マッコルリはいつ「マッコリ」になったのか(中編)。

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前編から続きます。

さて、2006年のマッコリ事情を前編で振り返りました。
2007年は冒頭の写真、緑茶マッコリから話を進めます。
いまでは普通に市販されていますけどね。
当時はまだ、かなり目新しい存在でした。

<2007年02月06日>
新大久保「釜山亭」で緑茶マッコルリ。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-396.html

この緑茶マッコリを出していたのは新大久保の「釜山亭」。
新大久保界隈でも老舗の部類に入る店でしたが、
残念なことにこの翌月、2007年3月で閉店してしまいました。

緑茶マッコリはこの店で作られていたオリジナル商品。
企業秘密の原料12種類を含む緑茶パウダーのようなものを、
マッコルリと混ぜ合わせて作っていた、とのことです。

それを飲んだ僕はこんな感想を書きました。

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韓国の緑茶ブームをヒントに得て開発、という感じでしょうか。
飲んでみると、普通のマッコルリとは違う不思議な甘さがありますね。
緑茶らしさはあるようなないような。でも色は間違いなく緑茶です。

市販のマッコルリにもピンク色のブドウマッコルリがありますしね。
灰色がかった黒豆マッコルリや、黄色いおこげマッコルリなど。
だんだんカラフルになっていくマッコルリの今後がさらに楽しみです。
余談ですが、「韓国広場」にカボチャマッコルリが出ていました。
カボチャの甘味も、確かにマッコルリと相性がよさそうですね。
どんな味なのか、そのうち試してみたいと思います。
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2006年に花開いたマッコリブームが加熱の一途。
ずいぶんいろいろな種類のマッコリが登場し始めました。
女性ウケするお酒、との認識が広まってきたのもこの頃でしょうね。
口当たりがよく甘味の強い、スイーツ系マッコリが揃い始めます。

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<2007年03月13日>
西新宿「てじまぅる新宿店」で麹醇堂の米夢。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-426.html

翌3月。「てじまぅる新宿店」で米夢を飲んだ日。
僕は幕張メッセで開催されたフーデックスに足を運んでいました。
フーデックスというのは「国際食品・飲料展」のことです。
僕は米夢を販売する麹醇堂から招待を受け、足を運んだ次第。
麹醇堂のブースに行くと、主力商品である百歳酒よりも、
新商品である米夢のほうが扱いが大きく驚きました。

そして、フーデックスに足を運んだのにはもうひとつ理由があり、
韓国から取材に来ていた、新聞記者さんと会う約束をしていました。
公私ともたいへんお世話になっている中央日報の料理記者さん。
フーデックスの取材とともに、こんな取材をしていかれました。

<2007年03月22日>
中央日報/これがマッコリ?日本の若い女性ら「ぞっこん」
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=85748&servcode=800&sectcode=820&p_no=&comment_gr=article_85748&pn=9&o=

日本でのマッコリブームが韓国にも伝わった瞬間。
もちろんこれより前に、ブームを報じたメディアがあるかもですけどね。
少なくとも、韓国の料理専門記者が日本でブームを確認し、
驚きをもって韓国で報じた、ということには間違いありません。

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<2007年07月12日>
歌舞伎町「幸永2号店」でホルモン三昧。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-556.html

昨日も載せた写真ですが、もう1度。
この頃の僕は、「虎マッコリ」にハマっておりました。
ドライで発泡感の強い玄人向けのマッコリ。
「虎退治」と称しつつ、ボトルを次々あけるのが好きでした。
この日の記事でも、

「最終的に虎3頭を仕留めました」

との記述がありますね。
3人で飲んでいて3頭ですから、まあ飲みすぎです。
でも、つい飲んでしまう魅力が虎にはあるのです。

中央日報の記事にもありましたが、
マッコリブームは女性をターゲットに加熱しました。

韓国料理は好きだけど、ストレートの焼酎は強い。
でもカクテルやサワーでなく、どうせなら韓国的なお酒が飲みたい。
ということからマッコリが一躍脚光を浴びるのですが、
たぶん、このあたりで女性向けに転換しすぎたのですね。

「ジュースみたいなマッコリばっかじゃん!」

という男性向け、そして酒好きな女性も含めてですね。
従来のマッコリよりも、はるかにドライな「虎マッコリ」が、
本格派として人気を集めたのがこの時期からです。

そして何より、この「虎マッコリ」は発酵を止めない「生」なんですよね。

韓国でもやっぱり人気が高いのは生のマッコリ。
加熱すれば発酵は止まるので、賞味期限を長く保てますが、
口の中でぷちぷち弾ける爽快感が失われてしまいます。
ほのかな酸味と柔らかな米の甘味が発泡感の中で交錯する、
マッコリの本当のうまさが認知されてきたことを示します。

ってか、僕自身もこの時期それに初めて気付いたんですけどね。

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<2007年08月09日>
新大久保「はるばん」で自家製マッコルリ。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-575.html

そして、ついにこの店が登場。

僕らが本格派を求めて「虎マッコリ」を消費している頃。
えーと、時系列が少し錯綜しますが、2007年5月9日のことです。
新大久保の「はるばん」という韓国料理店が酒造免許を取得。
日本で初めて、認可された自家製マッコリを提供し始めました。

それ以前も日本の酒造会社が作っていた例はありますけどね。
手作りのマッコリを出すために、免許を取った店というのはここが最初。
というか、その後も同じようなことをした店は聞いたことがないので、
ここが唯一、ということでよいのではないでしょうか。

ちなみにこの店をいち早く取り上げたのが読売新聞。

残念なことに元記事が消えてしまっているようなので、
2ちゃんねるの過去ログを紹介させて頂きます。

<2007年09月05日>
読売新聞/東京・新宿のコリアンタウンに地ビールならぬ「地マッコリ」登場、口コミで評判に
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1188922605/

なおこの頃、韓食日記は過去の日付で日記を書いていました。
いまはアップした日、イコール書いた日でよいのですが、
この頃はその店で食べた日、の日付でアップしています。

コメント欄でタイムリーな記事、として書かれているのは、
僕が1ヶ月遅れでブログを書いていたということです。
それも確か、読売新聞の記事が出た当日でしたかね。
1ヶ月前に「はるばん」で生マッコリを飲んでいながら、

「読売新聞に先を越された!」

という複雑な気持ちが僕の中にあったりなかったり。

なお、この「はるばん」自体は2008年6月で閉店。
その直後、マッコリ事業を独立させ「ソウル酒造」として再スタートします。
また、それとともに工場の一角を、「生マッコリ家」としてオープン。
現在進行形で、僕らが通っているのもこの店。
つい昨日も、「生マッコリ家」で飲んでおりましたね。

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<2007年09月15日>
書籍情報「マッコルリの旅」。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-584.html

いろいろなマッコリが登場して多士済々。
ブームはいよいよ本格化してマッコリ本も登場します。
ただ、この本は日本のではなく、韓国のマッコリ本ですけどね。
とはいえ日本のブームが出版を後押ししたのは事実でしょう。
著者は鄭銀淑さん。東洋経済新報社からの出版です。

アマゾン/マッコルリの旅
http://www.amazon.co.jp/dp/4492042849

この本はいまでも僕の愛読書の1冊であり、
韓国の地方に行くときは、必ず持参していきます。
地方の豊かなマッコリ事情がぎゅっと詰め込まれた傑作。
読むだけで地方を旅したような気分に浸れます。

この本を紹介しつつ、僕は……。

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最近の傾向を見ていても、マッコルリの銘柄を増やす店は多いです。
ある程度気の利いた韓国料理店なら、どこも4、5種類はありますね。
銘柄を選んでマッコルリを飲む時代。徐々に定着しつつあるようです。
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こんなことを書きました。
マッコリブームがごく一部の限られた現象ではなく、
広がったすそ野を持つ、大きな動きであることを指摘しています。

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<2007年11月01日>
『東京本気の韓国料理店』11月16日発売!
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-603.html

そして、その大きな動きというのはマッコリだけでなく、
韓国料理店そのものが、ダイナミックに躍進していたということです。
多種多様な韓国料理店が次々に生まれていたのがこの時期。
僕らは新大久保のみならず、赤坂、六本木、銀座でも取材を行い、
全部で180軒の韓国料理店を1冊にまとめて発表しました。

アマゾン/東京 本気の韓国料理店
http://www.amazon.co.jp/dp/4408029793/

マッコリブームは韓国料理ブームと表裏一体。

韓国料理店が増える中で、それぞれが他店との差別化を模索し、
そのツールとして、マッコリにも注目していたという事実があります。
アンテナの高い店ほど、時代の流れに敏感ですからね。

また個人的な印象なのですが、こういうアンテナの高さは、
新大久保のようなコリアンタウンよりも、それ以外の場所で見られました。
僕らが『東京 本気の韓国料理店』で伝えたかったのもその部分。
韓国料理店の多様性、そして日本的な韓国料理店の誕生。

「日本的な」という部分で多少誤解が発生しそうですが、
本物でないということではなく、発想がという意味です。

マッコリを銘柄で飲むということ自体、極めて日本的な発想。

それが受け入れられる土壌が出来たというのは、
そういった韓国料理店が生まれてきたというのとイコール。
マッコリだけの単一現象ではありません。

なお、その「日本的」うんぬんについては書ききれないので、
気になる方は、以前書いた「第3世代論」をご参照ください。
大阪との比較で書いているので、ちょいと混乱するかもですけどね。

http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-745.html
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-802.html

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<2007年12月01日>
有楽町「マッコリ酒家&韓国料理ぽど丸の内」で辛口マッコルリ。
http://koriume.blog43.fc2.com/blog-entry-629.html

9月にできたこの店は「マッコリ酒家」を店名に掲げました。
トッカルビ(叩いた牛カルビ)を看板料理とする珍しいお店で、
麻布にあった店の2号店として有楽町でオープンしました。

ここで僕が「辛口マッコルリ」とタイトルに書いているのは、
福島県の有賀醸造が造っている「マッコルリの華」という銘柄。
記事の中でも書いておりますが、「虎マッコリ」と同じ蔵元です。

そして僕はこの記事でこんなことを書きました。

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ここ最近、国産のマッコルリが少しずつ増えてきていますね。
新大久保「はるばん」のように自家醸造を自慢とする店もありますし、
マッコルリブームも新たなステップを刻もうとしています。
生マッコルリは2008年の新たなキーワードとなるでしょうね。
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2006年に他銘柄化、そしてブランド化が始まったマッコリブーム。
2007年に入って本格化し、今度は「生」が注目を集めます。
マッコリの種類が多様化したおかげで味へのこだわりが生まれ、
高い品質のマッコリを求められてきた証明でもあります。

「もっとうまいマッコリが飲みたい!」

そんな欲求が2008年以降どうなっていくのか。
それは後編として、明日また続きを書きたいと思います。

といいつつ、後編で終わらなかったらどうしましょうね。
前編、中編、後編、まとめ、とかになりそうな予感も少々。
本当に長くなって恐縮ですが、頑張って書きたいと思います。



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