食客トークのこぼれ話(明太七変化編)。

09081001.jpg

ドラマ『食客』のDVD、BOXⅠは好評発売中です。
BOXⅡは9月4日(金)より発売の予定となっています。

食客DVD公式サイト
http://mv.avex.jp/shokkyaku/
アマゾン
http://www.amazon.co.jp/dp/B00268H1Y2/
楽天
http://item.rakuten.co.jp/s-premium/avbf29261/

昨日一昨日と食客トークのこぼれ話を続けました。
こぼれ話というか、ほぼトークの焼き直し記事でもありますけどね。
せっかく調べたことなので、ブログでも披露させて頂きます。

冒頭の写真は束草の中央市場で撮影したスケトウダラ。

スケトウダラは食客の第1話に登場するのですが、
ずいぶんと印象的な扱われ方をしておりました。

主人公ソンチャンと、その師匠であるオ・ソングン総料理長が、
東海岸まで「釣り物のスケトウダラ」を探しに行くシーン。
スケトウダラなんて大衆魚なんだから、産地まで来る必要ないじゃん、
とぶつぶついうソンチャンを、総料理長がこんなセリフで叱ります。

「食材を探すことも料理人の義務だ!」

ある意味、ドラマの方向性を明確に示したセリフですよね。
ズワイガニのような高級食材ではなく、身近なスケトウダラをまず扱うことで、
食客は素材にこだわるんだ! という主張がより明確になります。

また、不平をいうソンチャンはドラマが進行していく中で、
自ら最高の素材を求め、全国を駆け巡ることになります。
第1話との比較においていえば、それは明らかな成長ですよね。
なかなかに考えられた第1話だったのではないかと思いました。

そして面白いのがセリフに登場するスケトウダラの呼び名。

韓国語でスケトウダラは「ミョンテ(明太)」といいますが、
生のスケトウダラを指して「センテ(生太)」と呼ぶこともあります。

09081002.jpg

ちなみにこれは今年2月にソウルで食べたセンテチゲ。
鍋に左上に頭、左下に尻尾がかすかに見え隠れしています。

総料理長が探しているのも、もちろん新鮮なセンテです。

また、それに加えて「釣り物の」という条件が加わります。
釣り物というのは、網でとったものでない、ということとイコール。
網でとると魚同士がぶつかって魚体が傷みやすくなるうえ、
魚自身に与えるストレスも大きくなってよくないとか。

その釣り物を表現して劇中では「ナクシテ」と呼ばれるのですが、
「ナクシ」という部分が「釣り」という単語に相当します。
「ミョンテ(明太)」が「センテ(生太)」に変わっていくように、
「テ(太)」を残し、前をどんどん入れ替えて呼び分けるんですね。

ちなみに網でとったスケトウダラは「クムルテ」。
「クムル」というのが網を意味します。

そして、もうひとつ印象的なセリフがありました。

ソンチャンと総料理長は苦労の末、釣り物を見つけるのですが、
シーズンからちょっと早いため、ずいぶんな値段になります。
それを指して周囲にいた漁業関係者のひとりが、

「こいつはミョンテじゃなくてクムテだ!」

という訳です。
クムテというのは「金太」と書いて値段が高いスケトウダラの意。
これだけの異名が、短い時間にどんどん出てくるのは見ものです。

ちなみに「金~」というのはスケトウダラだけでなく、
他の商品でも値段が高いことを指して使うことがあります。
先日紹介した三千浦の煮干も、

「これはミョルチ(煮干)じゃなくクムチ(金の煮干)だ!」

というセリフが劇中にありました。
個人的にも白菜の値段が高いシーズンに、

「これはキムチじゃなくクムチだ!」

というセリフを聞いたことがあります。
自分でもちょっと使ってみたい言い回しですよね。

09081005.jpg

ドラマの中には出てきませんが、
スケトウダラの別称はまだまだあります。

上の写真はスケトウダラを乾燥させた「プゴ(北魚)」。
スケトウダラが北方の海でよくとれることからの別名ですが、
場合によっては「乾太(コンテ)」という言い方もします。

乾燥させることによって保存が可能になるとともに、
熟成された旨味を楽しむことができます。

09081006.jpg

代表的な料理がプゴクク(プゴのスープ)ですね。
乾燥させて固くなった身を、棒で叩いて柔らかくし、
じっくり煮込むことでダシにもなり、また具にもなります。
2枚の写真はソウル、市庁裏の有名店にて撮影。

09081003.jpg

そのプゴを野外で自然乾燥すれば「ファンテ(黄太)」。
風が強く寒暖差の激しい、江原道の山奥で生産されます。
この写真は江原道鱗蹄郡龍垈里のファンテ村。

09081004.jpg

その近辺にあるファンテ専門店にも入りました。
プゴと同じくスープにするほか、薬味ダレを塗って焼いたりもします。
写真中央上にあるのがファンテグイ(黄太焼き)です。

09081007.jpg

乾燥だけでなく、冷凍も保存、流通のためには便利ですよね。
こちらは冷凍した明太、「トンテ(凍太)」と呼ばれています。

写真は済州島の西帰浦中央市場で撮影したもの。
おばちゃんがものすごい音を立てながら、年季の入った包丁で、
ガチガチのトンテを、ほとんど割るように切り分けておりました。

09081008.jpg

トンテはチゲにして食べることがほとんどですね。
こちらのトンテチゲは東新宿「南陽屋」で食べたもの。
韓国でも何度か食べていると思うのですが、
写真がうまく見つかりませんでした。

09081009.jpg

そのほか、スケトウダラの卵は明太子。
韓国語ではミョンナンジョッと呼ばれます。

09081010.jpg

チャンジャはスケトウダラの内臓の塩辛。
韓国語ではチャンナンジョッと名前が違うので注意。

ほかにも、

生干しにしたスケトウダラはコダリ。
スケトウダラの幼魚を干したものはノガリ。

など、呼び分け方は本当に多彩。
とれた季節や、産地などを呼び分ける表現もあり、
それだけ食文化に根付いた魚であることがわかります。

ちなみにこの第1話、3~4分ほどの短い時間の中に、
スケトウダラの呼び名が全部で5種類も出てきていました。
それぞれが字幕に表れるものではありませんが、
韓国語を勉強している人はぜひ探してみてください。

とりあえず食客トークのこぼれ話はこれにて終了。
ほかにも面白い話題がわんさか詰まっているのですが、
それはドラマを見ながら、ご自身で楽しんでください。
韓国料理好きな方なら、きっとハマれると思います。



Comments are closed.

 

 
 
previous next