2月5~7日に開催された「第2回ぐるぐるグルメ感謝ツアー」(三進トラベル)。
ずいぶん時間が経ってしまいましたが、ようやく少し落ち着いてきましたので後記をまとめたいと思います。ツアー期間中にも速報として少し書きましたが、それを改めて振り返るという形です。ご参加いただいた皆様ありがとうございました。
どこへ行くかは内緒(一応、ソウル近郊との案内はあり)、何を食べるかも内緒、何を見て何を体験するかも一切内緒という内緒づくめのミステリーツアー。
それでも俳優の黒田福美さんと、コリアン・フード・コラムニストのワタクシ八田靖史が全行程に同行し、全行程をプロデュースし、全行程で蘊蓄を語り、全力でおもてなしをするという部分に共鳴し、今回も34名の方々にご参加いただきました。2月という厳寒の時期にたいへんありがたいことです。
口が十字に裂けても旅行シーズンとは言いがたい中、それでも2月という日程をむしろ逆手に取って、最初に目指したのが……。
トリガイ!
韓国語ではセジョゲ(새조개)と言いますが、直訳すると鳥貝で日本語と同じ。日本だとほぼ通年で見かける寿司ネタですが、韓国では1~3月という限られた時期にしかありません。日本でも寿司店によく通う方なら、生トリガイの旬が短いのをご存じではないでしょうか。
そんな短い旬の中でも特に最盛期とされるのが、2月!
せっかく2月に韓国へ行くのだから、ぜひここはトリガイを目指そうではないか、というのがいちばん最初の企画会議で出た話でした。
そして、韓国でトリガイを食べるとなると、これはもう忠清南道洪城(ホンソン)郡の南塘港(ナムダンハン)が唯一にしてもっとも有名。そういった意味から昨年の11月に、ミステリーツアーの下見として洪城に向かいました。「出張報告7~8日目~来年2月ミステリーツアーの下見はどこにいるのでしょう?」なんて記事を書き、同じく洪城名物であるソモリクッパプ(牛の頭肉のスープ、소머리국밥)の写真を載せていたのはそういうことです。
ただ、実際は遠すぎて洪城までは行けなかったんですけどね。
下見まで行ったにもかかわらずいったんはボツになり、それでも諦めきれずにあちこち探し、ようやく見つけたのが仁川(インチョン)にある海鮮しゃぶしゃぶ専門店。冬の時期はトリガイをしゃぶしゃぶで提供し、夏は夏でハモのしゃぶしゃぶを提供するという店でした。
しかも、トリガイは南塘港から直送。これだ! ということで一転、初日の食事に組み込むことになりました。
新鮮なトリガイを野菜たっぷりの海鮮ダシにくぐらせて、ほんの少しの醤油ダレか、チョジャン(唐辛子酢味噌、초장)につけて食べれば海の香りが満開。トリガイって噛めば噛むほどに甘いんですよねぇ。
そして、何より重要なのがこのトリガイ、普段僕らが寿司ネタとして食べている足と呼ばれる部分だけでなく、ヒモや貝柱まで一緒についているということろに価値があるのです。
足だけでなく、ヒモや貝柱の部分も抜群に美味しい。
「ちょっと、日本ではこのヒモと貝柱をどこにやっているの!」
という怒号に近い賞賛の声が響いたのはたいへん印象的でした。
シメは残ったスープにキムチを加え、カルグクス(手打ちうどん、칼국수)、とスジェビ(すいとん、수제비)を投入。全行程を通じても、いちばん印象的だった料理にこのトリガイをあげた人はずいぶん多かったですね。幸先のよい一食になりました。
みなさんにもぜひ食べていただきたいですが、恒例としてツアーのお店は残念ながら公開しておりません。お店の名前を載せてしまうと他社にマネをされてしまう、ということで旅行社への配慮とご理解ください。個人的にご連絡いただければお伝えします。
ちなみにその店を教えてくれたのがこの方。
僕のアニキ分で仁川在住。某老舗アンコウ店(ぶっちぎり108料理P37参照)の2代目として全国の美食に精通している心強い方です。一方で地元仁川市の観光にも力を注いでおり、この日は僕らが来たということで仁川市役所の方とサプライズのプレゼントを届けてくださいました。
手に持っているのがそれ。
よーく見ると、かんざしらしきものが入っているのがわかりますかね。ドラマ「星から来たあなた」に登場するもののレプリカで、ロケ地のひとつ松島石山にて土産品として販売されています。
聞くところによると「星から来たあなた」の約3割程度が仁川にて撮影されたのだとか。ロケ地の数々は、ちょうどタイミングよく本日発売の「るるぶ韓国 ソウル・釜山・済州島’16」にも詳細に載っていますが、仁川ではそんなロケ地を観光地としてもプッシュしています。
「だからキミも見るように!」
と仁川のアニキの言われて、いま必死に見ていたりもするんですけどね(ようやく第4話まで見ました)。ドラマ好きな方、そして「星から来たあなた」好きな方は、ぜひ仁川のロケ地にも着目してみてください。
その後、バスをぶっ飛ばして目的地の利川(イチョン)へ。まず訪れたのは「海剛陶磁美術館」です。高麗青磁の復興に尽力した柳海剛(ユ・ヘガン)先生の収集した作品を中心に、韓国陶磁器の成り立ちなども解説した博物館で……。
「利川で陶磁器を見るならまずここから!」
という黒田福美さんの意図が込められています。
もともと、この「ぐるぐるグルメ」というキーワードは、黒田福美さんが「スッカラ」で連載している「韓国ぐるぐる」、そしてそこから派生したご著書「黒田福美の韓国ぐるぐる ソウル近郊6つの旅」から取ったものです。
そのご著書に掲載されているソウル近郊6つのうち、昨年訪れたのが坡州(パジュ)、江華島(カンファド)、仁川(インチョン)の3ヶ所。残るのが水原(スウォン)、利川(イチョン)、安城(アンソン)ということで、ミステリーツアーと言いつつも、このどこかを目指すというのは予想された方も多かったかもしれませんね。
さて、夕食はアヒル料理。
目的地のひとつが利川に決まったとき、同時に持ちあがったのが定番であるサルバプ(利川米の釜炊きごはんを中心とした定食、쌀밥)は止めようとの意見でした。
利川といえば陶磁器どころ。土がいい地域がたいてい米どころでもあるのは日本と同じ。利川も例外でなく、利川米の名前は全国に轟いており、朝鮮時代には王様に献上されたとの歴史もあります。それがゆえに、市内には釜炊きごはんの専門店が山ほどあるのですが、これ例外なくどのツアーでも食べるんですよね。過去のまんぷくツアーでも訪れました。
黒田さんの本から利川が想定される、するとサルバプが出てくる……という予想を裏切ろうじゃないかという、よくわからない心理戦が繰り広げられたと思ってください。
で、いろいろ探してみたところ、引っかかってきたのがアヒル料理。明確な理由までは発見できなかったのですが、利川ではアヒルの飼育が盛んで、アヒル料理の店もずいぶん多いのです。日本でも合鴨農法があるようにアヒルを使った農法があったりもするのですが、そのへんが引っかかってくるのかなとも。
ともあれ、地元の方に教えていただいた専門店に行き、オリグイ(アヒル肉の焼肉)と……。
コウタケ入りのオリハンバンペクスク(アヒルの韓方水炊き、오리한방백숙)。
コウタケは卸値で1kg16万ウォンもするという希少なキノコで、いちばん上に載っている黒いものがそれ。そこに高麗人参、ナツメ、鹿角(녹각)、ハリギリ(엄나무)、キバナオウギ(황기)といった韓方を加え、じっくり煮出したスープでアヒルを丸ごと水炊きにした料理です。
利川米で造ったマッコリも飲みながら……。
いちばん好評だったのは利川産のもち米でしょうか。ほかにアワビ入りの栄養粥も出ましたが、この蒸したてのもち米を水炊きの韓方スープに浸して食べる、というのが抜群にうまかったです。中にはお店の人に頼んでもち米を購入した方もいらしたほど。
アヒルという変化球でみなさんの意表をついたはずでしたが、結局は米の素晴らしさに行きつくという、利川の底力を見たような夜でした。
なお、利川は温泉地でもあり宿泊は温泉ホテル。初日から盛りだくさんな1日を終え、この記事も2日目以降の後記(中編)へと続きます。
そして、最後にいくつか直近のお知らせ。
<講座・イベント>
・3月14日(土)開催の講座「韓国南部の料理と早春の行事食を味わう」は詳細なメニューを発表しました。残席まだ余裕があります。
・3月28日(土)開催の第13回「オレカテ」(韓国関係の勉強会)は歴史がテーマです。第1部のみ残席6あります。お早目にお申込みください。
・4月18日(土)開催の第14回「オレカテ」は韓流12年の振り返りがテーマです。3月10日(火)22時より申し込み受付を開始します。
<お仕事>
・2月21日発売の雑誌「スッカラVol.95」から韓国地方料理の新連載が始まりました。
・3月6日(金)発売の「るるぶ韓国 ソウル・釜山・済州島’16」でグルメ記事などを担当しました。
・2月23日「のりこえねっと」というウェブ番組に出演しました。リンク先から全編を視聴できます。
上記、ご参加、お買い上げ、ご視聴宜しくお願いします!
三進トラベル「第2回ぐるぐるグルメ感謝ツアー」後記(前編)
三進トラベル「第2回ぐるぐるグルメ感謝ツアー」後記(中編)
三進トラベル「第2回ぐるぐるグルメ感謝ツアー」後記(後編)
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