最近、近所のスーパーが楽しくて仕方ありません。
高校生の頃、スーパーの精肉売場でアルバイトをしていたこともあり、
買い物はもちろん、商品を眺めているだけでも楽しい時間を過ごせます。
そこに最近は、
「近所のスーパーにも韓国商品が増えてきた!」
という要素が加わりました。
Twitterでもあれこれ新商品情報をつぶやいておりますが、
近所のスーパーで出会う韓国商品は、いま僕にとって大きな関心事です。
あれこれ買っては自宅で試し……。
「んー、これはイマイチだな……」
「むむ、これは美味しいけど韓国っぽくないな……」
「おっ、これはアタリだ! また買おう!」
などと楽しんでおります。
まあ、アタリに出会えるケースって、かなり稀なんですけどね。
とはいえ、いろいろ試しているうちに、自分なりの発見もあって、
あくまでも我流ですが、楽しみ方が増えてきました。
そこに見えるのは、韓国料理が突き進んでいるひとつの未来。
ブログの記事としてうまくまとまるかはわかりませんが、
自分なりにいろいろ思うことを、書いてみることにします。
まず、大前提として冒頭の写真。
これは2009年11月にソウル駅前の「ロッテマート」で撮りました。
いまはもうこのコーナーはないですが、日本人観光客があまりに多いため、
企画の一環として、こういった試みがなされたようです。
日本人に人気のある商品が、ここにずらりと集められておりました。
ということは、極論するとここに並んでいるような商品を、
日本のスーパーに持ってこれば、確実に売れるということです。
韓国まで行かなくても、近所で買えるならこんな便利なことはありません。
でも、それって現実的には難しいですよね。
そもそも日本で流通していない商品もありますし、
ひとつひとつ輸入しようと思ったらたいへんな手間です。
新大久保で営業するスーパーのように、韓国に特化する、
ということなら、話はまったく別ですけどね。
じゃあ、どうするか。
それはもう韓国メーカーから来てくれるのがいちばん楽です。
一時期、お土産として大人気だった「Market O」なんかはその典型。
日本に支社を置いて、営業マンが飛びまわって商品の説明をして、
その結果、どのスーパー、コンビニでもいまや定番商品となりました。
あるいは「紅酢(ホンチョ)」なんかも大ヒット商品ですね。
でも先日、営業担当の方から発売当初の話を伺いましたが、
知名度を獲得していくまでは、ずいぶんな苦労があったようです。
いくら韓国で人気があり、韓国ファンの支持があったとしても、
それがそのまま、日本のスーパーで売れる訳ではありません。
世に韓国好き、韓流好きという方はずいぶん増えましたが、
スーパーに来る人たちの全部がそうではないですから。
こういった商品が日本で地盤を固めていった裏には、
メーカー側の営業力とともに、
「それが日本で売れると見抜いた人がいた!」
という仕入れ側のアンテナも評価されるべきでしょう。
なにしろ、こうして売れていったものがあるということは、
それ以上に、売れなかったものもたくさんあるはず。
もともとお付き合いのない外国企業の、なんだかよくわからない商品を、
じゃあ、売ろう! と決意するのはけっこうな勇気だと思います。
でも、そんな、
「じゃあ、売ろう!」
といってくれる理解者を探すのはとってもたいへん。
なので韓国メーカーのほうも、いろいろ作戦を考えます。
例えば、韓国最大の食品メーカーであるCJ(第一製糖)は、
日本メーカーのエバラと手を組んで、エバラCJフレッシュフーズを作りました。
日韓の会社が手を組むことで、商品力と販売力を相互補完。
もともとお付き合いのある日本の会社が絡むことで、
「じゃあ、売ろう!」
の垣根がぐっと低くなるメリットがあります。
ちなみにCJはマッコリの分野でもサッポロビールと提携。
生産と販売の分担は、もっと増えていくのかもしれませんね。
そして、これを今度、日本のメーカー側から考えてみます。
韓国メーカーが日本市場での販路獲得に苦労する中、
日本メーカーのメリットは、すでに販路を獲得しているという点です。
上の写真は、丸大食品が出している「プデチゲ」ですが、
そもそも丸大食品といえば、ハム、ソーセージで有名なメーカー。
「ハムやソーセージを具にした韓国式鍋料理の素を開発しました!」
ということで、スーパーの仕入れ担当さんに話をするのは、
はじめましての韓国メーカーよりも、はるかに垣根が低いはずです。
まあ、垣根が低いといっても、そう簡単な話ではないようですけどね。
メーカーとして前々からお付き合いがあったとしても、
「プデチゲ? なにそれ?」
というところからの話だったりしますし。
とはいえここ数年、韓国ブームであるのは間違いないですし、
テレビなどのメディアでも、韓国料理が紹介される頻度は増えました。
日本のメーカーが、新商品として韓国料理を視野に入れるというのは、
程度の問題はあれ、ある種必然のものになってきた感があります。
僕がいまいちばん面白いと感じているのが、このあたり。
丸大食品はずいぶん前から韓国料理に力を注いでいますが、
ここにきて、韓国分野で頑張るメーカーがぐんと増えてきました。
あくまでも僕の個人的な感覚ですが、
・ダイショー
・ポッカ
・永谷園
・丸美屋
・東洋水産(マルちゃん)
といったあたりの会社が新商品を多く投入してきています。
これらに加え、前々から韓国系商品を販売している、
・モランボン
・徳山物産
といったメーカーが売り場を争っているとなると、
これはもうひとつの商品を並べるだけでもたいへんなことです。
そこでキラリと光ってくるのが日本メーカーの老獪なテクニック。
本場を掲げる韓国メーカーに対し、日本メーカーの強みは、
日本の市場を熟知し、日本人に合わせた商品が作れることです。
上の写真は、先日食べて、えらく気に入った永谷園のラーメン。
これを見て上手だなと思うのは、韓国料理を意識させつつ、
それでも「ラーメン」という盤石の安心感があること。
まるで知らない外国料理だと、手を伸ばしにくいですが、
ラーメンの延長線上となると、味の想像がしやすくなります。
しかも、永谷園でラーメン、さらに箱パッケージとなると、
和田アキ子が宣伝していた、煮込みラーメンの延長線上でもアリ。
自社のブランドと、関連商品の下地をうまく生かしながら、
韓国という要素を乗せて、売りやすく、買いやすくした印象があります。
また、ふりかけで有名な丸美屋からはこんな商品が登場。
これも丸美屋、ふりかけ、という下地に韓国の要素が乗った図式です。
正直、ビビンバ味かというと、単純にコチュジャン味なのでしょうが、
これがえらくごはんの進む味で、あっという間に食べ切りました。
裏面を見ると、茹でたモヤシにゴマ油を絡めてごはんに載せ、
このふりかけをかけて、混ぜながら食べるアレンジも紹介されています。
こういったのプラスアルファの提案も、日本メーカーは上手ですよね。
あるいは、ダイショーから出ている「鶏肉のトッポギ炒め」。
トッポッキを「トッポギ」と書いたり、その後ろに「炒め」があったり、
個人的には表記の面で不満なのですが、これもまたテクニックのひとつ。
韓国語としての正しさよりも、一瞬のわかりやすさを優先したのでしょう。
「トッポギ=餅」
と一瞬でわからない人も、「鶏肉」の「炒め物」であることはわかります。
そのうえで「トッポギ」はなにかというと、横に「スティック餅」と書いてある。
パッケージを見るだけで、鶏肉と餅の炒め物と想像ができます。
しかも、これよくよく考えるとトッポッキじゃないんです。
鶏肉と餅を甘辛く炒めたら、できあがりはどう考えてもタッカルビ。
メーカーの方から話を聞いた訳ではないので、あくまでも邪推ですが、
タッカルビより、トッポッキをより優位に判断したのではないかなと。
タッカルビは2001~2年頃に、1度プチブームがあったので、
それを考えると、トッポッキとして売るほうが目新しさはありそう。
そんな判断があったのでは、と食べながら思いました。
こうした名前の付け方なども日本メーカーに一日の長ありですね。
ほかにもダイショーは、
・塩チャプチェ
・エビがおいしいチャプチェ
・サムギョプサルの素
なんて商品を出していて、視点のユニークさに驚かされます。
韓国料理をいちばん独自の切り口でとらえている印象ですね。
ただ、こうした日本的なアレンジの商品につきまとうのが、
「それって、韓国料理っていえるの?」
という指摘でしょう。
つい先日も、
という記事を書きました。
上の写真はそこで紹介した、韓国産の焼きネギ入りクロワッサン。
韓国料理の境界線を考える作業はどの場面でも難解です。
日本的なテクニックを駆使するほど、本場から遠ざかるのは事実。
おそらく、このブログを熱心に読んでくれているような人ほど、
こういったアレンジ商品には疑問を感じるのではないでしょうか。
うまいこと本場らしさを実現しつつ、さらに一般性を持たせられれば、
みんな満足できるのでしょうが、それは簡単な作業ではありません。
もちろんどのメーカーも両立に向けて頑張っているとは思いますが、
韓国好きとしては、正直、ガッカリする商品が多いのも本音です。
ただ、すそ野は着実に広がっていると思うのですよ。
韓国メーカーの営業力、浸透力はどんどん増すはずですし、
日本メーカーの商品力も、研究を重ねて進化していくでしょう。
なにしろ日本の食卓に韓国料理はまだまだ入りたてなので、
身びいきな書き方ですが、無限の可能性が眠っているはずです。
だからこそ、いろいろな企業が乗り出してきている訳で、
近所のスーパーにも、新商品が続々とお目見えしています。
僕がスーパーをウロウロしながら満喫している楽しみは、
そんな韓国料理の未来を、日々ダイレクトに感じられるということ。
そして、それは家庭の食卓における韓国料理の浸透と同義です。
それをお伝えしたくて、つらつらと長文を書き綴りました。
ちなみに構想半年。その間に試した韓国商品50種類以上。
でも、そのほとんどが、2度と買うことはないだろう商品でした。
おおいに期待は込めつつも、現状はまだまだ厳しいです。
今回の記事で紹介させて頂いた商品は、その中でも、
「美味しかったです!」
といえるもの。
もちろん好みはありますし、韓国らしさへの期待値も違うはずなので、
試してみて、ご満足頂けなかった場合は、
「韓国料理の未来と可能性を味わった!」
とでも思ってください。
近い将来、家庭で味わう韓国料理のレベルは、
確実にみなさんの満足にも近づいてゆくはずです。
One Response to 近所のスーパーで満喫する未来的韓食ライフ。