「サムギョプサル(豚バラ肉の焼肉/삼겹살)」の版間の差分
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+ | :石板で焼くサムギョプサル。トルパン([[돌판]])は石板を意味する。[[済州道の料理|済州道]]の溶岩(화산석)や、[[全羅北道の料理|全羅北道]][[長水郡の料理|長水郡]]の特産品である蝋石(コプトル、곱돌)で作った石板など、さらに細分化されることもある。 | ||
+ | *ソクセサムギョプサル(석쇠삼겹살) | ||
+ | :網で焼くサムギョプサル。ソクセ([[석쇠]])は網を意味する。練炭や炭火の香りをまとわせるのに適しているが、網目から脂が落ちるため、燃え広がらない工夫が必要になる。 | ||
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+ | :鉄板で焼くサムギョプサル。チョルパン([[철판]])は鉄板を意味する。 | ||
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+ | :透明な水晶の板で焼くサムギョプサル。スジョンパン([[수정판]])は水晶板を意味する。 | ||
+ | *ソットゥッコンサムギョプサル(솥뚜껑삼겹살) | ||
+ | :釜のフタで焼くサムギョプサル。ソッ([[솥]])は釜、トゥッコン([[뚜껑]])はフタを表す。かまどで用いる伝統的な大釜のフタを焼き板に見立てたもので、中央が盛り上がっているため余分な脂がへりに落ちるとのメリットがある。1993年に釜のフタを模した専用の焼き板が発売され一躍ブームになった<ref>[http://terms.naver.com/entry.nhn?docId=3568340&cid=58795&categoryId=58795 솥뚜껑 불판, 1990년대] 、NAVER知識百科、2017年8月18日閲覧</ref>。 | ||
+ | ・サプサムギョプサル(삽삼겹살) | ||
+ | :スコップで焼くサムギョプサル。サプ([[삽]])とはスコップを意味する。もともとは炭焼き窯の火を利用して、職人らがスコップに豚肉を載せて焼いたことに由来する。炭焼き窯の中は高温であるため3秒も焼けば火が通るため、3秒サムギョプサル(삼초삼겹살)とも呼ばれる。 | ||
+ | ・ピョルサムギョプサル(벼루삼겹살) | ||
+ | :大きなすずり(硯)で焼くサムギョプサル。ピョル([[벼루]])はすずりを意味する。すずりの墨がたまる部分に余分な脂が落ちるとのメリットがある。 | ||
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2017年8月18日 (金) 09:33時点における版
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サムギョプサル(삼겹살)は、豚バラ肉の焼肉。もともとサムギョプサルとは豚バラ肉を表す部位名だが、それを焼いて食べる料理としてもサムギョプサルと呼ぶ。韓国ではもっともポピュラーな豚焼肉のひとつである。
名称
サムギョプサルは豚バラ肉の焼肉。サムギョプサルとは豚バラ肉のことで、サム(삼)は数字の3、ギョプ(겹)は層、サル(살)は肉を表す。直訳をすると「三層の肉」という意味である。赤身と脂身と層状になった豚バラ肉の見た目に由来する。日本語においては「サムギョッサル」「サンギョッサル」「サンギョプサル」「サムギョップサル」など多様な表記が使われている。また日本語で豚バラ肉のことを「三枚肉」「三枚バラ」とも称することから、「三段バラ」「三段バラ肉」との表記も散見される。本辞典ではサムギョプサルと表記する。発音表記は[삼겹쌀]。
概要
サムギョプサルは豚バラ肉を鉄板や網などで焼いて調理をする。焼けた豚バラ肉はサンチュ(상추)、エゴマの葉(깻잎)などの葉野菜で包み、サムジャン(쌈장)と呼ばれる合わせ味噌や、パジョリ(파절이、白髪ネギの和え物)、スライスしたニンニク、刻んだ青唐辛子などを薬味として加えて味わう。キルムジャン(기름장)と呼ばれるゴマ油と塩を混ぜたタレにつけてもよい。豚焼肉店のメニューに並ぶほか、サムギョプサル専門の店も数多く存在し、店ごとに食べ方、焼き方、肉の切り方などに個性が見られ、そのバリエーションもたいへん豊富である(種類参照)。
歴史
1980年代
豚バラ肉を焼いて食べるというシンプルな料理だけに、その発祥は明確になっていない。ただし、かつての韓国では豚バラ肉は人気のある部位ではなく、サムギョプサルが豚焼肉として広く普及したのは1980年代前半ではないかとの見解が多い。
- キム・チャンビョルの報告
- キム・チャンビョルは著書『韓国料理、その美味しい誕生(한국음식 그 맛있는 탄생)』の中でサムギョプサルの発祥年代を考察し、「70年代後半であってもサムギョプサルは人気のある部位ではなかった。当時の外食、または家庭における焼肉の主要メニューは大部分がプルコギか、または豚ロースに塩を振って焼いたソグムグイ(別名ロースグイ)だった。サムギョプサルを初めて食べた時期について何人かにアンケートをしてみた。大部分の人はサムギョプサルを初めて食べたのは80年代前半であると回答した。この頃に家で、または食堂でサムギョプサルを焼いて食べたというのが彼らに共通する記憶だ」(原文1)と述べている。
- 【原文1】「70년대 후반까지도 삼겹살은 인기 있는 부위 아니었다. 당시의 외식 또는 가정식 고기구이의 주요 메뉴는 대부분 육수 불고기 아니면 돼지 등심에 소금을 뿌려 굽는 소금구이(일명 로스구이)였다. 삼겹살을 처음 먹어본 시점에 대해 여러 사람들에게 설문을 해 보았다. 대부분의 사람들이 삼겹살을 처음 먹어본 것은 80년대 초반이라고 응답했다. 이맘때 집에서 또는 식당에서 삼겹살을 구워먹었다는 것이 여러 사람들의 공통된 기억이다.」[1]
- 『B級グルメが見た韓国』の記述
- 1989年に発行された文藝春秋編『B級グルメが見た韓国』にはサムギョプサルに関する記述がある。本書ではソウルの忠武路にある「忠武路テジチプ(충무로돼지집)」という豚焼肉店を取材したうえで、テジカルビ(豚カルビ焼き/돼지갈비)とともにサムギョプサルを紹介し、「大衆焼き肉のもうひとつの代表格ともいえる人気メニューとなっている」と述べている。本書のデータは1988年12月現在となっており、当時の価格でテジカルビが1人前3000ウォン、サムギョプサルは1人前2500ウォンであった[2]。
1990年代
外食の普及によってサムギョプサルは庶民的な焼肉として定番の座を獲得する。冷凍肉を使った安い焼肉とのイメージも強く、90年代前半にはそれを極薄切りにしたテペサムギョプサル(薄切り豚バラ肉の焼肉/대패삼겹살)が登場する。テペとはかんな(鉋)のことで、かんなで削ったように薄いことから名付けられた。1997年にアジア通貨危機が起こると、韓国では企業の倒産が相次ぎ、IMFの管理下に入って経済支援を受けるに至った。この時期以降、不景気な情勢を象徴するかのように「IMF価格」を掲げた激安のサムギョプサルが台頭した。
2000年代
2000年代に入るとサムギョプサルは劇的な進化を遂げる。それまでの庶民的な安い焼肉というイメージから脱却し、店ごとに工夫を凝らした高級志向のサムギョプサルがどんどん登場した。その端緒は2000年頃からブームとして火が付いたワインサムギョプサル(ワインに漬けた豚バラ肉の焼肉/와인삼겹살)の成功にあり、この流れからハーブやチーズと組み合わせたサムギョプサルなど、さまざまなアレンジが生まれていった。背景にはアジア通貨危機からの経済的な回復と、2002年のFIFAワールドカップ(日本と韓国で共催)を目前に海外からの食文化が多く流入したことで、フュージョン料理の人気が高まっていたことなどがあげられる。2000年代の前半にさまざまなサムギョプサルが登場してブームとなったことで、当時韓流の訪れによって韓国への関心が高まっていた日本へも波及し、日本でもサムギョプサルが最先端の韓国料理として人気を集めるに至った(日本における定着参照)。
2010年代
2008年に牛焼肉のブームが起こり、高級な韓牛(한우)の等級にこだわったり、希少部位を専門に提供する焼肉店が増加した。2010年に入ってそれが豚焼肉にも波及し、カルメギサル(豚ハラミ(焼肉)/갈매기살)、モクサル(豚の首肉(焼肉)/목살)、ハンジョンサル(豚トロの焼肉/항정살)といった部位が台頭し、サムギョプサルと肩を並べるに至った。サムギョプサルも済州産の黒豚や、オギョプサル(皮付き豚バラ肉の焼肉/오겹살)にこだわる店など、食べ方よりも肉の品質にこだわる店が増えていった。2015年には世界的な熟成肉のブームから、乾燥熟成(ドライエイジング)させた豚焼肉も登場し話題を集めた。
種類
韓食ペディアの執筆者である八田靖史は著書『韓国料理にはご用心!』にてサムギョプサルの種類を9つの要素に分類している[3]。
素材の要素
生肉、銘柄豚、熟成肉など素材自体に特徴を持つもの。
- センサムギョプサル(생삼겹살)
- 冷凍肉に対して生肉を使用したサムギョプサル。センは生(생)を意味する。
- ネンドンサムギョプサル(냉동삼겹살)
- 生肉に対して冷凍肉を使用したサムギョプサル。ネンドンは冷凍(냉동)を意味する。ただしあえてメニューとして記載されることはない。
- フッテジサムギョプサル(흑돼지삼겹살)
- ファントサムギョプサル(황토삼겹살)
- 飼料に黄土(ファント、황토)を配合して飼育した豚を使用したサムギョプサル。
- スクソンサムギョプサル(숙성삼겹살)
- 熟成肉を使用したサムギョプサル。スクソンは熟成(숙성)を意味する。
肉の切り方の要素
厚さ、形状、包丁目の入れ方など肉の切り方に特徴を持つもの。
- ○○mmサムギョプサル(~mm삼겹살)
- 主に厚さを売りとしたサムギョプサル。12mm、20mmなど店ごとの数字が入る。一概に厚ければよいというだけでなく、食べてもっとも美味しいのが〇〇mmといった具合にほどよい厚さをアピールする場合もある。
- オギョプサル(오겹살)
- 皮付きの状態で提供するサムギョプサル。オギョプサルの、オ(오)は数字の5、ギョプ(겹)は層、サル(살)は肉を表す。済州道の郷土料理としても有名。オギョプサル(皮付き豚バラ肉の焼肉/오겹살)の項目も参照。
- トンサムギョプサル(통삼겹살)
- ブロックの状態で焼くサムギョプサル。トン(통)は丸ごとを意味する。
- ポルチプサムギョプサル(벌집삼겹살)
- 表面に無数の包丁目を入れて焼くサムギョプサル。ポルチプ(벌집)は牛の第2胃(ハチノス)を意味し、包丁目を入れた見た目がよく似ることから名付けられた。日本ではハチノスサムギョプサルとも呼ばれる。
- テペサムギョプサル(대패삼겹살)
- 肉を極薄切りにしたサムギョプサル。テペとは大工道具のかんなを意味し、かんなで削ったように薄く仕上げることから名付けられた。
焼き板の要素
鉄板、石板、水晶板、釜のフタなど焼き板の種類に特徴を持つもの。
- トルパンサムギョプサル(돌판삼겹살)
- ソクセサムギョプサル(석쇠삼겹살)
- 網で焼くサムギョプサル。ソクセ(석쇠)は網を意味する。練炭や炭火の香りをまとわせるのに適しているが、網目から脂が落ちるため、燃え広がらない工夫が必要になる。
- チョルパンサムギョプサル(철판삼겹살)
- 鉄板で焼くサムギョプサル。チョルパン(철판)は鉄板を意味する。
- スジョンパンサムギョプサル(수정판삼겹살)
- 透明な水晶の板で焼くサムギョプサル。スジョンパン(수정판)は水晶板を意味する。
- ソットゥッコンサムギョプサル(솥뚜껑삼겹살)
- 釜のフタで焼くサムギョプサル。ソッ(솥)は釜、トゥッコン(뚜껑)はフタを表す。かまどで用いる伝統的な大釜のフタを焼き板に見立てたもので、中央が盛り上がっているため余分な脂がへりに落ちるとのメリットがある。1993年に釜のフタを模した専用の焼き板が発売され一躍ブームになった[4]。
・サプサムギョプサル(삽삼겹살)
- スコップで焼くサムギョプサル。サプ(삽)とはスコップを意味する。もともとは炭焼き窯の火を利用して、職人らがスコップに豚肉を載せて焼いたことに由来する。炭焼き窯の中は高温であるため3秒も焼けば火が通るため、3秒サムギョプサル(삼초삼겹살)とも呼ばれる。
・ピョルサムギョプサル(벼루삼겹살)
- 大きなすずり(硯)で焼くサムギョプサル。ピョル(벼루)はすずりを意味する。すずりの墨がたまる部分に余分な脂が落ちるとのメリットがある。
熱源の要素
炭火、藁、黄土釜、炭焼き釜など熱源の種類に特徴を持つもの。
下味の要素
ワイン、ハーブ、コチュジャンなど下味の種類に特徴を持つもの。
タレの要素
チーズ、きな粉、塩辛汁などつけて食べるタレの種類に特徴を持つもの。
パートナー素材の要素
キムチ、豆モヤシ、海鮮など一緒に焼く、または一緒に食べる素材に特徴を持つもの。
包み素材の要素
葉野菜、薄切りの餅、クレープなど包んで食べる素材に特徴を持つもの。
その他
イケメン店員が接客するなど料理とは無関係な特徴も含む。
日本における定着
脚注
- ↑ 김찬별, 2008, 『한국음식 그 맛있는 탄생』, 로크미디어, P87
- ↑ 文藝春秋編, 1989, 『B級グルメが見た韓国』, 文藝春秋, P158
- ↑ 八田靖史, 2013, 『韓国料理にはご用心!』, 三五館, P55
- ↑ 솥뚜껑 불판, 1990년대 、NAVER知識百科、2017年8月18日閲覧