コリアうめーや!!第288号
<ごあいさつ>
3月になりました。
まだまだ寒い日は続いておりますが、
日中はほっこりと暖かい日もあるようです。
春の訪れ、なんてわざわざ文章にすると、
ちょっと気恥ずかしいですけどね。
心機一転をはかるにはいい季節です。
今月下旬には今年初めての韓国出張があり、
春の済州島を満喫してくる予定。
それまでは仕事を前倒して頑張らねばなりません。
さて、そんな中、今号のテーマですが、
韓国からグルメなお客様がやってきました。
その方にまつわるもろもろのエピソードを、
プレミアムな情報とともにお届けします。
コリアうめーや!!第288号。
出会いは7年前の、スタートです。
<プレミアムテンジャンの可能性!!>
元新聞記者の兄さんが韓国からやって来た。
ここでいう兄さんとは韓国語のヒョンであり、
血のつながった兄弟を指す訳ではない。
親しい先輩、ぐらいに考えて頂ければ幸いである。
東京、赤坂で久々の再開を果たし、
握手とともに、それぞれ近況を尋ねた。
「カフェを始められたんですよね」
実際に顔を合わせるのは数年ぶりだったが、
Facebookなどを通じて、その情報は知っていた。
だが、
「いや、それはもう辞めたんだ」
という返事は予想外だった。
長年務めた新聞社を辞め、独立したと思ったら、
もうカフェからは手を引いて新しい仕事をしている。
このあたりのフットワークはやはり韓国人だ。
「いまはこんな仕事をしている」
差し出した名刺にはマーケティング担当理事の文字。
韓国での理事は、日本の取締役に相当するのでなかなか偉い。
どうやらどこぞの会社にまた勤め始めたようだ。
「なんの会社ですか?」
「味噌だ!」
「味噌?」
「テンジャン(韓国の在来味噌)のことね」
「いや、それはわかりますが」
という会話を前置きとしつつ、
まずは兄さんの人物像を少し語る。
幸いなことに、いまちょっと検索してみたら、
出会ったときの話からなにから、すべて出てきた。
ブログやメルマガなど、何度もネタにさせて頂いている。
いま見ると、面白おかしく脚色している部分もあり、
本人が読むことを考えると心配だが、まあいい。
読んでも広い心で許してくれることと期待しよう。
ネットに転がっているさまざまな情報をまとめつつ、
時系列に沿って、兄さんとの関係を紹介していく。
韓食日記/友人宅でトッククを食べました。
http://bit.ly/YDeiC4
初めて会ったのは2006年の旧正月。
当時、日本に住んでいた兄さん宅にお邪魔し、
トックッ(雑煮)を振る舞って頂いた。
このとき食べたカジャミシッケ(カレイの馴れ寿司)と、
ミョンテチム(干しタラの煮物)の味が忘れられない。
また、江原道地方のローカル料理であるこれらを、
該博な知識で解説してもらったのもよく覚えている。
兄さんを紹介してくれた料理研究家の先生が、
「韓国でいちばんのグルメ記者だからね」
「あなたのためになるから、兄さんとして慕いなさい」
「いま電話するから、あ、もしもし!」
と問答無用で紹介してくれたのも納得がいった。
その後、日本にいる間、もんじゃ焼きを食べに行ったり、
ウナギ居酒屋に繰り出したりと、あちこちで遊んで頂いた。
また韓国に戻ってからも、僕が出張で出かけたときなど、
連絡をしては、珍しいものを御馳走して頂いている。
韓食日記/浦項名物のクァメギを食べる。
http://bit.ly/Vg0zp7
第173号/酒乱の夜はキムチチゲから始まるのだ!!
http://bit.ly/Z4LynY
余談だが、マッコリの新しい飲み方として、
焼酎&サイダー割りを教えてくれたのもこの人。
マクソサ、ソマクサと呼ばれる飲み方だが、
僕の周囲でこれを試し、泥酔地獄に沈没した人は多い。
恨みに思う人は、僕でなく兄さんを恨んで欲しい。
また、韓国料理のあれこれを教えてくれる一方、
新聞記者として、僕のことを取り上げてくれることもあった。
ちょうど、韓国に戻った頃のタイミングで、
僕の「魅力探求!韓国料理」という本が出た。
それを記事にしたのがこれ。
韓国料理大好きの日本人、日本人向け韓国料理書を出版
http://bit.ly/Z4LxAk
2007年の記事が残っているのも驚きだが、
日本語に翻訳された状態で見ることができるのもすごい。
もとはネットの記事ではなく、新聞紙面に出たのだが、
僕のアホ顔がどーんと迫りくる大きな扱いだった。
あるいは、日本のマッコリブームを取材する際、
僕のコメントを載せてくれたこともあった。
これがマッコリ?日本の若い女性ら「ぞっこん」
http://bit.ly/13s9wQ5
これも2007年3月の記事だが、
日本のマッコリブームを伝えるものとしてはかなり早い。
さすがはグルメ記者といった鋭さが窺える。
……といったところまでが兄さんの紹介。
長くはなったが、僕との関係も含めつつ、
食への造詣が深い人、というのが伝われば幸いだ。
そんな人が、テンジャン(味噌)に目をつけた。
ここからが本題である。
兄さんのくれた名刺を見ると会社名は、
「竹長然(チュッチャンヨン)」と書かれている。
本社の住所は慶尚北道の浦項(ポハン)市。
浦項といえば、先のブログ記事でも書いているが、
サンマを生干しにした、クァメギという料理で知られる。
東海岸に面した、魚介の美味しい港町であり、
また韓国有数の工業都市としても名が通っている。
だが、テンジャンの話は聞いたことがない。
それもそのはず。
この「竹長然」という会社は2009年の創業で、
韓国でも新進の食品会社なのであった。
兄さん曰く……。
「プレミアムテンジャンを造っているんだ」
とのこと。
伝統製法に則った甕での生産はもちろん、
国産材料を使用し、添加物の類は一切使わない。
キャッチコピーは、
「自然と歳月以外は何も入れていません」
となっている。
テンジャンのほか、同様にコチュジャンも造っており、
また、最近はカンジャン(醤油)も始めたという。
歴史は浅いが韓国内での評価はすでに高く、
有名飲食店などでも使用されている。
「Market Oでも使っているよ」
といわれて、一瞬「???」となったが、
菓子のことではなく、名前の元になったレストランのほう。
オリオンが経営するソウルの自然派レストランで、
「竹長然」のテンジャンが使われているらしい。
一瞬、味噌入りのブラウニーでもあるのかと、
とんでもない勘違いをするところだった。
「あと、ニューヨークのDANJIでもね」
ニューヨークの「DANJI」といえば、
韓国料理店としてミシュランで初めて星をとった店。
なかなかすごいところで使われている。
味噌の会社と聞いて、老舗企業を想像したが、
よくよく考えると、伝統製法の醤(ジャン)は流行食品のひとつ。
「韓食の世界化」というキーワードが使われ出して以降、
伝統料理の再構築と洗練は、最先端のブームといえる。
なるほど、これは確かに興味深いビジネスだ。
「それはソウルでも買えるんですか?」
興味がわいてきた僕は兄さんに尋ねた。
旅行ついでに買えるなら、観光客向けの情報になる。
浦項だと難しいが、ソウルならガイドブックのネタになる。
「うん、ギャラリア百貨店に入ってるよ」
「お、いいですね!」
よし、ならば次の取材でチェックしに行こう。
ところが直後、予想外のセリフが追加で飛んできた。
「新大久保でも買えるけどね」
「え!?」
てっきり今回の出張で日本への販路を探し、
これから日本進出を狙っていく計画かと思っていた。
いやはや、韓国人のビジネスは本当に速い。
なんでも新大久保にある韓国スーパーの、
「ソウル市場」と「K-PLUS」で買えるとのこと。
実際に後で見に行ったら、確かに並んでいた。
「プレミアムテンジャンがそんな簡単に買えてよいのか!」
とも思ったが、それもまた「竹長然」の実力。
とはいえ、まだ買えるというだけで知名度は皆無なので、
今後はブランド力の向上を目指していくそうだ。
「だから、これよろしくな!」
「え゛!?」
手渡されたのは、テンジャン、コチュジャン、
そして造り始めたばかりのカンジャンなど商品一式。
味を見たうえで宣伝するように、という意味だ。
「あと来月浦項に来い。味噌仕込むから」
「え゛!?」
「取材していけ。メシぐらいおごるぞ」
「え、えーっと……」
なんだか、とんでもないことになった。
さすがにその来月というのはもう今月なので、
仕事の兼ね合いもあってさすがに行けない。
だが、韓国人を兄さんと呼ぶというのは、
「来い!」
「はい!」
という関係であるということ。
さて、いつ浦項に行けるだろうか。
呆然とスケジュール帳を眺める日々である。
<会社情報>
社名:竹長然
住所:慶尚北道浦項市南区虎洞573
電話:054-283-1530
http://jookjangyeon.com/
<お知らせ>
3月に済州島ツアーを予定しています。
島ならではの郷土料理を食べつくす3泊4日。
ご興味ある方は、ぜひご検討ください。
八田靖史と行く済州島まるごと食べつくしの旅
http://www.mrt.co.jp/topics20121201.html
<リンク>
ブログ「韓食日記」
http://koriume.blog43.fc2.com/
Twitter
http://twitter.com/kansyoku_nikki
FACE BOOK
http://www.facebook.com/kansyokunikki
<八田氏の独り言>
まだ浦項には行ったことがありません。
行くならじっくり行きたい美食どころです。
コリアうめーや!!第288号
2013年3月1日
発行人 八田 靖史
hachimax@hotmail.com
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