コリアうめーや!!第192号
<ごあいさつ>
3月になりました。
いよいよ春の訪れが間近です。
2月下旬のソウルに出かけてきましたが、
思いのほか暖かくて驚きました。
いっぱい着込んで仁川空港に降り立ったものの、
結局、すぐに1枚脱いで行動することに。
耳がちぎれるほどの寒さを覚悟していましたが、
日中はあたふた動くと汗ばむぐらいでした。
一転、帰国後の我が家は相変わらず寒いですけどね。
暖かい春はもうすぐと信じ、もう少し耐えようと思います。
さて、そんな帰国直後のテーマですが、
取材を通して感じたことを書きたいと思います。
これまでも何度か取材の裏話は書きましたが、
今回はちょっと意外な展開がありました。
コリアうめーや!!第192号。
新たな足音を聞く、スタートです。
<ウォン安バブルの韓国で取材の苦悩!!>
さて、困った。
僕はいま大変に苦悩している。
タイトルがすでに「取材の苦悩」なので、
ああ、その話なんだな、とみんなは想像するだろう。
確かに今回の取材はいつもより大変だった。
だが違う。
すでに終わった苦悩ではなく、
まさに現在進行形の苦悩が別にあるのだ。
ある程度、予想されたことだが……。
……胴回りの増量が著しい。
5泊6日の飲食店取材ですっかり身体が肥え、
出国前から比べて、体重が大幅に増加してしまった。
ベルトをすれば、ギチギチの締め付け具合に驚くし、
立っているときはまだしも、座るとベルトそのものが弾けそう。
急激に脂肪が増えたせいで、腹の皮が突っ張る感さえある。
いかん、いかん、いかん。
韓国に行って太るのはこれまでもあったが、
今回は明らかに食べすぎに、食べすぎを重ねた。
酒はほとんど飲まなかったので暴飲暴食ではないが、
暴食、過食、激食、爆食、猛食、乱食、狂食……。
その限りを尽くした気がする。
満腹の状態でも、とにかくなお食べ続け、
いまも胃袋が肥大気味になっている。
このメルマガを書きながらも、
ついつい柿の種を2袋食べてしまった。
週明けからは取材内容をまとめる作業に入る。
原稿と格闘しながら、減量にも取り組まねばならない。
しばらくは自分に厳しく生活していくとしよう。
と、個人的な前置きを踏まえつつ。
今回の取材。
飲食店ばかりを巡ったおかげで多くの発見があった。
その大半は仕事絡みなので、まだ公開することはできないが、
本筋とは関係ない部分で、裏話を披露してみたいと思う。
これまでもこのメルマガでは取材裏話を書いている。
第167号ではソウル他の取材、第176号では全州取材。
そこから当時の感想を少し抜粋してみよう。
(コリアうめーや!!第167号より)
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むしろ取材を進めていく中で驚きを感じたのは、
意外にも、きちんとした韓国の姿であった。
なにしろすべての取材が驚くほどスムーズ。
取材交渉は現地のコーディネート会社が行ったのだが、
アポイントから何から、すべてきちんと話が通っている。
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(コリアうめーや!!第176号より)
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今年4月に出かけた全州取材も順調だった。
指定された時間に、きちんと担当者が待っている。
取材にも慣れており、どこも協力的であった。
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いずれも対応のよさに驚いている。
しばらく前までは、アポイントの不備やドタキャン、
突然のスケジュール変更などが多かったためだ。
日本をはじめとする海外メディアからの取材が増え、
対応に慣れてきた、というのが大きいのだろう。
おかげで取材もしやすく、本当にありがたかった。
だが今回。
その感想が同じようにはいかなかった。
予想外の出来事があまりにもたくさん重なった。
いまの韓国がどのような状況にあるのか。
取材しての感想から分析してみたいと思う……。
と書いてみたが、ちょっと仰々しいな。
帰国後の興奮から「分析」などと知的な単語を使ったが、
せいぜい「考察」ぐらいの内容かもしれない。
僕の予想は食の流行でも当たらないことが多いので、
「戯言」程度に受け止めてもらってもよいだろう。
さて、ゴホン。
今回、驚いたのが取材拒否店の多さである。
これまでも観光客があまり行かない店などは、
取材を申し込んでも断られることが少なからずあった。
「国内メディアも含めて取材はすべて断っている」
「忙しい時期なので、取材への対応ができない」
「いまでも充分繁盛しているので広報の必要はない」
「リニューアルを予定しているので、その後にして欲しい」
店ごとに理由はさまざまだが、断られるのは仕方ない。
取材を希望する側としてはもちろん残念なことだが、
店の考えや事情を差し置いてまで、無理強いはできない。
だが、基本的には断られることのほうが少数で、
たいていは快く受けてもらうことが多かった。
それが1年でガラッと変わってしまった。
それもなぜここが、というような有名店で断られる。
たいていの取材では、有名店と穴場店を混ぜて組み立てるため、
多くの場合、穴場店のほうで断られることが多い。
有名店というのは過去に取材を受けているから有名店。
取材も日常茶飯事であり、断られることはまずない。
そんな店から断られるというのが不思議だったが、
実際にソウルへ行ってみて、その理由がよくわかった。
あまりにも日本メディアの取材が多いのだ。
今回行った店は20軒前後だったが、
その中ですら、あちこちで取材が重なった。
<事例1>
15時のアポイントでA店に行くと、
同時間に別の取材陣もアポイントを取っていて来店。
店側は日本からの取材ということで同じ話だと思っており、
ふたつの取材陣がバッティングしてしまった。
<事例2>
18時のアポイントでB店に行くと、
すでに14時に来たではないか、と担当者に驚かれる。
話を聞いてみると、別の日本メディアと判明。
<事例3>
C店を訪問する前に確認の電話を入れると、
取材の話は聞いていないと断られる。
アポイントを担当した現地の会社に確認をしてもらったところ、
別の日本メディアが前々日に取材で来て、そちらと勘違いされていた。
店側としては取材依頼に対し、きちんと対応したつもりだったが、
そのために、我々の取材をアポなしと誤解してしまった。
<事例4>
D店にアポイントを入れようとすると、
すでに連絡を受けている、と店側から言われる。
確認してみると、まったく別の日本メディアと誤解されていた。
僕らが回った店だけでこの状態なので、
おそらくソウル中で似たようなことが起こっているだろう。
いまのソウルはちょっとした混乱状態なのだ。
こうした状況が生まれたのはウォン安の影響が大きい。
昨年から続く、ウォン安の影響で観光客が急増。
それに伴い、新聞、雑誌、ネット媒体などに需要が生まれ、
それぞれが韓国特集を組んで取材に訪れている。
その多くは韓国旅行を専門に扱う媒体ではないため、
どうしてもその立ち位置がビギナー寄りに偏る。
結果、一部の有名店に取材が集中しているのだ。
そしてまたメディアに登場したことによって、
読んだ観光客も、その店に殺到することになる。
本来なら商売繁盛でよいことにも思えるが、
店のキャパシティを超える事態にも発展しているようだ。
「取材はありがたいが増えすぎて今は困る」
そんな理由から取材を断る店が増えているのだろう。
それを踏まえて。
僕はいまひとつの確信を得ている。
過去から続く日韓関係の時系列において、
いまのこの時期は、ひとつの時代を作るだろうということ。
将来、この2000年代を振り返ったときに、
・2008~9年のウォン安ブーム
は時代を区切るひとつのキーワードになるはずだ。
僕らが日韓関係を語る際によく用いる、
「韓流の前と後では……」
「サッカーW杯の日韓共催を前後して……」
「IMF(アジア通貨危機)の頃……」
「ソウル五輪よりも前に……」
といったフレーズに匹敵する時代性がある。
それは現在、韓国を訪れている人たちの多くがビギナーであり、
韓国という国と、いままさに出会っているからだ。
その証拠に、いまの韓国では繁華街の明洞が大混雑。
僕も足を踏み入れてみたが、過去にないほど日本人が多い。
みな地図を片手に、メインストリートを歩いており、
リピーターの旅行とは、また違った姿がそこにはあった。
これまで韓国人気を支えたの韓流世代ではなく、
またそれ以前から、韓国にハマった人たちでもなく。
ウォン安効果で新たな世代が韓国を訪れている。
それは、
「ソウルの景色が変わった」
と思えるぐらいの衝撃であった。
ここ数年、韓流以前、以後という区分があったように、
今後は、ウォン安以前、以後という区分が生まれるだろう。
そんな予感が、明洞の町並みにはあった。
そしてこのブームからは、さらなる展開も予想される。
今回のウォン安ブームをきっかけとして韓国にハマり、
ビギナーからリピーターに変わる人は少なからずいるだろう。
それは再度、韓国を訪れるだけではない。
現地で食べた料理の感動を日本でも求めたり、
次の訪韓に向けて、雑誌やウェブで情報を収集したり。
あるいは韓国語を勉強する人もいるであろう。
ハマったときに必要とされる情報は過去と比べ、
いまや格段に研ぎ澄まされた状態で用意されている。
このことから考えるに……。
日韓関係はさらに盛り上がる要素がある。
そして……。
「僕の仕事ももう少しあるかもしれない」
「韓流以降、いつ仕事がなくなるかヒヤヒヤしてたけど」
「もうあと1~2年くらいは大丈夫かもしれないな」
「いやあ、ラッキー、ラッキー」
という皮算用も成り立つ。
本当に仕事が続くかどうかは、もちろん不確定だが、
その光明は見えたという意味でも有意義な取材だった。
さて、きちんと理論立てて書いた割には、
身勝手な結論になったので、エピソードを追加。
取材をしつつ印象的な出来事があったので、
それを書いて、締めくくりとしよう。
取材先は書かないが、超のつく高級有名店。
そこで今回、僕がひとつ大きなミスを犯した。
それはアポイントを入れる前段階での失敗。
きちんと約束の時間に僕らは到着したのだが、
担当者が出てくると、その話が通っていなかった。
アポなしで押しかけた、迷惑な取材陣と誤解されかけたが、
こちらの事情をしっかり伝え確認してもらう。
取材の話が現場に通っていないことはままある話。
先方が確認している間、僕らはしばし別室で待たされ、
「有名店なのに対応がなっていないな」
と多少不愉快に思っていた。
だが、なっていないのはこちらのほうだった。
もろもろ確認をした結果、僕は連絡をしたと思っていたが、
実は連絡先を間違えており、支店に連絡が行っていた。
取材許可を出したのは支店で、訪れたのは本店。
それではアポイントが通っているはずがない。
僕は真っ青になったが、逆に店の人の対応は素早かった。
「○○店と連絡が取れ、アポイントが確認されました」
「いまから移動はできないでしょうから当店で引き継ぎます」
「準備をさせて頂きますので、別室にどうぞ」
来店客の邪魔にならない個室に通されるとともに、
店の責任者が出てきて、取材の便宜を図ってくれた。
アポイントが確認されるまでのタイムロスを含めても、
充分過ぎるほどスムーズに予定の取材を終了した。
その対応はさすが高級店といえるものだった。
あまりの凡ミスだけに僕はおおいに反省するとともに、
この高級店に対し、深く感謝をしなければならない。
自腹ではちょっと行きにくいぐらいの高級店だが、
いつか収入が増えたら、必ず客として行きたいと思う。
その店の料理とサービスを真の意味で再度味わい、
その感動もまた、恩返しの意味でしっかりと伝えるのだ。
いつかその日が来るまで。
ウォン安ブームの恩恵などと浮かれずに、
自分の仕事を一生懸命、全うしたいと思う。
<お知らせ>
仕事が忙しくHPの更新ができません。
落ち着いたら、まとめて更新したいと思います。
http://www.koparis.com/~hatta/
<八田氏の独り言>
韓国好きの世界に1年生がやってきた。
そんな想像をしてしまう春だったりします。
コリアうめーや!!第192号
2009年3月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com