※7月1日10時追記
先生の指導により、全体に手を入れました。以下を完成稿とします。
5月末に行われました第15回「オレカテ」。
すっかり報告が1ヶ月後になっておりますが、おかげさまで今回も盛況でした。そして、いつにも増して女性の多い回でした。
これまでのオレカテを振り返っても、ここまで女性が多かったのは初めてではないでしょうか。たいてい、2~3割ぐらいは男性がいらっしゃるものですが、今回は僕を含めても2~3名ずつ。テーマがテーマだけに、会場は一面「美の花園」となっておりました……とまで書くとゴマすりも白々しいかもしれませんけどね。
「ポジャギ、メドゥプ、刺繍~閨房工芸の世界~」
というタイトルで鈴木千香枝先生、柴口育子先生にお話しいただきました。
講義自体も素晴らしかったですが、貴重な蒐集品を多数お持ちいただき、実物を見ながら勉強ができたのはたいへん貴重な機会でした。刺繍の細やかさとか、布ごとの微細な違いとか、ノリゲの価値は主体と呼ばれるココで決まるんですとか。
ほほう、なるほどと聞きながら、終了後には貴重な品々をみんなでかぶりつきになって眺めたり写真を撮ったり。
みなさんの自己紹介を聞いていると、やっぱりポジャギを習っているとか、メドゥプを習っているとか、むしろ教えていらっしゃるとか、そういう方々が多く集まっていらっしゃいましたね。第1部も、第2部も、ある種独特の熱気がありました。
こちらは第2部の様子。
個人的にはまったく未知の分野でしたので、閨房工芸(キュバンゴンイェ)とは何か、ポジャギとは、メドゥプとは何か、という部分から学べたのがありがたかったです。日々、韓国と接しているのでポジャギを単純に見る機会はあるものの、細かな定義までを問われると悩みますよね。特にポジャギの場合は……。
「韓国のパッチワーク」
と紹介されることが多いのですが、今回の講義で「ポジャギ=パッチワーク」ではないことをしっかり確認しました。よく見る端切れをつぎ合わせたアレは、むしろ「チョガッポ(조각보)」と呼んで、数あるポジャギ(何かを包む布の総称)の一部なのだそうです。
ポジャギという大きな分類の中に……。
・チョガッポ(端切れをつぎ合わせたポジャギ、조각보)
・スーポ(刺繍を施したポジャギ、수보)
・ヌビポ(刺し子を施したポジャギ、누비보)
・クムバッポ(金箔をあしらったポジャギ、금박보)
という感じで横並びになる種類がたくさんあって、パッチワーク風のものはその中のひとつ……という解釈で大丈夫でしょうかね。基礎の基礎ではありますが、こういう門外漢の部分を整理できるのは本当に助かります。
そんな基礎に加えて、いろいろな背景文化を語っていただいたのですが、中でも印象に残ったのは……。
「チョガッポとは家族写真のようなものである」
という話。
これは韓国刺繍博物館の許東華(ホ・ドンファ)館長が、100枚ぐらいの端切れでチョガッポを作ったおばあさんに、「これは何を考えて作ったのですか?」と問いかけたときの答えだそうです。昔はお嫁に行くとなかなか実家の家族には会うことができず、写真もない時代ですから、そういった故郷への思いを端切れに込めたのでしょうとの解説。家族が着ていた服の余り生地だったり、おさがりだったりするものをつぎ合わせることで、この部分はお父さん、この部分はお母さんというように思いを馳せたとしたら、ひと縫いひと縫いに思いも詰まっているでしょうし、想像するだけで心の熱くなる話でした。
そしてまた別のエピソードとしては、
「チョガッポは私の住んでいる村の地図です」
なんて思いの込め方もあるそうで、これからチョガッポを見る目が変わりますよ、ホント。いやはや、いい話を聞けました。
僕が実感として理解できたのは極めて浅い部分だけかもしれませんが、布ひとつとっても呼び名が多数あり、布の素材に始まって、線の入り方、山ほどある模様の数々に至るまで、それぞれに特徴があって用途がある。また模様のひとつひとつにもしっかり意味があって、それが朝鮮時代から続く韓国人のメンタリティとも連動していて……。
「奥が深い!」
という部分に、みんながのめり込むんだろうなというのはよくわかりました。
うん、やっぱりオレカテの面白さって、こういうところだと思うのですよ。
参加されるみなさんは関心のあるテーマを選んで来てくださることが多いと思いますが、もともとの趣旨としては、関心がないことこそ学ぼうというものなんですよね。長らくやっていると自分でも時折り忘れそうになりますが、「隣の人がハマっている韓国」を垣間見て「自分のハマっている韓国」にも活かしていくのがオレカテ。
「全然詳しくいないんですけど参加していいんでしょうか……」
という問い合わせがしばしばあるのですが、そういう方こそ大歓迎。むしろ、そういう方のための講座です。
ちょうど今週末に第16回のオレカテを行いますが、キャンセルも出ている関係で、第1部のみ残席少々あります。日韓関係のいまを考えるという難解そうなテーマですが、こちらもやっぱりビギナー大歓迎。もし参加に対して悩むことがありましたら、事務局(orekatesamugu@gmail.com)まで遠慮なくお問い合わせください。
第16回「オレカテ」(講師:佐藤大介さん)
元ソウル特派員から見た日韓関係の過去、現在、そして未来 ~国交回復から半世紀を踏まえて~
https://www.kansyoku-life.com/calendars/orekate016
そのほか、各種講座、イベントなどまだまだ空席のあるものがけっこうあります。このページの下部にある「イベント&オフ会情報」から、関心のあるものをご確認いただければ幸いです。