青山「タッカンマリ×2」でタッカンマリの未来を見る。

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明日からいよいよ江原道ツアーに出かける訳ですが、
その前に、これだけは書いておかねばなりません。

先月、東京の青山でオープンした「タッカンマリ×2」。

店名の通り、タッカンマリ(鶏1羽鍋)の専門店です。
後ろに「×2」がついているのは、

「タッカンマリ・タッカンマリ」

というのが正式な店名だからだそうですね。
青山でオープンというあたりが、だいぶオシャレですが、
もともとここは「東京純豆腐青山店」があったところ。

「え、東京純豆腐がなくなったの!?」

という訳ではなく、この「タッカンマリ×2」自体が、
「東京純豆腐」プロデュースという、要は新業態店舗なのです。
1号店である青山店を切り替えてタッカンマリに臨むあたり、
このお店への、気合いの入り方が窺えますよね。

メディア向けの試食会に声をかけて頂いたので、
早速、大喜びで足を運んでまいりました。

で、まずビジュアルに驚いたのが……。

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ここです、ここ!

丸鶏の背中にジャガイモを刺すのは定番スタイルですが、
そのジャガイモをハート形にカットしているじゃありませんか。

「翼をイメージしました」

という店員さんのセリフに、

「そう、こういうのが見たかったんですよ!」

と鼻息がいきなり荒くなりました。

2006年4月の「東京純豆腐青山店」オープン以来、
斬新なスンドゥブチゲ(柔らかい豆腐の鍋)を次々に発表したお店。
ならば、タッカンマリにも必ずや新しい息吹をもたらしてくれるだろうと、
期待を膨らませていたところに、この先制パンチです。

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最初から鍋に入っている、ネギとジャガイモに加え、
ニラと、餅、ニンニクまではレギュラーでついてきます。

そのほかトッピングが充実しており、野菜やキノコ、
手羽、もも肉に加え、ナンコツつくねという選択肢もありました。
このあたりにも、新しい要素が見え隠れしていますね。

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その一方で、押さえるところは押さえてあります。

丸鶏をそのまま水炊きにする、というシンプルな調理法の中、
タッカンマリが、タッカンマリたる必要条件のひとつがつけダレ。

・醤油
・酢
・カラシ
・タデギ(唐辛子ペースト)

の4種類が揃っていない店は、よほどの主張がない限り、

「タッカンマリってどんな料理か知ってる?」

という疑念を客側に抱かせてしまいます。
卓上にこの4種が、きちんと揃っているのを見て、
うんうんと頷くとともに、少しホッとしたのは本音です。

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4種の調味料をいかに使うかの解説も完璧。
こういう細かな心配りは、日本のお店ならではですね。

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指示通りにきちんと混ぜ合わせたところで……。

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おちょこ登場。

博多の水炊きからヒントを得たこのスタイルは、
すでに日本の各タッカンマリ店で定番となりつつあります。

「まずスープの旨さを楽しんでください!」

というサービスですね。

ちなみに鶏は岩手県産の生を使っているとのこと。
外国産ではなく、冷凍でもない、という点にこだわるようです。

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ほどよいタイミングで店員さんがハサミでカット。

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その後、餅とニラをこのタイミングで入れて……。

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砂時計登場!

5分計をひっくり返し、10分煮込んでくださいとのことです。
このあたりも日本的なスタイルといっていいでしょうね。

……と感心したところで、ふと思ったこと。

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10分って、ずいぶん長くないですか?

もうぐっつぐつに煮立てて、ぐらぐらに沸き立って、
充分煮えているのではと思いましたが……。

「白湯(パイタン)仕上げにする!」

というのが、さらなるこだわりでした。
ちなみにその一方で、

「ニンニクは鍋に入れないでください!」

というこだわりも。

韓国だったら、鍋が出てきた瞬間からニンニクを入れ、
人によっては白菜キムチもざんざか投入するところですけどね。

鶏とスープを味わって欲しい、というコンセプトから、
ニンニクは鶏を味わった後に好みで少量足す程度。
白菜キムチも最初から提供はしない、との説明でした。

このあたりも、本場と違う! といわれがちな要素ですが、
しっかりした意図と、説明があったのは好印象でした。

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煮上がるまで、少々時間はかかりましたが、
鶏肉とこのタレの味わいは、まさしくタッカンマリ。
時間をかけて煮ることで、肉の旨味が飛ぶのを心配しましたが、
食べてみた限り、それが気になることはありませんでした。

翼のジャガイモはぐずぐずになっちゃいましたけどね。
それが悲しい方は、ほどよいタイミングでの救出をすすめます。

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鶏肉を食べた後はカルグクス……というかウドンに近いですね。
麺はもう少し試行錯誤するような話もありました。

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スープがちょっと煮詰り気味でしたが、麺との絡みは抜群。

そしてまた、煮崩れたジャガイモが意外に美味しかったので、
翼を救出できなかった人は、それはそれでよいのかもしれません。

ただし、このウドンでお腹を満たしてはならず……。

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この雑炊セットまで到達することが推奨されます。
ごはんと海苔、溶き卵を加えて煮立て……。

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出来上がりに極細切りのチーズ!

そして、ゴマ油もひとたらしすることで、
こってりと濃厚仕上げの雑炊を楽しむことができます。
このチーズとの相性がまたよかったですね。

「最初はそのままで、次にチーズを足して、最後はゴマ油と!」

なんて、ひつまぶしのような食べ方の提案もあり、
そのあたりにも、新しいことをしようとの気概が見えました。
鶏肉から、ウドン、雑炊までの流れは大満足です。

個人的な感想としても、要点をしっかり抑えながら、
実にうまいところで新しい要素を盛り込んだな、という印象。

タッカンマリっていう料理は本当に難しいんですよね。

もともとがソウルの東大門で1970年代に誕生し、
歴史が新しいうえ、狭いエリアでのみやたらと発達した料理。
韓国でもしばらく前までは、知らない人が多かったため、
料理の持つ「幅」というのが、極端に狭いんです。

日本人にとっても、タッカンマリはすべて「東大門のアレ」なので、
そこから逸脱する工夫は、ほとんどが邪道扱いされます。

もちろんそれを否定するつもりはまったくありませんし、
むしろ僕のほうが、率先して邪道扱いしている面もあります。

ただここ数年で、ようやく日本でもタッカンマリの認知度が高まり、
「東大門のアレ」的な方向性を明確にする店も増えてきました。
そんな状況下で、「東京純豆腐」プロデュースというのは……。

「絶好のタイミングで、絶好の店が進出!」

ということではないかなと。

まあ、ほとんどの人が褒めすぎと感じるかもしれませんが、
僕にとっては、タッカンマリの未来が大きくこじ開けられた思いです。
この後も反応を見ながら、さらに工夫を加えるでしょうから、
その未来にも、まだまだ無限の可能性が広がっているでしょうしね。

タッカンマリが好きな方はぜひ行ってみてください。

「こんなのタッカンマリじゃない!」と思うか、
「こういうタッカンマリもアリなのか!」と思うか。

たぶん、すべて織り込み済みなのが、この店のスゴイところです。

店名:タッカンマリ×2
住所:東京都港区北青山3-12-1 O24ビルB1F
電話:03-5766-1121
営業:11:30~15:30、17:30~23:00(月~土)、12:00~15:30、17:00~22:00(日・祝)
定休:なし
http://www.facebook.com/dakhanmari2



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