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浦項市(ポハンシ、포항시)は慶尚北道に位置する地域。本ページでは浦項市の料理、特産品について解説する。
地域概要
奉化郡は慶尚北道の北部に位置し、栄州市、安東市、英陽郡、蔚珍郡、江原道の寧越郡、太白市、三陟市と接する。人口は3万3821人(2015年6月)[1]。面積の83%が山林であり、一帯が道立公園に指定される清涼山(청량산)をはじめ、青玉山(청옥산)、国立白頭大幹樹木園(국립백두대간수목원)、春陽木山林体験館(춘양목산림체험관)など自然を活かした観光地が多い。ソウル(東ソウルバスターミナル)から奉化共用バス停留所までは市外バスで約2時間40分の距離。
食文化の背景
高麗時代後期より、奉化を本貫とする奉化琴氏(봉화금씨)、奉化鄭氏(봉화정씨)の一族が中央で要職を担うようになり、安東(アンドン、안동)地域の士族らが奉化へと移住するようになる。その代表的な人物が現在のタルシル村(달실마을)に移り住んだ権橃(クォン・ボル)であり[2]、こうした地域では現在も古くからの伝統を守り、両班家の食文化を現在に伝えている。そのほか地域の基幹産業としては農業、畜産業があり、米や雑穀、リンゴ、ブルーベリー、イチゴ、スイカ、トマトなどの果物類、マツタケ、シイタケ、トウガラシ、ジャガイモ、アユ、韓牛(ハヌ、한우)、韓方材といった特産品がある。また、食品以外では鍮器(ユギ、유기)と呼ばれる真鍮食器や、麻布の産地としても有名。鍮器の技能保有者は慶尚北道無形文化財第22号に指定されている。
代表的な料理
特産品の韓方材を食べさせて飼育した韓薬牛の焼肉や、タルシル村の伝統菓子が有名である。
ハニャググイ(韓薬牛の焼肉/한약우구이)
- 奉化郡では韓方材の栽培が盛んであり、それを利用した韓牛の飼育も盛んである。これらを韓方材(韓薬)を食べさせた牛という意味で、韓薬牛(ハニャグ、한약우)、または奉化韓薬牛(ポンファハニャグ、봉화한약우)と呼ぶ。ハニャググイのグイは焼き物の総称。韓薬牛と呼ばれるのは奉化郡で生まれた牛に、生後28ヶ月以上、専用の飼料を食べさせて育てたものを指し、また肉質は1等級以上に限る[3]。韓薬牛の飼料として使われる韓方材は6種類あり、当帰(トウキの根、당귀)、白朮(オオバオケラの根、백출)、陳皮(ミカンの皮、진피)、桔梗(キキョウの根、도라지)、芍薬(シャクヤクの根、작약)、黄耆(キバナオウギの根황기)を混ぜ合わせて作る。韓薬牛の飼育は1993年に始まった。
- 飲食店での提供
ハングァ(伝統菓子/한과)
- 郡内の酉谷里(ユゴンニ、유곡리)地区には安東権氏(안동권씨)の同族村であるタルシル村があり、朝鮮時代中期の官僚である権橃が開いた。山に囲まれたこの地域は金の鶏が村全体を抱いているようだと表現され、鶏谷との意味でタルシル、またそれを漢字で酉谷と表現する。この村には現在も安東権氏の末裔30余戸が暮らしており、先祖を祀った共同祭祀を行う。このとき祭祀膳に捧げられるのが伝統菓子のハングァ(韓菓)であり、現在は地域の特産品として販売もされている。その製法は安東権氏の家門に代々受け継がれた門外不出のものであり、嫁いできた女性以外は実の娘であっても教わることができない。実際の製造は村の女性たちが農作業の合間に集まってすべて手作業で行っている。購入する場合は10日前までに予約が必要。
- ユグァ(油菓)
- 現在は大きく分けて3種類のハングァを作っている。もち米の生地を油で揚げて蜜と炒り米(튀밥)をまぶしたものをユグァ(油菓、유과)と呼び、板状に作ったイムニュグァ(입유과)と、楕円型に作ったチャンニュグァ(잔유과)の2種類がある。このうちチャンニュグァには全体に黒ゴマをまぶした黒いものと、植物のムラサキ(지치)で色をつけた赤いものがあり、プレーンな白を含めて3つの色がある。かつては陰陽五行思想に照らし合わせて5色を作ったそうだが、現在は簡略化されている。また、チャンニュグァには炒り米と干しブドウを用いて、梅の花に見立てた飾りが加わる。
- ヤックァ(薬菓)
- ハングァのもう1種類はもち米の生地にショウガなどを加えて揚げたヤックァ(薬菓、약과)である。一般的なヤックァとは異なって油っぽさがほとんどなく、層状になった生地はクッキーのような食感でサクサクしている。
- タルシル宗家伝統油菓(달실종가 전통유과)
- 住所:慶尚北道奉化郡奉化邑沖斎キル6-1(酉谷里1016)
- 住所:경상북도 봉화군 봉화읍 충재길 6-1(유곡리 1016)
- 電話:054-674-0788
代表的な特産品
山間部の地形を活かした特産品があり、中でも秋にとれるマツタケと川魚のアユが有名である。
マツタケ(송이버섯)
- 奉化郡は面積の83%が山林であり、山林面積の約4割をマツ(アカマツ、チョウセンゴヨウ)が占める。こうした環境により古くからマツタケの産地として知られ、山林庁が地域の名産品を認証する地理的表示林産物の第10号として奉化マツタケは登録されている(江原道襄陽郡、慶尚北道盈徳郡、蔚珍郡もマツタケの登録がある)[4]。奉化におけるマツタケのシーズンは9月下旬から10月中旬であり、この時期に毎年「奉化マツタケ祭り(봉화송이축제)」が開催される[5]。
- マツタケの食べ方
- 飲食店においてはソンイグイ(マツタケ焼き、송이구이)、ソンイトルソッパプ(マツタケ釜飯、송이돌솥밥)、ソンイジョンゴル(マツタケ鍋、송이전골)といった食べ方が一般的である。またシーズンになると焼肉店などでもマツタケを扱い、地元名産の韓牛と一緒に焼いて食べるのも人気が高い。
アユ(은어)
- 奉化郡を流れる乃城川(내성천)は洛東江(낙동강)の上流域にあり、1960年代まではたくさんのアユがとれた。現在はダムの建設など自然環境に変化が大きく、天然のアユはほとんど見られなくなってしまったが、地域の名産品として養殖や稚魚の放流などに力を入れている。毎年、8月には「奉化アユ祭り(봉화은어축제)」が開催される。アユは主にウノグイ(アユの焼き魚、은어구이)、ウノジョリム(アユの煮付け、은어조림)、ウノティギム(アユの天ぷら、은어튀김)といった調理法で味わう。
代表的な酒類・飲料
奉化郡のマッコリ
- 奉化郡には現在6ヶ所の醸造場があり[6]、法田醸造場(법전양조장)の清凉酒(청량주)、奉化醸造場(봉화양조장)の奉化純麹生マッコリ(봉화 순곡생막걸리)、三洞醸造場(삼동양조장)の清涼山マッコリ(청량산 막걸리)、小川濁・薬酒醸造場(소천탁 약주양조장)の小川長生マッコリ(소천장생막걸리)、春陽醸造場(춘양양조장)の太白山米マッコリ(태백산 쌀막걸리)、石浦醸造場(석포양조장)の石浦マッコリ(석포막걸리)といった銘柄が流通している。
奉化仙酒(봉화선주)
- 刀川里(도천리)地区の海軒古宅(해헌고택)に代々住む安東金氏の家系に受け継がれた伝統酒。米と小麦麹を原料として五加皮、松葉、桂皮などの韓方材を加えた蒸留酒で、種類としては五加皮酒(오가피술)に当たるが、五加皮(오가피)の薬効から不老不死の酒になぞらえて仙酒と名付けられている[7]。
奉化ワイン(봉화와인)
飲食店情報
以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。
- 銀河スップル会館(은하숯불회관)
- 住所:慶尚北道奉化郡奉化邑乃城路129(乃城里352-2)
- 住所:경상북도 봉화군 봉화읍 내성로 129(내성리 352-2)
- 電話:054-673-1303
- 料理:韓薬牛の焼肉
- 仁廈院(인하원)
- 住所:慶尚北道奉化郡奉化邑幼鹿キル20(石坪里713)
- 住所:경상북도 봉화군 봉화읍 유록길 20(석평리 713)
- 電話:054-672-8289
- 料理:マツタケ料理
エピソード
- 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2015年10月に初めて奉化郡を訪れた。ちょうどマツタケのシーズンであったため、マツタケ釜飯(송이돌솥밥)を食べに行き、たっぷり載ったマツタケを味わった。店員の「副菜のナムル(나물)などと混ぜてコチュジャン(고추장)を加え、ピビムパプ(混ぜごはん、비빔밥)にして食べてください」とのセリフに衝撃を受けつつも、恐る恐る試してみたところ、旬のマツタケはまったく負けずに香りが活きているのに感服した。
- 慶尚北道広報大使が取材、執筆する観光冊子『GB-Story Vol.1(zipファイル)』[9]にはタルシル村の韓菓とマツタケ料理の話が掲載されている。
脚注
- ↑ 행정구역 、奉化郡ウェブサイト、2016年3月28日閲覧
- ↑ 봉화군(경상북도) 、韓国民族文化大百科、2015年4月3日閲覧
- ↑ 安東奉化畜産業協同組合作成の奉化韓薬牛パンフレット
- ↑ 지리적표시 임산물 제10호 - 봉화송이 、山林庁ウェブサイト、2016年4月12日閲覧
- ↑ 봉화송이축제 、奉化観光ウェブサイト、2016年4月12日閲覧
- ↑ 봉화양조장 상세 정보 、봉화장터、2016年4月12日閲覧
- ↑ 봉화선주 、奉化仙酒ウェブサイト、2016年5月7日閲覧
- ↑ 에덴의동쪽 、エデンの東ウェブサイト、2016年4月12日閲覧
- ↑ ダウンロード版「GB-Story」配布~慶尚北道広報大使による最新取材報告会後記 、韓食生活、2016年4月12日閲覧