3泊4日の「まんぷくツアー」は栄州(ヨンジュ)から安東(アンドン)、青松(チョンソン)と移動し……。
あ、そうそう。
なんて白々しくも前回と同じ流れを踏みましたが、自作の韓食百科事典「韓食ペディア」の新項目として「栄州市の料理」に続いて「青松郡の料理」も先日アップしました。中編で紹介したタッペクスク(丸鶏の水炊き、닭백숙)のより奥深い話などもご覧いただければと思います。
さて、旅の一行は青松での観光を経て、隣町の浦項(ポハン)へと移動。
浦項というと港町のイメージが強いですが、まず訪れたのは山間部。山あいに2000個の甕が並ぶ、「竹長然(チュッチャンヨン)」という伝統製法の味噌蔵を訪ねてきました。
この味噌蔵の詳細については……。
コリアうめーや!!第290号/プレミアムテンジャンの工場見学!!
https://www.kansyoku-life.com/2013/04/1513.html
というメルマガの記事をご覧いただきたいですね。
前日の「知礼芸術村」に負けないぐらいの山奥でしたが、古くも新しい韓国料理のトレンドをみなさんに体感していただけるのではと思って足を運びました。
あとはコレですね。
上記のメルマガ記事でも書きましたが、僕が見学をした際、近くにある社員の方のご自宅でお昼をご馳走になりました。それがもう本当に素晴らしく、これを食べることこそが慶尚北道の食文化を理解するいちばんの早道ではないかと思った次第。なので、かなりのワガママを言ってツアーの中に組み込んでもらいました。
竹長然の味噌や醤油、コチュジャンを使いつつ、自ら畑で育てた野菜を使い、近隣でとれる山菜や木の実、キノコなどを足して作られた家庭料理は、どんな飲食店でも食べられないであろうたいへん贅沢な食卓でした。
竹長然のみなさま、そして食事を作ってくださったご夫婦に大感謝です。
その後、慶州(キョンジュ)に少し足を踏み入れて良洞民俗村を見学。
と、ここまででようやく今回のツアーにおける「山編」が終わり、怒涛の「海編」へと向かいます。普段だったらもう少し山と海のバランスをよくするのですが、今回は3日目の午後までひたすら山ばかりという偏った日程でした。
というのも、慶尚北道は23市郡ある中で、海と接しているのはわずか5市郡。うちひとつは鬱陵郡という島嶼地域なので、ツアーに組み込むとすると蔚珍(ウルジン)、盈徳(ヨンドク)、浦項(ポハン)、慶州(キョンジュ)という4市郡しかありません。
満を持しての海編となった訳ですが、今回はこの中から浦項を選択。
慶州をかすめてまた浦項に戻り、向かったのは……。
九龍浦(クリョンポ)という港町。
お目当てはズワイガニです。
有名な盈徳テゲ(盈徳産のズワイガニ)を食べに行く選択肢もあったのですが、いろいろ調べてみると、現在ズワイガニの水揚げは浦項が54%を占めて全国一。盈徳のズワイガニも素晴らしく美味しかったのですが、浦項のほうが水揚げが多いぶんリーズナブルに味わえるとの情報もあり、悩みに悩んで今回は浦項を選択しました。
韓国でのズワイガニ解禁は11月1日。2日に初競りがあって、第1班が行ったのが4日でしたから、今シーズンの初物をいただいてきたことになります。
蒸したてのズワイガニをお店の方がハサミで食べやすいようにチョキチョキ。
4人前をドーンとひとまとめにして大皿で出てきました。
ひとりに対して甲羅もひとつ。1杯600~800gぐらいのズワイガニでしたが、4人で食べるには充分な量でしたね。ズワイガニ自体は日本で食べるのとさほど変わりませんが(三杯酢はないですが)、甲羅にごはんを放り込んでゴマ油をひとたらしすると途端に韓国風の味わいに。
カニということでみなさん無言になるかと思いきや、最後の夜とあって焼酎やマッコリが乱れ飛ぶ、超盛り上がりの大宴会となりました。
食後はライトアップされたPOSCO(浦項製鉄)の夜景も楽しみつつ。
翌朝。
前日の九龍浦港にもう1度向かい、今度はもうひとつの名物チョンボッチュク(アワビ粥、전복죽)を食べに行きました。
9月の下見でこれに感動し、あちこちで「今まで食べたアワビ粥の中でいちばん!」などと触れ回ったために、いろいろと尾ひれがついて地元の新聞では「韓国料理の中で浦項のアワビ粥が最高」と僕が語ったことになってもいたりしました。
まあ、韓国料理でいちばんかはさておき、そのぐらい美味しいアワビ粥でしたが……。
今回行って驚いたのが、天然のアワビを使用していたことですね。
いまの韓国は産地として有名な済州島(チェジュド)も含めて養殖物を使う店がほとんどで、天然物は希少であるうえにやたらと高価。浦項でもきっと養殖だろうと最初から思い込んでいたのですが、改めて店の人に聞いてみたところ、よほどないとき以外は浦項でとれた天然物を使うとのことでした。
すると、その証拠というべきか、第2班のときには店のすぐ前で作業をする海女さんたちを発見。実際にはアワビでなく、この日はウニをとっていたのですが、こうやってとれたアワビを使っているというのがよくわかりました。
なるほどと感心しつつも、むしろそのウニも食べたかったのですが……。
タイミングよく、この日の昼食がウニ丼。
機張(キジャン)名物のアンジャングバプ(バフンウニ丼、앙장구밥)がツアー最後の1食でした。
このウニ丼、今年の5月にも食べたのですが、まず気付いたのがそのときと明らかに見た目が違うこと。以前の記事を見ていただければわかると思いますが、5月のウニ丼は全体的に白っぽい色のウニが多いのに対し、今回は濃いオレンジ色のウニがほとんどです。
これはバフンウニ丼と言いつつ、2種類のウニを使っているからなのですが、機張では5~8月がムラサキウニの旬、11~2月までがバフンウニ丼の旬となっており、ちょうど旬に当たっているほうを多く使うということですね。
実際に食べてみると見た目だけでなく味も異なり、5月のウニ丼のほうがとろとろ具合で勝り、今回のウニ丼が味わいの濃厚さで上を行くという感じでした。
「どちらもむちゃくちゃ旨い!」
ことに違いはないのですが、もし2度行く余裕があるなら両方食べたほうがその魅力をよくつかめるのではないかと思います。
参加された皆様も、このウニ丼をベスト1に掲げた人が多かったですね。次点でズワイガニ、そしてアワビ粥と、竹長然の家庭料理あたりが全体に好評でした。山の食事が長かっただけに、海の食事がより鮮烈に感じられたというのもあるかもしれません。
食後は同じく機張の大辺港(テビョナン)でお買い物。
ここでは煮干し、昆布、ワカメ、海苔、するめなどの乾物全般が名物ということで、みなさん熱心に購入していらっしゃいました。
余裕があったら、名物であるミョルチフェ(カタクチイワシの刺身、멸치회)、ミョルチグイ(カタクチイワシの焼き魚、멸치구이)あたりもつまみたかったんですけどね。3~6月が旬ではありますが、秋にもカタクチイワシはとれるので、その違いを試してみたかったです。
ともあれ、これにて3泊4日の日程はすべて終了。
おかげさまで今回も盛りだくさんの旅となりました。ご参加いただいた皆様と、主催をしてくれた三進トラベルならびにスタッフの方々に大感謝です。
なお、これを見てムズムズしてきた人は、毎度の宣伝ですがコチラのお知らせをご覧ください。来年2月にも美味しいものたっぷり、見どころ満載のツアーを準備中しております。
そして、よく質問をいただくので少し補足しておくと、おひとり様でも問題なく参加いただけます。というか、今回のツアーでもおひとりの方が4割ぐらいいらっしゃいましたし、目的のはっきりしたツアーなので、すぐみなさん仲良くなって誰がおひとり参加だったのか途中でわからなくなるぐらいです。全体に女性が多いですが、男性のおひとり参加もいらっしゃいますし、ご夫婦で参加なさる方も多いです。
あとは、「そんなにたくさん食べられないから」という方も多いのですが、僕らもツアーの最初には必ず「無理をして食べ過ぎないようにしてください!」と強くお伝えしています。
タイトルが「まんぷくツアー」なので、できるだけいろいろなものを楽しんでいただけるよう努力はしますが、ご自身の適量で楽しんでいただくのが理想的です。幸いにも韓国は日本ほど料理を残すことがマナー違反とされません(むしろ不足がないよう多めに出すのが韓国的なマナー)。最後の1食まで、万全のコンディションで召し上がっていただけるようお願いをしています。
そのほか三進トラベルという会社は、ずいぶん細かな点で融通を利かせてくれますので、日程を前乗りしたり、ツアー後まで滞在を伸ばしたり、途中でツアーから離脱したり、逆に途中から参加したりなどはいずれも相談のうえ対応が可能です(どれも前例があります、ただし料金は追加になる場合があります)。
こういう参加の仕方でもいいかなと悩んだら、まずは問い合わせてみてください。
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