「栄州市の料理」の版間の差分
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=== 小白山五精酒 === | === 小白山五精酒 === | ||
:小白山五精酒は米と麦麹で造られた蒸留酒。黄精(ナルコユリの根茎)、蒼朮(ホソバオケラの根)、松葉、地骨皮(クコの木の根皮)、天門冬(クサスギカズラの根)という5種類の韓方材を用いることから五精酒との名前がついた。現在は栄州市古峴洞で生産されている。 | :小白山五精酒は米と麦麹で造られた蒸留酒。黄精(ナルコユリの根茎)、蒼朮(ホソバオケラの根)、松葉、地骨皮(クコの木の根皮)、天門冬(クサスギカズラの根)という5種類の韓方材を用いることから五精酒との名前がついた。現在は栄州市古峴洞で生産されている。 | ||
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[[ファイル:14112006.JPG|thumb|300px|豊基高麗人参ビール]] | [[ファイル:14112006.JPG|thumb|300px|豊基高麗人参ビール]] | ||
:豊基高麗人参を加えて造ったビール。豊基邑山法里にあるテギョンビール(대경맥주)が2014年に新しく開発し、販売が始まった。 | :豊基高麗人参を加えて造ったビール。豊基邑山法里にあるテギョンビール(대경맥주)が2014年に新しく開発し、販売が始まった。 | ||
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2016年4月23日 (土) 00:25時点における版
この記事はウィキペディアではありません。「韓食ペディア」はコリアン・フード・コラムニストの八田靖史が作る、韓国料理をより深く味わうためのWEB百科事典です。以下の内容は八田靖史の独自研究を含んでいます。掲載されている情報によって被った損害、損失に対して一切の責任を負いません。また、内容は随時修正されます。 |
栄州市(ヨンジュシ、영주시)は慶尚北道に位置する地域。本ページでは栄州市の料理、特産品について解説する。
地域概要
栄州市は慶尚北道の北部に位置し、江原道の寧越郡、忠清北道の丹陽郡、慶尚北道の奉化郡、安東市、醴泉郡と接する。人口は11万2625人(2013年)[1]。市の北部から西部にかけて小白山脈が連なり、一帯は小白山国立公園に指定されている。代表的な観光地に韓国初の書院(私塾)である紹修書院(ソスソウォン、소수서원)、新羅時代の676年に創建された浮石寺(プソクサ、부석사)、朝鮮時代の両班村をそのまま残したムソム村(ムソムマウル、무섬마을)などがある。ソウル(東ソウルバスターミナル)からは高速バスで2時間30分の距離。
食文化の背景
栄州市は「ソンビの里」とのキャッチコピーを掲げており、ソンビとは朝鮮時代の儒学者を指す。韓国初の書院(私塾)である紹修書院が置かれたように、地域の教育熱は高く中央へと多くの官僚を輩出した。中央との距離が近かったこともあってか、栄州市の郷土料理であるテピョンチョは宮中料理のタンピョンチェ(宮中式の和え物/탕평채)に由来するとされる。産業としては農業、畜産業が盛んに行われており、中でも昼夜の寒暖差が大きい小白山麓では良質の果物がとれる。市内の豊基(プンギ、풍기)地区は高麗人参の産地として全国的に有名であり、また韓方材としては長芋、何首烏(ツルドクダミ)も産する。食品以外では人絹(インギョン、인경)と呼ばれる再生繊維(レーヨン)の生産が盛んで、それを用いた衣類や寝具などが名産とされる。
代表的な料理
テピョンチョ(そば寒天入りキムチ鍋/태평초)
- テピョンチョはそば粉のでんぷんを固めて作るメミルムク(매밀묵)を入れたキムチ鍋。ほかに豚肉や刻んだ白菜キムチなどが具として入り、海苔や錦糸卵を飾りとして散らす。栄州市順興面では古くからそばの栽培が盛んで、とれたそば粉をメミルムクにして、ムッパプ(そば寒天の冷製スープ、묵밥)や、テピョンチョを作って食べたという。栄州市下望洞に位置する「伝統ムッチプ食堂(전통묵집식당)」の朴勝昌社長によれば、このテピョンチョという料理は「宮中料理のタンピョンチェに由来し、それを庶民的に解釈したもの」だという。また70代の朴社長にとって「テピョンチョは子どもの頃のご馳走料理であり、家に来客があった際に母や祖母が作ってくれた」と語る(八田靖史の取材記録より、2014年5月4日)。市内にテピョンチョを出す飲食店は「伝統ムッチプ食堂」のほか、「元祖順興ムッチプ(원조순흥묵집)」「順興伝統ムッチプ(순흥전통묵집)」などがある。
センガンドノッ(ショウガドーナツ/생강도넛)
- センガンドノッはもち米で作った揚げ菓子にショウガやピーナッツをまぶしたもの。栄州市豊基邑山法里に本店を置く「情ドーナツ(정도너츠)」の看板商品で、原材料のもち米やショウガは栄州産のものを使用している。同店はもともと1982年に「チョンア粉食(정아분식)」として創業し、一般的な食堂として営業をしていたが、メニューのひとつであったセンガンドノッが評判を集め、2008年に現在の「情ドーナツ」へと店名を変更した[2]。現在はフランチャイズ化し、ソウルや、釜山などにも店舗を構える。なお、ドーナツの正式な韓国語表記は「도넛」であるが、「情ドーナツ」では「도너츠」を採用している。店舗におけるメニュー名も、正しくは「センガンドノチュ(생강도너츠)」である。
カルビサル(牛カルビ焼き/갈비살)
- 小白山で飼育された牛肉は、栄州韓牛(ヨンジュハヌ、영주한우)と呼ばれ地元の名産品となっている。市の中心部である栄州洞には焼肉店が集まっており、そこでは他の部位よりも圧倒的にカルビサルが人気を集める。カルビサルとは牛カルビを焼いたものだが、骨から外した肉を食べやすい大きさに切って焼くスタイルを指す。
コグマパン(サツマイモ饅頭/고구마빵)
- コグマパンはサツマイモあんを中に詰めた焼き菓子。栄州市鳳峴面大村里に本店を置く「ミソモグムゴ(미소머금고)」が2006年に開発し、栄州の新たな名物として広まった。栄州産のサツマイモを使ったパイや、ガレットなどの商品も販売している。
サグァマルレンイ(リンゴチップ/사과말랭이)
- サグァマルレンイは栄州市の特産品であるリンゴをスライスしてスナック風に乾燥させたもの。浮石寺の参道に露店がたくさん出ている。露店ごとに味がずいぶんと異なり、甘味の強いもの、酸味の強いもの、食感のサクサクしたものとそうでないものがあるため、できれば試食をしたうえで、自分の好みに合ったものを探すのが肝要である。
タッパル(鶏足焼き/닭발)
- タッパルは鶏の足を焼いたもの。栄州市ではピョオムヌンタッパル(骨なしの鶏足焼き、뼈없는 닭발)を主流とし、ピリ辛のタレで味付けをしたものを炭火で網焼きにする。市内にはタッパルの専門店が各地に点在するが、その背景には養鶏業が盛んであることがあげられる。2014年現在、栄州市によれば260万羽の鶏が飼育されており、特産品のひとつである鶏卵の生産量は全国2位を誇る(八田靖史の取材記録より、2014年11月25日)。
代表的な特産品
北部の小白山麓では農業、畜産業が盛んに行われている。リンゴ、ブドウ、モモなどの果物が有名であるほか、豊基の高麗人参や、栄州韓牛、浮石面でとれる大豆の評価も高い。
高麗人参
- 栄州市の豊基地区は高麗人参の栽培地、集散地として全国的に有名である。豊基駅前には高麗人参市場が広がり、全国各地から高麗人参を仕入れにくる人たちで賑わう。一帯では水参(生の高麗人参)のほか、紅参(燻蒸した高麗人参)、茶や菓子などの加工品を販売する店が並ぶほか、高麗人参を使った料理を提供する飲食店もある。高麗人参を使った料理は市場のみならず、栄州市内の各地域で名物となっており、同じく栄州の名産である牛肉と組み合わせた、インサムカルビタン(高麗人参と牛カルビのスープ、인삼갈비탕)や、インサムソルロンタン(高麗人参と牛肉のスープ、인삼설렁탕)、そのほかインサムマンドゥ(高麗人参餃子、인삼만두)といった料理を味わえる。また、2014年には豊基高麗人参を使ったビールが開発され、新たな名物として注目を集めている。
- 豊基高麗人参の歴史
- 三国史記(新羅本紀第八)を見ると、734年に新羅の聖徳王(第33代)が唐へと賀正使を派遣した際、高麗人参200本を送ったという記録がある[3]。小白山一帯は新羅における代表的な山参(天然の高麗人参)の産地であり、栄州市では豊基高麗人参のもっとも古い記録と位置付けている。また、朝鮮時代の1541年に豊基郡守として赴任した周世鵬は、豊基地区が高麗人参の栽培に適していることを見出し、山参の種をまいて高麗人参栽培に力を注いだ[4]。
- 豊基高麗人参祭り
- 毎年10月に豊基邑の南院川沿いで催される[5]。
リンゴ
小白山の山麓地域で主に栽培される。一帯は昼夜の寒暖差が大きく、香りと糖度の高いリンゴが生産される。2015年の栽培面積は3296.8ha、生産量は10万514.9トンでいずれも韓国1位である[6]。
- 品種
- 主な品種は日本由来のふじであり、韓国語ではプサ(부사)と呼ばれる。また、つがるやシナノゴールドなど他の日本品種も多く、そのほか韓国品種としては秋夕(陰暦8月15日)の時期に贈答用として流通する高級品種の紅露(홍로)が知られる。
- リンゴを使った加工品
- 栄州では特産品のリンゴを活かした加工品が多く生産されている。伝統方式の味噌や醤油を生産する伊山面池洞里の「無愁村(무수촌)」では栄州産のリンゴを用いた長期熟成のリンゴ酢を扱っている。可興洞の「ソンビ村韓菓(선비촌한과)」ではリンゴで作った水飴(조청)、またその水飴を用いた伝統菓子(한과)を生産している。観光客が多く訪れる浮石寺の参道ではリンゴや、乾燥リンゴのチップが露店で販売されている。
- 栄州リンゴ祭り(영주사과축제)
- 毎年10月下旬に開催される。
韓牛
- 小白山の清涼な自然の中で飼育されており全国的にも評価が高い。栄州市内では焼肉のカルビサルが地元人気を集める。
- 栄州韓牛プラザのソウル進出
- 2016年4月8日にソウル市瑞草区新院洞に栄州畜産協同組合が運営する「栄州韓牛プラザ清渓山駅店」がオープンした。
大豆
- 北部の浮石面でとれる大豆は地名から浮石太(プソクテ、부석태)の名前でブランド化されている。標準的な大豆の百粒重(百粒の重さ)が25~30gであるのに対し、浮石太は40gほどと大粒である。この大豆を用いたチョングッチャン(韓国式の納豆汁/청국장)なども名物料理のひとつに数えられる。
代表的な酒類・飲料
栄州市のマッコリ
- 主要な銘柄に栄州醸造場の「栄州小白酒(영주 소백주)」、マンス酒造の「栄州生濁(영주생탁)」がある。
小白山五精酒
- 小白山五精酒は米と麦麹で造られた蒸留酒。黄精(ナルコユリの根茎)、蒼朮(ホソバオケラの根)、松葉、地骨皮(クコの木の根皮)、天門冬(クサスギカズラの根)という5種類の韓方材を用いることから五精酒との名前がついた。現在は栄州市古峴洞で生産されている。
ジュネットワイン
- 丹山面で栽培されたブドウで造るワイン。ジュネット(Junete)はフランス語の「私」と、イタリア語の「純潔、純粋」という意味の言葉を掛け合わせたもの。
豊基高麗人参ビール
- 豊基高麗人参を加えて造ったビール。豊基邑山法里にあるテギョンビール(대경맥주)が2014年に新しく開発し、販売が始まった。
栄州ヨーグルト
- 上望洞の鎬洙牧場(호수목장)が生産している飲むヨーグルト。同牧場ではチーズも生産、販売している。
飲食店情報
以下は韓食ペディアの執筆者である八田靖史が実際に訪れた店を列挙している。
- 東南風(동남풍)
- 住所:慶尚北道栄州市繁栄路173番キル13(栄州洞330-14)
- 住所:경상북도 영주시 번영로173번길 13(영주동 330-14)
- 電話:054-635-6842
- 料理:カルビサル(牛カルビ焼き)
- ミソモグムゴ(미소머금고)
- 住所:慶尚北道栄州市鳳峴面小白路1727(大村里508)
- 住所:경상북도 영주시 봉현면 소백로 1727(대촌리 508)
- 電話:054-636-1599
- 料理:コグマパン(サツマイモ饅頭)
- 梁大監(양대감)
- 住所:慶尚北道栄州市豊基邑人参路11-1(西部里141-3)
- 住所:경상북도 영주시 풍기읍 인삼로 11-1(서부리 141-3)
- 電話:054-633-6335
- 料理:インサムマンドゥ(高麗人参餃子)
- 芸郷(예향)
- 住所:慶尚北道栄州市コットンサン路40番キル11(可興洞1381-37)
- 住所:경상북도 영주시 꽃동산로40번길 11(가흥동 1381-37)
- 電話:054-637-7238
- 料理:トルソッパプ(釜炊きごはんの定食、돌솥밥)
- 伝統ムッチプ食堂(전통묵집식당)
- 住所:慶尚北道栄州市元塘路163番キル24(下望洞316-33)
- 住所:경상북도 영주시 원당로163번길 24(하망동 316-33)
- 電話:054-632-9284
- 料理:テピョンチョ(そば寒天入りキムチ鍋)
- 情ドーナツ本店(정도너츠 본점)
- 住所:慶尚北道栄州市豊基邑小白路2000(山法里 342)
- 住所:경상북도 영주시 풍기읍 소백로 2000(산법리 342)
- 電話:054-636-0071
- 料理:センガンドノッ(ショウガドーナツ)
- ハンギョルチョングッチャン(한결청국장)
- 住所:慶尚北道栄州市豊基邑人参路1-1(西部里138-10)
- 住所:경상북도 영주시 풍기읍 인삼로 1-1(서부리 138-10)
- 電話:054-636-3224
- 料理:チョングッチャン(韓国式の納豆汁)
エピソード
- 韓食ペディアの執筆者である八田靖史は2014年5月に初めて栄州市を訪れた。きっかけとなったのは栄州市出身の韓国語教師が生徒向けに企画した故郷を訪ねる旅行であり、その韓国語教室に通っている友人からの誘いで部外者ながら同行をすることになった。その旅行を通じて市の観光担当を紹介され、短時間で地域の食文化を理解することができた。関係諸氏には特別に謝意を表したい。