コリアうめーや!!第32号
<ごあいさつ>
1ヶ月にわたるW杯が終了しました。
つい先ほど決勝戦を観戦し、このごあいさつを書いています。
21世紀最初のW杯はブラジルが劇的な優勝。
本当に最後の最後まで楽しませてもらいました。
個人的にも充実した1ヶ月だったと思います。
日本、韓国両チームの躍進も感動的でした。
特に韓国の4位は歴史に残る大きな成果でしょう。
決勝リーグの試合は韓国料理店にて観戦しておりましたが、
それはそれはものすごい盛り上がりでした。
日本の韓国料理店でそんな有様ですから、
現地、韓国ではとんでもない興奮に包まれたことでしょう。
後々まで語り継げる、そんな大会になったと思います。
韓国の活躍は日本でも大きく報道されました。
共催国として韓国という国が多くの日本人の目に触れたことでしょう。
祭は終了しましたが、大事なのはこれからです。
両国がさらに近づく為にもW杯の成果を活かしていければと思います。
さて、コリアうめーや!!第32号。
全号は興奮の中で小さい小さいことを地味に地味に書きましたが、
今回もスポットライトは脇役に当てられています。
ネズミの穴にも陽の当たる日が来る。
脇役、檜舞台のスタートです。
<パンチャンが好きだ!!>
パンチャンが好きだ。
パンチャンを愛してやまない。
パンチャンにこそ食事の喜びがあるといっても過言ではない。
食卓にずらりと並ぶパンチャン。
見ただけで顔中がヨダレになって溶けていきそうだ。
韓国料理にはメインメニューのほかに必ずパンチャンが何品かついてくる。
パンチャンを訳すと、おかず、副食、サイドメニューなどとなろうか。
具体的にはキムチやナムル、こまごまとした煮物などのことだ。
韓国料理にはテーブルいっぱいに料理が出てくるという喜びがある。
韓国に初めて行った人は例外なくその量に驚く。
「うわー、こんなにいっぱい出てくるんだあ!!」
そこにちょっと韓国に詳しい人がいれば、
「韓国には、お膳の足が折れるくらいたくさんの食べ物を乗せるといってだね、食べきれ
ないほど料理を出すのがマナーなんだね。」
というウンチクが飛び出すことになる。
また「このおかずは全部タダなんだよね。」というセリフも頻出する。
するとちょっと韓国に詳しい人は、
「おいしかったら、おかわりしてもいいんだよ。」
と述べることに決まっている。
なぜか知らないが、必ずそういう会話になる。
八田氏も今まで30回くらいこういう会話をした。
そういった決まり文句はすべて置いといて、パンチャンそのものの話をしよう。
韓国の食堂に入り、キムチチゲなり石焼きビビンバなりを注文する。
するとやがてキムチチゲなり石焼きビビンバなりはやってくるが、
今回は所詮「なり」扱いなので隅の方に引っ込んでいてもらうこととする。
問題は同時にやってきたパンチャンの方である。
アジュンマの手によって食卓にトントンとパンチャンの皿が乗せられていく。
このとき大事なのは「パンチャンが何品くるか」ということだ。
喜びのパンチャンは店によって多かったり少なかったりする。
固唾を飲んで見つめていると、この店のパンチャンはなんと4品だった。
白菜キムチ、大根のキムチ、ナスの煮物、黒豆の4品。
がっくりする瞬間である。たった4品。
この店のパンチャンは4品しかない。店の選択は大間違いだった。
もう2度と来ない。憤慨しながらキムチチゲなり石焼きビビンバなりを食べて店を出る。
俺の3000ウォンを返せ。道の小石を蹴っ飛ばしながら、ぼそっとつぶやく。
それとは反対にパンチャンが8品も出てきたという場合もある。
この店は自分という客に対し、8品ものパンチャンで大歓迎してくれているのだ。
白菜キムチ、キュウリのキムチ、焼き魚、ジャガイモの煮物、
モヤシのナムル、セリのナムル、ゴマの葉を漬けたもの、韓国ノリ。
うひょうと飛びあがる瞬間である。豪華8品。
この店はアタリだった。もうメインメニューなんか目に入らない。
くー、焼き魚が泣かせるねえ。しかも高級魚のイシモチじゃないですか。
ゴマの葉を漬けたやつ。これがあったらごはん何杯でもおかわりできるね。
モヤシのナムルも大好きなんだよね。それとノリね。韓国ノリ。
地方に行くとパンチャンの数はさらに増えるらしい。
全羅道という地方に暮らしていた友人は、ソウルはパンチャンが少ないと嘆いていた。
8品ごときで喜んでいる場合ではないらしい。
1回の食事に対するパンチャンは2ケタにのぼるとのことだ。
しかし、ここで注意しなければならないのは、
パンチャンはただ多ければよいというものでもないということだ。
パンチャンにおける2つめの問題。
「パンチャンとして何が出てくるか」も大事なのだ。
季節のもの。高価なもの。自分の大好物。
これらがズラリと並んだときは気絶しそうになるほど嬉しい。
個人的には白飯のおかずになるものが好きだ。
ちなみにさきほどの8品は八田氏の好物だけを挙げてみた。
唐辛子や醤油などの調味料に漬け込んだゴマの葉。
ゴマ油の香りにほんのり塩味のついた韓国ノリ。
漬けたてのシャキッとした白菜キムチ。
これらでごはんをくるりと巻いて食べると、ごはんは何杯あっても足らない。
もうメインのメニューなんかいらない。
パンチャンでごはんをお腹いっぱい食べたい。
そんな気持ちにさえなってくる。
ただ、大好物のパンチャンだけが並ぶということはめったにない。
パンチャンのラインナップは同じ店でも日によって代わり、選ぶことも出来ない。
喜びのパンチャンが来るかどうかは、まったくの運であり、
それゆえに好物がならんだときの喜びは大きい。
食堂のアジュンマが食卓に好物のパンチャンを次々に乗せていく。
ゴマの葉漬け、韓国ノリ、白菜キムチ……。
おおっ今日のパンチャンは大当たりだ。
1皿乗るごとに気分が高揚して、踊りだしそうになる。
むひょ。ゴマの葉と韓国ノリでごはん2杯はかたいな。
おおっ焼き魚。キュウリのキムチ。いいねえいいねえ、ごはん3杯いけるかな。
食卓の下でガッツポーズを作り、口をきゅっと結んでヨダレをこらえる。
アジュンマが最後にドンとメインのメニューを乗せ、さあ食べるぞ……。
と、いうところで重大なことに気付く。
「ああっ、俺。石焼きビビンバ、頼んだんだった……。」
パンチャンの不幸。
それはビビンバを頼んだときに白飯むけのパンチャンが出てくることである。
<お知らせ>
色々なパンチャンの写真がホームページで見られます。
コリアうめーや!!フォトライブラリーもオープン。
よかったらのぞいてみてください。
http://www.koparis.com/~hatta/
<八田氏の独り言>
さて、野球を見よう。
コリアうめーや!!第32号
2002年7月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com