)はスープの意。古くはケジャン(개장)、またはクジャン(狗醤、구장)と呼ばれたが、現在は犬肉忌避の風潮から直接的な名称が嫌われ、ポシンタンのほか、ヨンヤンタン(栄養湯、영양탕)、サチョルタン(四節湯、사철탕)などと呼ばれる。また北朝鮮では犬肉のことを俗にタンゴギ(甘い肉、단고기)と呼ぶため、タンコギタン(단고기탕)、タンコギジョンゴル(단고기전골)という名前でも呼ばれる。下茹でした犬肉を食べやすい大きさに裂き、茹で汁に調味料、香辛料を混ぜた調味ダレを加え、長ネギ、セリ、エゴマの葉などの野菜とともに鍋で煮込んで作る。臭み消しのために粉唐辛子やニンニク、エゴマ粉などを多用するのも特徴的である。主に専門店でのみ作られる料理で、一般の食堂でメニューに載ることは少ない。そのほか犬肉には、鍋料理のチョンゴル(전골)、茹で肉のスユク(수육)といった食べ方がある。夏負けを防ぐスタミナ料理や、病気の時に栄養をつける料理として食べられることが多く、サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)とともに、伏日(복날)に食べる料理として知られる。伏日は三伏(삼복)とも呼び、夏至から数えて3度目の庚の日である「初伏(초복)」と、4度目の庚の日である「中伏(중복)」、立秋後初めての庚の日である「末伏(말복)」の総称であり、1年の中で最も暑い時期とされる。
伏日(복날)
- 伏日(ポンナル、복날)は、「初伏(チョボク、초복)」「中伏(チュンボク、중복)」「末伏(マルボク、말복)」の総称。夏至から数えて3度目の庚(かのえ)の日を初伏、4度目の庚の日を中伏、立秋を過ぎて最初の庚の日を末伏と呼び、これを総称して「三伏(サムボク、삼복)」とも呼ぶ。伏日は陰陽五行思想に基づいた習慣であり、1年の中でもっとも暑い時期であることから、強い陽気に押されて陰気が地表近くに「伏」せている「日」を指す。陰気が濃密になることにより、人間に害をなす鬼神が横行しやすくなるため、体調を崩す(夏負けする)と考えられる。その対策として栄養価の高い料理を食べることが推奨され、伏日の代表的な料理には、サムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)や、タッペクスク(丸鶏の水煮/닭백숙)、タッカンマリ(丸鶏の鍋/닭한마리)、ユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)、ポシンタン、チュオタン(ドジョウ汁/추어탕)などがあげられる。伏日はほぼ10日間隔となるが、暦の関係で中伏と末伏は20日間隔になることもあり、これを越伏(ウォルボク、월복)と呼ぶ。末伏は立秋と重なることもある。よく似た習慣として日本の土用丑があるが、十干十二支に「庚」と「丑」の組み合わせはなく、伏日と土用丑が重なることはない。
- 伏日が庚の日であるのは陰陽五行思想をもとに、庚が五行(木・火・土・金・水)の「金」、五季のうち夏が「火」に相当し、「火克金(火は金属を溶かす=火が強まると金が弱まる)」の考え方から、庚の日はもっとも盛夏の影響を受ける日とされる。伏日には弱まった「金」の要素を補充することが好ましく、いずれも「金」に相当する五畜の「犬」、五菜の「葱」、五味の「辛味」を掛け合わせたポシンタンが、かつては伏日の代表的な料理であった(各要素は資料によって異なる場合がある)。しかし、近年は犬肉を食肉とすることへの忌避が強まったことから、韓国ではサムゲタン(ひな鶏のスープ/삼계탕)などの鶏料理や、ポシンタンの犬肉を牛肉で代替したユッケジャン(牛肉の辛いスープ/육개장)などを食べる人が多い。朝鮮民主主義人民共和国では、伏日にポシンタンを食べる習慣が残っている。
- 2024年以降の伏日
-
- 2024年7月15日(月)、7月25日(木)、8月14日(水)
- 2025年7月20日(日)、7月30日(水)、8月9日(土)
- 2026年7月15日(水)、7月25日(土)、8月14日(金)
- 2027年7月20日(火)、7月30日(金)、8月9日(月)
- 2028年7月14日(金)、7月24日(月)、8月13日(日)
- 2029年7月19日(木)、7月29日(日)、8月8日(水)
- 2030年7月14日(日)、7月24日(水)、8月13日(火)
- 2031年7月19日(土)、7月29日(火)、8月8日(金)
- 2032年7月13日(火)、7月23日(金)、8月12日(木)
- 2033年7月18日(月)、7月28日(木)、8月17日(水)
脚注
外部リンク
- 制作者関連サイト
- 韓食生活(韓食ペディアの執筆者である八田靖史の公式サイト)
- 八田靖史プロフィール(八田靖史のプロフィール)