コリアうめーや!!第151号
<ごあいさつ>
6月15日になりました。
僕の住む東京もいよいよ梅雨入りしたそうです。
ここ最近は、真夏のような暑い日が続いたり、
かと思えば、突然スコールのような大雨が降ったり。
なんとも不安定な天気で少し心配ですが、
その一方で、もうすぐ夏が来るとのワクワク感もあります。
韓国でも夏の料理が目立ち始める時期ですね。
冷麺、パッピンス(カキ氷)などなど。
夏生まれの僕には、ぐっと気持ちが沸き立つ季節です。
さて、今号のメルマガですが、
6月初旬に行われた、あるイベントの話がテーマです。
暑い夏に負けないくらいの盛り上がり。
そのひとコマを切り取って紹介したいと思います。
第148号で紹介した、岐阜の方々も登場。
コリアうめーや!!第151号。
軽快な歌のリズムに乗って、スタートです。
<各務原キムチ鍋がB級グルメ王座に挑戦!!>
♪カ・カ・ミ・ガ・ハ・ラ!
♪カ・カ・ミ・ガ・ハ・ラ!
♪カ・カ・ミ・ガ・ハ・ラ・キムチ!
というフレーズ、メロディが頭から離れない。
何かの弾みで歌のワンフレーズが頭に流れ、
延々と同じ部分だけがエンドレスリピート。
そんな経験は誰しもが持つものではないかと思う。
ひどいときなどは曖昧なまま歌が流れ、
♪カ・カ・ミ・フ・フ・フ!
♪カ・カ・ミ・フ・フ・フ!
♪カ・カ・ミ・フ・フ・フ・フフフン!
と、途中から鼻歌になっていたりもする。
自分でも気持ち悪いことこの上ないのだが、
わざわざ調べるほどでもなく、結局は放置されるのが常。
いつかは時間の経過とともに消えていく。
ここしばらく僕の頭を悩ませているこの歌は、
岐阜県各務原市がプロデュースするご当地ソング。
「キムチの気持ち」の冒頭フレーズである。
ちなみに「各務原市」というのが実に読みにくいが、
「カクムハラ」ではなく「カカミガハラ」と読む。
歌の冒頭でこの都市名を連呼しているのは、
難しい読みを、耳から覚えてもらおうとのことだろう。
そして、最後にキムチ! がついているように、
各務原市は現在、キムチの町をアピールしている。
2004年に「キムチ日本一の都市研究会」を立ち上げ、
キムチによる都市(まち)おこしを始めたのだ。
また、各務原市は韓国の春川市と姉妹都市でもある。
春川市はドラマ『冬のソナタ』のロケ地として有名。
市内には「冬ソナロード」と呼ばれる並木道も作られ、
韓国ファンの間ではちょっとした話題の町になっている。
各務原キムチは、そんな日韓友好の象徴でもあるので、
春川市特産の松の実と、各務原市特産のニンジンを必ず使う。
白菜キムチが主流だが、大根、キュウリのほか、
菊芋やヤーコンといった土地の野菜を使うのも特徴的だ。
同様に各務原キムチを使った料理も多数開発。
キムチ焼きそば、キムチオムライス、キムチたこ焼き、
キムチラーメン、キムチドック、キムチいなり、などなど。
そして、各務原市が主催する各種のイベントでは、
各務原キムチをふんだんに入れたキムチ鍋がふるまわれる。
これを「各務原キムチ鍋」の名で、ご当地料理化を進めているのだ。
こうした努力は着実に実を結びつつあり、
最近は、大手企業も協力に乗り出している。
各務原市内に工場を持つカルビーは、
「ポテトチップス各務原キムチ味」を開発。
今年3月から、東海地区限定で販売を始めた。
キリンビールも各務原キムチとのコラボ広告を製作。
「各務原キムチにキリンビール!!」
「岐阜に感謝、岐阜に乾杯。」
というキャッチコピーのポスターを大量に作り、
市内の各地に貼ってPRに一役かっている。
そして、この6月。
各務原キムチは新たなアピールの場へと挑戦。
6月2日、3日と開催された「B-1グランプリ」に、
各務原キムチ鍋をひっさげて初参加を果たしたのだ。
「B-1グランプリ」のBは「B級グルメ」のB。
日本全国に散らばるご当地B級グルメが集結し、
その魅力を競い合うという、地域アピールも兼ねた祭典である。
昨年、青森県八戸市で第1回が開催され、10地域が参加。
今年は第1回に優勝した静岡県富士宮市に会場を移し、
前回を大きく上回る21地域が参加することになった。
「そいつは面白そうなイベントじゃないか!」
僕は第1回開催時からこの祭典を興味深く見ていたが、
さすがに青森県までは足が伸びず、観戦しにいくのを断念した。
だが、静岡県での開催となれば気分的にも近い。
しかも各務原市が、キムチ鍋で勝負するというのであれば、
韓国料理を愛する身としても、ぜひ応援しに行きたい。
ということで、6月2日の早朝。
僕は朝5時起きで富士宮市に向かった。
東京駅から7時23分発「こだま563号」に乗り、
三島駅で東海道線、富士駅で身延線に乗り換え、富士宮駅下車。
会場に到着すると、すでに10時半近くになっており、
場内は大勢の人であふれかえっていた。
会場の入口に到着した僕は、
「な、なんだこれ……」
と絶句して、そのまま立ち尽くす。
会場内はおろか、会場の外まで猛烈に人だらけ。
入口のあたりにプラカードを持った人がいると思ったら、
それは行列の最後尾を示す案内係であった。
各地域ごとのブースはいずれも大人気で大行列。
会場内を蛇行しつつ、スペースを埋め尽くしている。
まずは各務原キムチ鍋から食べねばと思ったが、
歩くこともできないし、動くこともままならない。
しかも各務原キムチ鍋のブースは会場の最深部。
行列をかきわけながら、やっとの思いでたどり着くと、
そこに待っていたのは、またも行列であった。
ブースの中では多くの人が調理に没頭している。
巨大な鍋の前で、必死に作業をする人たちの中には、
第148号の岐阜講演時に紹介したT氏の顔もあった。
挨拶をしようとも思ったが、断念して行列に並ぶ。
「ここは何分くらい待ちそうですか?」
「うーん、15分くらいですかね」
各務原キムチ鍋の最後尾プレートを持った人が、
行列にひるんだらしき来場者に答えている。
僕はそれを横耳で聞きながら、
「15分待ちとは各務原キムチ鍋もやるじゃないか」
と密かに喜んでいたのだが、
すぐにその喜びは、マヌケな誤解とわかった。
その後に並んだ駒ヶ根のソースかつ丼は1時間半待ち。
高砂にくてん、浜松餃子、富良野オムカレーなど、
1時間以上待ちの料理がざらにあった。
場内では、どこの行列が速いという情報が飛び交っており、
それを耳にしている限りでは、
「各務原キムチ鍋はすぐ買える!」
という評判が大半を占めていた。
ただ、各務原キムチ鍋の名誉のために書いておくと、
行列の長さ、待ち時間は必ずしも人気だけに比例しない。
調理に時間のかかる料理はそのぶん待ち時間が増える。
鍋料理は大勢の客をさばくのに向いた料理であり、
そのぶん行列が短かったとも言えるのだ。
事実、各務原キムチ鍋は午後2時の時点で完売。
他の料理と比べても、いち早く予定量を売り上げた。
まずはと並んだ僕の判断も大正解だったのである。
各務原キムチ鍋の値段は1杯200円。
値段は安いが、そのぶん量もほどほどに抑えてある。
それはどこのブースも同じで、たくさんの種類を食べたい、
という来場者のニーズに応えてそうなっているのだ。
だが、全体の量は少なくとも具は実に豪華。
まずは主役ともいうべき各務原キムチがたっぷり。
キムチ鍋に欠かせない豚バラ肉に、長ネギ、エノキ、豆腐。
嬉しいことにインスタントラーメンまで入っていた。
韓国にはプデチゲと呼ばれる辛い鍋料理があって、
ハムやソーセージ、インスタントラーメンを入れて作る。
洋風の食材が、韓国的な辛い味と不思議によく合う料理で、
そんなプデチゲ的アレンジを施しているのだった。
ちょうど暑い日だっただけに、ピリ辛の味付けは逆に爽快。
まわりの反応を見ても、ずいぶんと好評のようだった。
最終的に僕が食べた料理は全部で6品。
・各務原キムチ鍋(岐阜県各務原市)
・駒ヶ根ソースかつ丼(長野県駒ヶ根市)
・行田ゼリーフライ(埼玉県行田市)
・静岡おでん(静岡県静岡市)
・富士宮焼きそば(静岡県富士宮市)
・八戸せんべい汁(青森県八戸市)
ほかにもいろいろと食べたい料理はあったが、
行列に断念したり、早々に売り切れたり。
あるいは食べているうちに、おなかが膨れたりもした。
いずれも印象的な料理ばかりだったが、
個人的には、八戸せんべい汁がよかった。
豚汁風の料理に小麦粉で作ったせんべいが入っている。
「せんべいなのにアルデンテ」というキャッチコピーの通り、
すいとんにも似たもっちり感があって美味しい。
具だくさんで味噌仕立てのあっさりした汁物料理だ。
また、行田のゼリーフライも印象的だった。
長いこと、食べたいと思っていた念願の料理。
ゼリーフライといっても、ゼリーが入るのではなく、
銭型のフライ、銭フライがなまってゼリーフライになった。
おからとジャガイモを練って揚げたコロッケ風の料理で、
ソースにどぼんと浸して食べる、素朴なオヤツだ。
ご当地料理の富士宮焼きそばはモチモチの食感が美味。
魚粉をかけて食べる静岡オデンに、卵でとじないソースかつ丼。
いずれもご当地ならではの、珍しい味わいであった。
熱戦が繰り広げられた2日間は好評のままに終了。
最終的には来場者による投票で、グランプリが確定した。
優勝は前年に引き続き、富士宮焼きそばが獲得。
上位の順位は以下のようになった。
第1位:富士宮やきそば(静岡県富士宮市)
第2位:八戸せんべい汁(青森県八戸市)
第3位:静岡おでん(静岡県静岡市)
第4位:すその水ギョーザ(静岡県裾野市)
第5位:厚木シロコロ・ホルモン(神奈川県厚木市)
なお、期待された各務原キムチ鍋の最終順位は14位。
一時は8位にまで食い込んだそうだが、早々の売り切れが響いた。
初回にしては善戦した、という感じだろうか。
次回はまた来年、福岡県久留米市で開催予定。
各務原キムチ鍋は来年もチャレンジすることだろう。
福岡県は韓国とも近く、いくらか地の利があるかもしれない。
さらなる躍進を、期待したいと思う。
来年は福岡県久留米市。久留米市……。
んー、応援に行けるかなぁ……。
<お知らせ>
各務原キムチ鍋の写真がホームページで見られます。
よかったらのぞいてみてください。
http://www.koparis.com/~hatta/
<八田氏の独り言>
次回は新大久保を代表するB級グルメとして、
豚焼肉あたりにも出品して欲しいものです。
コリアうめーや!!第151号
2007年6月15日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com