こういう飲食店の紹介記事を書くのも久々ですね。最近は原稿を書くよりもツアーだ、イベントだという仕事が多く、本来の「韓食日記」とはかけ離れて、告知、告知、告知、後記を兼ねた次の宣伝ばかりで申し訳ない限りです。考察・企画ネタの記事なんかも書きたいと思いつつ、もはや年単位で寝かせて発酵しすぎているものもあったり。特にこの8月は寝る間も惜しむほどに修羅場の連続でしたが、どうにかひと段落して……また次の修羅場に臨みます。
新大久保に足を運ぶ時間もずいぶん少なくなってしまいましたが、「オレカテ」がそれに歯止めをかけているという感じでしょうか。
この日も「オレカテ」のスピンオフ企画が終わった後、反省会を兼ねつつ、先生と大久保通りの新店「ハチノス」に足を運びました。ちょうどお店の社長さんから……。
「最近はやっと落ち着いてきましたので、よろしければまたご招待させて頂けませんでしょうか?」
なんて思わず恐縮するほどに丁寧な連絡をいただいてもいましたしね。スピンオフ企画の先生と、第1回講師の橘亜美さん、第3回講師の新見寿美江さんという、豪華なオレカテ講師陣とともにお邪魔してきました。
店名の通り、ハチノスサムギョプサルがお店の看板メニュー。
ハチノスとは牛の第2胃を指す用語で、見た目が蜂の巣に似ていることから名付けられています。韓国語だとポルチプ(벌집)。これも同じく蜂の巣という意味ですね。そんな牛の第2胃に似せて、豚バラ肉にたくさんの包丁目を入れたのがハチノスサムギョプサル(韓国語ではポルチプサムギョプサル)。あるいは包丁(칼)、包丁目(칼집)という単語を使って……。
・カルサムギョプサル(칼삼겹살)
・カルチプサムギョプサル(칼집삼겹살)
とも言いますね。韓国では2006~07年ぐらいにわっと広まったと記憶しております。
日本では2009年頃からじわじわと浸透。過去の韓食日記を見ると、「日本ではまだ稀ですが(2009年11月12日)」「日本でも最近、ちらちらと見かけるように(2010年2月6日)」というフレーズが見られるので、そのあたりから定着したという感じですね。
そんな豚肉をメインにしつつ、こういった包み野菜がわっと出てくるのが喜ばしいところ。なにしろこの「ハチノス」というお店は、新鮮野菜をたっぷり味わえる人気店「くるむ」の2号店でもあります。当初、小皿料理を売りに掲げながら、いろいろと試行錯誤の末、ハチノスサムギョプサルをメインにする形で落ち着いたそうです。
社長のお声かけにもあった……。
「最近はやっと落ち着いてきましたので」
というのはそういった苦労から出たものでしょう。
ただ、ひとつだけ書いておきたいのは、ここの社長、目指すところのたいへん高い方です。いろんなエピソードがある中で、僕がいちばん印象的だったのは「くるむ」が売り出し中だった2013年のゴールデンウィーク、日中の書き入れ時に営業を諦めてスパッと途中閉店した話。サービスが行き届いていないのを重く見たということでしたが、店を閉めてまで社員教育をやり直す経営者さんってあんまりいないですよ。
ようやく落ち着いてきたというのは、そんな社長が納得するレベルに仕上がったということ。それまでがおざなりだったという訳でももちろんありません。
そんな細かさがこの写真からも伝わってくると思いませんか。
ハチノスサムギョプサルには味付けのアレンジもたくさん用意されているのですが、ひとつひとつが混ざらないよう、しっかり区分けして焼かれます。これまでにもいろんなバリエーションのサムギョプサルを食べてきましたが、たいてい焼くとどれがどれかわからなくなるんですよね。
僕らが選んだのはコチュジャン味と、バジル味、そしてプレーンの3種でしたが、それぞれの味をしっかり吟味しつつ味わえるというのは、当たり前のようなことでいてたいへんありがたかったです。
また、それぞれの味付けもさることながら……。
「肉そのものがイイ!」
というのはさすがでしたね。この日は千葉県産の豚肉ということでしたが、ハチノスの包丁目もしっかり効いて柔らかくジューシーなお肉でした。
サイドメニューにはリニューアル前の小皿料理も活きている様子。
セロリのキムチと……。
山芋のキムチはどちらも瑞々しくオススメです。
ツナアボカドサラダは韓国のツナ缶使用とか。正直、日本のものと大きな違いを感じる訳ではないのですが、その一言につい誘われる、というのは僕だけではないと思います。
カボチャチヂミを注文しようと思ったら、あいにく品切れだったのでジャガイモチヂミ。
そして、「くるむ」でもオープン当初から人気のニラチヂミなどを試してみました。相変わらずニラどっさりです。
お肉はハチノススタイルの豚だけでなく牛もあります。
バラ肉を薄くスライスしたウサムギョプ(우삼겹)は、ふんわり柔らかな口当たりと漬け汁のフルーティな味わいが持ち味。新大久保では今度、韓国から「本家(본가)」という有名チェーンが進出してくるそうなので、知名度の上昇が予想されている注目メニューです。
圧巻は数量限定、松坂豚のサムギョプサル。
脂が溶けて飴色になっていくのを見るだけでも美しいです。こってり濃厚な脂の甘味を存分に楽しむという感じ。値段はちょいと張りますが、脂のパンチ力が強烈なので少しずつのシェアでもいいかと思います。ぜひ奮発してみてください。
ちなみに場所は「くるむ」の地下。今日は2階にしようかな、地下にしようかなと気分で決める常連さんもいらっしゃるとか。店の雰囲気も違いますし(地下は江南のダイニングをイメージしたとか)、メニューも違うようなので、両方通って比べてみるのもアリかと思います。
店名:ハチノス
住所:東京都新宿区大久保2-32-2林ビル地下1階
電話:03-3202-0005