「ワンダフル・コリア~食・楽・探・求~」
そんなタイトルで1年かけて話をする仕事がありました。
江東区の「亀戸文化センター」が主催する講座です。
旅と鉄道、韓国をテーマとするフォトライターの栗原景さんとともに、
それぞれの守備範囲から韓国の魅力を熱く語っていく企画。
昨年の春に募集をかけて、その5月に講座がスタートし、
1年かけてみっちり語って、ちょうど今日が最終回でした。
これまでも単発の講座はたくさんやらせて頂きましたが、
ひとつの大きなテーマで、何度も語らせて頂くのは初めて。
しかも1回が90分なので、ずいぶんと濃密な時間でした。
せっかくなのでどんな話をしたか、一覧でまとめてみたいと思います。
まず、栄えある初回を飾ったテーマが……。
「第1回:韓国の食卓風景~キムチ・発酵食品」
必ずしも韓国に詳しい人たちばかりではないので、
韓国における食卓風景とは、どんなものかをまず見て頂きました。
家庭の食卓、飲食店の食卓などをいろいろ画像で見ながら、
日本の比較も踏まえ、韓国料理のおおまかな特徴を説明した次第。
当然、欠かせないのはキムチの存在と発酵調味料ですね。
醤油、味噌、コチュジャンといったあたりの話題です。
「第2回:韓国料理はなぜ赤いか~肉食の歴史」
2回目は韓国料理の縦軸を抑えるという試みでした。
タイトルは韓国料理の「赤さ」をクローズアップしていますが、
その背景には肉食文化の影響というのが色濃く存在します。
日本料理との違いを語るうえで、もっとも大きなひとつが、
仏教の伝来で公に禁じられた肉食文化が、どこの時点で復活したか。
唐辛子の朝鮮半島伝来も含め、韓国料理の特徴というのを、
歴史的な視点から抑える、というのがテーマでした。
「第3回:薬食同源~健康と美容の秘密」
第2回での歴史を踏まえ、第3回は思想的な部分をテーマにしました。
タイトルでは「健康と美容」と軽めな雰囲気に見せかけていますが、
その実、メインの話題として扱ったのが陰陽五行思想について。
薬食同源、五味五色といった言葉で表現される韓国料理の基本を、
陰陽五行思想の基本と照らし合わせつつ、踏み込んだ説明をしました。
……と、振り返りながら、いま改めて思うのですが、
ガリガリ気合を入れ過ぎて、テーマがずいぶん重たいですね。
実際には料理の魅力も含め、もう少しマイルドに語ったつもりです。
「第4回:郷土料理で巡る朝鮮半島~北部編」
そういった第2、3回の重たさとバランスを取るかのように、
第4、5回は魅力的な郷土料理の話を目一杯語りました。
「この地域はアレが美味しい、あそこはコレが美味しい!」
という浮かれた話題ですが、地方の郷土料理を見ていくと、
地域ならではの歴史や文化などが、随所に透けて見えてきます。
そのへんまでしっかり語ると、だいたい3時間はかかるんですよね。
なので前後編に分け、第4回がソウル、京畿道、江原道、忠清道。
「第5回:郷土料理で巡る朝鮮半島~南部編」
第5回が慶尚道、全羅道、済州島と、オマケで少し北朝鮮。
第2、3回の縦軸に対し、横軸で韓国料理を眺める作戦でした。
「第6回:韓国料理の雅なルーツ~宮中料理・餅」
ここから後期の日程に入りました。
後期から参加という方もいらっしゃいましたので、
前期を振り返る意味も込めつつ、テーマは宮中料理と餅。
宮中料理を語るうえでの重要なエッセンスとして、
再度、歴史の話題や、郷土料理の話題などにも触れました。
そのうえでメインとして語ったのは、
・宮中料理の基礎的な知識と重要な用語
・宮中料理が現代に伝えられた歴史的な経緯
という感じ。
なお、この話題はつい先日、横浜でも語らせて頂きました。
単純な使い回しという訳では決してないのですが、
この講座のおかげで、持ちネタが増えたとはいえるかもしれません。
「第7回:日式料理と日本料理~うどん・おでん・のりまき」
回数を経るにつれて、少しずつマニアックな話題に。
韓国の中に溶け込んでいる、日本料理の存在について語りました。
開化期から日本統治時代にかけて定着した日本料理をはじめ、
近年、外食店舗の進出によって、新しく伝わった料理まで。
最後にはオマケとして、韓国内での中国料理事情にも触れました。
韓国料理の中の外国料理と、その受容というのがテーマです。
「第8回:韓国の酒~マッコリ・焼酎・酒席マナー」
この回は、僕にとって得意分野といっていいかもしれません。
韓国における酒文化の歴史や、日韓でのマッコリブームがテーマでした。
ほかにも韓国の酒席における特異なマナー、風習についてとか、
韓国でのオススメ酔いどれスポットといった柔らかい話題も紹介。
広蔵市場や全州マッコリタウンなどの魅力も熱く語りました。
「第9回:韓国の正月文化~年中行事と通過儀礼」
年が明けて、ちょうど正月過ぎだったのでテーマは年中行事。
タイムリーな正月の話題を中心に、1年間の行事食と、儀礼食を語りました。
この日にこれを食べるという話題と、この年齢でこれを食べるという話題。
さらにはブラックデーなどの新しい文化の話も加えつつ、
最終的にはいかに1年間を美味しく過ごすか、という内容です。
「第10回:食の韓流~日本で進化する韓国料理」
そして、まさに今日語ってきたばかりなのがこの話題。
韓流以降、10年かけて広く浸透、定着してきた韓国料理の姿を、
特徴的な新定番料理やマッコリなどを通じて読み説きました。
韓国料理の世界化と日本化、日本の企業や外食産業の役割、
また、重要な発信地のひとつである新大久保の姿などなど。
日本における韓国料理の姿を捉えることで全体のまとめとしました。
こうして並べてみると、90分よく持ったなというテーマもあり、
逆に90分では語りきれないだろう、というようなテーマもあり。
やってみての反省というのは、いくつもあるのが本音ですが、
それでもなんとか、最後まで責任を全うできてホッとしています。
韓国料理の話題をここまで細分化して語る機会はそうそうないはず。
なんとも貴重な体験をさせて頂き、関係者の皆様、
そして参加者の皆様には深く感謝しております。
あと最後に語るべきは、今後への「営業」ですかね。
まがりなりにも90分これらのテーマで話ができましたので、
もし、リクエストがあれば、どこでも話をしに伺います。
もちろん90分でなく、時間はいかようにでも調整することができます。
「このテーマなら話を聞いてやってもいいな!」
という方はぜひご連絡ください。
4 Responses to 韓国料理にまつわる10の話について。