予定にはまったくなかったのですが、光州(クァンジュ)にいます。
金海(キメ)の知人宅に身を寄せつつ、釜山(プサン)の下見を終えたら、あとはソウルに移動するつもりだったんですけどね。地方をウロウロしていると、ときおりこうした予定外の大移動があり、自分がどこにいるのかわからなくなります。
冒頭の写真は移動の途中で立ち寄った全羅南道、霊岩(ヨンアム)名物のカルラクタン(牛カルビとテナガダコのスープ、갈낙탕)。西海岸の干潟地域でとれる新鮮なテナガダコを、牛カルビと一緒に煮込んだ贅沢な料理です。高級素材の共演とあって値段も破格の1万9000ウォン也(ごはん付)ですが、さすがに美味しかったですね。
基本のベースはカルビタン(牛カルビのスープ、갈비탕)で、そこにテナガダコの海鮮風味をプラスした感じ。牛カルビから出る濃厚な脂のコクと、淡くも存在感あるテナガダコのうま味が重なって、なんとも絶妙なスープに仕上がっています。
そして、丸ごと入ったテナガダコがまた柔らかいんですね。
プリプリではなく、ふわっとしたぷるんぷるん。カルラクタンから牛カルビを抜くと、ヨンポタン(テナガダコのスープ、연포탕)という料理になりますが、そのヨンポがもとは豆腐を意味するというあたりに食感の真実があります。
アクセントに加えられたナツメの甘さもほどよく上品。
せっかくなのでいろいろ頼んでみようと、こちらはテナガダコを割り箸に巻きつけた……。
・ナクチグイ(テナガダコ焼き、낙지구이)
割り箸を手に持ってガブッとかぶりつきます。
生野菜と一緒に酸味の効いたタレで和えた……。
・ナクチチョムチム(テナガダコの和え物、낙지초무침)
甘酸っぱ辛いタレの味わいは韓国人が大好きな味。さっとゆがいたテナガダコの食感と、生野菜の瑞々しさがよくマッチしていました。
そのほか、
・サンナクチタジム(テナガダコのぶつ切り刺身、산낙지 다짐)
・ナクチボックム(テナガダコ炒め、낙지볶음)
・ナクチデチム(茹でテナガダコ、낙지데침)
・セバルナクチ(テナガダコの丸ごと刺身、세발낙지)
といったテナガダコ料理が用意されていました。いずれも大皿料理は小3万ウォン、大5万ウォン。セバルナクチのみ時価となっています。
霊岩郡の犢川(トクチョン)地区にはテナガダコ料理の専門店が集っており、カルラクタンは1970年代にこの町で生まれたとのこと。
牛を売ると書いて「犢」という字が示す通り、この地域には全羅南道でも有数の牛市場があり、また近隣の霊岩湾では良質のテナガダコがとれました。地元名物を掛け合わせただけではありますが、味わいの相乗効果から考えると、見事な発想だったと賞賛すべきでしょう。
上の写真はテナガダコ通りの元祖とされる「犢川食堂」。
ちょうど10年前に木浦(モッポ)で同じ名前の店に行きまして、てっきり支店なのだと思っていましたが、今回確認したところまったく関係ないそうです。
木浦の店も美味しかったですけどね。今日の感動には10年かけて本場にたどり着いたという感慨も少しあったような気がします。
店名:犢川食堂(독천식당)
住所:全羅南道霊岩郡鶴山面犢川路162-1(犢川里162-1)
住所:전라남도 영암군 학산면 독천로 162-1(독천리 184-12)
電話:061-472-4222