ソウルの明洞で10月にオープンした「明洞コロッケ」。
明洞聖堂の向かいにあるのですが、普段は扉が閉まっており、
11時と18時の1日2度だけ、店を開くという営業スタイルです。
(※注:店が軌道に乗ったら営業時間は変更があるかもとのこと)
そんな希少性も手伝ってか、店の前には大行列がずらり。
だいたい販売の30分前から人が並び始めるそうです。
僕らは15分前に行って、20番目以降というぐらいでした。
写真が昼と夜と交錯して恐縮ですが、見た目はこんな感じ。
このあたりで「ん!?」と思って頂ければ幸いなのですが……。
韓国のコロッケって、いわゆる日本のコロッケとは違うんですよね。
僕らが思うジャガイモコロッケも韓国ではコロッケと呼びますが、
むしろそれは日本料理として、後から入ってきた別種の料理。
韓国人にとってのコロッケは、ベーカリーで買うパンの一種であり、
カレーパン風の揚げパンに、ひき肉、野菜、春雨などが入ったものです。
ピロシキに似た感じのパンといえば、より伝わるでしょうか。
ちなみに、「明洞コロッケ」の例で行くと……。
・野菜
・ジャガイモ
・マスタード
・クリームチーズ
・アズキ
という5品の具があって、従来のコロッケとは一線を画す豪華さ。
ちなみに上の写真は、野菜コロッケを撮影したもので、
中にはコーンやニンジン、タマネギなどの具が入っていました。
なお、個人的なオススメはクリームチーズで、
「カレーパンの中からチーズケーキが出てきた!」
というような驚きを楽しめます。
しかも、イロモノ的でなく、しっかり美味しい。
これがいま韓国で流行の兆しを見せています。
なお、韓国で普通のコロッケというとこんな感じ。
そのへんのベーカリーに入れば、どこでも売っています。
「明洞コロッケ」と違うのは、まずパン生地の分厚さですかね。
具も見た目でなんとなく伝わるのではないかと思いますが、
定番のひき肉、野菜、春雨といった面々がしっかり入っています。
あるいはまた別のベーカリーで撮影した写真ですが、
左がチャプチェ(春雨)コロッケで、右がチキンカレーコロッケ。
チキンカレーコロッケは新商品という扱いでした。
チャプチェコロッケは、英語訳がベジタブルコロッケになっていたので、
やっぱり春雨と野菜、それにひき肉がちょっと入る感じですかね。
チキンカレーコロッケは……まあ、カレーパンですよね。
日本で食べるカレーパンと、大きく異なることはありません。
……というあたりで、やっぱり日本人としては悩む訳です。
こいつはなんでカレーパンでなく、カレーコロッケなんだろうと。
手元の資料をひっくり返しましたが、役に立つものはまるでなく、
唯一あったのが、こちらのベーカリーを取材したときの記録です。
群山にある韓国最古のベーカリー「イソンダン」。
日本統治時代に日本人がやっていた店を引き継いで、
終戦直後の1945年に創業したという歴史あるお店です。
創業当時からの人気商品に、あんぱん、野菜パン、そぼろパン……。
そして、コロッケがあります。
当時の取材メモにコロッケの中身が書いてあったのですが、
春雨、タマネギ、豚肉、カレー粉……。
「カレー粉!?」
また、試食したときのメモにも、
「うっすらカレーの香りがするがさほど強くはない」
と感想を書いています。
店の人も、カレーコロッケというような説明をしていましたが……。
値札を見ると、カレーコロッケとは書いていないですね。
ただのコロッケであり、カレー味が標準スタイルのようです。
さて、ここから推理するに……。
たぶん、コロッケという名前からして製法は日本から伝わったはず。
また「イソンダン」において、創業当時からの商品ということは、
日本統治時代に入ってきて、定着した可能性が高いと思われます。
また、日本におけるコロッケの歴史は明治、大正あたりから。
そして、カレーパンの歴史はどうやら昭和初期になる様子。
すると時代的なことから考えても……。
・日本統治時代に日本からカレーパンの製法が伝わる
↓
・まだ新しい料理なので知っている人が少ない
↓
・それ以前からコロッケという料理はある
↓
・よく似ているからコロッケと呼ばれてしまう
↓
・やがてアレンジが加えられ春雨などが具に入る
↓
・韓国式のコロッケ誕生
という説明なら矛盾はないかなぁと。
韓国ではほかにも、オデンが練り物を指す呼び名でもあったり、
日本酒の俗称が銘柄由来の「正宗(チョンジョン)」であったり。
日本語本来の意味とは、ずれて定着したものが多々あります。
韓国式中華料理店で食べられる、タンメン風の「ウドン」もそうですね。
日本式のウドンとは無関係に、中華のウドンというメニューがあります。
この手の話は、明確な資料もなく、断定が難しいのですが、
ひとつの仮説として、韓国コロッケのカレーパン由来説を考えてみました。
今後、あれこれ調べていく中で、
「まったく違った!」
ということもあるかもしれませんけどね。
もしなにか有力な情報をお手持ちの方は教えてください。
韓国コロッケの謎、引き続き調査していきたいと思います。
4 Responses to 韓国のコロッケはなぜカレーパン風なのか?