そもそもの発端はコレでした。
検疫の関係で日本に韓国産リンゴを持ち帰れないため、かわりに食べてもらおうと、ソウル在住の友人たちに栄州(ヨンジュ)名産のリンゴを送付。栄州リンゴは地域を代表する特産品で、2015年度のデータを見ると、栽培面積、生産量ともに韓国一です。
栄州からソウルへと送られたリンゴは、友人たちによって美味しく消費され、身近な方にもおすそ分けされたとか。
本来であればそれでめでたしめでたしなのですが、僕の予想を超えていたのは、その友人たちが栄州リンゴの美味しさに目覚め、自ら大量注文をし始めたことでした。栄州にとってもありがたいことですし、広報大使をしている僕にとっても頭の下がる思い。
では1度、栄州にご招待。
という話がいろいろバタバタしていて延びつつも、つい先週ようやく実現しました。
せっかくなのでできるだけリンゴにこだわって栄州を巡ろうと、まずはリンゴ農家を訪れて生産者の方から話を聞いたり……。
奥様がむいてくれた「我が家のリンゴ」をさっそくいただいてみたり。
農園のすぐ前には簡易な販売場もあり、
「いちばん美味しいリンゴをいちばん安く買うならココ」
なんて話を聞くと、シーズンになったらまた来なきゃ! と思いますね。ちなみにここの社長さんには、新刊食の日韓論 ボクらは同じものを食べている』(三五館)の取材でもたいへんお世話になりました。
店名:コゲマル農場(고개마루농장)
住所:慶尚北道栄州市鳳峴面小白路1239(柳田里367-1)
住所:경상북도 영주시 봉현면 소백로 1239(유전리 367-1)
電話:054-632-2912
続いて足を運んだのはリンゴ専門の農産物流通センター。
普通だったらこんなところ見学できませんが、栄州市の方と、センター長さんの計らいで特別に入れていただきました。ちょうど日曜日で作業自体はお休みでしたが、施設内に入った瞬間からリンゴの甘い香りに全身が包まれて思わず陶然。
低温貯蔵室には出荷前のリンゴがずらり並んでいました。
「ちょっと食べてみますか?」
とセンター長さんがリンゴを手に取り、ふんっ! と力を入れたかと思うと見事に真っぷたつ。そのパワーにも驚きましたが、かぶりつくなりバシュッと水気が弾け飛んでその瑞々しさにもびっくりでした。そして甘い。
やっぱり栄州のリンゴはうまいなぁと確認し合いつつ。
ところ変わって伝統家屋の前に甕がずらりと並んだこちら。
ソウルの高級スーパーでもよく目にする「無愁村(ムスチョン、무수촌)」というブランドの味噌、醤油を造っているところです。ここへ来るのはまったくの予定外だったのですが、ふとしたきっかけから……。
これの存在を知ってしまったんですね。
5年熟成のリンゴ酢。しかも栄州リンゴ100%。リンゴマニアならこれは外せないだろうということと、友人のひとりがお酢マニアでもあるとのことで、結果的に2倍興奮するポイントとなりました。
しかもこのリンゴ酢。とんでもなくまろやかで、最初口に含んだときは上質な醸造酒を飲んだのかと錯覚するような感じ。日本酒でもワインでもなく、韓国のもち米で造る伝統酒が近いように感じましたが、その直後に酸味がふわっと立ち上ってきて……。
「あ、これは酢だった!」
と気付かされます。その瞬間の衝撃がすごい。
ぜひ多くの方におすすめしたいのですが、残念なことに味噌、醤油に比べて生産量が少ないため製造元だけの限定販売。1本2万ウォンと値段もかなりお手頃なので、このためだけでも足を運んで来ていただきたいですね。
むしろ栄州の観光を考えるなら素晴らしいキラーコンテンツかと。
無愁村テンジャンマウル(무수촌된장마을)
慶尚北道栄州市伊山面伊山路938番キル16(池洞里466)
경상북도 영주시 이산면 이산로938번길 16(지동리 466)
054-638-0097
そして、こちらは伝統菓子の韓菓を作っているところ。
油菓(ユグァ、유과)という伝統菓子の中ではポピュラーな揚げ菓子で、注目すべきは表面に貼り付けられている炒り米の下。ほんのり茶色みを帯びているのがわかるかと思いますが、リンゴを加えた水飴をまとわせています。
すなわち、栄州リンゴ油菓(영주사과유과)。
リンゴのほのかな後味もさることながら、これ韓菓としての出来栄えが素晴らしかったですね。韓菓というと先日、栄州の隣町に当たる奉化(ポンファ)でも感動的な出合いがありましたが、栄州にもこんな見事な韓菓があったとは。サクッと軽快な食感といい、控えめで自然な甘さといい、つい手が伸びて止まらなくなります。
そして原料となる、栄州リンゴ水飴(영주사과조청)も販売。ここも栄州の名所になりそうですね。
店名:ソンビ村韓菓(선비촌한과)
住所:慶尚北道栄州市昌津路195番キル316(可興2洞341-7)
住所:경상북도 영주시 창진로195번길 316(가흥2동 341-7)
電話:054-638-8900
それにしても感慨深いのは2014年に初めて栄州を訪れた際、リンゴ関連商品について尋ねたところ、
「そういうものがないんですよねぇ……」
という回答だったんです。日本だったら菓子でも饅頭でも山ほど特産品関連で作りますよね。でも、そういった発想が希薄だった。でも、時代的にリンゴだけを売っている場合ではないので、市の方も生産者の方も研究を重ねたのでしょう。日本にも何度か勉強に来ていました。
で、2年経っていまみると、市でも情報がなかったところを発掘したり、また民間でも新たに開発したり。以前に比べて格段に充実してきた感があります。そしてそれはリンゴだけに限った話ではありません。
栄州っていま本当に一生懸命地域おこしをやっているんですよ。
つい先日もソウルの清渓山入口駅前に栄州韓牛の専門焼肉店を畜産協同組合がオープンしましたし、栄州の名前を冠した栄州ヨーグルト、栄州マッコリなども新たに誕生しました(また報告します)。
そんな姿勢がとても刺激的で、自分も頑張らなきゃと思えるので、微力ながら広報大使として協力させていただいている次第。縁あって出合った栄州の魅力を、今後もどんどん伝えていきたいと思っています。
さて、紹介が最後になりましたが、今回栄州まで足を運んでいただいたのはこの方々。
見えにくいですがいちばん左でリンゴ型のメガネをかけているのが「Photo fix梨大店」のナホさん。キムパプ(海苔巻き、김밥)を持った僕のプロフィール写真を撮ってくれたスタジオを運営しています。
そしてそのお隣がコスメライターのジャヨンミさん。昨年より、慶尚北道広報大使としてもご一緒させていただいております。
そしてそのお隣にリンゴを素手で割ったセンター長と、いちばん右にワタクシ。
冒頭でリンクを張った記事にもありましたが、ナホさん、ジャヨンミさんらは、韓国の地方旅行を発信する「マポ会」という謎の集団を形成しています。このマポ会と連携しつつ、秋にリンゴツアーができたらいいよね、というのが目下いちばんの話題。実現に向けては今後さまざまな調整が必要になるかと思いますが、いまのところ10月下旬を目指して動こうと思っています。
そちらは決まったらまたお知らせするとして……。
当面のイベントは以下のふたつが絶賛募集中です。
第6回「日本国内の韓国・朝鮮を巡る旅(神奈川・埼玉編)」
https://www.kansyoku-life.com/calendars/kokunai06
第23回「オレカテ」(テーマ:日本の中の韓国・朝鮮)
https://www.kansyoku-life.com/calendars/orekate023
どちらも残席まだまだ余裕がありますので、よかったらご関心ありそうな方にもお声かけいただけると助かります。
※商品へのリンクはamazonアソシエイトリンクが使用されています。