第14回オレカテは4月18日(土)に開催。
第12回の後記を2ヶ月遅れで書き、第13回の後記を1ヶ月遅れで書いて、ようやく追いついたと思いきや、これももう半月以上遅れになっていますね。連休も終わって仕事モードに戻りましたので、バリバリとブログも更新していきたいと思います。
第14回の講師は映像翻訳家の本田恵子さん。
「映像翻訳者から見た韓流ドラマ・映画コンテンツ業界の12年」
というタイトルでお話いただきました。冒頭の写真は第1部の様子ですが、今回は第1部も第2部もぎっしり超満員。普段通り、夜の10時に募集を始めたのですが、翌日の夕方にはもう受付終了という人気ぶりには驚きましたね。ドラマや映画が好きという方も多かったですが、翻訳の仕事をしている、仕事をしたいという人も多かったです。
話はそもそも映像翻訳とは、という部分からスタート。僕自身、韓国語の翻訳をする機会はあっても、それは主に紙媒体での仕事であり、映像翻訳という仕事をしたことはなかったのでいろいろ新鮮でした。
「映像翻訳は大きく字幕翻訳と吹き替え翻訳に分かれます」
なんて基礎中の基礎から、ほほう、そうだったのか、と納得してしまうレベル。上の写真はそんな映像翻訳の仕事をするためのパソコンソフトですが、こういったものを見るのも初めての体験でした。
ちょっと見にくいですが、画面右にテキストを打ち込むと、実際の映像に字幕が表示されて見える感じ。さらには画面下部には音声波型があり、これを元にして俳優さんの話始めから話終わりまでに字幕を入れます。
ただ、そこにやたらと細かいルールがあり……。
・話始めから話終わりまでの秒数を計る(スポッティングという)
・秒数が決まったら、それに応じて文字数が決まる(1秒につき3~4文字)
・横字幕の場合、1行は13文字までで最大2行(縦字幕は11文字)
・文字の見え方にも気を配る(ひらがなばかりが重ならないとか)
・句読点は使わない(半角、全角スペースを補う)
もはやこの時点で呆然。
訳が合っていたとしても目で終えなきゃ意味がないですし、意味が伝わらなくてもダメ。パッ、パッと切り替わっていく中で、ストレスなく頭に話が入ってくるようなものを初めて字幕と呼べるということを理解しました。
韓国語ができれば意味はわかるし、訳すこともできるのですが、規定の文字数に収めるという部分に想像以上の苦労があるようですね。この文章を5文字で訳してくださいとか、それもはや韓国語能力でもなんでもないです。どう考えても日本語能力。俳句の世界。
そして、それらの話を全部聞くと……。
「あー、そればセリフと字幕が違って当たり前ですね」
と心から納得できた訳です。
しかもその訳ひとつひとつには、配給元などいろんな人のチェックが入るため、必ずしも翻訳家ひとりが字幕を作っている訳ではないようですね。もっと短くとか、わかりやすくとかいろんな指示が入って対応しなければならない。それでいて名前が出る以上、誤訳などの責任は一手にかぶる必要がある。それが文字数の制限などによる意図的なものであったとしても、誤訳のレッテルはついてまわる訳で、これはたいへんな仕事だなぁと思いました。
そんな中、ひとつ面白かったエピソードが、韓流初期の頃は韓国語専門の映像翻訳家がおらず、英語の映像翻訳家がかわりに作業していたという事実。セリフをベタ訳するだけならできる人は多いものの、それを「5文字以内」とか字幕のルールに則って加工できる人がいなかったということですね。
逆を言えば、英語の専門家でも韓国語字幕が作れるということで、これ本当に語学云々ではなく専門職だと実感します。
第2部の様子。
講義はこうした映像翻訳の仕事を知ることから始まり、続いて翻訳者の視点から見た韓流12年という話題に。ヨン様から始まって、チャングムを経て、K-POPブームへという流れを追いかけつつ、キャスティングの裏話なんかも教えていただきまして盛りだくさん。
個人的にひとつ感慨深かったのが、日本で興行収益のもっともよかった韓国映画は何かという話題で……。
「私の頭の中の消しゴム」
という答えがバシッと頭の中に閃いたこと。第4回オレカテで学んだ内容がきちんと頭の中に残っており、苦手とする韓流の知識を最低限でいいから学ぶという個人的な目的は、どうやら少しずつでも達成されているようでした。
最後に今後を見つめるうえで、韓流は終わったと言われているが、それはむしろ定着である。ビジネスとしては厳しい部分もあるが、定着して深い部分にまで興味を持っている人たちに上質なコンテンツを届けることが必要、との話がありました。大いに共感する部分であり、それは韓流だけでなく、すべての韓国業界に携わる人たちが考えるべきことですね。
上質なコンテンツを目指して、自分の仕事を頑張ろうと気を引き締めました。
さて、今後のオレカテは以下の通り。僕が苦手分野の克服を目指したり、仕事への刺激としているように、オレカテはテーマと無関係な仕事をしている方、したい方も大歓迎です。ぜひ気軽にご参加ください。
・第15回「オレカテ」(講師:鈴木千香枝さん)残席僅少
ポジャギ、メドゥプ、刺繍~閨房工芸の世界~
・第16回「オレカテ」(講師:佐藤大介さん)5月上旬告知予定
元ソウル特派員から見た日韓関係の過去、現在、そして未来 ~国交回復から半世紀を踏まえて~